『涙の理由』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「涙の理由」
本気で怒っているときには涙が出る事が多い
感情を言語化できず自分の中に溜め込んで爆発したときに溢れるように出てくる
「言ってくれたらいいのに」と言うが、言えたら言っている。それが出来たら苦労はないのだ
逆に怒ってないときに「怒ってる」と言われる事があったが、だいたい焦っているときだった。声が少し大きくなっていたんだと思う
最近泣くことが多い、、その理由は失恋。泣く理由って人それぞれだし嬉しい時や悲しい時、いろんな場面で泣くことがある。たまには泣くことも大切。泣こう。
この先ずっと嬉し泣き笑い泣きが涙の理由でありますように
たまには泣いた方がいいよ
涙の理由なんてなんでもいいでしょ
泣くことの何が悪いの?
それで少しはマシになるならいいじゃない
♯涙の理由
心のコップいっぱいに水が溜まって
最後の最後に溢れてしまった
ただそれだけ
私は小さい頃からずっと泣き虫。
大声で泣き叫んだことも、
顔を伏せて泣いたことも、
声を殺して泣いたこともあったな。
こうやって成長していくにつれ涙の理由が曖昧になってくる。
あの時はつまづいたから。
その時は上手くいかなかったから。
今は______
分からない。
それは人それぞれ違う。
生きる意味が分からないから。
自分の居場所が分からないから。
本当の自分が分からないから。
死にたいと思っ…
涙で目が見えなくなってしまいました。
なんで泣いてるかなんて、自分でも分かんなかった。
ただ、どうしようもなく悲しくて。
ただ、どうしようもなく苦しくて。
今思えば、あれは精一杯の「死にたくない」って叫びだったのかもしれない。
#涙の理由
涙の理由
仕事からの帰り道、信号が赤になるのをぼうと眺めていたらぼたぼたと水が落ちてきた。
雨も降ってないのにと思ったら信号の赤が滲んでいる。
ああこれ涙だ、
気がついたときには信号が青に変わってクラクションが後ろで鳴った。
加速する車と拭っても揺れる視界、意味もなく、わけもなく、とめどなく。
その日を境にそんなことがだんだん増えて、
それは仕事からの帰り道に限らず朝起きたとき、外を歩いたとき、ご飯を考えているとき、TPOもわきまえず突如流れ出た。
「辞めたいんです」
と言いながらばたばたと涙を流し、口元だけは辛うじて笑おうとするわたしを上司は一瞥する。
「おまえ、気持ち悪いよ。席に戻って頭冷やしてこい」
手がしっしっと犬でも追い払うように動かされる。
最後の何かもそこで断ち切れた気がした。
辞表を丁寧に机の上に置いたら、何か大きな声が後ろで聞こえたけどもう振り向かなかった。
その日以降あの会社には関与していない。
携帯も家も何もかも解約して、いつかどこかで見た観光地に旅行した。
思わず手で遮りたくなるような明るい太陽の光にまたぼたぼたと涙が落ちる。
でも今この涙はきっとTPOをわきまえている。
ボトンボトンと一個一個産み落とす。夜の砂浜には、わたし以外誰もいない。月の光が、わたしと愛らしい天使たちの行く道を示している。
どうか、この子たちの未来が、明るく照らされていますよう。そう願いながら、わたしは穴に産み落とす。視界はだんだんとぼやけていって、光がかすんでいく。
命をつなぐ。未来につなぐ。遺伝子を組み合わせて、はずして、くっつけて。そうして営んでつむいで、まずは十年先も、わたしたちが生き残っていればいいなと、そう思った。
わたしたちウミガメが産卵のときに泣くのは、塩分を排出するためです。豆知識。
無表情なグーフォの世界では色が失われていた。
灰色の景色が広がり、全ての色も音も何もかもが呑み込まれてしまっていた。
グーフォの世界に彼女が足を踏み入れると、彼女もまた徐々に色を失っていった。
いつしか彼女の胸には大きな空虚な穴が開いてしまった。
そんな自分の空虚な穴を見て彼女は泣く。
グーフォと二人で過去に共有した数多の感情が胸の穴に流れ込んで来る。
嬉しかった出来事、感動した瞬間、楽しいひととき、悲しみ、悔やしさ、切なさ、それぞれの感情を思い起こし、それらは渦を巻き涙として湖のような瞳から溢れ出る。
彼女の涙はプリズムとなって七色の光を放つ。
そうして彼女は失った色を取り戻し、その光でグーフォに再び色を与えることができた。
「涙の理由」
「 ₍₍⁽⁽ココロ₎₎⁾⁾
見て、沙都子!
