『私だけ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
私だけ。この世界には私だけがいた。
モノクロのどこまでも続く空と砂。ささやかに風が吹いていて雲と砂が少しづつ流れていった。
私は部屋着と裸足のまま宛もなく砂の上を歩く。
それからしばらく歩いてから砂の上に仰向けで寝転んだ。サラサラとした冷たい砂が身体に心地よかった。そして、そのままモノクロの空を流れる雲を眺めていた。
これは夢だとわかっていた。
変わり映えのしない日常だけど、ただ暑い日が続く日々の中、夢の中で涼むことのできる自分の幸せを砂にまみれ噛み締めた。
親愛の温もりを失うのが怖くて、恋心に蓋をしたのは幾つのときだったろう。
貴方が私を抱きしめてくれるのは『お世話になっている家のお嬢様』だから?
それとも『世話のやける妹』だから?
大好きよって伝えたら、はいはい、俺もだよって。
屈託なく向けてくれる笑顔が、優しく頭を撫でてくれる手が。
嬉しくてたまらないのに、同時に切なくてたまらない。
今日もこの想いは、私だけの。
私だけ?小学生の時に
スライスチーズを折り紙みたいに
4回折って1枚ずつ
剥がしながら
舌の上に乗せて食べる
冷蔵庫から出したてじゃないと
べちゃついてくる
大人が嫌がる食べ方
だから親がいない時に
やってたような…
✴️92✴️私だけ
これだけヒトがいるのに
なぜ見向きもされず存在している?
放った言葉は誰かをすり抜け通り過ぎていく
誰かを触れようと手を伸ばせば、その手は空を切るだけで
どうやら私は見えていないらしい
# 私だけ
いつも行っていた大好きなラーメン屋さん。
カウンターしかないお店。
同じようなタイミングで他3名も入店。
カウンター越しにラーメンを作る様子を見るのが大好きな私。
見ていると4人前中、明らかに1人前だけ麺の量が少ない。
それがまさか大盛りを頼んだ私の下へ運ばれてきた。
気の小さい私は、それを指摘する事もできず。
5口位で麺がなくなり、もう二度とそのお店に行かないと誓った、
器も小さい自分だけのお話でした。
私だけ
私だけを愛して
大切にしてくれる
そんな人は
いないってわかっている
自分だって
そんなこと
できないんだから
私だけ
隣の大学サークルと、恒例の飲み会が開かれた。
上級生同士はすでに顔見知りで、気軽に、久しぶりといった感じ。新入生はまだ敬語混じりで初々しい。だが酒の力もあってか、緊張は程なくして溶けていったようだった。
それにしても。
最初から気になっていた子がいる。眼鏡をかけた金髪のショートカット。今回初めて見たから、向こうの新入生だろう。はじめから気後れもせず、こちらにも酒を注ぎにやってきた。笑顔の子だった。
僕がトイレから戻ろうとした時、偶然、その子と廊下で顔を合わせた。
彼女は笑顔で、どうも、と声をかけてきた。
それに対して僕はなぜか、大丈夫かい?
などと少しずれたような返事をしてしまった。
大丈夫ですけど。何です?何か変に見えます?
なんとなく。
どこがです?
上手く言えないけど、笑顔が上手だなと思って。いや、すまない、なんでもない。気にしないで。
僕は頭を振って、そそくさとその場を離れた。
飲み会終了後、店先で散開して帰ろうとした時、背中から声をかけられた。あの子だ。
ちょっといいですか。
なにかな。
さっきの話なんですけど。
ああ、ごめん。訳わかんないこと言って。酔ってたから。
なんでわかったんです?
なにが?
私の笑い方だけホントじゃないって。 彼女は真顔だった。飲み会での愛嬌は微塵もなかった。
みんなと同じようにやってるつもりだったんですけど。
うん。
やり過ぎでしたか?
いや、そんなことない。悪くない笑顔だったよ。
でもバレた。なぜ。
んん、と少し考えた。なんとなく、と、いい加減にあしらってもよかったが、彼女の真っ直ぐな視線が、僕の逃走を許さなかった。
僕も前はそうだったから。でもやめた。
やめられるの? 彼女は驚いたような声で言った。
たぶんね。
どうやって。
さあ。人それぞれだと思う。僕の場合は……。 彼女が息を飲んで答えを待つ。
まず、ロン毛の金髪をやめた。
ロン毛、だったんですか。
うん。
金髪?
