『私の当たり前』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
私の当たり前は相手にとって当たり前ではないかもしれないので本当に気を許した人にしか私の事は話さない
想像はできるけれど、造り出すことはできない。
察してはみるけれど、綺麗に空回り。
言われた言葉は、ほぼ肯定。
自分の意見はないようなもので、根掘り葉掘り聞かれることが解らない。
と言うより、自分の感情が何に起因しているのか解らない。
常識がズレていて、最低限生きる知識が欠けている。
……とまぁ、軽くあげてみた”私の当たり前”は。
現実社会に適応できないってことだけはよく解る。
私の当たり前
僕の努力を君は一言で握り潰す。
君にとってダメ出しは
努力を見せられたら言うのが当たり前かもしれない。
その〝君の〟当たり前を押し付けないで欲しい。
僕は君とは逆で努力を見せられたら褒める。
それが僕の当たり前だから。
僕は押し付けるつもりは無いけど、
君も押し付けないで欲しい。
〝当たり前〟の価値観は人それぞれなんだから
押し付けるもんじゃない。
【私の当たり前】
#75
私の当たり前。それは、未来を約束してる愛する彼氏の隣にいる事、そして、その彼と毎週土日デートをする事。彼は、私にとって、無くてはならない存在だ。今の彼がいるから、例えどんなに辛い事があっても、私は、死にたいって思う事無く、生きていられるようになった。彼と付き合って、今月で半年。この半年間って、まだ長いようで短いけど、そんな私にとって、短期間で、自分でも驚く程、そして、自分でも変わったって気付ける程、私は、変わった。ホントに彼とこうして付き合えてる事には、感謝しか無い。ホントにいつもどんなに嫌になっても、ずっとそばにいてくれてありがとう。これからも末永く宜しくね。ずっとずっと大好きです︎💕︎
寝ることも食べることも、私にとっては当たり前じゃない。
濁った雫を求めて命を落とす子もいて、食べることが不安な子もいる。
私も痩せたいのに痩せれない。周りとの体型の違い。そんなストレスが原因で食べても戻しちゃうこともしばしば。
じゃあ、私にとっての当たり前ってなんだろう?
みんなにとって普通のことが私にはできない。
そんな私の当たり前……。
どんなに抵抗しても、必ず明日がくること。
それは、とても残酷でそれでいて一種の光でもあること、かな。
*私の当たり前*
テーマ:私の当たり前 #238
僕は初めて殺人鬼を見た。
その殺人鬼は変だった。
人の返り血を浴びて笑っているのだ。
もう死んでいるはずの人間に何度も何度も、
ナイフを突き刺しながら。
僕は腰が抜けてしまった。
口からは何も言葉が出ない。
その場にストンと座り込み、
その人から目が離せなかった。
その人は女性、相手は男性。
気が済んだのか、
男性を刺す手を止めると彼女は僕に気がつく。
「見てた?」
彼女の口角は上がったまま。
肌は白く、人形のようにきれいな人だった。
返り血を浴びているところ以外は。
「な、何なんだ!」
僕から絞り出された言葉はそれだった。
「あぁ、コレ?」
彼女は僕に近づくと、
血濡れた手で僕の頬を掴み言った。
「これは『私の当たり前』」
ピピピピピピ
ガタン、バサハザハザ、ゴン
「うっ、いったぁ」
床にたたきつけた頭を撫でまわしながら、身体を起こす。はぁ、今日も朝が来てしまった。
仕事だー。準備しますか。
洗濯の山から今日来ていく服を引っ張り出して、自然と着いてしまった服の皺を手で伸ばす。意味のないことだと分かっていても、人様の前に出るので気にしなければならない。
ボサボサの髪をブラシで大雑把にといて、今日はポニーテールにしてみる。コンセント差しっぱなしのヘアアイロンで軽く巻く。
いつもと同じメイクをしっかりして、鏡で確認したらよし!完璧!
酒類とほんの少しの食材しか入っていない冷蔵庫から、賞味期限が少しで切れる納豆とハムを取り出して、口に突っ込む。
時計を確認したら、やばい、もう出なきゃ!
