『眠りにつく前に』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「曄《よう》?眠れないの」
暗い部屋の窓際で外を見る親友に声をかける。
振り向いた彼女は、どこか夢から覚めたような呆けた顔をして、あぁうん、と気の抜けた返事をした。
「どうかした?」
「どうかしたはこっちの台詞なんだけど。眠れないの?」
親友の側へと歩み寄りながら、もう一度問いかける。
数回瞬きを繰り返し、眉を寄せて視線を逸らす。それは何かを隠していると言うよりも、どう説明していいものか迷っているように見えた。
「あいつは。まだ戻ってないの?」
あいつとは神様の事だ。
首を振る。数日前に険しい顔をした彼に、社に戻ると告げられてからそれきりだ。
「そっか。まだなんだ」
「悩み事?私には言えない事?」
「言えないというか、どう説明したらいいのか」
歯切れの悪い調子で、視線を彷徨わせる。何かを言いかけて口籠もる彼女を待っていれば、迷いを宿した目をしながらも。あのさ、と静かに口を開いた。
「あたしのママの実家の離れに、元々守り神だった化け物がいるんだ。夏の間と呪われた人が近くにいる時だけ起きて出てくる。時間を繰り返したり、呪われた人を攫う、そんな化け物。きっと覚えてない、だろうけど。夏休みに会った事がある」
それは元の体の時の記憶だ。だから迷っていたのか。
覚えいていないと首を振れば、だろうね、と返される。
「叔父さんから連絡があった。化け物が、クガネ様が起きたって。夏でもない。街に呪われた人なんていない…それなのに起きて、しかも離れから出たって」
「それは」
「気にしすぎ、なんだとは思う。でもあいつも戻ってこないし。落ち着かなくて」
作った笑みを浮かべ、外を見る。
街の灯りが夜を少しばかり明るくしてくれてはいるものの、それでも暗い事には変わらない。
その暗がりのどこかに、彼女の言うクガネ様がいるのだとしたら。縁を辿ってここまで来たとしたら。
「大丈夫だよ。私も曄も呪われてなんかいないし。呪われた、というか、呪の塊ならお社にあるけど厳重に封印されているし。だからここに、クガネ様は来ないよ」
言い聞かせるように、不安を取り除くように、強く言葉にする。
そっと親友の手を取る。随分と冷えた手を温めるようにして、両の手で握れば、彼女の笑みが少しだけ柔らかくなったのが分かった。
「そう、だね。やっぱり気にしすぎ、なんだよね」
「そうだよ。だからもう寝よう?」
握る手を軽く引いて促す。
ふっと短く息を吐いて親友は立ち上がり、握っていた手にもう片方の手を添えた。
「ありがと。少し落ち着いた」
「どう致しまして」
視線を合わせてお互いに笑い合う。片手を離し、残った方で手を繋いだ。
部屋に戻りながら、横目で彼女の様子を伺う。
落ち着いたとは言っていたものの、その表情は普段と違いどこかぼんやりとしていて。歩きながらもその目は窓の外に向けられていた。
「あのさ。提案があるんだけど」
足が止まる。
窓から視線を逸らしこちらを見る目は、声をかける前と違っていつもと変わらない。それに胸中でほっとしながら、繋いでいた手を軽く上げた。
「今日、一緒に寝てもいい?お布団持っていくから」
「別にいいけど…いや、それならそこの小上がりの和室で布団敷いて寝ようか」
「いいの?」
「いいよ」
手を離し、彼女は小上がりの下の収納を引いて、中の客人用の布団を取り出していく。それを和室に敷きながらもう一度、いいの、と尋ねれば、彼女はいいよ、と同じ答えを返して笑った。
「仕舞い込んだままよりは、こうやって使う方がいいからね。明日は晴れるみたいだし、そのまま天日干ししようか」
「そうだね。それにしても曄のお家は何というか、すごいね」
「ママもパパも心配性だから。この家も元々は家族で移るつもりで新しく建てたくらいだし。まあ、仕事の関係で一緒に住めなくなっちゃったけどね」
よれたシーツを手早く直しながら、親友はだからね、と続ける。
「黄櫨《こうろ》達が一緒に住む事になって、二人ともすごく喜んでたんだよ。さっさと仕事に切りをつけてお参りに行ってお礼をしなければ、って張り切って仕事してるくらいには」
「愛されているんだね、曄」
「そうだね。だからあまり心配かけさせたくないんだけどな」
直した布団に潜り込み、顔だけを出してこちらを見る。
同じように布団に潜ると、彼女は迷うように視線を彷徨わせてから、怖ず怖ずと片手を布団から出した。
「寝るまで、手を繋いでていい?気のせいだけど、一応念のため」
