三行(サブ)

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私は泣き虫だ。
ちょっとしたことですぐ泣いてしまう。
昔からそうだった。
小学生の頃、教室の後ろに飾っていた花瓶を落としてしまい、怒られる前から既に泣いていた。
どうしよう、いけないことをしてしまった。怒られてしまう。
そんなことを思うだけで泣いていた私はとある日、クラスメイトに言われた。
「また泣いてる」「どうせ嘘泣きでしょ」
そんな言葉を。
きっと、私が泣く度にイライラさせてしまっていたのだと思う。

大人になる頃には、あまり泣かないように気をつけることができるようになってきていた。
それでも、たまらず泣いてしまう時はある。
そういう時、周囲の人にとても驚かれたりする。
泣かないで、なんて言葉は聞き飽きていたんだけれど。

「感受性が豊かなんですね」
そういって寄り添って、泣き止むまでただ傍に居てくれた人は貴方が初めてだった。
きっと、その時から惹かれていたのだろう。
「好きです」
意を決して発した言葉の主は、私ではない。
「僕でよければぜひ」
私の親友だ。
知っていた。2人が惹かれあっていたこと。
だから応援した。それぞれが、お互いを想って色々考えたりする姿を目の前で見てしまったら、そうもなってしまうのは仕方ないだろう。

「お、おっけーしてくれた…!」
「よかったね…!!」
「あはは、ほんと泣き虫ちゃんじゃん、なんでアンタも泣いてんのよ」
「ふふ、なんか嬉しくてね」

嬉しい気持ちは嘘ではない。でも、同じくらい寂しい気持ちになっているだけ。

「よし、飲みにいくか!」
「えっ彼氏は?置いてくの?」
「今日は今まで応援してくれたアンタにお礼!奢るからちゃ〜んと奢られてよね!!」
「うん…!」

深呼吸して、切り替える。
だって私、2人とも大好きだもの。






「泣かないで」2023/12/01

12/1/2023, 8:29:21 AM