『無色の世界』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
〈無色の世界〉
締め切りまであと三日だった。
画面に広がるのは、白いキャンバスと、その上に打ち捨てられたように並ぶ色見本の残骸だ。マカロンピンク、オールドローズ、テラコッタ──どれを並べても、何かが違う。
正確に言えば、何が違うのかさえわからない。グラフィックデザイナーとして十年近く働いてきて、こんなふうに色の前で立ち竦むのは初めてのことだった。
気分を変えようと、午後から電車に乗った。
都心の駅を出た瞬間、視界が揺れた。広告の赤、タクシーの黄、ショーウィンドウに貼られたポップの緑。信号の青が点滅し、横断歩道を渡る傘の群れが、また別の色の層を重ねてくる。目が情報を処理しきれなくて、耳の奥がじんと鳴った。
喫茶店に逃げ込み、コーヒーをひとくち飲んでから、ふと大学時代の講師のことを思い出した。
白髪まじりの、物静かな人だった。彼は一度だけ、こんなことを言った。
「無色の世界に、少しずつ淡く色をつけていく。大体の色の世界がまとまってきたら、次第に濃くしていく」
頭ではわかっている。いつだってそうやってきた。なのに今回は、最初の一色が決まらない。淡くする以前の、起点そのものが霧の中にある。
****
その夜、眠れないまま明け方を迎えた。
四時を過ぎた頃、喉が渇いてベッドを出る。台所の窓から外を見ると、世界が消えていた。
靄だった。
向かいのマンションも、街路樹も、遠くの高層ビルも、すべてが白に溶けている。色という色が剥ぎ取られて、輪郭だけがぼんやりと浮かぶ。電柱が、フェンスが、駐車場の車が、それぞれの形だけを残して靄の中に沈んでいた。
コーヒーを淹れる気にもなれず、椅子を持ってきて窓の前に座った。
五時になると、空の端がわずかに変わり始める。白の中に、ごく薄い黄みが滲んだのだ。ほとんど気づかないくらいの、淡い変化だった。
それから少しずつ、世界は色を取り戻していく。
電柱の茶色が、じわりと浮いてくる。続いてフェンスのさび色、街路樹の暗い緑。どれも最初は信じられないほど淡く、朝の光が角度を変えるたびに、少しずつ重みを増していった。
喫茶店の看板の赤が見え始めたのは、六時を過ぎた頃だ。あの都心で受けた衝撃とはまるで違う、静かで、必然のある赤だった。
世界は最初から、ずっと無色だったわけではない。
靄が、いちど無色に戻したのだ。そしてそこから、光が順番を知っていて、色を渡してくる。
起点は、自分で決めるものではないのかもしれない。どの色から始めるかではなく、何を削ぎ落としたときに残るか。
講師はそれを言おうとしていたのだろうか。あの静かな声で告げた言葉の、もっと手前にあるものを。
窓の外はもう、やわらかな朝の色に満ちていた。
椅子から立ち上がり、パソコンを開いた。キャンバスをまっさらにして、一番淡いグレーをひとつ、置いた。
無色の世界
色を失ってしまった。
鮮やかな街並み
緑豊かな木々
青く輝く湖
父が残した大切なアトリエ
大好きな幼馴染や友人たち
真っ白な世界はとても冷たく悲しい世界だった。
この世に色がある限り、本当の無色の世界というものは存在できないのではないだろうか。
水は透明だが、透明故に周りの色を映してしまう。
海がその良い例だ。海の青は空の青を映しているのだから。
完全に色を遮断した状態で水の中に入る……
私の頭ではそれくらいしか思いつけないが実現は絶対無理だ。
きっと天才的なヒラメキや頭脳を持った人がもしかしたらあっと驚くようなすごいアイデアを出して実現させてくれるだろう。
その時を楽しみにするとしようか。
無色の世界
彩りがない世界
明るさがない世界
感情がない世界
それくらいの方がきっと息やすい
無色の世界
想像出来ないけど?~
どんな 世界かな~
落ち着いた 静かな世界かな~
わからない
暖かい 花や 草木 まぶしい
楽しんで おしゃべりしたり 楽しいな
マンガという、あの『無色の世界』に私たちは、ちゃんと、様々な色を見ている。
例えば、登場人物の顔が赤くなったとか、青くなったとかを、その線描だけで表現し、読み手に伝えてしまうのって、本当にすごいことだよなぁ……と。
昨今はフルカラーのマンガも、すごい勢いで増えているけれど。
将来的に、線描だけのマンガが、なくなってしまわないことを、願いつつ……。
あー、そうそう。
この、文字だけで表現された世界だって、いわば『無色の世界』、だからね?