うん。
彼女の視線が右上に向かう。きっと僕のロン毛金髪姿を思い浮かべているのだろう。そして、
あんまり似合ってない気がします。 頬を緩めながら言った。
うん。僕もそう思う。やめてよかった。 僕は笑顔で返した。
それじゃまた。
あの……。 背を向けようとした僕を彼女が呼び止めた。
わたしも金髪、やめたほうがいいと思いますか?
さあ。センスがない僕に聞くなよ。
はは、と彼女が笑う。今の笑顔は本物っぽいな。
小さな笑いだったけど、いい笑い声だなと思った。
お題『私だけ』
私には推している配信者がいた。最初、無名だったその配信者のリスナーは私だけだった。見つけたのは、とある配信アプリだった。その頃は特に推しがおらず、適当な配信中の枠に行って無言で聞くのが日課だった。彼はそのなかの一人だった。
とてもいい声なんだけど、たどたどしく、がんばって話しているのを見て、なんだかはなれるのが申し訳なく、最初は一つの配信が終わるまでずっといて、彼の話し相手になってあげていた。
それがだんだん心地よくなって、しばらくは私だけの推しになっていたが、ある時、彼が歌ってみたをYoutubeにあげてから徐々にリスナーが増えていった。歌をがんばっていることは配信でずっと言い続けていることだった。実際、彼の歌はとんでもなく上手かった。特に得意なのはピアノの演奏に合わせたエモを誘う曲だった。
最初は、増えていくファンに感慨深いものを感じていだけど、彼のトーク力があがり、リスナーが増えていく。彼は私だけのモノじゃなくなっちゃったんだ。
そうなってから、気がつくと彼の配信をあまり聞かなくなってしまった。今や彼はその配信アプリで必ずといっていいほど、現時点での視聴者数一位に躍り出るようになっている。
また推しがいない生活に逆戻りかぁ。
そう思っていると、スマホに通知が入った。彼からだ。
実は、私は最初のリスナーだったのでXは相互フォローだし、人数が少ない時にオフイベに参加していたからLINEもつながっている。彼とのタイムラインは、ほぼオフイベントの宣伝ばかりだ。そのなかにいま来たLINEの通知は今までと毛色が違うものだった。
「ひさしぶり。最近、配信こないね。忙しいの?」
と書いてあった。その瞬間、私は口角が自然と上がる。今やあれだけリスナーがいるというのに、この男は配信が始まるたびに私の名前を探していたということになる。
「ははぁーん、さてはさみしくなったかぁ、このワンコめ」
私はスマホを手に取ると、「まぁね。それより最近、調子いいみたいじゃん」と返信した。そしたらまた彼からLINEがすぐ返ってきて、しばらく会話が続いた。
最初の頃みたいに二人しかいない配信枠のことを思い出して、楽しくなった。
ねぇ、私だけを見てて♡!!
辛くなっても、何があっても、何をしても愛してね!
他の子に目移りなんかしないよ……ね♡?
私だけ
誰かに侵食されない
誰のためのものでもない
時間は本来私だけのもの
生活のためにそれを切り売りすることもあるが
時間を所持するのは私だけであることは
忘れないでおきたい
私だけ
私だけなんで周りの人の時と、態度が違うの?...
私だけ、なんで...?って、思う事が多い
私だけ
なんで私だけ
お母さんもお兄ちゃんも全然理解してくれない。
何で私だけ?
どうして私だけ?
何で男子に悪口を集団で言われなきゃいけない?
どうして女子にクスクスっと笑われなきゃいけない?
何で?
どうして?
当時はずっとそう思っていた。
別に全国的に、世界的に、見ても私だけじゃないのに。
悲劇の主人公とか悲劇のヒロインとかになりたかったわけじゃない。
ただ、他にブスな人がいて醜いやつがいるって思ってただけ。
お前らの方がブスで醜い!
