【落下】
元から高いところにいた訳でもない
それなのにあるのが当たり前に思っていた地面でさえ
裏切って弛み僕を沈めていく
嘲笑うように見下ろしてくる
いつからか周りに水も迫ってきて
さらに呼吸をしにくくする
口から漏れる泡だけが上がって行くが、
黒い空気に埋もれてそれもまた落ちる
これ以上落ちないように
これ以上溺れないように
何か掴めるものを探した手を
弄んでは更に深く突き落とされて
周りはいつしか暗くなっていった
誰かを呼ぶ声も出ないし、思い浮かぶ人もいなかった
いつの間にか暗闇の中でうずくまった
何かの声が聴こえて、何かがそばに居てくれる気がした
でも上がる力も術も持たない僕に
寄り添う人がいるわけもなく
そんな人がいたとしても道連れに更に落ちるだけだ
今こうしている間にもいしが投げつけられて
当たる度に落ちて行く
もうとっくの昔に全部諦めていた
だからもう良いのに
聴こえる声はなんて心地いいんだろう
どうして何処にも行かないで
ここに居てくれるんだろう
2024-06-18
6/18/2024, 2:08:42 PM