我々がそこに文字を並べることで、世界は顕現し、またそれは、文字によって美しく彩られていく。
つまり我々は、文字を絵の具に、このキャンバスを埋めているのだ──。
なーんて、ね?
『無色の世界』
「色のない世界、というのは?」
報告書を読んでいる部下が、急にそんな声をあげた。いや、急というより、そこの部分を最初は読み飛ばしていたが、どうにもそれだと流れが読みづらかったから聞いたのだろう。
無理もないことである。こっち側の人間にとっては当たり前のことだから、わざわざ説明していないだけで新人にとっては明らか異常な出来事であるからだ。
「"色奪い"ってやつが引き起こす、一種の領域だよ。文字通り、色が抜け落ちた空間。ま、一定時間で収まるんだけどね。奴らの食事のようなものだし」
「……なんか、地味じゃありません?」
部下はそう言って、眉を下げて口に弧を描く。地味、普通の人間にとってはそうなのか。
ふと席を立って、棚に手を伸ばす。手にするのはR5の欄、つまり今から三年前の記録だ。題目は『ある画家の失敗』。薄い資料から察する通り、小規模事件、の類いである。
「……これも、色奪いが引き起こした事件だ。読んでみなさい」
そう言って、部下に資料を手渡す。困惑している様子で、そして小声で「気に触ってしまったかな」と口にしながら、彼は資料を捲った。
「なんですかこれ!? 色がぐっちゃぐちゃ……」
そんな素っ頓狂な声をあげる部下に、私は微笑む。
「知ってるかい? モノクロの中だと、青が一際暗い色に見えて、黄色は逆に明るい色に見えるらしい。絵を書いてる途中で、色奪いの食事が始まってしまったから、そんな独創的な色の絵が産まれてしまったのさ」
「特定の状況が噛み合った瞬間に、人の仕事を台無しにする怪異かぁ……。そりゃ、嫌われますよね。うん」
部下は、苦笑いを浮かべて資料を閉じる。まぁ、その件の絵は逆にその色使いが話題となって、オークションで高い値が着いたらしいが、それは黙っておこう。
『無色の世界』
色のない世界とは、どういう世界だろうか。
白黒の世界? それとも、見えない世界?
違う。
無色の世界とは、この世で一番美しい“水晶の世界”だ。
○○○
透明なクリスタルが太陽の光を受けて、煌めく。
そこに色鮮やかさはない。
ただ、ただ、美しい。
「アレ、また君は針水晶原っぱを眺めているの? 好きだねぇ」
振り返った先には、美しい人が居た。
透明なクリスタルの人形。水晶人。
「だって、こんなに綺麗なんですよ。見ないと勿体無いじゃないですか」
「うーん。普通の原っぱだと思うんだけど、やっぱり異世界人は変わってるねぇ」
異世界人。
そう、異世界から来た人、という意味だ。
数日前、僕はこの世界にいきなりやってきた。
仕事の帰りにマンホールに落ちたと思ったら、急にこの世界に居たのだ。
だが、元の世界に未練はない。
——ここは、本当に美しい世界だからだ。
終わり
無色の世界
感情が死んでると世界が灰色に見えるというのを聞いたことがあるようなないような。
漫画なんかで衝撃的なことがあったらキャラクターから色がなくなるという表現があるな。ああいう感じかな。