「いいよ。理由は聞かない方がいい?」
「大した理由じゃないんだ。気のせいだし」
手を出して、彼女の手と繋ぐ。
繋いだ手を見て、外を気にして。
目を閉じて一つ深呼吸をすると、気のせいだけど、と彼女は目を開け繰り返した。
「声が聞こえる。離れで聞いた、クガネ様が誰かを呼んでいる声。気のせいだけどね。こうして手を繋いでいれば、声は殆ど聞こえなくなるから」
繋いだ手を見る。
少しだけ強い力で繋がれて、まるで縋られているみたいに見えて苦しくなる。
「うん。それは気のせいだ。私には聞こえない。だから大丈夫、気のせいだよ」
親友の目を真っ直ぐに見て、言葉を紡ぐ。大丈夫だと繰り返す。
気休めにしかならない事しか出来ないのがとても歯痒かった。
「もう寝よう。朝になればきっと忘れるよ。大丈夫」
「ありがとう。そうだね、もう寝ないと」
「おやすみなさい、曄」
「おやすみ、黄櫨」
目を閉じる。手は繋いだまま、寄り添うように。
朝が来れば。暗がりがなくなりさえすれば。
大丈夫、と繰り返す。
どうか、と祈りに似た気持ちで、今はいない私の神様を思った。
20241103 『眠りにつく前に』
「眠りにつく前に」
※二次創作。天と陸
体調不良表現あり
「ありがとうございました!」
「ありがとう!」
「さんきゅーな!また会おうぜ」
眩いスポットライトを浴びながら息を整える。今日はTRIGGERの新曲ライブ。天は観客の歓声に目を細め、舞台裏に降り立った。
と同時に天の膝は力が抜けたようにゆっくりと膝に着く。先ほどまで目立たなかったはずの汗が一気に吹き出る。
まだ、待って……
必死に体に言い聞かせるも熱くなった体は、まるでマリオネットみたいに自由が効かなくなっていた。
「……天?」
「ふーっ……ふーっ……がっ、りゅっ……」
不思議に振り返った二人の顔は悲痛な叫びと共に歪んでゆく。
「熱い……熱か」
「はーっ……はーっ……ごめ、なさ」
「大丈夫。謝らないで。楽、俺は姉鷺さんに知らせてくる。天をお願い」
「ああ」
去っていく龍之介の背を最後に天の意識は楽の腕の中で途切れた――
意識が落ちる直前、陸の名を呼んでいた事を楽は聞き逃さなかった。
☆☆☆☆☆☆
「……ん」
どれほど時間が経っていただろうか。天は重い瞼をゆっくり開けた。
「あ!起きた」
「……え?」
ここはTRIGGERの楽屋。なのに本来ならばいるはずのない声が聞こえ天は思わず声を出した。そう。すぐ隣にはマスク姿の七瀬陸がいたのだ。
「八乙女さんに天にぃが倒れたって聞いて……。あ!八乙女さんたちに教えてあげなきゃ」
「待っ、て」
スマホを手に立ち上がろうとした陸の腕を天は無意識に掴んでいた。
普段なら誰かに見られる恐れ、熱がうつる恐れから陸に冷たい声を浴びせていただろう。
今は……今だけは……
不思議そうに、心配そうに己を見つめる陸を見上げた。
「い、かな、いで」
「……うん。どこにも行かないよ」
何故だが。幼い頃の陸と姿が重なって見えた。
その言葉に安堵したようにするりと掴んでいた手は離れてゆく。
「あのね。八乙女さんからラビチャ来てたよ。もう少し寝ててもいいって」
「そう……」
「眠れない?」
天は頭を縦に振った。まだ体は重く熱い。息も少ししずらい。なのに目を閉じても寝てはくれなかった。
「……陸。陸の、歌、聞きたい」
「いいよ。そうだなあ……。小さい頃、オレが天にぃに歌った歌にしようかな」
その歌のことは天もよく覚えている。陸が悪魔にさらわれるという夢を見、隣で寝ている陸を起こした。その時に陸が寝れなくなった天に歌を送ったのだ。いつもの恩返しとして――
「覚えてるよ……。あれ以来、時々、ボクが眠りにつく前に、歌って、くれた、よね」
「うん。天にぃに必要とされた事が嬉しかったからね」
その回数は片手で数えられるほどだけれど――
陸は息を吸い歌を紡いだ。心地よいメロディが、歌声が、天の耳に届き自然と目は閉ざされてゆく。
歌い終えて陸が天に目を向けると、規則正しい寝息を立て眠りに落ちていた。陸は立ち上がり天の額に触れる。
「ゆっくりおやすみ……天にぃ」
そう呟くと楽屋を後にした。
眠りにつく前に
最近は布団で日記をつけることを週間にしている
これは少し前に横浜に行った時に、どうしてもこの思い出を、この景色を忘れたくないと思ったからである
日記に書く内容を豊かにするために新しいことに挑戦する日々はおもしろい
「眠りにつく前に」
間違えてあらすじを後ろにくっつけてしまった!!!
