はなればなれ
昔、マイナーな同じゲームで何度も遊んだ仲間たちはみな、はなればなれになってしまった。
諸行無常。いつかはそんな日がくるのを分かっていた。
その世界に飽きた者。他の楽しみを見つけた者。
喧嘩別れになった者。人間関係に嫌気が差した者。
約束していただろう。まだ弱い自分らが敗北を繰り返し、そして最後の敵まで辿り着くと。
そのゲームでは最後の敵もプレイヤーだった。
一番強いとされたプレイヤーが最後の敵になるのだ。
自分だけが残り、何度も何度も戦った。
かつての仲間たちの面影を感じながら。
思い出を握りしめて、魔法を打っていたんだ。
何年待ったろう。やっと再会できたね。
また前と同じメンバーでパーティを組んでさ。
我らのいた世界も、ずいぶん有名になった。
今じゃ大人気のゲームだ。
一つ違うことは、自分が頂点にいること。
もう弱い自分ではない。そして、群れることもない。
旧友らが一番始めに俺に辿り着いた強者の一団か。
面白い。あの時と同じように、笑って戦ってくれ。
飛べない翼(あとで書く)
脳裏
「私とまた、付き合ってください」
優しい声が庭を包んだ。私の許嫁もとい同盟を結んだ王子が、悪女の姉に告げたのだ。
姉は悪女と呼ばれていた。メイドたちをいじめて、愛馬を虐待し、私を陥れ、王子にわがままを働いていた。
王子は堪忍袋の緒が切れ姉に婚約破棄をした。
同盟を結ぶために、代わりに私との婚約が決まった。
私は王子に長年恋煩いをしていた。
この気持ちは隠しておくはずだった。
だから、とても嬉しかったの。嬉しかったのよ。
姉様、あなたがある日、人格が変わったように善人にならなければ。
私には分からぬ、何かを思い出さなければ。
私が生まれたことで黒に染まったらしい姉はよく私に言っていた。
「あんたさえいなければ幸せだったのに。」
憎々しい顔が脳裏をよぎる。
姉様、良かったわね。私から全てを取り返せたわ。
悪行を挽回して、今じゃ王国一の善人なんでしょ?
あは、あはははは。こんなの酷い。私、悪くないじゃない。
「ハッピーエンドだったのよ。あなたさえいなければ」
きっと私、今脳裏に浮かぶ姉様と同じ顔をしているわ。
意味がないこと
淡い青の、果てしなく続く空間の中でただ呼吸を繰り返す。私が何なのかも分からぬままに。
時を追いかけていたら、何かが違う壊れた世界にいた。いや、ここではこれが正常なのか。
行く宛もなく彷徨えば、私を見つけた。
ただ無邪気に笑って、友達と歩いている。
そのあどけなさも、幸せそうな笑顔も憎らしい。
あの時壊せなかったなら、今消してしまえばいい。
自分の中で黒い感情だけが疼いている。
次の瞬間、カァカァと声を出して、そんな黒い気持ちを具現化したような色の鳥が飛んでいった。
茜色の空間に変わっていた。
ああ、馬鹿な考え事をしている内に1日が終わってしまう。
私に似た学生はもう下校しているようだ。
思っていたよりもずいぶんと早く大人になるよ。
そうして、時が過ぎて私の世界は、私の人生は壊れて逝くのだから。
そんな世界の中でただ息を吐く。意味がないことを繰り返す。
車視点のCM
あなたとわたし、どんな物語がありますか。