最近なんか暇なんだよな。やらなきゃいけないことはいくらでもあるんだけど。
それで新しいソシャゲを始めようかと思ってる。ドラクエの新作。
最初はあまり興味なかったんだけどいろいろ調べてるうちに面白そうでやりたくなった。だから久しぶりに新しいソシャゲをやることにした。
正直ソシャゲなんて時間の無駄なんだけどな。でも暇だからしょうがない。人生には息抜きが必要だ。
リリースは明後日でこれが自分でもびっくりするくらい楽しみ。はやく火曜日になってほしい。
情熱的な赤やクールな青、優しい緑、色にはそれぞれのイメージがついている。面接の時も、何色が好きかでその人の考え方を推し量ることがあるという
色というのはそれだけに重要な刺激を与えてくれる必要不可欠なものらしい
自分は灰色が好きなのだが、灰色は落ち着いていて、上品なイメージ、知的でクールなイメージ、柔軟でバランス感覚がありミステリアスで控えめなイメージがあるらしい
どれも自分とはかけ離れたイメージだ
自分は灰色が似合う人間ではなかったようだけど、いつかは灰色が似合う人間になりたいので、今日からクレバーな大人を演じてとりあえず自炊できるように頑張りたいと思う
色のない世界ではできない目標の立て方ができるこの世界は、想像力が自分が思っている以上に大切なのかもしれない
「無色の世界」
【世界線管理局 収蔵品
『一定時間無色界体験ビーム』】
「むしょく」ではなく、「むしき」と読む。
無色界は仏語で三界のひとつ。
人間の三大欲求など、本能的な欲求に強く囚われている「欲界」の、
その上に食欲や淫欲から離脱した「色界」があり、
「無色界」は、色界でも残っていた色欲、美しさへの執着からも離脱して、
物質的な欲望から完全に開放された、すなわち三大欲求も精神的執着も無い、精神だけの世界。
本収蔵品はこの「無色」状態を、被弾対象に一時的に発生させる。
すなわち食らった者は虚無る。
<<食らった者は虚無る>>
――――――
「ここ」ではないどこか、別の世界にある世界線管理局の、原っぱでドラゴンが虚無っています。
瞳に輝きは無く、うつ伏せに溶けて、ぐでん。
背中の上下でギリギリ呼吸が確認できる程度です。
「部長、大丈夫ですか、ルリビタキ部長?」
ドラゴンの名前を、部下の男が呼んでいます。
とっても心配そうです。 そりゃそうです。
自分の上司のドラゴンが、目を曇らせて、無気力もとい無色状態で、
本当に文字どおりに真っ白けっけになりそうな雰囲気で、ぐでーん、しておるのです。
『仕事か』
曇った目で、ドラゴン、聞きました。
一応、コミュニケーション能力は、まだ最低限として残っている様子でした。
『俺は今、何の欲も無い。俺は今、すべてに満ち足りている。放っといてくれ』
いやいや「満ち足りてる」って。
「満ち足りてる」ひとは、そんなカラーレスな無表情しませんよ部長。
部下はポンポン、ゆさゆさ、ドラゴンの首をぺちぺちピタピタ。いろいろ為してみます。
それでもドラゴンは動きません。
ただただ虚無って、呼吸だけしている様子です。
どうしてこうなったのでしょう?