玄関先に置いている仕事鞄をパッと取って、仕事先へ急ぐ。
「おはようございます」
「お!カナちゃんおはよ」上司が言った。
「今日締め切りのやつ順調かな?よろしくね」
「はい。なんとかできそうです。頑張ります」
私の上司は歳が近くて、優しい人なのでとても仕事がしやすい。同じ女性というのもあって、困ったことも相談しやすい。
今日は絶対に残業できない理由があったから、頑張って終わらすことができた。
何があったかというと、私の幼なじみが来る日なのだ。
昔から家族間で仲の良かった幼なじみは、一人暮らしをするようになった今でも交流が続いている。
「ただいまぁ」ドアをガチャリと開ける。
「おかえり〜!」
うわあ、私の家にもう入り込んでいた。
「鍵、持ってたっけ?」恐る恐る聞いてみた。
「いや、おばさんが使っていいよって言ってくれたの」
おかあさん、何してんだ。
それにしても、私の家が私の家じゃなくなっている。
溜まりに溜まった洗濯の山も、洗いそびれたお皿も、長い間掃除をしないために溜まった埃も全部がなくなっていた。
「また掃除してくれたの?ありがと」
「だってぇ、汚いじゃん?勝手に家に入るんだし、これぐらいはしとこうかなってね」
パチン、とウインクをしてきた。よくそんな余裕があるもんだ。
「ていうか、つい二か月前にも掃除したのになんでこんなことになるの?気をつけないと、カナが埋もれちゃうよー?」
はい、すみません。どうも片付けが苦手なようで……。
「気をつけます、いつもありがとうございます」
「はい、頑張って!話変わるけど、今夜のおつまみを作ってみました!さあさあ、酒の肴にして、飲みましょうや」
「いぇーい!飲も飲も!私はなんとワインを買ってきましたー!二人で一本飲もうぜい」
やったやったと二人で騒ぎながら、日々の疲れを発散する。これが私の当たり前の生活。
ベランダの花に水をやること
雨の日は頭痛薬を持ち歩くこと
翌日が何ゴミの日かチェックしておくこと
デスクトップの愛猫にニンマリすること
残業になりそうでも後輩にはすぐ終わると言うこと
飲み会の幹事が嫌でも率先して請け負うこと
締切が来週でも上司に迷惑がられないように余裕を持って提出すること
電車が遅れていても貴方に迎えを頼まないこと
遅く帰ってきても湯船に浸かること
胃痛が起きないうちに胃薬を飲むこと
さっき着いたよ、と会いたい気持ちを隠して控えめに貴方にLINEを送ること
貴方からの返事はまだかとずっと待たないこと
寝る前に水を1杯飲んで
愛猫を撫でて
何もない夜空を見て
明日連絡を入れる得意先を思い出して
ベッドに入って眠くないけど瞼を閉じる、その前に
最後に携帯を見る
これが今日の最後の、私の当たり前
ぴこん
通知の音。真っ暗な部屋でやたら眩しい画面を見る。
『お疲れ様。明日は時間がとれるから会えるよ』
23時59分。
今日の最後は当たり前で締めくくらなかった。
「そんなの当たり前じゃん」
「みんなやってるよ」
「できてて当たり前」
「当たり前」
「当たり前」
今朝言われた言葉が脳内をぐるぐる駆け巡る。
なんだってんだみんなして!
こっちの『当たり前』とあんたらの『当たり前』は違うんだっつーの!
少しは褒めることをしろい!
「やぁ……ってどしたそんな顰めっ面で」
イライラが顔に出ていたか、友達が心配そうに話しかける。私は今朝の散々な出来事を……少し誇張して友達に話した。
「あーね。むかつくなぁそれは」
「でしょ? もう朝からガン萎え」
「で、どうした?」
「ん?」
「ぶちかまさなかったの一発?」
「はぁ!? 仕返せって!?」
「当たり前じゃん」
そう言って私を追い越し、くるりと振り返る。
「私の『当たり前』は少しバイオレンスなのだ」
ははは!
