ショウタ

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相合傘

 午後から雨が降ることは朝の情報番組で知ってはいた。玄関を出る瞬間に傘立てを気に掛けたが、マンションの扉は強い日差しによってすでに熱くなっていたため、すぐに傘を持つことをやめてしまった。
「いってきます」
おそらく朝の支度の真っ只中であろう母に向けて口にしたが、届いてはなさそうだった。

 待ち合わせの階段の下、ほんの半日ぶりの幼馴染がスマホを片手に元気よく振り向いた。
「はよ」
「おう」
マンションの隙間から差し込む光が彼の明るい髪をよりきらめかせるので、思わず眩しくて目を細める。雨よりも夏の気配を感じた。
「ねえねえ、小テストの予習やった?」
「俺がやったと思うか?」
「よかったー、俺だけじゃなかった!でもやばいから問題出しながら行こ」
「おー」
ところでさ、と彼は言う。
「今日雨降るよ?」
「あー…」
自分よりも少し背の高い彼を見上げると、少し心配げにこちらを向いている人の好い柔らかい瞳とぶつかる。その手には長傘。その柄を小突いて言った。

「けど、お前傘持ってんじゃん」

「へっ?」





6/19/2024, 4:02:05 PM