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脳裏


ふとしたときに、脳裏をよぎるのはいつだって彼女の笑顔だった。
くしゃっとした顔にえくぼができて、幸せを具現化したような笑顔だった。その笑顔が、好きだった。
「大丈夫だよ、たとえ生まれ変わったとしても会いに来るよ」
そう言って彼女は笑顔のまま最期の時をむかえた。
それからしばらく経って僕の時も終わりを告げた。会いたかったなぁ、なんていう未練だけが残ったまま目を閉じる。
時々思い出すそれは自分が経験した記憶ではないのに、やけに鮮明だった。

次に目を開けたとき、気がついたら目からは涙があふれていた。何度拭っても底がつきるのを知らないみたいに涙は止まってくれなかった。
「おはよう」
その声にハッとして顔をあげるとそこには彼女がいた。姿形はあの頃とは違うけれど、目が合って笑う顔はあのときと同じだった。
くしゃっとした顔にえくぼができる、その笑顔が、ようやく会えたのだと教えてくれた。
「会いに来たよ」
そう言って笑う彼女はどの記憶の彼女よりもいい笑顔をしていた。

11/9/2022, 12:39:37 PM