【さらさら】
貴女と共にこの道を歩いている。
最初に出会ったこの庭園の道を。
あるパーティーの日、騎士である私も呼ばれ参加していた。酔いを冷ますためにこの庭園に出たのだ。
魔女の貴女は星を浮かべながら鼻唄を歌っていたな。
宮廷魔術師だと知らずに声を掛けなければ、この日は訪れなかっただろう。
私は貴女に惹かれてこの地位まで上り詰めた。
貴女と対等に語り合いたかったから。
貴女は私の手を握り笑う。
「今が人生で一番幸せな時間だわ。そして、この幸せがずっと続くのね。」
私も「あぁ、そうだよ」と返事をして笑った。
「私ね、魔法を学ぶ以外空っぽだった。私の日記は真っ白だった。でも、貴方と会ってから私の物語は動き出したの。さらさらと筆が動いたの」
「これから二人でずっと幸せな物語を紡いでいこう」
時間を告げる鐘が鳴った。
司祭たる友人が私たちを呼んだ。
「おい、式が始まるぞ。主役が遅れるなよ」
私たちは駆け出した。白い花びらが舞っていた。
5/28/2025, 8:15:01 PM