ココロが踊っているよ。
かわいいね」
「キモッ」
「 ココロ
沙都子の心無い言葉のせいで、ココロは踊るのをやめてしまいました
お前のせいです
あ〜「ウザい」ああああ」
ビリビリビリビリ。
なんということでしょう。
沙都子によって、私のココロがズタズタに引き裂かれてしまった!
これには抗議せざるを得ない。
「なんて酷いことをするんだ!」
「百合子も大げさね。
『ココロ』って書いただけのルーズリーフじゃない」
「心は傷つきやすいから、優しくしないといけないんだよ!」
「それが通じるのは小学生までよ
高校生にもなってやるもんじゃないわ
それに、それはゴミでしょう?」
相変わらず、酷い言い草だ。
私のココロになんの恨みがあるのか?
さては私の人権を認めてないな。
「ところで、なんで『ココロ』?
元ネタはサボテン(₍₍⁽🌵₎₎⁾)だったわよね?」
「今日、国語の授業で、夏目漱石の『こころ』をやったじゃん」
「それでか……」
「で、サボテンとこころを悪魔合体させてみた」
「しょうもな」
「それに今の沙都子はココロ踊っているだろうから、私が表現してみたの」
私がそう言うと、沙都子は味わい深い表情になる。
言ってることが伝わらなかったようだ。
でも私と沙都子はツーカーの仲、気持ちを読むのは造作もない
この顔は『何言ってんの、お前』である。
「沙都子は『こころ』を読んだら心が躍るでしょ」
「うん、なんで?
なんで『こころ』を読んだら、私の心が踊るのかしら?
本は好きだけど、別段文学少女ではないわよ」
「ええ!?
沙都子、誰かが不幸になる話好きでしょ?
寝とられて裏切られて、Kが絶望するシーンはぞくぞくしたでしょ?」
「あなた、私のことをそんな風に見ているのね」
「だって、沙都子はいつも私をいじめて喜ぶくそ野郎でしょ――
待って、顔が怖いよ」
沙都子が満面の笑みを浮かべる
でも私と沙都子はツーカーの仲、裏の気持ちを読むのは造作もない
この顔は『よし、絶望させるか』である。
「すいません、言い過ぎました、ごめんさない」
「何を謝っているの百合子。
私は何も怒ってないわ。
何も、ね」
ひえ、怒ってる。
何か怒りを和らげるものを……
そうだ!
「沙都子様、ココロ二号を献上しますので、どうか怒りを鎮めてください」
「……なんで、それもう一枚あるのよ」
ココロ二号を見て、沙都子の怒りが若干収まる。
呆れつつも、沙都子はココロ二号を受け取る。
いけるか?
ビリビリビリビリビリ。
沙都子は受け取ったココロ二号をびりびりに破く。
どうやら沙都子を鎮めることは出来なかったようだ
万事休す。
「これ、意外と気持ちいいわね」
その時、奇跡が起こりました
沙都子はココロを破くことで、ご機嫌になったのです。
……なんで?
「許して欲しいって言ったわよね」
「はい」
「ならこのゴミを、もう一つ作りなさい」
「はい」
だけど、私には逆らう選択肢などない。
私はルーズリーフに『ココロ』と書いて、沙都子に渡す。
そして沙都子は渡されたココロ三号をびりびりに破く。
沙都子は無表情で、何も感慨はなさそうだ。
でも私と沙都子はツーカーの仲、気持ちを読むのは造作もない
この顔は『ココロオドル』である。
「沙都子、もう一枚作ろうか?」
「……いえ、いらないわ」
少し恥ずかしそうに、そして満足したような顔で微笑む沙都子。
これはツーカーでなくても分かる。
この顔は『スッキリ』である。
「言ってくれればまた作るよ。
別に手間じゃないし」
「……ならまたお願いするわ」
沙都子って、紙を破ると快感を得るタイプなんだな
私は沙都子の意外な一面を見て、ちょっとだけ『ココロオドル』のであった。
ようやく
仕事終わった
外を見れば
小雨が降ってる
頭にカバンを乗せて
車まで走った
車を走らせて
思い出す
君を見掛けた時
君は泣いてた
何があった?
