『脳裏』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
脳裏____
「汚い」
幼い頃から潔癖症だった。ただ、空間や場所に対しての潔癖症だ。例えば畳の部屋には座れないし、誰かがいた痕跡のある場所が汚く思えてしまう。だから、トイレや洗面所に行くときは必ず息を止める。
汚い、汚い、汚い。
だけど、本当に汚いのは、
私なんだ。
お題《脳裏》
現実は鈍色にくすんだ、まがいもの。
教室の喧騒から遮断された世界にわたしはいる。
脳裏に住む少年――ナナシは今日も笑顔で、わたしを迎えてくれる。
「今日も外の世界は騒がしいね」
「そうなの。先生の話はつまらないし、周りは毎日くだらない日常話ばっかり」
「はは、まさにそのようだ。ほらまた弱い者いじめしてるよ」
「松田くん――標的にされてるんだよね。かわいそうに」
同情はするが、めんどくさいことに関わる必要はない。
「ほら、そろそろ休憩時間終わるよ。行っておいで。――ここで、待ってるから」
「うん、いってきます」
夢から現実へ――。
消えてしまった貴方
もう随分前に消えてしまっていたよう
でも私は気付けなかったんだ
あの時、この時、考えてももう遅い
だって貴方は
もう考えることでしか会えないのだから
目を覚ますと私は病院というところにいたらしい。
看護師さんが
「ここがどこか分かりますか?」と言ったが,
私は答えることが出来なかった。
消しゴムで綺麗に消されているように真っ白な頭の中。私は言葉を失い,過去を失った。
私は事故にあったそうだ。
事故に遭ったと言われたらそんな気がしてきた。
誰かと一緒に歩いていたような,いないような。
なんだか廊下が騒がしくなった。
「...ちょっと!起きたなら連絡してよ!!」
「...はい?」
突然こっちを向いて男の人が話しかけてきた。
誰だろう...?
「すいません。誰ですか?」
こんなことを聞くと
彼はひどく悲しそうな顔をしていた。
「僕は,君の彼氏だよ。急にごめんね。
そんなこと急に言われてもわかんないよね。」
彼は言った。
「...ごめんなさい。あまり覚えてなくて...。」
「そっか...じゃあ今日は帰るね。
明日気持ちが落ち着いたらまた来るね。」
そう言って彼は病室を出た。
彼は最後まで悲しい顔をしていた。
何時間経っても,
私はその顔が脳裏に焼き付いて離れない。
記憶が戻ってくるのを願いながら私は目をつぶった。
─────『脳裏』
脳裏
メロディには何故か君との懐かしき日々が脳裏を
突いて優しく包んだ今日も素敵な曇り空の下。
胸に退廃した根性灯ることがないが、それで上等。
期待はずれに煌めいた僕の正義
「いつでも忘れていいから」
『脳裏』
木魚を叩き歌う男の声が蔓延る
拍子に合わせて揺られてみれば
微睡む胎児の夢さえ見られよう
違う
違う
生まれないでください
古臭い電子音だけが証明する
堂々巡りの袋小路に目が眩む
人に縋ることができないから
自分で自分に縋る。
やっていることは気持ち悪くても
そうするしかない。
頭を痛めないように
そして自分がまた壊れないように。
温めて労わって頑張ってみる。
|脳裏|
いつも何をしていても彼の顔が脳裏に浮かぶ
お買い物で彼の好物を見つけた時
服を選んでて、彼に似合いそうな服を見つけた時
テレビ見てて、彼が好きな芸人さんを見た時
夜寝る時、隣で一緒に寝たあの時
いつも彼のことを想う
(脳裏)
愛してる
とか言っちゃって
言っちゃって
ふと頭に思い浮かんだ句でさえ、
気持ちをごまかしてしまうのだから、
告白なんて、到底できやしない。
ふとした時に思い出す。
例えばあの日の授業のこと。
例えばあの日の下校のこと。
例えばあの日の告白のこと。
顔と耳を真っ赤にして、俯いたまま手紙を渡してくれたあの頃の君の事を、今でもずっと覚えている。
手紙の内容だって、もうそんなに覚えてもいないのに、何故かあの時の君の姿だけは昨日の事のようにはっきりと思い出せるんだ。
秋の香りが近付いてきた季節。目を奪われるほど美しい夕暮れが指す教室の一幕で、僕はその手紙を受け取った。
その後君と付き合って、いつの間にか別れてしまって。
そんなどこにでもある、ありふれた青春の一ページを駆け抜けて。
それでも脳裏に焼き付いている告白を、ずっと大事に抱えている。
彼女は元気でいるだろうか。
ふと、あの日の夕暮れとともに、そう思いを馳せるのだ。
「のう……うら」
「のうり、な」
国語ドリルを解いていた娘の手が止まり、まんまるな目をこちらに押し付けた。
「のうり!?り?裏って書いてり!?おかしいの!」
「まあそういうもんだ。漢字ってのは」
娘はうんうんと「りねえ」と呟き、小さい手で長い鉛筆を掴んで再び書き出す。
「校舎裏……こうしゃり。ふふふ」
「裏取引……りとりひき。リ・トリヒキ。あはあははは」
どうやら裏を「り」とも読めることがよほど楽しかったのか、娘はいろんな裏を「り」と読み、笑っていた。
そうしていると、ふと脳裏に行きつけのレストランの常連だけが頼める裏メニューである、絶品まかないトルコライスがよぎった。ごくりと喉を鳴らす。
「なあ、宿題が終わったらお母さんととっておきの『裏メニュー』を食べにいこうか」
りめにゅーだやったあ!と跳ねる娘、あなたの奢りねと笑う妻。僕は仕方ないなあと苦笑いを浮かべ、書斎の引き出しからへそく裏を取り出した。
仕事を無難にこなせたとき
夕ご飯が思ったよりも美味しくつくれたとき
誰かが私をほめてくれるところを想像する
顔も知らない 名前も知らない
性別も年齢もわからないぼやっとした影
でも、その想像がほんの少し私を癒してくれる
すごいよ えらいよ 最高だよ!
