猫とモカチーノ

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「外国人」

小さい頃は、名前で呼ばれるよりも、そうやって呼ばれることの方が多かった。

金色のウェーブのかかった髪。
青みがかった瞳。

クラスのみんなは髪も瞳も真っ黒だから、私だけ浮いていた。

まるで、みにくいアヒルの子の逆バージョン。

「あの子は日本人じゃないから」
「お父さんとお母さんも外国人だよ」

みんなから向けられる好奇の目は、なんだか仲間はずれにされているみたいに見えて、居心地が悪かった。

小学校を卒業してからは、直接そういうことは言われなくなったけれど、やっぱり珍しいものを見る目を変わらず向けられた。

中学生は特に"周りと違う"ことに敏感だから、余計に目立っていたと思う。

髪を染めそうかとも思ったけれど、母に止められた。

「お姫様みたいに可愛いんだから」と言うけれど、私がなりたいのはお姫様じゃなくて、大多数みんなと同じであることなのに。

そんな学生時代を過ごしてきた私も、なんとか就職して、しばらくして恋人ができた。

同じ会社の同期の彼は、出会ったその日に「綺麗ですね」なんてナンパじみた言葉をかけてきて、最初こそ警戒していたものの、なんだかんだ気があって打ち解けた。

「こんな見た目だけど、いいの?みんなと違うんだよ」

付き合ってすぐのころ、そんなことを聞いた時があった。
彼は不思議そうに「何がダメなの?」と言った。

「その髪も瞳も、君だけの魅力だから、俺は好き」

そんな彼のまっすぐな言葉に涙が溢れた。
彼は、私だけ違うんじゃなくて、私だけの魅力として捉えてくれる人なんだ。

今もまだ少し、見た目を気にしてしまうことはあるけれど、その度に彼の言葉を思い出す。

みんなと違う、私だけの個性を大切にしてみてもいいかなと思った。


お題『私だけ』

7/18/2024, 11:42:29 PM