撫菜

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ドロップは神様が流した涙なのだと、幼い頃に聴いた童謡がふと頭に過ぎる。
朝焼けを見ても、夕焼けを見ても、悲しくても、嬉しくても泣いた。
そんな神様の涙の話を思い出せば、今流している涙の惨めさが少し薄らぐ気がするのが不思議だ。

神様の悲しい涙は、酸っぱい味に変わったらしい。

私のこの涙はどんな味になるのだろうか。
そもそも、これは悲しくて流している涙なのだろうか。

長すぎるとも言うべき時を引きずった片想いは、散々な終わり方だった。
最後はもう、本当に好きなのかさえ自分でもよく分からなくなっていた。出会った頃は、確かに、あんなに純粋に彼を恋い慕っていたのに。

段々と離れる距離に焦って、彼の目が、関心が此方へ向くのなら形振り構わずに振舞って、他の女を近付けないよう、茨のような棘を張り巡らせて。

もっと早くに諦められていたら酸っぱい程度で済んだだろう涙。今はもう溢れる様もどろどろとしたタールの様に思えるのは気の所為だろうか。だらだら濡れる頬が、つたう顎が、酷く気持ち悪い。

きっとこの涙がドロップになっても、口にするのはおぞましい。

それならば。

憎らしくも愛おしい貴方の口に、そのドロドロとした塊を押し込んでしまいたいと願った。

どうかその酷い後味を、一生忘れる事がありませんように。


10/10/2024, 1:20:44 PM