あんな君を
見たのは初めてだ
何でも
話して欲しいな
僕じゃ頼りない
かもしれないけど
どうしても
気になる
君に会いに行く
迎えてくれた
君は何時もの
君だった
そんな笑顔で迎え
られると僕は
何も聞けなくなる
涙の理由
西の都に行ってました。
俳句の勉強のために、、、って言うのは嘘ですけど行きましたよ。
え、誰とって?独りですよ笑
どうでもいいけど笑をwって書くの好まない人です。人が書くのは全然構わないんですけどね。
もう10月半ば、さぞかし寒かろうと長袖を着て行ったら。
暑いでございますの‼️
めちゃくちゃ暑いでございますの‼️
もう言うまいと、言うことはなかろうと思っていたこの言葉をまさかこの時期に口にするとは思ってなかったですよ!
周りを見れば、半袖は当然、ノースリーブ率の高いこと!外人さんが多かったのもあるけど。
こんな秋仕様で歩いてるのなんて私くらいですよ!カッコつけてロングカーディガンなんぞ着て後悔しました。
結局暑すぎて、脱いで持ち歩くことになり重くて仕方ない。
ただでさえ歩きまくって汗かくのに、、泣きそうでした。
ただね、推し彼に会うためですから、我慢するしかありません。
人混みや賑やかな場所が苦手なこの地味な私が彼の歌声を聴くためにこうやってのこのこやって来たんです。
束の間の別世界へしばし浸らせてもらい、おかげで嬉し涙に変わりましたとさ。
いい夢見れるかな。
end
僕がとっても小さい頃
僕はとっても泣き虫だった
ランドセルを背負う頃には
猫さんたくさん背負い込んで
僕はだんだん泣けなくなった
*
嬉し泣きとか 悔し泣きとか
単に風邪を引いただけとか
涙の理由も色々あると
そんなことは知っている
それでも泣く子は好きじゃなかった
泣ける子のことが好きじゃなかった
助けてくれる そう信じれる
信じられない僕が嫌いだ
*
今日も空虚に生きていく
全部 全部が そこそこで
からっぽなまま 微笑んで
怒って 笑って 泣いている
そんな自分に憧れる
『涙の理由』を探してる
No.6『涙の理由』
ー涙の理由ー
涙の理由によって
涙の味は
変わるらしい。
きっと、
去年の涙と今日の涙の味も
きっと違うんだろう。
なぜなら
去年と違って
今日は
君がいないのだから。
君と愛を誓い合った時の
涙の味を
もう一度。
「涙の理由」
ライブが終わり、メンバーやスタッフさんと食事をして、各々ホテルへ帰った。
スタッフさんは6階で別れ、俺たちは12階でエレベーターが止まった。
適当にエレベーターから近いメンバーの部屋でみんなでライブの感想やさっき食べた料理について喋り、明日はオフだがそれぞれの予定があるからと、自分たちの部屋に戻った。
「おやすみー」
「ゆっくりしてねー」
「じゃーねー」
とても20代後半の会話とは思えないが、僕たちはかなり仲が良く、こんなのは当たり前だ。
僕はカードをドアノブにかざし、部屋に入る。
今回はそこそこいい部屋に恵まれた。1人部屋で、ソファーも大きく、3人入っても充分すぎるくらい広い部屋だ。事務所側が僕たちがこのホテルにふさわしいだろうという表現は大げさだが、やはり功績のおかげで、デビュー1年目と今では使っていたホテルもだいぶ変わった。皮肉ってるわけではない。事務所側の気持ちも分かる。俺たちのグループは3年目にして、やっと1位を取れるようになり、そこからうなぎ登りでここまできた。
アイドルは7年間の賞味期限がある。
契約が大抵7年間で、7年目を迎えたら事務所側が契約を更新するのかしないのか決める。
7年目を迎え無事契約更新した僕たちは、ファンやスタッフさんから祝福された。
こんなにも愛されていたのか。
僕はマネージャーから契約更新を聞いた時、抱き合ってるメンバーやその場にいたスタッフさんの拍手を聞きながらぼんやりと考えていた。