と笑う彼女を見て、今朝のことなんてどうでもよくなってしまった。
こんな友達だから、一緒にいて楽なのだろうな。
ある古い書物の一節にて。
私の当たり前。
それはルーティンである。朝7時に起きて顔を洗って、ご飯をたべて、そこからドラゴンのお世話をするのがルーティン。
ただの龍ではない。龍馬というドラゴンと麒麟の子供だ。蹄がある幻の動物だ。
この龍馬を育てるのがルーティン。
お世話がおわると、また次の日、私の当たり前のルーティンが始まる。
少し奇妙なルーティンが。
ー オリジナル小説・ドゥコ作中の書物ノン・ドゥカ・ドゥコから ー
自分達の当たり前を、
私に押し付けないで
私は、かっこいい洋服を着て出かけたい
髪短くして男の子みたいな格好にしたい
でも、周りは
女の子なんだから 可愛い服を着て
髪を伸ばせって言うけどそれが当たり前っていうけど
自由でいいじゃん
男が可愛い服を着たり、女がかっこいい服を着たり
自分が良いと思ったそれで良い
自由にいよう
それが、俺の当たり前だ
私の当たり前
私の当たり前
私の当たり前は
誰かにとっては当たり前じゃない
これが私の当たり前
ほとんどは解ってはいても出来ない
それに私は一般的な普通ではない
私にとっては周りは不思議なことが多い
普通ではないのは誰もが当たり前で
ある種の集団の当たり前をかざされてる
でもそれは明らかに普通ではない
それに普通は免罪符にはならない
あと普通になりたいなんて思えない
ある程度は協調は必要だけど
それは自らの快適性などに由来する
誰かいて
何かがある
その何かとは
当たり前に存在する違いで
それが無い状態は異常でしかすぎない
当たり前なんて
一種の方便で
大概は説明が出来ない
あえて
当たり前の説明を聞いても
ただのその人の都合に落ち着く
私は普段から
当たり前なんて気にしてはいないと思う
『私の当たり前』2023.07.09
楽屋に入ると弟子や前座見習いが座布団とお茶を用意してくれる。座布団はお気に入りのもの、お茶はやや熱めの濃いめ。
ネタ帳を見ながら、今日の高座で何をかけようか考える。
今日は空もキレイに晴れており、梅雨の時期にしては景気がいい。なんだか気分まで楽しくなってくるようだ。滑稽話がいいもしれない。
他の師匠方も同じ事を考えているようなので、ネタ被りは避けたいところである。
そこに弟子の一人がやってきて、贔屓からの差し入れを持ってきてくれた。それもいつものことだ。こうして差し入れをしてくるのは一人しかいない。
いつもの贔屓が匂い袋をプレゼントしてくれたのである。
ミカンのいい匂いだ。いつだって贔屓はこちらが望むドンピシャのものを入れてくれる。
ミカンといえば、それにピッタリの噺があった。しばらくやっていないが、大丈夫だろう。
弟子にその噺を伝え下がらせると、スマホをチェックする
すると、匂い袋の贔屓からメッセージが届いていた。
その文面に笑ってしまう。
まさに自分がかけるつもりの噺を、図々しくもリクエストをしてきていたのだ。そのつもりで、ミカンの匂いを差し入れてきた。
いつだって贔屓は愛嬌のある図々しさをみせてくる。ときどき、やれやれと思うがその図々しさがないとどこか物足りなさを感じてしまう。
そんな贔屓からの差し入れとメッセージが、すっかり当たり前となってしまっているのだった。
昔から大人の喜ぶ事が手に取るようにわかった。大人は、私がテストで100点をとって学校から帰ると酷く気味の悪い顔で私を褒めた。大人は、手のかからない子供が好きなのだと知ると、何事にも細心の注意をはらって生活するようになった。大人は、確信を突かれると酷く怒りを爆発させるのだと知ると、大人を怒らせない言葉を慎重に選んでから発言するようになった。大人が、お前なんか産んだのが間違いだったと包丁を向けてくれば、逃げずに殺さないでくれと本心とはかけ離れた言葉を紡いだ。私は、大人の言うことを聞く、いい子でいた。
けれど、1度だけ大人の喜ぶことをできなかったことがある。それは大人が、私を愛してると言った時のことだった。その時、私の口は固く閉ざされたままであり、体は鉛のように重く心臓の音だけが頭の中にうるさく鳴り響いていたのをよく覚えている。人間は、幸福な記憶よりも恐怖や暴力と言った負の感情が煮詰まった記憶を優先して脳に記録する。だから私は今日もその記憶を思い出して、この言葉を口にする、愛していると、けれど、私はこの言葉を信用しない。なぜなら、この言葉は大人を喜ばせるための道具でしかないからだ。それでも、私はいい子を演じる。大人が大好きな、都合のいい人間に私はなるしかないのだ。
大人は、私の当たり前を支配している。
お終い
私の蟠りは解消した。
私は自分勝手な人間です。
ただ、私は言いたいことは言いたいのかもしれない。
私は自分勝手な人間です。
これだから恋愛は上手くいかないのでしょう。
嫌われても構いません。
ただ、自分の気持ちを尊重したかった。
よく言ったぞ。私、
リアルに会った人に「好き」と言えたじゃないか。
良くやった!!成長したな!!!
