【伝えたい】
フローリングに横たわって、
雲の隙間の光を見る。
このネクタイも結局、
自分を空に押し上げることはない。
「面倒くさいなぁ」
呟いた言葉は冷たい空気に消えていく。
ふと思い出した。数年前、自分に書いた手紙。
追い詰められていた時期に書いたものだ。
棚を探ってそれを見つけ出した。
期待せずに開いた紙に水がぽたぽたこぼれ落ちた。
『命を絶とうとしてるんじゃないか。
ここまでよく頑張ったんだな。』
「なんだこれ」
乾いた笑いが漏れた。
記憶がよみがえる。
数年前、泣きながら机に向かっていたことを。
紙とペンを取り出した。
未来の自分に伝えたいことを書くために。
【花束】
一人、森の中を歩いていた。
空気が澄んでて、柔らかい光が差し込んで明るい。
目に優しい緑が私を出迎える。
木々の隙間から見える青と雲の白が美しい。
この森を選んだのは間違いだったかもしれない。
でも、ここは私の心を癒してくれる最後の場所。
ディアスシアとカモミールの花束を持って進む。
良い香りがする。私の恐怖を和らげるみたいに。
枝に手が届く木を見つけた。
私は震えた手で縄をかけた。
この世界の別れを声にしないまま、
私はその罠にかかる。
花束が地面に落ちて溢れた。
私はずっとそれを見ていた。
私への、最後の手向けを。
【スマイル】
あなたは誰?どんな人?
いつも笑顔で明るくて、
でも何を考えてるのか分からない。
心に闇があるのかないのか見えない。
その声に不満があるのかないのか聞き取れない。
あなたの紡ぐ言葉は優しいのに、
その言葉の花の下はトゲがある。
ある日、あなたはこう言った。
「どうせすぐに終わりが来る」
吐き捨てたような言葉だった。
丁寧な声音で、柔らかい笑顔だった。
その時の彼女だけは、
誰にも関心がないように見えた。
【木枯らし】
何本も矢の刺さったお姫様は、
焼けた靴を履いて鉄の上を踊っていた。
でも誰をそれを見ない。
みんな大切な人といて、笑い合っていた。
お姫様はニコニコ笑いながら踊っている。
木枯らしだけが彼女のパフォーマンスを笑っている。
みんなはどこかに去っていってしまった。
お姫様が疲れ果てて、
焼けた芝生の絨毯の上に倒れ込んだ。
「だれかそこにいる?」
震える手で手を伸ばしても、
誰も彼女の手を握らなかった。
そこには誰もいなかった。
【この世界は】
私の時間は常に「好き」に溢れている。
好きなもの、好きな景色、好きな人。
見るもの聞くもの全てがエモーショナルに富んでいて、まるで飽きない世界。
私の人間関係は特別に溢れている。
特別な人。大切にしたい人。よく絡む相手。
軽率に、それでも真剣に「愛してる」と言える。
自分を愛するより先に誰かを、何かを愛している。
そんな自分が憎い。
どれほどこの世界が煌めいていても、魅力的な人たちを囲んでいてもその全てが私を見ることがない。
勝手に好きになっているくせに、考えてしまう。
あーズルいな。無条件に愛されて羨ましいなって。
輝く瞳に何も映らない。私の世界に色がない。
愛に見返りを求めてしまえばそんなものだ。
「なんだ…こんなものか。」
なんて不均等で、不条理で
つまらないんだろう、この世界は。