デビュー前の僕たちをサポートしてくださったT&Dの方も花束を片手に喜んでくれた。T&Dの部門のスタッフさんは、自分が担当しているグループのデビュー日を見届けたら、そこで仕事は終わり、別のグループや人材の発掘に回る。デビュー日から一度も会えなかったわけではなかったが、やはり久しぶりにお会いできたので、つい抱きしめあった。
今の待遇に不満があるわけではない。
むしろ、感謝してもしきれないほどに恩恵を頂いてる。
ただ、なんだろう。このポッカリと空いた穴は。
異変に気づいたのは、契約更新を聞いた次の日からだ。
最初は寝付きが悪いとか、中途覚醒があるとかその程度だった。が、日に日に悪くなり、今では強い眠剤を飲まないと寝付けず、それでも何度か起きてしまう。
僕はメンバーには内緒で、芸能人専用の病院に駆け込みどうにかしてこの症状を抑えたかった。
眠れなくなると何事もネガティブに考えてしまう癖がある僕は、周りに迷惑をかけたくないため、何でも良いから眠れる薬が欲しいと懇願した。
しかし医師は、それじゃあ根本的な解決には至らないとばっさりと僕の意見をぶった斬った。
つい、かっとなってしまった僕は荒く聞いた。
「じゃあ、これ以上どうしろと言うのですか?」
医師は最初こそは驚いたがすぐにいつも通りになり、冷静に答えた。
「他に原因があるということですよ。心配事や不安事がある可能性があります。それらを解消しないといつまでたっても眠れないということです」
冷静に反論する主治医に腹が立ち、足を組み直しなるべく自分の気持ちを悟られないよう言った。
「僕にはそんなのはありません。メンバーにもスタッフさんにも恵まれてます。心配事も不安もありません」
「無意識の領域にあるかもしれませんし、ソウマさんが蓋をしている感情があるのかもしれません。」
あぁ、むかつくな。
ああ言えばこう言う目の前の男は、それでも僕の気持ちを揺らしてくる。
「そんなの、分かるわけないじゃないですか。もし仮に蓋をしていたとしたら、それを開けろと言うのですか?蓋をするほど辛い記憶と向き合えと言うのですか?」
僕は笑いながら皮肉っぽく言った。同じ土俵に立つのも限界が近づいてきたが、それを認めたらこの男に負けた気がする。だからわざと、試し行動をしてみた。
この男がどういう反応をするのか、どんな言葉をかけるのか。しかし、そんな子どものような思惑には乗らず、いつも通りの男だった。
「えぇ、そういうことになりますね。トラウマと向き合い、次のステップへ向かう準備をしなければなりません」
あっさりと認め、むしろそこまで考えられるのは凄いと言いたげな顔をして、じっと僕を見つめた。
負けた。いや、立場が違いすぎる。
相手は心の専門家だ。しかも芸能人専用の病院に勤務しているから、それなりの実績はあるだろうし、なによりもこの3ヶ月1時間毎週水曜日にカウンセリングをしてきたんだ。
原因なんて始めから分かっていたのだ。もしかしたらこの男も見抜いてるのかもしれない。
最年少だから兄さんたちの足を引っ張りたくなくて、この7年間走り続けていた。
ダンスの講師が練習のしすぎたと言われても、ボーカルトレーナーからこれ以上練習したら喉が潰れてしまうと言われても、無視し続けた。
最年少だからって、甘やかされるのはファンの妄想だ。
実際、デビュー日にメンバーが公開されると、僕の名前だけブーイングが起こった。
「入所してたった7ヶ月でデビューなんて。最年長のユウは8年間練習生として走り続けていたのに」と。
トラックデモまで発展したが、初のパフォーマンスである程度のアンチを黙らせることができた。
口には出さなかったが、アンコールと黄色い歓声が鳴り響く中、俺はひとり、優越感に浸っていた。
そして、舞台裏でみんなが抱きしめてくれた時は最高に嬉しかった。やっとメンバーとして認められたんだと思った。
「ソウマ、よくやった!」
「いつの間にこんなに上手になったんだね」
