【届かないのに】
あなたの夢を見た。
隣にいる貴方に綺麗な一等星を指差した。
無愛想で笑わない貴方の微笑む顔を見た。
夢はそこで終わり目が覚めた。
私は暗くて冷たい独房の中にいて、鎖に繋がれていた。
私が犯してしまった罪を償うためのこの鎖。
空の無いこの空間にぽたぽたと雨が降っている。
私が降らしているのだと気付けなかった。
「行かないで」
貴方に最後に言った言葉だった。
貴方はそれを聞かなかった。
きっと今、私の事は忘れているんだろう。
大切な人、愛した貴方と一緒にいたかった。
何もない私はこの世界の宝を盗ろうとした。
『この世界には願いを叶える指輪がある。その指輪にキスをして願いを言うと__』
幼い頃に読んだ絵本では、女の子が指輪を手にして幸せになってた。どうして私はダメだったんだろう。
衰弱していく自分の体を抱きしめた。
貴方のためにしてたダイエットも成功したみたい。
「迎えにきてくれないかな」
狂ってしまったのかな。まだ夢を見てられるんだ。
どれだけ手を伸ばしても、もう光には届かないのに。
6/17/2025, 11:04:50 AM