その声に、嫌なことも忘れてちょっとうかれてみる
私も誰かにとっての影になるのにな
脳内に登場して
100パーセントの力で褒めちぎるのに
目の前にいなくても 応援してます
私をほめてくれる影
その誰かに
私も同じ幸せを返してあげられますように
海に沈む夕焼けを見た時の驚き。
空はオレンジから青のグラデーション。
雲がぽつんぽつん。
海に見えるのは、手前から夕日に向かって水面にすーっと伸びる、光の道。
キラキラと輝いていて、希望への道みたい。そう思ったのを覚えています。
私は海なし県の住人なので、そのような景色は初めてみたのです。
今でも脳裏に焼き付いている景色。
そのような景色を見れた感動。
あなたの脳裏に浮かぶ感動した情景は、どのような景色ですか?
脳裏
−脳裏−
脳裏に映し出された1人のあなた。
「ニヤッ」と笑ったあなたがずっと離れない。
でもあなたは空の上。
「私のことみてる?」
そう問いかけてみると
なにも返事がない。
嗚呼苦しい。早く会いたいな
脳裏
ふとしたときに、脳裏をよぎるのはいつだって彼女の笑顔だった。
くしゃっとした顔にえくぼができて、幸せを具現化したような笑顔だった。その笑顔が、好きだった。
「大丈夫だよ、たとえ生まれ変わったとしても会いに来るよ」
そう言って彼女は笑顔のまま最期の時をむかえた。
それからしばらく経って僕の時も終わりを告げた。会いたかったなぁ、なんていう未練だけが残ったまま目を閉じる。
時々思い出すそれは自分が経験した記憶ではないのに、やけに鮮明だった。
次に目を開けたとき、気がついたら目からは涙があふれていた。何度拭っても底がつきるのを知らないみたいに涙は止まってくれなかった。
「おはよう」
その声にハッとして顔をあげるとそこには彼女がいた。姿形はあの頃とは違うけれど、目が合って笑う顔はあのときと同じだった。
くしゃっとした顔にえくぼができる、その笑顔が、ようやく会えたのだと教えてくれた。
「会いに来たよ」
そう言って笑う彼女はどの記憶の彼女よりもいい笑顔をしていた。
隠れタバコで停学になったクラスメイトが裏庭に来ている。彼はそこで落書きをしている。
目がいいわたしはその落書きの絵の中に、隠れミッキーを見つける。
そのミッキーがわたしの脳裏に焼き付いて離れない。脳裏のミッキーはこう言った。
やあ、ぼくバンクシー!
なんのことやらと戸惑っていた日のことを、わたしはときどき思い出す。
公園で遊ぶ貴女、それに近い距離に居たいと思う自分
あぁ、後もう少しで───
横切る思考、周りには人、恥をかくのでは
足が止まる。
でも、もう一度
脳裏
ふとした瞬間脳裏に浮かんでくるのは
焼きたてのハンバーグである。
こんがり焼けたビジュアル、溢れ出す肉汁。
口に入れた瞬間広がる香ばしい香りと旨味。
チーズがかかっているとなお良いだろう。
とろけたクリーミーなチーズと肉の旨味が
これまた相性がいい。
この文章を書いている間も、スマホを置いて
今すぐにでもレストランに走っていき
ハンバーグを食べたい気分だ。
お腹が空いてたまらない。
*脳裏
今日のお題「脳裏」
脳裏…脳裏…。
これまた微妙なお題を出して来たな~。
そんな言葉、普段使わないしな~。
脳裏に浮かぶ、という言葉があるけれど、脳裏に浮かぶのは大抵、もう会えない人。
思い出の中にしかいない人。
君の踝がわずかに震えたこと、唇の端が少し落ちたこと、喉仏がとくっと隆起したこと
その存在を思い返しては、にじった蜘蛛が靴裏に残るような痛みを孕む
指先を白い息をして温める季節になった、君を蹂躙した日を忘れることもできずに