次々とかけられる褒め言葉とその日の夜にひとりである掲示板を見て、つい「ほら見ろ、デビュー日はあんなに叩いてた癖に手のひら返しじゃん」とつぶやいた。お気に入りのジンジャーエールを飲みながらニヤけていた。
今思えば、これがいけなかった。
その日の夜見た掲示板は、芸能人や著名人の名前を検索すると、その人の好感度がパーセント提示で出てくる。とは言っても、この数字には信憑性はほぼゼロだ。
なんて言ったって、要は芸能人や著名人に嫉妬する人や快く思わない人の溜まり場で、便所の落書きのようなものだ。『好き』か『嫌い』のボタンを1日1回押せる仕組みで、メアドさえ登録すれば誰でもコメントを残すことができる。大抵は、妬みや嫉妬。嫌韓の人や反日の人も互いに罵りあっている毎日。勿論、中には不倫や違法賭博した著名人に対して叩くケースもあるが、基本的には
普通に仕事をこなしている人がターゲットだ。
テレビでのあの発言が気になるとか、あの態度、絶対人を虐めたことがある人間がする態度だよとか、その程度だ。
そしていつの間にか、好感度のパーセント提示をチェックするのが日課になっていた。
他のメンバーのは見たこともないし、見たくもない。
何も知らないお前らに兄さんについて語ってほしくなかったから。ただ、自分の名前はいつも検索していて、ショートカットまでつくった。すぐに自分の好感度を見たかったから、コメントを見たかったから。
「努力すればアンチは黙る」幼稚な俺は短絡的に物事を考え、そう結論に至った。
だから正直ファンのために練習すると言うより、アンチを黙らせるために練習している。ただ、口では言わないだけだ。
7年目を迎えると、大抵のアイドルはソロ活動が許される。楽曲制作やドラマ・映画出演、バライティー番組やラジオ番組のMCなど。マネージャーやディレクターと話し合い、どの方向性で行くのか決める。だが、楽曲制作は全員必須となっている。僕はリードラッパーだからおそらくソロもラップを書くことになるだろう。
あぁ、楽しみだ。
ある程度は好きなように楽曲制作ができるため、思う存分、アンチを煽ることも踏み潰すこともできる。それも合法で。決して違法なやり方ではないし、むしろ芸術だと、これが真のラッパーだと思わせることができる。
エミネムなんかも大統領まで煽るくらいだ。
ひとりのアイドルがアンチを煽るくらいで何が問題だよ?
「‥マさん?ソウマさん?」
主治医の声ではっとする。
さっきまであんなに自分を苛つかせていた男は心配そうに、俺の顔を覗き込む。
「急に黙り込んだから心配しました」
パソコンのキーボードから手を離し、こちらに体を向けてる男は、本気で俺を心配していた。
「あぁ、すみません。その…自分が無意識に溜め込んでいたものってなんだろうと考えてました。あの、ジョハリの窓のようなものです」
「あぁ、ジョハリの窓ですね。よくご存知ですね。」
「はは、なんかの本に書かれてあって、それで多分覚えてたんだと思います」
「そうですか、中々コアな分野ですよね。ジョハリの窓は4つあって。『自分も他人も知ってる部分、開放の窓』『自分は知ってるが他人は知らない窓、秘密の窓』『自分は知らないが他人は知ってる部分、盲点の窓』そして、『自分も他人も知らない部分、未知の窓』の4つで構成されています。」
「お気づきかもしれませんが、私から見たソウマさんはかなりの努力家に見えます」
「そうですか?よく言われますが、自覚はしてないですね」
わざと知らないフリをした。自分が努力家なんて知ってるし、自分でもやり過ぎだなと思う時だってある。でも、やらなければあいつらがまた俺を苦しめる。だから努力してんだよと心の中で反吐を吐いた。
「では、これは盲点の窓になりますね」
主治医は呑気に言った。
「ジョハリの窓ですか?そうですね、盲点の窓に当てはまりますね」
軽く相槌を打った。
