狼星

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テーマ:私の当たり前 #238

僕は初めて殺人鬼を見た。
その殺人鬼は変だった。
人の返り血を浴びて笑っているのだ。
もう死んでいるはずの人間に何度も何度も、
ナイフを突き刺しながら。
僕は腰が抜けてしまった。
口からは何も言葉が出ない。
その場にストンと座り込み、
その人から目が離せなかった。
その人は女性、相手は男性。
気が済んだのか、
男性を刺す手を止めると彼女は僕に気がつく。
「見てた?」
彼女の口角は上がったまま。
肌は白く、人形のようにきれいな人だった。
返り血を浴びているところ以外は。
「な、何なんだ!」
僕から絞り出された言葉はそれだった。
「あぁ、コレ?」
彼女は僕に近づくと、
血濡れた手で僕の頬を掴み言った。
「これは『私の当たり前』」

7/9/2023, 12:13:22 PM