眠りにつく前に
神代の昔、命を賜った二神は大地と生命を生んだ。
そうして世界を造ったが、女神はある日火傷を負い死んでしまったそうだ。
神話というものは実に単純で、人間どものその時の価値観と、支配の為に創られる。
「君が眠りにつく前に、もしもの話をしようか」
幾星霜を越えたいつの時代か。
死は穢れではなくなり、隠れた魂は生あるものから見えず、そしてそれは救済であるとしたら。
もしも今の生命が死んでも、別の生命に生まれることが信じられているなら。
私達は木を挟んで話していた。
「だから、きっと私達はまた逢えるよ。
今は、安心して眠ってくれ。辛い世から隠れてくれ。」
眠りにつく前の最期の君は笑っていた。
私は涙が止まらないというのに。
「なら、私は人間を眠りに導くわ。貴男がいつか、別の生として彼らを呼び起こせるようになるまで。」
そして、それは神をも支配する。
死が二人を別つとも、何度だって巡り逢おう。
11/3/2024, 10:04:21 AM