:(_;´꒳`;):_
゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。
「よるだねー!ねんねのじかん!」
そういえばそうだった。
小さい子は寝る時間だ。
……というか、さっきまであの世にいたこと自体夢みたいだっていうのに、また夢を見るような時間が来たのか。
いや、よく考えたらあっちの世界に行ってから時間が全く進んでない。あの世は時間が進まないのだろうか……。
「ニンゲンしゃん、ねんねー!」
「そうだなー、寝る時間だな。」「ん!」
「ニンゲンしゃんもおちかれでちょ?じゃあねんねなの!」
小さなこどもは疲れたのか、自分にくっついて離れない。
……他にもくっつけそうなやつがいるっていうのに。
大きな瞳で見つめられると、なんかドキドキする。
「そいや、概念のひと?はどうするんだ?」
「ぼくは……何も決めていないから、一旦彼の作ってくれた空間に戻ろうと思う。」
「えー?おにーちゃん、かえっちゃうのー?!やー!」
「ボクといっちょにねんねしゅるのー!」
「……いいけど、どこで……?」
「ニンゲンしゃんのおふとん。」
「ちょっと難しいと思うよ、⬜︎⬜︎。今日はボクと一緒に……あ。」「んー?」「めちゃめちゃ不在着信が……。」
「ボクは今から仕事場に行ってくるよ……。」
「……それなら、ぼくも行くよ。」「なぜだい?」
「言い訳のダシに使ってくれたらいいと思って。」
「助かるよー多分。どうもありがとう!」
「……というわけで!ニンゲンくん!赤ちゃんを頼んだよ!」
「あかちゃんじゃないもん!」
……行ってらっしゃい。
「⬛︎⬛︎ちゃん、いっちゃったのー。」
「そうだね。今から一緒に寝ようか。」「んー!」
「ニンゲンしゃん!」「ん?」「だっこ!」「はいはい。」
そのまま小さな機械を寝室まで連れて行く。
子どもってあったかいな。
「お布団かけようなー。これで風邪ひかずに済むよ。」
「そういや、狭くないか?」「ん。」
早速もう眠そうだ。さすが小さい子どもなだけある。
「ニンゲンしゃん。」「?」「ありがと!」
嬉しそうに甘えてくる。……可愛い。
「いぱーいねんねだよ!」思わずふわふわの頭を撫でる。
「ニンゲンしゃん、おとーしゃんみたい!」
「あんたのお父さんほど、自分は立派じゃないよ。」
「んーん。りっぱ なの!」
「だって、やしゃしいもん。なでなでもだっこもちてくれるもん。」……立派の基準まで可愛いな。
……このくらいゆるく生きてもいいのかな、なんて寝る前の頭で考えた。
だったら、眠りにつく前に、何かこの子を安心させられるようなことを言えたら……。
「お兄ちゃん、今日も生きててえらいね。ゆっくり休んでね。」
自分が話しかけた時、既に小さな子どもは眠っていた。
こっそりと柔らかいほっぺたに触れて、自分も眠りについた。
To be continued...
「前回までのあらすじ」───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにした!そうしたらなんと!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚したうえ、アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかった!そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!
……ひとまずなんとか兄を落ち着かせたが、色々と大ダメージを喰らったよ!ボクの右腕は吹き飛んだし、ニンゲンくんにも怪我を負わせてしまった!きょうだいについても、「倫理」を忘れてしまうくらいのデータ削除に苦しめられていたことがわかった。
その時、ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。「機械だから」って気味悪がられたけれど、ボクがキミを……キミ達宇宙を大切に思っているのは本当だよ?