ただ、次からはもっと耐えような?
まぁ、多分無理でしょう。
俺はそういう人間だから。
好きになるやつなんて飛んだ変わったヤツだと思う。
まぁ、俺は変わった人間が好きなんだけどね。
俺は絶対に恋愛が得意では無い。
好きだと思ったら好きと言いたいし、
可愛いと思ったら可愛いと言いたい。
ただそれだけなのに嫌われる。
みんながみんな俺みたいな考えだったらいいのに。
まぁ、、それはつまらんか。
#私の当たり前
「おかあさーーーん!!」
大きな声で、両手をいっぱいに広げ
笑顔で思い切り駆けていく小さな子
屈んで同じ笑顔で手を広げ待つお母さん
テーマパークで一日遊んできたのだろう、
お土産の大きな紙袋を腕に掛けたお父さん
その肩に柔らかな頬を乗せ
安心して全身を預けて眠る子
じぶんを受け入れてくれる愛を、
疑いなく心の底から信頼している姿に
その愛を当たり前に注ぎかけている姿に
街で見かけるそんな風景のひとつひとつが
きらきら輝く、尊い当たり前であることが
とてもしあわせで ありがたい
「私の当たり前」
#160
私には、人の言う「当たり前」がよくわからない。「出来て当たり前」「理解できて当たり前」と言われても人によって出来ることと出来ないこと理解するのにも時間がかかる人かからない人……それぞれがいて「当たり前」と言うのではないのかな…?
【私の当たり前】
朝起きてコーヒーの香りを味わうと、今日が始まった感覚がする。
荒く引いたコーヒー豆をドリッパーにいれ、お湯を数回に分けて注ぐ。ペーパーフィルター越しにこされた渋く黒い液体が飲めるようになったのは、大人になってからのことだ。
子供の頃は、こんな朝があることなど想像もつかなかった。コーヒーなど苦くて飲めたものではなかったし、飲めたとしても、独特な香りが苦手できっと嫌いであり続けたことだろう。
その香りと苦さを感じる原因が、コーヒーではなく。中に入れたコーヒーに合わないミルクと過剰な砂糖が生み出していると指摘されて気付いたときは、静かに衝撃を感じた。
人は変わる。
変化は、いつ来るかわからない。
そして、変化は『出会い』と共に訪れる。
僕の出会いと変化は、コーヒーだけではない。
誰かと食べる朝食もまた、変化していた。
焼いたトーストに、お手製の果物ジャム、トマト入りのサラダと目玉焼き。
そんな手作りの朝食を、二人でゆっくり食べるようになった。
そう、二人だ。
一人ではない。
食事の際に、家族に嘲笑われ、詰られ、自ら仲間はずれを望んだ頃とは違う朝。
その新しい生活を当たり前にしてくれた、新しい家族との『出会い』に、今日も感謝している。
いのちを頂くこと
毎日何かに感謝することが
わたしの当たり前だ
#私の当たり前
私の当たり前(2023.7.9)
「おはよーなのだ!!起きるのだ!リーリエ!」
爽やかとはとても言い難い、騒がしいモーニングコールに、眠い目をこすりながら起き上がる。
「……あー…おはよう、タマキ」
「もっと元気よく挨拶するのだ!挨拶は大事なのだ!」
相変わらず朝からうるさいな、という抗議の意味を込めて、タマキの額を軽く小突く。「うにゃっ?!」という謎の鳴き声をあげてのけぞるタマキを尻目に、身支度を始める。
「うぅ〜、暴力はよくないのだ、暴力は!」
「はいはい、ごめんなさいね」
「絶対思ってないだろ!」
今更ではあるが、私の名前はリーリエ。そして、先ほどからうるさいこの少女が、同じアパートの隣人のタマキだ。多分頭を振ったらカラカラ音が鳴るだろうというぐらい、アホの子…もとい、頭が残念な子だ。
「おい!なんか失礼なこと考えてないか?!」
