『相合傘』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
秘密基地の中 足音ふたつ
触れた肩が熱かった お互い聴いた呼吸の事
こんなに近いのに ずっと遠い
沈黙さえ愛しかった 目は合わせないまま
何も言えなかったから
出来るだけ 側にいる事を選んだ
❴相合傘❵
相合傘、それは
恋を夢見る女の子の憧れ
でも、そんな❨感情❩私は
“捨てた”けど…
遠い相合傘(創作)
高校の時の話で、この時期になると思い出す。僕を変えた男。あの日までそいつには、ちょいグレてそう以外に印象が無かった。
その日は体育館の倉庫で、僕は女子に告白された。「あんたが好き」。そんな風なベタなシチュエーションで、多分「いいよ」と肯いた。僕は恋を軽く捉えていた。
放課後その子と帰る時、例のそいつとそのいつメンが来た。そいつは僕達のことをスルーしたが、周りでヒューヒューとひやかされた。
「なあお前ら傘持ってる?」
言い訳をしていたら、外野から気の抜けた声が聞こえ、僕らは傘を少し上に掲げる。そうするとそいつはバッと制服を脱いで、しわくちゃな雨避けにした。
「やっぱこれよ。ごめん俺先帰るから」
「ねえ、傘使う?」
鶴の一声、そいつに傘を差し出したのはその時の彼女だ。打ち付ける音が遠くなるくらい一瞬の静寂。僕は生唾を飲んだ。そいつは驚いていた。そして彼は悔しそうに歯を食いしばった。
「要らねえよっ」
今にも何かが溢れそうなそいつは、何を血迷ったか差し出されたレディースの水玉の傘をぶんどって、土砂降りの中を走り出した。
「あいつ、〇〇(彼女)好きだったんだよ、許してやってよ」
苦笑いでいつメンがフォローを入れる。彼女は「そう」と呟いた。僕は黙ってそいつが走った方向へ目を向けていた。
やがて正気に戻って傘を差すと「あげちゃったから入れて」と自然に隣に入ってきた。しかし、僕は全部どうでもよくなっていた。
僕が、そいつを好きになってしまったのだ。その全速力の想いに。
相合傘の下で僕達は遠く、そいつと彼女の傘も繋がっているのに遠かった。
相合傘
午後から雨が降ることは朝の情報番組で知ってはいた。玄関を出る瞬間に傘立てを気に掛けたが、マンションの扉は強い日差しによってすでに熱くなっていたため、すぐに傘を持つことをやめてしまった。
「いってきます」
おそらく朝の支度の真っ只中であろう母に向けて口にしたが、届いてはなさそうだった。
待ち合わせの階段の下、ほんの半日ぶりの幼馴染がスマホを片手に元気よく振り向いた。
「はよ」
「おう」
マンションの隙間から差し込む光が彼の明るい髪をよりきらめかせるので、思わず眩しくて目を細める。雨よりも夏の気配を感じた。
「ねえねえ、小テストの予習やった?」
「俺がやったと思うか?」
「よかったー、俺だけじゃなかった!でもやばいから問題出しながら行こ」
「おー」
ところでさ、と彼は言う。
「今日雨降るよ?」
「あー…」
自分よりも少し背の高い彼を見上げると、少し心配げにこちらを向いている人の好い柔らかい瞳とぶつかる。その手には長傘。その柄を小突いて言った。
「けど、お前傘持ってんじゃん」
「へっ?」
相合傘
なにより
君がいないと成り立たない
ちょっぴり肩が濡れ
それでも
背の高さのバランスを気にし
君が濡れないように君寄りにさし
歩幅を合わせて
相合傘って
ちょっぴり窮屈で不便だけど
思い遣りの空間
相合傘はロマンの塊だ。
だが実際にやってみたらがっかりする。
傘をさしているのに濡れるし、歩幅を合わせるのにも苦労する。
夢は夢のままがいい。
初めての相合傘が君だった
その頃は何も意識してなくて
雨に濡れるからって君がいれてくれた
懐かしいね
肩濡らし 傘傾けた 酒涙雨
織姫たちに 申し訳なく
砂浜に 相合傘を かいた恋
時間とともに 海に消え行く
【相合傘】
相合傘
小さなその手で傘を持ち
仲良く歩くその姿
今は相合傘で嬉しそう