「ソウマさん。私の見解では、ソウマさんは人の目を気にしすぎる傾向にあると思います。また、ソウマさん自身が抱えているものがあまりにも大きすぎて、ソウマさんを潰しかねないと私は思っています。そのため、次回から治療方針を変え、投薬治療を続けつつ、対話をメインにした治療に変えてみませんか?勿論無理強いはしませんし、辞めたくなったらその場で中断することを約束します。いかがですか?」
黙ってる俺に主治医はまた言った。
「すぐに答えが欲しいわけではありません。自分と向き合うことは、時に海に溺れるような苦しさや辛さを伴います。ですが、このままではソウマの不眠は治らないと思っています。もし、治療で不安なことがあればいつでも申し付けください。」
俺は、少し考えさせてくれと言い、診察室を後にした。
それから1ヶ月。
俺は診察をすっぽかした。忙しくても欠かさず毎週行っていたとは思えないが、これもこれで良いだろうと決めつけた。
ライブ終わりはいつも虚無感に襲われる。
やりきった証拠なのかもしれないが、シャワーを浴びても、身体中に虚無感がべとりと付いているのは心地よくない。
「死にたい」とは思わないが、「辛い」とは思う。
きっと、メンバーやマネージャーに「死にたい、辛い」と言ったら抱きしめてくれるだろうし、活動休止期間もつくってくれるだろう。
でも、俺が求めてるのはそれじゃない。というか、そこまでしなくてもいい。
骨折みたいに誰がどう見ても病人だと分かれば、みんな手厚くサポートしてくれる。でも俺のようにかすり傷が無数にある身体には興味も示さない。
だって、かすり傷だもの。
絆創膏さえ貼れば済む話だ。
でもなぜだろうか。
このポッカリと空いた穴は、虚無感は。
やはり医者が言うように治療方針を変えるべきなのか。
でもそんな勇気は俺にはない。
デビュー日のファンや周りの人からの俺に対する愚痴や誹謗中傷が流れても、俺は平気な顔をした。メンバーやマネージャーはそれこそ心配してくれたし、同じ事務所の先輩も同じような経験をしたことがあるからと言って、ご飯を奢ってもらったこともある。
でも何を言われようと、俺は平気だと、気にしていないと伝え笑顔を貼り付けていた。
今ではアンチを罵ることだって簡単にできる。手だって出そうと思えば出せる。ただ実際にはしないだけでしようと思えばできる自分は強い人間だと思っていた。
しかし、俺は思ったより弱い人間だったようだ。
たった今、主治医からのメッセージを読んでSOSを出してしまった。
もうこれは、強い人間とは呼べないだろう。
自ら醜態を晒してるのだから。
あと数分で主治医が来るだろう。あの憎たらしい男が。同じ男だからこそ、俺を苛つかせる。
が、その憎たらしい男に頼らざる終えないのが現実だ。
もういい、無駄なプライドは捨ててしまおう。
7年ぶりの涙が零れ落ちた。
涙の理由
優しい人が損をする世界は間違ってると思う
ドロップは神様が流した涙なのだと、幼い頃に聴いた童謡がふと頭に過ぎる。
朝焼けを見ても、夕焼けを見ても、悲しくても、嬉しくても泣いた。
そんな神様の涙の話を思い出せば、今流している涙の惨めさが少し薄らぐ気がするのが不思議だ。
神様の悲しい涙は、酸っぱい味に変わったらしい。
私のこの涙はどんな味になるのだろうか。
そもそも、これは悲しくて流している涙なのだろうか。
長すぎるとも言うべき時を引きずった片想いは、散々な終わり方だった。
最後はもう、本当に好きなのかさえ自分でもよく分からなくなっていた。出会った頃は、確かに、あんなに純粋に彼を恋い慕っていたのに。
段々と離れる距離に焦って、彼の目が、関心が此方へ向くのなら形振り構わずに振舞って、他の女を近付けないよう、茨のような棘を張り巡らせて。
もっと早くに諦められていたら酸っぱい程度で済んだだろう涙。今はもう溢れる様もどろどろとしたタールの様に思えるのは気の所為だろうか。だらだら濡れる頬が、つたう顎が、酷く気持ち悪い。
