題 眠りにつく前に
眠りにつく前に私はいつもそばにいる人形に話しかける。
へんかな?
へんだよね。
自分でも分かってる。
成人になってからも話しかけてしまう。
止められないクセみたいな、習慣みたいな。
でも、話すとスッキリするんだ。
だから、毎日あった嫌なことや良いことを話すの。
「ねえ、今日部長に凄く怒られたの。まぁ、怒られたのは私が悪かったから仕方ないんだけどさ、あんな言い方しなくてもいいと思わない?何度言っても出来ない落ちこぼれって、ひどいよね・・・」
部長の言葉が蘇ってきて、涙が浮かんでくる。
そんな私に人形のくーちゃんは優しい顔で大丈夫だよって言っているみたいに見える。
私の心の中が人形に投影されているんだろうか?
「ありがとう、くーちゃん、くーちゃんに話すと心が凄く穏やかになるよ。いつもくーちゃんに助けられてるね。大丈夫、明日から同じ間違いしないように頑張るよ、応援しててね」
くーちゃんの表情が晴れやかになったような気がした。
「くーちゃんが喜んでくれて、私も嬉しい。あ、でね、ほら、じゃーんっ」
といって、枕元に置いといた可愛いキラキラのゴムを見せる。
「くーちゃんに合うかなって思って買ってきたの。結んであげるね」
私はくーちゃんの髪の毛をくしで丁寧にすいてから話しかけながら髪を編んだ。
「凄く帰り道嫌な気持ちだったから、私のお気に入りのカフェで、ハチミツラテを飲んで、それから大好きな雑貨屋さんに行ったんだよ。私も可愛いシュシュ買ったんだ。それで少し浮上できたの」
そう言っている間に、くーちゃんの一つ三つ編みは完成した。
キラキラ光るゴムで結ぶ。
「出来た、可愛い〜♪」
出来上がりが上手く出来て惚れ惚れとくーちゃんを見つめる。
「それで、今くーちゃんとお話出来て完全復活したよ。いつもありがとう、くーちゃん」
くーちゃんは笑顔ではれやかな顔に見える。
「じゃあ、おやすみなさい」
私はそうくーちゃんに言って、頭をひと撫ですると、いつものように布団にくるまって目を閉じた。
11/3/2024, 9:32:55 AM