野生の勘が鋭いという特徴も付け足しておこう。不機嫌そうなタマキのご機嫌を取るために、私の朝食のトーストを少し分けてやる。
「む〜、まったく、毎朝起こしに来てやってる私への感謝が足りないぞ…」
言葉ではそう言いながらも、嬉しそうにトーストにかぶりつくタマキ。
「あー、ありがとうね、いつも助かってますよタマキさん」
「どことなく棒読みな気もするが、まぁ許してやろう!ところで、今日はどこに行くんだ?」
私はんー、としばらく考えて、「3丁目のスーパーにしようかな」と答えた。
「了解だ!支度してくるぞ!」
そういうや否や、タマキは自室へ走り去っていった。
しばらくして、二人でアパートの階段を降りる。外はもう盛夏になりかけていて、どこかで蝉が鳴いているのが聞こえた。辺りの通りには人影はなく、暑いはずなのにどこか寒々しさすらある。
「最近暑すぎるぞ〜、誰かが暖房を消し忘れたままなのか〜?」
「15年も日本で暮らしておきながら、四季というものも知らないのかこのバカは…」
「バカって言った方がバカなんだぞ!!あと私はバカじゃない!!」
「あーはいはい」
タマキとくだらない会話を交わしているうちに、目的地のスーパーに着いた。駐車場には何台かの車が停まっているが、やはり人影はない。
「それじゃ、今日のお仕事開始なのだ!殲滅なのだ〜!」
タマキがそう叫びながら店内へ走っていく。
「あんまり物騒なこと大声で言うんじゃない…」
苦笑する私だが、否定はしない。今日の仕事、日々の日課とも言えるそれは、殲滅といっても過言ではないからだ。
タマキに続いて入った店内には、ゆっくりと蠢く人影があった。いや、今となっては人とも呼べない、動く死体、所謂ゾンビだ。普段は虚ろな瞳でそこらへんを歩き回っているが、私やタマキのように自発的に動く生き物を見ると、突然襲いかかってくる。ゾンビものにありがちな設定通り、噛まれたら一発アウトだ。とはいえ、そこまで強いわけでもなく、思い切り頭を強打してやれば、しばらくの間は襲ってこない。その間に縄などで縛ってやるのだ。
襲ってくるゾンビを軽くいなしながら、タマキの後を追うと、奥の方で楽しそうにゾンビを蹴散らしている様子が見えた。あの様子なら、手助けも要らなさそうだ。
私とタマキで店内のゾンビをあらかた退けて、やっと一息つく。まだ仕事は終わっていない。店内に残っている食料品や日用品から、使えそうなものを分けて持って帰るのだ。広い店内なので、二人で分担して見て回る。
「リーリエー!見てくれ、カップ麺がいっぱいあったぞー!」
「おー、それはよかった…」
後ろからタマキの声がしたので振り返ると、遠くの方で嬉しそうに手を振る彼女が見える。だが、問題は彼女のすぐ横の棚が倒れかかっていることだ。
「タマキ!危ない!!」
「え?」
ドガッシャアアアン
間抜けな声を一つ残して、棚の下敷きになるタマキ。私は少しの間呆然としていたが、ハッと我に返ってタマキの元へ走り寄る。
「タマキ…」
倒れた棚には商品が詰まった段ボールがいくつも積まれており、とても重そうだった。普通の人間なら、これの下敷きになれば無事では済まないだろう。
苦労しながらなんとか棚をどけて、タマキの安否を確認する。
「あー…やっぱりだめだったか」
ちぎれた配線に、剥がれた装甲。「タマキ」という名をつけられた自立思考型アンドロイドは、完全に機能を停止していた。
「また修理用の部品探しに行かなきゃなぁ、2丁目のホームセンターにならあるかも」
そう呟きながら、私は意識を失った相棒を背に担ぎ、住み慣れたアパートへ歩みを進める。行きと違ってひどく静かな家路を少し寂しく思いながら。
「普通」とはちょっと違うかもしれないが、これが私の「当たり前」で「日常」だ。