「 ₍₍⁽⁽ココロ₎₎⁾⁾
見て、沙都子!
ココロが踊っているよ。
かわいいね」
「キモッ」
「 ココロ
沙都子の心無い言葉のせいで、ココロは踊るのをやめてしまいました
お前のせいです
あ〜「ウザい」ああああ」
ビリビリビリビリ。
なんということでしょう。
沙都子によって、私のココロがズタズタに引き裂かれてしまった!
これには抗議せざるを得ない。
「なんて酷いことをするんだ!」
「百合子も大げさね。
『ココロ』って書いただけのルーズリーフじゃない」
「心は傷つきやすいから、優しくしないといけないんだよ!」
「それが通じるのは小学生までよ
高校生にもなってやるもんじゃないわ
それに、それはゴミでしょう?」
相変わらず、酷い言い草だ。
私のココロになんの恨みがあるのか?
さては私の人権を認めてないな。
「ところで、なんで『ココロ』?
元ネタはサボテン(₍₍⁽🌵₎₎⁾)だったわよね?」
「今日、国語の授業で、夏目漱石の『こころ』をやったじゃん」
「それでか……」
「で、サボテンとこころを悪魔合体させてみた」
「しょうもな」
「それに今の沙都子はココロ踊っているだろうから、私が表現してみたの」
私がそう言うと、沙都子は味わい深い表情になる。
言ってることが伝わらなかったようだ。
でも私と沙都子はツーカーの仲、気持ちを読むのは造作もない
この顔は『何言ってんの、お前』である。
「沙都子は『こころ』を読んだら心が躍るでしょ」
「うん、なんで?
なんで『こころ』を読んだら、私の心が踊るのかしら?
本は好きだけど、別段文学少女ではないわよ」
「ええ!?
沙都子、誰かが不幸になる話好きでしょ?
寝とられて裏切られて、Kが絶望するシーンはぞくぞくしたでしょ?」
「あなた、私のことをそんな風に見ているのね」
「だって、沙都子はいつも私をいじめて喜ぶくそ野郎でしょ――
待って、顔が怖いよ」
沙都子が満面の笑みを浮かべる
でも私と沙都子はツーカーの仲、裏の気持ちを読むのは造作もない
この顔は『よし、絶望させるか』である。
「すいません、言い過ぎました、ごめんさない」
「何を謝っているの百合子。
私は何も怒ってないわ。
何も、ね」
ひえ、怒ってる。
何か怒りを和らげるものを……
そうだ!
「沙都子様、ココロ二号を献上しますので、どうか怒りを鎮めてください」
「……なんで、それもう一枚あるのよ」
ココロ二号を見て、沙都子の怒りが若干収まる。
呆れつつも、沙都子はココロ二号を受け取る。
いけるか?
ビリビリビリビリビリ。
沙都子は受け取ったココロ二号をびりびりに破く。
どうやら沙都子を鎮めることは出来なかったようだ
万事休す。
「これ、意外と気持ちいいわね」
その時、奇跡が起こりました
沙都子はココロを破くことで、ご機嫌になったのです。
……なんで?
「許して欲しいって言ったわよね」
「はい」
「ならこのゴミを、もう一つ作りなさい」
「はい」
だけど、私には逆らう選択肢などない。
私はルーズリーフに『ココロ』と書いて、沙都子に渡す。
そして沙都子は渡されたココロ三号をびりびりに破く。
沙都子は無表情で、何も感慨はなさそうだ。
でも私と沙都子はツーカーの仲、気持ちを読むのは造作もない
この顔は『ココロオドル』である。
「沙都子、もう一枚作ろうか?」
「……いえ、いらないわ」
少し恥ずかしそうに、そして満足したような顔で微笑む沙都子。
これはツーカーでなくても分かる。
この顔は『スッキリ』である。
「言ってくれればまた作るよ。
別に手間じゃないし」
「……ならまたお願いするわ」
沙都子って、紙を破ると快感を得るタイプなんだな
私は沙都子の意外な一面を見て、ちょっとだけ『ココロオドル』のであった。
10/10/2024, 1:30:21 PM