「部長、本当に、一体全体何がどうして」
『どうもこうもない。俺は今、完全に欲が存在しない。食うことも、寝ることも、必要ない』
「まぁそりゃ部長は水と光さえあればだいたい生きていけるドラゴンですから
じゃなくて、 部長、ヘンな物でも食べました?」
失礼します。
虚無っている上司の口内に、何か毒物の痕跡でも残ってやしないかと、おくちをグギギ。
手動で持ち上げて、ライトで照らします。
ぎゃお、ああおう。
虚無っている上司は相変わらず、ぐでーん、カラーレスな世界を漂っておる様子。
ちっとも、そっとも、嫌がりません。
ところで
カラーレス虚無ぐでんドラゴン上司の
つるつるプニプニドラゴンおなかの近くで
誰か、見覚えのある、管理局の外の野郎が、
もうちょっとで下敷きになるかならないかの絶妙セーフラインのあたりで苦しそうにしています。
「ん?」
部下は野郎を知っていました。
「あーあー、無事か、出てこれるか」
野郎は、世界線管理局をドチャクソ敵視している組織、世界多様性機構から来た工作員でした。
きっと、この工作員は、ドラゴンに何かチートアイテムか魔法道具あたりでちょっかい出して、
因果応報、自分の行動の結果として、ドラゴンの虚無に巻き込まれたのでしょう。
「ぐ……ぐるじい」
「ほら。出てこれるか。手を出せ引っ張ってやる」
「か、管理局の、情けなんざ、 うぐぐぐ」
「はいはい、言い訳なら聴取室で聞いてやるから」
物質的な欲も、精神的な苦しみも無く、ただ虚無って無色な世界を漂流中のドラゴン上司の下で、
精神的にも、物理的にもバチクソ苦しんでおる機構職員が、脱出しようと一生懸命抵抗しています。
諸行無常、色即是空。
ドラゴンの部下はちょっとだけ、ドラゴンのおなかの下敷きにされた野郎をあわれみましたが、
仕事は仕事なので、野郎を事務的に拘束しました。
カラーレス無欲虚無ドラゴンはそれから数分後、
やっと、無色の世界から帰還したそうな。
無色の世界
感情には何かしら色があると思う
とするなら、
とても純粋で透き通っていて
一見魅力的かもしれないけど、
感情なく、ただ生きるだけ
とするなら恐ろしさを感じる
せっかくなら
素敵な色ばかりではないけど、
結果好きな色に辿り着くような
色のある世界に生きていたい
無色の世界
自分が何かわからない
なんでここにいるのか
いつからここにいるのか
分からない
分かってしまったら
全てが無くなってしまう気がする
私は何?
知りたい
だけど知りたくない
No.63
色どりが ないことは
つまらないと 思ってた
いまは 違う
無色の世界の
色どりを 知ったから
無色の世界が
どんなに 豊かなのかを 知ったから
無色の世界
変換したら、 無職 になった。
最近はこっちのほうが使ってるのね。
現実は厳しいね。
「無色の世界」
色と温度と衝撃を求める私には
その世界は居心地が悪い
けれど時間を重ねると
不思議な感覚になってくるのが分かる
自分の芯にある、奥深いところから湧き上がる何かである
色はないと殺風景だ
がっかりもするだろうし
悲しく、寂しくもなるだろうし
面白くないと思う
だがしかしである
私は環境に順応して
そこに勝手に感情を高ぶらせていくのだ
″そうだ、無色なら私が色をつけてしまえばいい″
思った途端に、一気に世界は華やかになる
無色が透明に波打って、輝き出すのだ
最高に美しくね
ここから先が物語始まるとお思いでしょう
でも、私の話はここで終わるのだ
短編作品という形で
火種だけつけて終わるのだ
色づかせておいて
ワクワクさせておいて
″終わるのだ″
それが私の思っている
『無色の世界』
「無色の世界」
この世界には色が溢れている。無色だと思っていても、白があったり灰色があったり。色は、人間の気持ちや性格を表現していると私は思う。
無色の世界は、きっと美しいだろうけど人間味を感じられなさそうな気がする、
無色の世界
彼方へと続く道の向こう、まだ色の無い世界
行ってみないと何色なのかわからない
何色に出来るのかもわからない
悲しみや悔しさは ここに置き去りにして
立ち止まらず 走り出せ
新しい風、暖かい日差し
何かが見つかるから
新しい色に包まれた 私の世界
無色、と聞いて思い浮かべるのは何色だろう。白?黒?グレー?いずれにせよ色ではあるので、「無」ではないような。屁理屈かしら。
有る(在る)状態を思い浮かべるのは簡単でも、無い状態を想像するのは難しい。一旦有る状態にして、それを消す、という作業はできても、何も無いということを思い浮かべられない。宇宙のはじまりを思うことと同じで、そこにはすでに何か(例えば「空間」)が存在している。キャンバスや箱の概念から逃れられない。
わたしの場合、無色は白だ。でも、もしも画用紙が黄色だったら、無色は黄色だったかもしれない。
「無色の世界」
私は白が好き
飾らない色が好き
飾らない日々が好き
白は一途
白は変わらない
白はずっとそばにいる
無色の世界でも
白は優しくそっといる