きっとこの涙がドロップになっても、口にするのはおぞましい。
それならば。
憎らしくも愛おしい貴方の口に、そのドロドロとした塊を押し込んでしまいたいと願った。
どうかその酷い後味を、一生忘れる事がありませんように。
僕のための君の涙エンハンサー
もう一度ぶっ潰しに行ける
全世界を敵に回しても
君の悔し涙を無駄にはしない
♯涙の理由
「すまない、水無月さん、うちの娘はーー」
血相を変えて、俺は会社に駆け込んだ。
だいぶ、急いだ。でも、すっかり遅くなってしまった。
人気のない課に保育園の制服を着た深雪が、水無月といた。娘をデスクに着かせ、隣で相手をしていた水無月が振り向いた。
「柴田さん」
「あ、パパ、おかえり」
ぴょんと椅子から降りて、深雪が駆け寄り、俺の胸に飛び込んだ。
「深雪、ごめん。遅くなって」
俺は深雪をギュッと抱きしめた。どっと安堵が押し寄せる。そして、
「水無月、ありがとう本当に助かった。この通り」
深雪を抱きしめたまま深々と頭を下げる。
「いいんですよ、電話もらったときは驚きましたけど、柴田さんがあらかじめ保育園に連絡してくれていたお陰で、私が行っても引き渡してくれましたし」
ねー、深雪ちゃん、と水無月が笑う。
ねー、雫ちゃん。と深雪が笑顔で返す。
「雫?」
「おねーちゃんの名前だよ、パパ知らないの?お友達でしょう」
「あ、そうなのか」
初めて知った。目を見開いて水無月を見ると、ふふと、微笑んだ。
しずくーー。雫さんていうのか。
静岡に出張に出かけた。日帰りの予定が大幅に狂い、夜まで足止めを食らった。
保育園の閉園時間まで間に合わない。深雪を迎えに行けない。どうするーー、プチパニックになった俺の頭に咄嗟に浮かんだのが部下の水無月だった。
電話して泣きついた。すみません、どうしても頼る相手がいない。娘を保育園に迎えに行って、俺が戻るまで面倒を見てくれないか、頼みますと。
深雪はご飯も食べさせてもらっていた。うとうとし始めた深雪を抱き上げて、俺は会社を出た。もうとっぷり夜も暮れた。
「本当に助かったよ、今夜は。後できっちり礼はしますから」
「それは別にいいですよ。それより柴田さん、ご飯食べました?あんなに急いで、まだ食べてないんじゃないですか」
水無月はそう言って、コンビニの袋を差し出した。
「パパは、しゃけが好きなのって。お家でおにぎり作るとき、しゃけばっかなのって、深雪ちゃん言ってましたよ」
袋の中身はおにぎりだった。かさりと袋が鳴る。
「水無月」
「だから深雪ちゃんも、しゃけおにぎりが好きなのって教えてくれました。子ども心に、私に迷惑かけてるって気にしたんでしょうね。パパ、ほんとはいつもちゃんと保育園の終わる時間には迎えにくるんだよ。その後、晩ごはん作ってお風呂にいっしょに入るの。で寝る時絵本読んでくれる、いいパパなんだよって言ってました」
彼女の声音は優しく俺を包んだ。腕の中の深雪の重みが、体温が、俺を慰撫する。
水無月は俺の手が塞がっているので、袋を持ったまま歩き出した。
「読み聞かせはね、パパあんまし上手くないの。疲れてるのか、読んでる途中でパパ寝ちゃうのが多いんだって言ってました。だから深雪、終わりまで知らないお話多いんだって。でも、とってもいいパパなんだよって。おねえちゃん、パパ遅くなっても怒らないでくれる?って、何度も何度も」
それを聞くと、もうダメだった。俺の涙腺は決壊した。
夜道、会社の同僚ーー年下の部下の女の人の前で、声を殺して泣いた。生まれて初めて。
妻が浮気して離婚になって、うちを出て行った時も泣かなかったのになーー
深雪はスヤスヤ寝息を立てている。水無月はコンビニの袋を片手に、星を見上げ俺を直視しないようにしてくれた。
涙の理由も、訊ねることなく。
優しさが身に染みた。そう思うと、俺は更に泣けてしまうのだ。
#涙の理由
「通り雨3」