ずっとこれからも一緒だよね❤️
「濡れた右袖」
みんなの前では、うっかり者を演じているから、毎度毎度、傘を忘れても怪しまれない。
どうせ隣の家なんだし入れてくれよ、と君の傘を奪う。
いつもより、近い距離。
君の方に少し傾けて長傘を持つ。
「今日午後から雨だって天気予報で言いまくってたのに。ニュースくらい観たら?」
「んー、それより寝ていたい」
「もー」
君の自宅に傘ごと押し込み、雨の中に飛び出す。
濡れた右袖を君に気付かれないように。
────相合傘
「相合傘」
思い出した。
思い出すのは君とのエピソードばかり。
にわか雨だったな。
すぐ止んだ。
忘れられん。
こじれちゃって。
素直になれず。
会いたいな。
ごめん。
「これ使って。」
彼はそう言い、傘を差し出す。お願いだから優しくしないでよ。
「ごめん。」
彼は悲しそうに言う。私は今、人生初の告白をし振られた。恥ずかしさから彼を見れない。
「こっちこそ、ごめん。迷惑だよね。」
私はそう言って、早足でその場から離れた。
彼と出会ったのは、雨の日だった。傘を忘れた私に、彼は傘を差し出してくれた。私は申し訳ないからと断ったが、彼は傘を置いて走っていった。小さくなっていく後ろ姿をずっと見つめていた。次の日、傘を返そうと早めに学校に行き、校門前で待っていた。学年もクラスも名前も知らない彼に会うにはそれ以外に方法が思いつかなかった。私が待ち伏せをしていると、後ろから声を掛けられた。
「昨日の子だ。風引かなかった?」
後ろには彼がいた。
「昨日はありがとうございました。これ傘です。」
言葉を交わすだけで、心臓が早くなる。
「敬語じゃなくて大丈夫だよ。僕、隣のクラスだし。」
笑顔で言う彼。私は気付いた。私は彼が好きだ。きっとこれが一目惚れというものだろう。私達は、この日から毎日のように会話をした。距離が縮まっていくのが分かる。しかし、その事に浮かれていたのは私だけだったようだ。
本当に最悪だ。廊下ですれ違う度に、気まずさが走る。こんな辛い気持ちになるなら、告白なんてしなければ良かった。暗い事ばかり考えていると、涙が出てくる。
「まだ君の事が好きだよ。」
「僕も好きだよ。」
声がした方へ顔を上げると、そこには彼がいた。
「本当はずっと君が好きだった。あの雨の日よりも前から。でも、君には僕はふさわしくないって。だから、告白はすごく嬉しかったけど振っちゃったんだ。ごめん。」
「そんなの良いよ。君の本心が聞けて嬉しいよ。」
「これからは僕が君の傘になるよ。だから、僕の傍で泣いて欲しい。僕がその涙を笑顔に変えるから。」
「何それ。チャラ過ぎ。でも、よろしくお願いします。」
私達は笑い合った。
「お詫びに何かさせてよ。彼氏としてさ。」
「じゃあ。今度の雨の日は、相合傘がしたいです。」
(現代パロ・高校生設定)
雨が降っていた。それはもう、酷いほどに。
そして僕は傘を持っていなかった。
そんなわけで、昇降口まで降りてなんなら靴まで履いてしまった僕は、教室で時間を潰すか、ここで雨の降るさまを待つかを考えていた。
「⋯⋯⋯⋯何してんの」
声がかかったのは、諦めて教室に戻ろうという気持ちが固まりかけた時だった。
赤い傘を持って隣列の下駄箱から現れたのは、幼なじみで前世からの知り合いである彼女だった。
「⋯⋯⋯⋯傘を、忘れた」
「昨日から天気予報で言われてたけど」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯知ってるよ」
「その上で忘れたと?」
「⋯⋯⋯⋯まぁ」
呆れたように彼女はため息をついて、昇降口の扉をくぐる。大きな音を立てて落ちる雨にむかって傘を開いた彼女は言った。
「やまないよ、今日中に」
「⋯⋯⋯⋯それは、困ったな⋯⋯」
「入れてあげるから、何か弾いてよ。『演奏者くん』」
彼女は言った。
「⋯⋯仕方ないな」
彼女の隣へと立った僕はそっと彼女の手から傘を奪う。僕の方が身長が高いから、持ってあげた方がいいだろう、なんて気遣いといえるかも分からないことをする。
