『泣かないで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
お題:泣かないで
「ちょっと、すぐ泣かないでよ」
何度言われたかわからない。
どうしてもあふれてしまうのだ。
言葉よりも先に涙がこぼれて、我慢しようと思ってもできなくて。
悔しい。
そんなのおかしいよ、違うよ。
ちゃんと伝えたいのに、心が先走って伝えられない。
今だってそうだ。
せっかく相談に乗ってくれているというのに。
わたしは泣いてばかりで何も話せていない。
きっとまた、同じことを言われてしまうだろう。
おずおずと顔を上げる。
あなたは静かにわたしを見つめていた。
ゆっくりと、唇が動きだす。
この瞬間だけスローモーションのようだった。
「もういいの?」
涙がキュッとひっこむ。
予想外で脳が上手く処理できない。
わたしに構わず言葉が続く。
「泣きたいときは泣けばいい。ただ相手を間違えると、弱い人だと思われて損だよ。別に弱いから泣くわけじゃないからね。
ここではいくらでも泣いていい。だからそのぶん、よそでは泣かないでよ?」
あたたかな雫が頬を伝った。
俺は絶望に深く潜り込んでいた。
一時間ぐらいずっと泣いていた。
[泣かないで]
そう語りかけてくれた彼女はもういない。
いつか、誰かに泣かないでと優しく言える人間になりたい。
不思議なもんで、泣かないでと誰かに言われた訳でもないのに
泣くのは我慢している。多分物心ついたときから。
それでも泣きそうな時は、舌先を軽く噛む。
すると大概の涙は引っ込む。
ワサビやタマネギには勝てないけどね。
泣かないで。
私、あなたのこと大好きなのに。
ほら、真っ白いドレスに涙は似合わないでしょう?
泣かないで。
私、あなたのこと大好きなの。
ああ、でも、私のドレスは水玉模様だね。
泣かないで。
私、貴方のこと大好きなの。
これから、一生貴方の傍にいる。
泣かないで。
私、貴方のこと大好きなの。
新郎を殺して、貴方の傍にいたいくらい大好きなのよ。貴方を愛してる。
私達、女の子同士だけど、貴方も私のこと愛してくれてるよね?
だからそんなに涙を流してるのよね。
でも、泣かないで。
大丈夫。貴方を泣かすような輩は、私がこの世から消し去るからね。
私は泣き虫だ。
ちょっとしたことですぐ泣いてしまう。
昔からそうだった。
小学生の頃、教室の後ろに飾っていた花瓶を落としてしまい、怒られる前から既に泣いていた。
どうしよう、いけないことをしてしまった。怒られてしまう。
そんなことを思うだけで泣いていた私はとある日、クラスメイトに言われた。
「また泣いてる」「どうせ嘘泣きでしょ」
そんな言葉を。
きっと、私が泣く度にイライラさせてしまっていたのだと思う。
大人になる頃には、あまり泣かないように気をつけることができるようになってきていた。
それでも、たまらず泣いてしまう時はある。
そういう時、周囲の人にとても驚かれたりする。
泣かないで、なんて言葉は聞き飽きていたんだけれど。
「感受性が豊かなんですね」
そういって寄り添って、泣き止むまでただ傍に居てくれた人は貴方が初めてだった。
きっと、その時から惹かれていたのだろう。
「好きです」
意を決して発した言葉の主は、私ではない。
「僕でよければぜひ」
私の親友だ。
知っていた。2人が惹かれあっていたこと。
だから応援した。それぞれが、お互いを想って色々考えたりする姿を目の前で見てしまったら、そうもなってしまうのは仕方ないだろう。
「お、おっけーしてくれた…!」
「よかったね…!!」
「あはは、ほんと泣き虫ちゃんじゃん、なんでアンタも泣いてんのよ」
「ふふ、なんか嬉しくてね」
嬉しい気持ちは嘘ではない。でも、同じくらい寂しい気持ちになっているだけ。
「よし、飲みにいくか!」
「えっ彼氏は?置いてくの?」
「今日は今まで応援してくれたアンタにお礼!奢るからちゃ〜んと奢られてよね!!」
「うん…!」
深呼吸して、切り替える。
だって私、2人とも大好きだもの。
「泣かないで」2023/12/01
お題 泣かないで
「泣くな!! どうして泣くんだ」
急にぐずりだした妹に、俺は苛立ちながら言葉を投げつけた。
「だって、お兄ちゃん、わたしをおいてきぼりするんだもん」
どうやら歩き疲れてしまったらしい。中学生の男の俺と、まだ小学二年生の少女である妹とでは、歩くスピードやピッチが違いすぎる。
「しょうがない。家までおんぶしてやる。だから泣き止んでくれ」
俺はそう言うとしゃがんで、妹を招くように両腕を後ろに回した。
「ありがとう、お兄ちゃん」
泣き止んだ妹は、俺の背中にしがみついた。俺は妹をおぶさって帰り道を急いだ。
陽はとっぷりと暮れていた。冬の日の入りは早い。あっという間に暗くなる。自然と早足になった。家に帰りたい。温かな家に……
こんな私なんかのために泣かないでよ。
あなたに泣いてもらえるほど、私はいい人間じゃないんだよ。何も出来ない無能だし、難しかない性格だし、
こんなクズみたいな人間に流す涙なんて必要ないよ。
だから、お願い。笑ってよ。
泣かないでなんてのは相手を追い詰める言葉でしかない。
また今日も一日が終わったね。
辛いこともあったけどよく頑張ったね。
泣く前に私とお話をしてみない?
