【渡り鳥】
生命が本格的に眠りの準備を始めた頃。
貴方もまた遠くへ行ってしまうのだと聞いた。
彼らの一族は渡り鳥と呼ばれる放浪の民族だった。
その一族は皆、寒さに弱い体質で冬が来る前に暖かい地へ渡ると言う。
「いつか君に会いに行くよ」
「…うん」
秋は愛されにくい季節だ。春のような始まりも、夏のような懐かしさも、冬のような静けさもない。
私はそんな秋を愛していた。私にとって、貴方と会えたこの秋はどの季節より特別だった。
「私も…私も貴方と行きたかった。」
涙が止まらなかった。貴方は困った風に笑う。
「泣かないで。きっとまた会えるから」
貴方もどこか泣きそうだった。
私が…暑さに弱い民族じゃなければ。
あなたとどこまでも行けたのに。
寒さを感じたことがないはずなのに、旅立つ貴方を見送った私の心はずっと、ずっと寒かった。
5/29/2025, 12:48:18 PM