それからボクは弁護人として、裁判で兄と旧型管理士の命を守ることができた。だが、きょうだいが公認宇宙管理士の資格を再取得できるようになるまであと50年。その間の兄の居場所は宇宙管理機構にはない。だから、ニンゲンくんに、もう一度一緒に暮らそうと伝えた。そして、優しいキミに受け入れてもらえた。
小さな兄を迎えて、改めて日常を送ることになったボク達。しばらくのほほんと暮らしていたが、そんなある日、きょうだいが何やら気になることを言い出したよ?なんでも、父の声を聞いて目覚めたらしい。だが父は10,000年前には亡くなっているから名前を呼ぶはずなどない。一体何が起こっているんだ……?
もしかしたら専用の特殊空間に閉じ込めた構造色の髪の少年なら何かわかるかと思ったが、彼自身もかなり不思議なところがあるものだから真相は不明!
というわけで、ボクはどうにかこうにか兄が目を覚ました原因を知りに彼岸管理部へと「ご案内〜⭐︎」され、彼岸へと進む。
そしてついにボク達の父なる元公認宇宙管理士と再会できたんだ!
……やっぱり家族みんなが揃うと、すごく幸せだね。
そして、構造色の少年の名前と正体が分かったよ。なんと彼は、父が考えた「理想の宇宙管理士」の概念だった。概念を作った本人が亡くなったことと、ボク以外の生きた存在に知られていないことで、彼の性質が不安定だった原因も分かった。
ボクが概念を立派なものに書き換えることで、おそらく彼は長生きするだろうということだ。というわけで、ボクも立派に成長を続けるぞ!
─────────────────────────────
眠りにつく前に
神代の昔、命を賜った二神は大地と生命を生んだ。
そうして世界を造ったが、女神はある日火傷を負い死んでしまったそうだ。
神話というものは実に単純で、人間どものその時の価値観と、支配の為に創られる。
「君が眠りにつく前に、もしもの話をしようか」
幾星霜を越えたいつの時代か。
死は穢れではなくなり、隠れた魂は生あるものから見えず、そしてそれは救済であるとしたら。
もしも今の生命が死んでも、別の生命に生まれることが信じられているなら。
私達は木を挟んで話していた。
「だから、きっと私達はまた逢えるよ。
今は、安心して眠ってくれ。辛い世から隠れてくれ。」
眠りにつく前の最期の君は笑っていた。
私は涙が止まらないというのに。
「なら、私は人間を眠りに導くわ。貴男がいつか、別の生として彼らを呼び起こせるようになるまで。」
そして、それは神をも支配する。
死が二人を別つとも、何度だって巡り逢おう。
おとぎ話をしよう。きみが眠りにつく前に。
昔、あるところにお姫様がいたんだ。きれいな髪でかわいいお顔立ちのお姫様だよ。仕草もとても美しい。
うん? きみはもちろんかわいいよ。きみよりかわいいかは、どうだろうね?
話を戻すよ。お姫様は、ある王子様と婚約していたんだ。大人になったら結婚しましょう、という約束だよ。
けれど、その約束は果たされなかった。王子様が、お姫様とは別の女の子と結婚したい、と言い出したんだ。
そう、よく知っているね。おうちとおうちの約束だから、王子様のお父様である王様と、お姫様のお父様である公爵様がお話合いをしたんだ。お姫様は、公爵家のお姫様だったんだよ。
さいごには、王子様とお姫様は結婚しないことに決まった。王子様はお姫様より別の女の子が良かったし、お姫様だって他の女の子と結婚したいと言うような王子様は嫌だったのかもしれない。
お姫様はずっと人に囲まれていたけれど、王子様との婚約がなくなってからは、まわりに人がいなくなった。
お友だち? お友だちではなかったと思うよ。お姫様と近付くことで、お姫様のおうちや、王様たちからいいお話を聞きたかっただけだと思う。いいお話については、もう少し大きくなったらお話しよう。
お姫様はひとりぼっちだった。だから、のけ者にされていた騎士も近付くことができた。
のけ者の騎士もいるんだよ。仲間はずれだったんだ。
その頃の騎士は、お姫様が好きだったわけではないけれど、お姫様のことを、とても美しいと思っていた。お姫様のお家の力があれば、偉くなることができるとも考えた。
そんな理由で、お姫様に近付いた。
騎士は、お姫様と会う機会を得た。何度かお姫様と会ううちに、お姫様のことが好きになってしまった。