って思って過ごして自分の傷ついた心は知らんぷり。
でも当時から10年程すぎてみれば知らんぷりした心の傷は当時のままで、私だけじゃないっと理解しても気持ちはいつも私だけ。
死にたいと思った当時から死ねずに生きている。
自殺した子のニュースを見る度に死ねなかった臆病者って自分を嘲笑う。
友達は生きる勇気があるって言ってくれるけど自分は勇気があったら死ねるのだっと思う。
今日も私は生きる。
明日も、明後日も、これからも。
生きたい人が死んで死にたい人が生きる理不尽な世界で。
今日も傷ついた心は知らんぷり。
何で私だけ………
貴方のテノールボイスが、その瞬間だけは私のことを考えて私のためだけに時間を使って私の名前を呼んでくれたことの愛おしさたるや
「外国人」
小さい頃は、名前で呼ばれるよりも、そうやって呼ばれることの方が多かった。
金色のウェーブのかかった髪。
青みがかった瞳。
クラスのみんなは髪も瞳も真っ黒だから、私だけ浮いていた。
まるで、みにくいアヒルの子の逆バージョン。
「あの子は日本人じゃないから」
「お父さんとお母さんも外国人だよ」
みんなから向けられる好奇の目は、なんだか仲間はずれにされているみたいに見えて、居心地が悪かった。
小学校を卒業してからは、直接そういうことは言われなくなったけれど、やっぱり珍しいものを見る目を変わらず向けられた。
中学生は特に"周りと違う"ことに敏感だから、余計に目立っていたと思う。
髪を染めそうかとも思ったけれど、母に止められた。
「お姫様みたいに可愛いんだから」と言うけれど、私がなりたいのはお姫様じゃなくて、大多数みんなと同じであることなのに。
そんな学生時代を過ごしてきた私も、なんとか就職して、しばらくして恋人ができた。
同じ会社の同期の彼は、出会ったその日に「綺麗ですね」なんてナンパじみた言葉をかけてきて、最初こそ警戒していたものの、なんだかんだ気があって打ち解けた。
「こんな見た目だけど、いいの?みんなと違うんだよ」
付き合ってすぐのころ、そんなことを聞いた時があった。
彼は不思議そうに「何がダメなの?」と言った。
「その髪も瞳も、君だけの魅力だから、俺は好き」
そんな彼のまっすぐな言葉に涙が溢れた。
彼は、私だけ違うんじゃなくて、私だけの魅力として捉えてくれる人なんだ。
今もまだ少し、見た目を気にしてしまうことはあるけれど、その度に彼の言葉を思い出す。
みんなと違う、私だけの個性を大切にしてみてもいいかなと思った。
お題『私だけ』
「私だけ」
私だけ
わたしだけ
ワタシだけ
きっとみんな思ってる
私だけってなってるときは
視野が狭くなっているとき
内向きになってるとき
ちょっと散歩でもしてみると
きっと
少し変わるかも
あなただけじゃないよ
小雨の降り出した夕方だった。
昔ながらの民宿で、客は自分ひとり。
女将がメインのメバルの煮付けと小鉢を持ってきて、サービスだとレトロなビール瓶を年季の入った机に置いた。
年季の入った…とはいくらかぼかして表現している。経営状態はあまりいいとは言えそうにない。
傾いた看板。効きの悪いクーラー。換気扇の音が食堂にまで聞こえてくる。
「珍しいっすね」
自分はありがたく頂いた。冷やされたグラスがキンと心地いい。年に何度か釣りのために足を運ぶがこんなサービスは初めてだった。
寂れかけた小島の民宿は自分からみたら風流だが、今は皆、自粛だとか海外だとかで足がどんどん遠のいているらしい。
(潮時かね)
仕事の合間を縫って通うのを気に入ってはいるのだが。
今日は朝からレンタルしたボートで沖に出たが坊主だった。(船舶免許は小型の二級を大学時代にノリで取った)
女将はよく陽に焼けた顔でがははと笑う。
「まぁ長くおいでるとかんがなぁ」
おそらくそんなようなことを言われた。
ほろ酔いで布団に入り、虫の声が一層にぎやかになってきた深夜だった。
夜風にカーテンがふわりと舞う。
「遅くに申し訳ありません。あの時助けて頂いたイソガニでございます」
鈴蘭の水色の着物を着た美人が枕元で正座をしていた。
三十連勤から帰ってきた朝、ベッドで目覚めると世界が一変してしまっていた。街中にゾンビが練り歩いているのだ。信じられないが映画の撮影などではない。あいつらは襲いかかってくるし、死にものぐるいで私を捕まえて喰らおうとする。
死んでたまるか。
私は包丁を手に街を走り、近づいてくるゾンビは片っ端から切り倒していった。だけどゾンビの数はどんどん増し、もはや人間は私しかいないようだ。
負けるものか。
私は群がるゾンビどもを切り倒し、会社に行くのだから!