辛かったこと言った方が楽になるよ。
泣かないで、大丈夫だよ。
貴方はひとりじゃないから。
今日も頑張ったね。
『泣かないで』No.2
お題「泣かないで」
タイトル「謝る言葉はいらない」
雨采 ミツジ
R5/2023/12/1
人々はこいつを俺の「兄」だと言った。
俺自身も、意識を持った時、いや、ずっと前からこいつが「兄」だと知っていた。
俺はこいつの「弟」として作られたから。
どれだけ経った頃か覚えていないが、「兄」を模したものが作られた。
「兄」は「弟」が増えたと喜び、俺も兄になったのかと楽しそうだった。
「兄」と2人の日々が終わったことに少し寂しさを感じたのは、何があっても教えてやらない。
「弟」が増えても、「兄」は特段変わらなかったから、言わなくていいんだ。
いつだってちょっとした呟きでも拾って、叶えようとする。
「兄」にとっては特別が増えただけで、どっちを優先するとか、どっちの方が愛おしいとか、そんなものはなかったらしい。
「なあ、行くなよ。行かなくていいだろ」
どれだけ訴えても「兄」は頷いてくれない。
「分かってるだろ。あいつはお前を傷つけるだけだって、行っても傷つくだけだって」
それでも「兄」は微笑んで、俺を抱きしめた。
No.1 【泣かないで】
君は一人じゃない、泣かないで
一人でいると思ってたけど
本当は違う、本当に1番近かったり
遠くにいる人だったりする。
だって私は、周りの友達や家族に頼れなかったから
赤の他人に悩みを聞いてもらったよ。
はじめは信じてなかったけど
本当に優しいカウンセラーの人だったよ。
今では仲良くしてまた相談してもらってる。
大丈夫だよ。周りにいるよ。絶対に頼れる人がいる。
【泣かないで】
昔、流行った研ナオコの歌を思い出した。
作詞作曲は中島みゆき。
♪泣かないで、泣かないで、私の恋心
あの人はあの人お前に似合わない♪
このフレーズを口ずさみながら私も自分の心に言い聞かせていた。
あの人に私は似合わないのだと…
あれから何十年が過ぎたのだろうか。
今は泣きたくても涙が出なくなった。
泣けなくなった。
泣いてみろ!と言われても泣けない。
もしかしたら実の母親が亡くなっても泣けないのではないかとさえ思う。
だから私は言いたい。
泣けるなら泣きなさい、思い切り泣きなさい、きっと心が休まる日がくるから…と
私が泣けなくなったのは老いたからなのか、それともいろんなことがありすぎて素直になれなくなったからなのか、心が氷のように冷たく硬くなったからなのか…
私もたまには声を出してオイオイ泣いてみたい。
(前の投稿から3ヶ月以上も過ぎていた。書くことは心のゆとりの表れだとしみじみ思う)
【泣かないで】
大吾さんが泣いている。
ベッドの端に力無く腰掛け、俺がいつだったかに置いていったワイシャツを手に静かに涙を流している。
震える大吾さんの肩に触れ、抱きしめる。それでも大吾さんの震えは止まらない。「大吾さん」と呼びかける。それでも大吾さんの涙は止まらない。
俺は自ら病院の屋上から飛び降りたことを後悔することはないと思っていた。
こうして体を持たない「何か」に成り果て、大吾さんが独りで泣いている光景を見ていることしか出来なくなるまでは。
「大吾さん、泣かないでください。俺はここにいます」
この声が届いてほしい。どうか、一度だけでいいから。
そう願いを込めた言葉は、大吾さんに届くことはない。
#44『泣かないで』
生きてって言いたいけれど、そんな言葉をグッとこらえる。あなたの気持ちは最大限に尊重したい。自殺幇助は罪だけど、生きることを強要するのは?ただ抱きしめることしかできない自分はあまりにも無力だ。
『泣かないで』
君に泣かないで欲しかったのは、
「君には笑顔が似合うから」だとか、
「君が泣いてると僕も悲しくなるから」だとか、
そんな優しい理由じゃない。
そんな優しい理由じゃなかったんだ。
ただ僕は、泣いている君を慰めるのが面倒だった。
億劫だった。
君の気持ちなんて少しも理解できなかったし、
どうしたら泣き止むのかも分からなかった。
君の泣き声がどうにも耳障りで、
殺意のようなものすら感じていた。
だから、僕のために、君のために、
僕と君のために、
泣かないで欲しかったんだ。
【また、逆で】
「ああ、ああ。泣かないでおくれ。 僕は君の涙に触れると、もう どうしようもなくなってしまうんだから」
男は、わーんわーんと泣き喚く女の涙をそっと手で拭う。