そうすると、騎士はお姫様に会えなくなってしまった。
お姫様が嫌がったわけでもないし、公爵様に断られたわけでもない。騎士は好きだと思ったから、お姫様のお家と縁付こうとしたことを恥じた。
しばらくお姫様と会わない日が続いた。けれど、ある日お姫様から呼び出された。騎士はその呼び出しを断れなかった。お姫様の立場が上だったからだ。
久しぶりに会ったお姫様は、とても美しかった。けれど、悲しそうな顔をしてみせた。そう、わかりやすく悲しいと、あえて表現していた。
騎士の話を聞いたお姫様は言った。
わたくしを使えばよろしいのよ。わたくしを好いてくださる方のためなら、わたくしの家の力を使うことを厭わないわ。
わたくしもあなたとともにいたいの。
お姫様は騎士と結婚し、ひとりの娘を産み、幸せに暮らしている。
今まで通り、同じ時間だけ眠っても、翌日に疲れが残るようになってきた。
俺も年を取った証拠かなあ、なんて呑気に構えていたけれど、折角の休日が昼寝で終わってしまうことも多くなってきて。
これでは不味い、と遅れて実感も伴ってきた。
体は休まるけれど、余暇も満喫しきれない。もやもやとした思いを抱えたまま休日を終えることを繰り返してきた数ヶ月。
元々運動不足を気にかけて、ストレッチやエクササイズの動画やゲームで健康面の対策もしてきたけれど、もうそれだけでは駄目なのだろうか。
――というか、そもそもの話。今の俺の睡眠時間って、疲労回復しきれないくらいに短かったりするのか、もしかして。
あれこれ考えた末、大前提の可能性に気が付いた。
試しに睡眠計測アプリを入れてみる。
そして驚いた。
げっ。俺、四時間も寝てない日があったの? 嘘だろう?
自分の実感とも、就寝と起床した時刻の差から計算した時間とも違う時間にアプリの性能を疑ったが、解析結果を読み解く内に納得する。
そうか。布団に横になった時刻から起きた時刻で計算してたけれど、アプリが感知した実際に寝入った時刻からだと短くなってしまうのか。
しかも割りと浅い眠りの日も多い感じ。こりゃあ、疲れも取れなくて当たり前だわな。
いやあ、アプリで分かるものか疑ってたけど、案外良い気づきになったな。
それからは多忙を理由にさぼりがちだった運動習慣を意識し直して、就寝時間も早められるように生活リズムの改善中。
お試しで始めたアプリも、計測する度に増えていくキャラクターたちが可愛くて。何だかんだでそのまま続けている。
一つだけ悔しいところがあるならば、きちんとアプリを起動して、計測開始状態にする前に寝落ちしてしまうのが多いことだろうか。
スタートをし忘れた場合にも、後から就寝時間などの手動記録で計測と解析は対応できる。
けれども、それだと報酬として登場するキャラクターたちが増えなくて、ゲームとしての攻略が進んでいかないのだ。
なかなかに手厳しいが、アプリの目的を考えたら当然だろう。仕方がない。
何となく始めたものだけど、折角ならばゲームとしても楽しみたい。
今日こそは、アプリを起動してから寝るとしよう。
新たな目標を決意して、横になる。
さて。今晩はどんなキャラクターがやって来るのか。
明日の朝が楽しみだ。
(2024/11/02 title:063 眠りにつく前に)
眠りにつく前に
願い事を唱えると
叶う確率が上がるんだって
貴方の願いが叶いますように
ねむりにつくまえに
30・60分のタイマーがついたぽよぽよのライトをつける。
温かみのあるオレンジ色のライトだ。
水を一杯飲み干す。
寝る準備を済ませて、好きな本や紙と筆記用具を持ち
ベッドに座る。
ライトの優しい光に照らして5〜10分好きな紙と向き合う。
ぺら、ぺらりと鳴る本やさりさり…と音を紡ぐペンが
夢の前の安らかな時間を作ってくれるように思う。
段々とライトが暗くなってくると字が読みづらくなるので、
寝やすいようにシーツを調整して潜る。
寝る前のお供にとある執事のいるアプリで瞑想をしたり
睡眠サポートをつけて、ほっ、と落ち着いていく…
すぅ…すぅ…とアプリ内の彼が寝息を立て始めたら段々と眠気が出てきて
ふわり、と意識が宙に浮いていく。
ライトも消えた頃、部屋はやさしい暗闇と寝息で包まれる。
最近ね、
眠りにつく前に
「3分で寝落ち」入眠音楽ってのを
聞いてるの
よく眠れるっちゃ眠れるんだけど
電源どうやって切るんだろう?
