【私の当たり前】
朝起きてコーヒーの香りを味わうと、今日が始まった感覚がする。
荒く引いたコーヒー豆をドリッパーにいれ、お湯を数回に分けて注ぐ。ペーパーフィルター越しにこされた渋く黒い液体が飲めるようになったのは、大人になってからのことだ。
子供の頃は、こんな朝があることなど想像もつかなかった。コーヒーなど苦くて飲めたものではなかったし、飲めたとしても、独特な香りが苦手できっと嫌いであり続けたことだろう。
その香りと苦さを感じる原因が、コーヒーではなく。中に入れたコーヒーに合わないミルクと過剰な砂糖が生み出していると指摘されて気付いたときは、静かに衝撃を感じた。
人は変わる。
変化は、いつ来るかわからない。
そして、変化は『出会い』と共に訪れる。
僕の出会いと変化は、コーヒーだけではない。
誰かと食べる朝食もまた、変化していた。
焼いたトーストに、お手製の果物ジャム、トマト入りのサラダと目玉焼き。
そんな手作りの朝食を、二人でゆっくり食べるようになった。
そう、二人だ。
一人ではない。
食事の際に、家族に嘲笑われ、詰られ、自ら仲間はずれを望んだ頃とは違う朝。
その新しい生活を当たり前にしてくれた、新しい家族との『出会い』に、今日も感謝している。
7/9/2023, 11:55:36 AM