「なら、そんなこと 2度と言わないで。 私は、これまでも これからも、あなた以外で涙を流したことはないのよ。」
女は、どうしようもなく悲しくって、虚しくって、涙に濡れた目でキッと睨みつけ、男を責め立てる。
「ごめんよ、僕の愛しい人。でも、これはどうしようもないことなんだ。わかっておくれ」
男は、風に触れるようにやさしく女を撫で、聞き分けのつかない子どもに言うように諭した。だが、女はそんなことはとうにわかっていて、それでもくるしくって泣いているのだ。
「もう、あなたなしじゃ世界を見ることさえできないの。だから、どうかいなくなったりだなんてしないで。」
男はベッドから体を起こすと、目を擦り、頭を抱えた。
あの女は、僕で、あの男が、君だ。
僕の初恋の人。15の時に、余命が2年だと医者から言われ、入院していた愛しい人。
毎日通って、泣き喚いて縋って慰められて、そんなことを2年繰り返して、君は旅立った。
僕の誕生日に。
それからもう6年も経つが、ずっと、毎日似たような夢を見る。
あのベッドにいたのが僕で、僕を求めて泣き喚くのが君。
そうだったらと何度も思って、夢に見る。
だって、君はいつも眩しくて、周りの奴をみんな溶かしてしまうくらい優しくって、もちろん人に好かれた。
葬式の日、僕みたいに泣き喚いて縋ってるやつが40人はいたし、そんな中でも君は美しく眠っていた。
僕の誕生日に消えてしまうなんて、とびっきりの呪いだなんて思って、1人で笑って、崩れ落ちて泣いた。
毎日君を思って泣いて、義務感で食事をして、仕事をする。
ゴミは捨てられないから部屋は汚いし、お風呂も1週間に一度しか入れない。
やっぱり僕は、君なしじゃ 世界を見ることすらできないんだ。
今の僕を見たら、君はなんていうだろうか。
拝啓、愛しいひと もう一度、最初からやり直してくれませんか 次は、きっと
〜創作メモ〜
二世信者
半洗脳状態の娘、神を信じる母親、妻に逆らえない夫
離れていく同級生たち。
大人になった娘、同じ宗教の元信者と出逢う
今日好きな人といっぱい話せた
いっぱいって言っても5分10分ぐらいだけど
ほんとに好きすぎてやばかった
もう好きって言っちゃおうか迷ったけど
邪魔になりたくなかったからいえなかった
卒業までの少しの間だけでもこの恋を楽しみたい
【泣かないで】
もし俺だったら、こんな小説を書くことはできなかった。
そう思い知らされたのは、親友の書いた小説を偶然読んでしまった時だった。
夕日の入る窓際の部屋。そこに親友は住んでいる。
そろそろ帰ろうかという時に偶然見つけた。
何のノートかと思い、何気なくぱらりとめくった先にある文字の世界。
それは、俺にとっては衝撃的なものだった。
こんな緻密で繊細なミステリー小説は読んだことがなかったからだ。直ぐに俺は世界に引き込まれた。
不可思議なトリック。癖の強い登場人物。そして散りばめられた謎。絡み合う伏線の数々。
弟みたいに思っていた彼の、描く世界は魅力的で。
もっと。続きが読みたい。
そう思ってページをめくろうとした途端。
「それは読んじゃだめだ!」
親友に、ノートをはたき落とされた。
すぐさま拾い上げ、彼はノートを体の後ろに隠してしまった。
「……なぁ、これ、お前がかいたの?」
俺の質問に、親友がびくりと震えたのがわかった。
「……は、恥ずかしい、だろ。大人にもなって、小説書いてて。もう、夢を見るようなガキじゃないのに」
「そんな事ないだろ」
大人になって作家になった奴らなんてごまんといるじゃないか。
そう言い返そうとして、止まる。
親友の瞳が、潤んで揺れていたからだ。
「そんな事、あるよ」
なんで? 文字なんて、文字の世界なんて自由なもんじゃないか。
少なくとも俺はお前の小説を、好きだと伝えたかったのに。
俺には書けない、あの物語を。
「そんな事….…あるんだよ」
後悔するような親友の言葉に、俺の心臓が大きく波打った。俺の知らない何かが、彼の奥に見えた気がしたからだ。
何が、彼を、そう苦しませるのだろうか。
俺にはわからないけれど。
「……泣くなよ」
小説を書くことを後悔してほしくない、と。俺は親友に近づいて、その涙を拭って見せた。
『泣かないで』と貴方は言った。
そんな無理なことを言わないでよ。
大好きな貴方にだけは言われたくなかった言葉
どうして貴方は気づかないの?
どうして貴方は変なところで気づくの?
不思議だね。この関係も不思議だ。
そんな困った顔しないでよ…。