寝落ちしないように電源切ってから寝てるので
寝落ちはした事ないんだ
§眠りにつく前に
眠りにつく前に私はあの人のことを考える
今日も夢に出てくれないかな、明日も会えるかな話せるかな、
自分でも女々しいなとつくづく思う。
でもこんな時間も楽しくて好き。
もしかしたら相手も私のこと考えているかも!とかそんなはずも無いのにそんなこと考えたりしちゃって、
考えれば考えるほど寂しくなって連絡したくなるけど時間も時間
恋に落ちた私は眠りに落ちる___________
ふと、深夜に焼きたてのイングリッシュマフィンが食べたくなって、パジャマの袖を捲ってエプロンを身に着けキッチンに立つ。
ササッと捏ね上げたパン生地を少々厚めに延ばしてコップのフチを押し付けてから、グニグニと左右に捻って丸形に抜く。
コーングリッツは無い、ので白ごまを軽く敷いたバットの上に真ん丸の生地を優しく乗せていく。
惜しい、五個出来てしまった。
他より少しだけ小さく歪になった白いパン生地を、適当なお皿に白ごまを振ってから置いて。
まだほんのり温かいオーブンの中へ濡らした布巾と一緒に放り込んだ。
明日の朝はイングリッシュマフィンだ。
目玉焼きにはベーコンかウインナーか、どっちがいいかな。
なんて心弾ませながら、手と共に粉にまみれたまな板とボウルを濯ぐ。
テーマ「眠りにつく前に」
数日前の事、部屋の電気も消して布団に入って...、で眠りにつく前に何か思いついたから枕元のスマホにメモしてから寝たんだけど、朝見てみると「カニ」と書いてあった。
カニ?
食べ物としてのカニは別に好きではないので、恐らく生物としてのカニだと思うけど。
カニの何を思いついたのか、全くわからない。
という訳でここ数日、カニの生態が気になって仕方がない。
【眠りにつく前に】
眠りにつく前に思う。
明日は、今日よりもっといい日に
なったらいいなって。
題 眠りにつく前に
眠りにつく前に私はいつもそばにいる人形に話しかける。
へんかな?
へんだよね。
自分でも分かってる。
成人になってからも話しかけてしまう。
止められないクセみたいな、習慣みたいな。
でも、話すとスッキリするんだ。
だから、毎日あった嫌なことや良いことを話すの。
「ねえ、今日部長に凄く怒られたの。まぁ、怒られたのは私が悪かったから仕方ないんだけどさ、あんな言い方しなくてもいいと思わない?何度言っても出来ない落ちこぼれって、ひどいよね・・・」
部長の言葉が蘇ってきて、涙が浮かんでくる。
そんな私に人形のくーちゃんは優しい顔で大丈夫だよって言っているみたいに見える。
私の心の中が人形に投影されているんだろうか?