「――本日明け方に都心に現れた通り魔は先ほど警察により逮捕されました。容疑者はゾンビが現れたなどと意味不明な発言を繰り返しており、錯乱している状態とのことです。続いては全国のお天気情報です」
完
お題:私だけ
【私だけ】
幼い頃は良かった。
自分に自信があって、親や周りも期待してくれて、愛されていたから。
でも…いつからだろう。
自己肯定感が低くて「捨てられたくない」と行動するようになったのは。
いじめられて、何となくで生きて、知り合いの少ない高校を選んで。
そこそこの青春をして、高校を卒業して、就いた仕事は親から半ば強制された場所。
ああしたかった、こんな仕事をしてみたかった。
「自分の人生なんだから好きにしなさい」というのは建前で、やりたかったことは全て踏み潰され、結局親に敷かれたレールを進むことになった。
そんな感じで就いた仕事は長続きする訳もなく、すぐに心や身体を壊して休職と復職を繰り返した。
周りに迷惑掛けてばかりの自分に嫌気が差した。
だから何度も死にたいと呟いてはナイフを握る日々。
精神科で病名が付いてやっと一瞬だけ楽になれた。
だけど、家族や周りの目は簡単には変わらなくて。
似た病気の子たちと一緒に「こう考えたりする方がいいよ」とか先生たちに色々教わっても上手くいかないし、病院以外じゃ話しても理解されないことばかりでしんどくなった。
恋愛も勇気を出して一歩踏み出したが、あまり良い結果だったとは言えない。
仕事を辞めてから期待されなくなった。
愛されなくなったと感じた。
弟ばかり可愛がられ、期待され、愛され。
無視、とまではいかないが、私だけが別の世界線に居るような気分だった。
私は自分という存在を認められたかった。
精神病でも、恋愛対象が同性でも。
捨てられたくない。
そんな鎖がずっと巻き付いているから何かに依存するし、自分の優先順位を下げる。
友だちは用済みになれば捨てられるかもしれない。だから下手に出て「都合の良い奴」として振る舞い、彼らにとっての利用価値を示す。
恋人は少しでも自分を認めてくれた、愛してくれた人。だから最悪、「ATM」だと思われてても良いから側に居させて欲しい。
家族は最後の砦に近い。捨てられるのは死と同然。だから何とかして繋ぎ止めたい。
自分を削ってでもいいから、捨てられないようにと慎重に行動する。
疲れてもいい、自分が我慢して済むならそれが1番いいんだ。
捨てられることは、1番辛い。
…一体、何処で私の人生の歯車は狂ってしまったのだろう。
世界に私だけしか実在しないと信じる独我論者たちを一つの部屋に集めて実在について討論する大会が開催された。
言わば孤独の蠱毒。トーナメント方式で討論し最後に勝ち残った者こそが真の実在者であることを決める大会だ。
僕も自分こそが唯一の実在であると偽りの存在たちに認めさせる為に参加した。まずは一回戦の相手を完璧な論理で打ち負かしてやるとしよう。早速試合が始まる。
討論は何時間にも及び、我を忘れるほどの熱量でお互いが自らの実在を賭けて全力で論じ合った。これまで積み上げてきた思考体系の隅から隅まで。全てを吐き出し争った。
そして激論の末、僕らは二人揃って一回戦を敗退した。
「討論中に余りにも考えが一致してしまい親交が深まった結果、お互いがお互いの実在を認めてしまった迷試合」
唯我論大会レポート記事より抜粋
私だけ新しいクラス2日でいじめや悪口もされたしいわれたいじめや悪口をそれて学校休みがちになったこと