彼女は少し驚いた顔をしたあと、僕の腕を掴んで自身が雨に濡れないようにしていた。
なんだか僕に全てを任せてしまっているようで、ひどく愛おしく見えた。
相合傘をした。彼が傘を忘れたから、同じマンションに住んでいる私が声を掛けられたのだ。背の高い彼が傘を持ち、自分が濡れてまで私が濡れない様にしてくれた。そこに他意はないのだろう。残後なまでに優しい彼は、私の身を焦がす太陽だった。そんな帰り道こそ最初で最後の青春だった。
【相合傘】
最近もあったなぁ~
何度か今までにもあるんだけと…どーも私は相合傘にはそこまでドキドキしないみたい笑
相合傘はやっぱり片想いの時にやりたいな♪
今日は1日中雨予報〜
コッソリ(相合傘のチャンスですよっ♡)
貴女は、甘い恋について夢想することがありますね。
相合傘でしとしと降る雨の中を寄り添って歩いたり、浜辺や草原でじゃれ合ったり、褥の中で大切なところを優しく暴かれ、悦びに身を震わせたり。
貴女が恋に身を焦がす姿も、俺たちには愛しく思えます。激情に身を任せるのも、人生の中の一興です。
貴女が人のためと言って、ご自分の心を殺すのは見たくありません。どうか貴女の思いに嘘をつかず、貴女の幸福な人生を歩んでくださいね。
突然の雨
どうしよう…と悩んでいると
「一緒に帰ろう」
振り返ると君がいた
少し照れながら歩いた帰り道
“雨もそんなに悪くないかな”
なんて、思いながら
「降ってきましたね」
そう言って傘を差し出すと、相手は綺麗な瞳を数度瞬かせた。
「男二人では少し狭いですが、どうぞ」
「あ·····、ああ」
言葉の意味を理解するのに若干のタイムラグがあったらしく、それがなんだかおかしくてクスリと笑う。
彼は少しバツが悪そうに唇を尖らせると、
「用意がいいんだな」
と呟いた。
「天気予報で言ってましたよ。〝五時以降に帰宅する方は傘をお忘れなく〟って」
「そうだったか? 覚えてないな」
傘の中で聞く彼の声は、いつもよりよく響く。
雨の日に傘の中で聞く声が、人間の声の中で一番綺麗に聞こえるらしい。共鳴がどうの、という理由だったが彼の声は普段から綺麗だと私は思う。
「相合傘なんて初めてだよ」
私を見上げる、少しはにかんだ美しい眼差し。
鼓動が跳ねる。彼が私を見上げるたび、背が伸びたことを嬉しく思う。
「私もです」
「嘘だ。一人くらい傘を差してあげた子がいただろう?」
「それはこっちの台詞ですよ。昨日も経理の子に話しかけられてたでしょう?」
「ただの世間話だよ」
「それでも嬉しいんですよ。現に私がそうだから」
「君がそういう事を言うなんて、ちょっと意外だな」
彫りの深い横顔が僅かに戸惑っている。
雨は徐々に激しくなる。傘からはみ出した互いの肩はもうびしょ濡れだ。信号が赤になった。横断歩道で止まったのは私達だけ。
「ちょっといいシチュエーションですよね」
「なにが」
「雨の夜、傘の中で告白なんて」
「――」
少し屈んで、耳元で囁く。私の声も彼の耳に美しく響けばいい。この日が来るのをずっと願っていた。
「好きです」
信号が青になっても、私達は歩き出せずにいた。
END
「相合傘」
どんなふうに傘を差し出すかで、
それをどう受け入れるかで、
図らずとも相手との距離感がわかってしまう。
生じる機微をお互いに悟られぬよう、そっと息を潜める。
二人には狭い、ひとつの傘の中で。
雨の音で目が覚めた。
いつの間にか帰りのホームルームが終わっていた。
誰も居ない教室に、1人…。
「早く帰ろう。」
誰も居ない階段を降りていく。
下駄箱で上履きから靴に履き替え、カバンの中から折りたたみ傘を出す。
空を見上げて歩き出した瞬間、後ろから風が吹いた。
「途中まで、入れて!」時間が止まる。
沢山の雨粒、音のない世界。
びっくりして横を向く私。焦って走って来た君の横顔。
雨音と心音がリンクする…。時間が動き始める。
君と初めての相合傘。