「ありがとう、くーちゃん、くーちゃんに話すと心が凄く穏やかになるよ。いつもくーちゃんに助けられてるね。大丈夫、明日から同じ間違いしないように頑張るよ、応援しててね」
くーちゃんの表情が晴れやかになったような気がした。
「くーちゃんが喜んでくれて、私も嬉しい。あ、でね、ほら、じゃーんっ」
といって、枕元に置いといた可愛いキラキラのゴムを見せる。
「くーちゃんに合うかなって思って買ってきたの。結んであげるね」
私はくーちゃんの髪の毛をくしで丁寧にすいてから話しかけながら髪を編んだ。
「凄く帰り道嫌な気持ちだったから、私のお気に入りのカフェで、ハチミツラテを飲んで、それから大好きな雑貨屋さんに行ったんだよ。私も可愛いシュシュ買ったんだ。それで少し浮上できたの」
そう言っている間に、くーちゃんの一つ三つ編みは完成した。
キラキラ光るゴムで結ぶ。
「出来た、可愛い〜♪」
出来上がりが上手く出来て惚れ惚れとくーちゃんを見つめる。
「それで、今くーちゃんとお話出来て完全復活したよ。いつもありがとう、くーちゃん」
くーちゃんは笑顔ではれやかな顔に見える。
「じゃあ、おやすみなさい」
私はそうくーちゃんに言って、頭をひと撫ですると、いつものように布団にくるまって目を閉じた。
ある小さな村に、青い鳥が住み着いていた。その鳥は一見、美しい羽を持ち、澄んだ青空を思わせる鮮やかな色合いで、見る者の心を奪った。しかし、この青い鳥には不思議な噂があった。誰かがその鳥を見つけて喜ぶと、必ずと言っていいほど何か不幸が訪れるというのだ。
ある日、村の若い娘、ミアがその青い鳥を見つけた。彼女はその美しさに魅了され、手に取ろうとしたが、鳥はひらりと舞い上がり、彼女の頭上を飛んで行った。その夜、ミアの家族に思わぬ災いが降りかかる。家の大黒柱が突然倒れ、父親が大怪我を負ったのだ。
村人たちはそれを聞き、ミアを心配したが、彼女は「偶然よ、鳥のせいじゃないわ」と笑って答えた。しかし、それからも彼女が青い鳥に会う度に、不幸は後を絶たなかった。畑が荒らされたり、川が氾濫したり、家畜が病気になったりと、次々と災いが降り注いだ。
そんなある日、ミアはついに鳥を捕まえようと決意する。村の平和のためにも、青い鳥の正体を突き止め、災いを終わらせたかったのだ。夜明け前、彼女は青い鳥がよくいる湖畔に向かった。そして、薄明かりの中で、静かに歌う青い鳥を見つけた。
ミアは息を呑み、そっと鳥に近づいた。鳥は逃げもせず、彼女を見つめ返した。その瞳には不思議な哀しみが宿っていた。「あなたは一体、なぜこんなに災いを招くの?」とミアが問いかけると、青い鳥はかすかに首を傾げ、か細い声で囁いた。
「私も、不幸が訪れるのを望んでいるわけではないのです。私が存在することで災いが起きるのは、この青い羽が“人々の心の影”を映し出しているからなのです。皆が私を不吉と見なすことで、その心の闇が形をなして災いとなって現れるのです。」
ミアは驚きと共に悟った。青い鳥は不幸を呼ぶ存在ではなく、ただ“人々の心”を映す鏡のような存在だったのだ。そして、この鳥の哀しみの中に人々の思いが映り込み、災いの影を作り出していたのだ。
「ならば、私たちが心を変えれば…あなたの悲しみも消えるの?」とミアが尋ねると、鳥は小さくうなずき、その青い瞳に一筋の涙が光った。
ミアは村に戻り、青い鳥が不幸を招く存在ではなく、私たちの心の影を映し出す鏡だと村人たちに伝えた。それ以来、村人たちは青い鳥を見る度に、自分の心を見つめ直すようになった。そして、不思議なことに、次第に青い鳥と共に災いが訪れることもなくなり、村は再び穏やかな日々を取り戻した。
青い鳥は今も湖畔に住み続け、村人たちに大切なことを教え続けている。美しい羽の青さに、彼らの心の影を映しながら。
眠りにつく前に
カーテンを開けて
夜におやすみを言う。
夜に、身を任せる
眠りにつく前に
「眠りにつく前に」
布団に入ってから
その日あった事の
ひとり反省会をよくやる
あの一言は余計だっただろうか
あの一言が足りなかっただろうか
あの人にこんな事を言われた
ちきしょうめ
でも大概は
眠りにつくと
翌朝はさっぱりリセットされていて
リセットされてない事だけが
大きな問題として靴の先に入った小石になる
誰かに話して
靴を脱いで小石を払うように
リセット出来る事もあるし
話した事が 別の小石になる事もある
自分で入れた小石なら
いっそ自分で払ってしまおう
明日の朝の私のために
バッサバッサ払い落として
枕元に綺麗な靴を揃えて眠ろう
『密漁』
火花が散る 海が紅潮して 夜を染め上げた 岩場で罪の匂いがしたんだ 火薬に優る罪の匂いが 梟が眠りこけて 夜深く 私は深爪を気にしてる
ヤバい!今、目が覚めた。
昼飯食ってから爆睡してしまった。
テーマはなんだ?
「眠りにつく前に」?
・・・そうか。
これからは眠りにつく前に
書き上げよう。OK
(眠りにつく前に)