海月 時

Open App

『大好きだよ。』
彼が言ってくれた言葉。何でこんな事になったんだろ。

『元気してた?僕はすっごく元気だよ。』
笑顔で言う彼。彼の足元には影がなく、生きていない事が分かる。
「楽しそうだね。君に久しぶりに会えて嬉しいよ。」
『僕もだよ。』
彼は死んだ事によって、生まれ変わった様だった。生前では考えられない、陽のオーラを放っていた。その事は素直に喜ばしかった。
『今日は君と話をしに来たんだ。』
彼の表情は先程とは違い、真剣なものだった。
「君も私を否定するの?」

彼は一年前に病死した。病気だと知った時から、彼の表情からは笑顔が消えていた。私は、彼を喜ばせようとした。しかし、彼は死ぬまで笑う事はなかった。彼が死んでから、私の世界は崩れた。それ程までに、彼の存在は私には大きかった。彼に会いたい。その気持ちは次第に溢れていく。死んだら会えるはず。そして私は、屋上に来た。

「私は君が好き。今までも、これからも君以上の人なんて居ない。だから、止めないで。」
分かっている。この思いは歪んでいる。誰も認めてはくれない。それでも、これが私の彼への愛の強さの証明だ。
『僕はね。見送りに来たんだよ。君は最後まで僕の傍に居てくれた。だから、最後ぐらい君の傍に居たいんだ。』
涙が止まらない。彼は私の手を取った。
『これからも一緒だよ。』
恐怖はなかった。ただ風だけが私を包んだ。

落下する先が、天国でも地獄でも何でもいい。彼と居れば、何処だってワンダーランドだ。

6/18/2024, 2:17:07 PM