【泣かないで】
大吾さんが泣いている。
ベッドの端に力無く腰掛け、俺がいつだったかに置いていったワイシャツを手に静かに涙を流している。
震える大吾さんの肩に触れ、抱きしめる。それでも大吾さんの震えは止まらない。「大吾さん」と呼びかける。それでも大吾さんの涙は止まらない。
俺は自ら病院の屋上から飛び降りたことを後悔することはないと思っていた。
こうして体を持たない「何か」に成り果て、大吾さんが独りで泣いている光景を見ていることしか出来なくなるまでは。
「大吾さん、泣かないでください。俺はここにいます」
この声が届いてほしい。どうか、一度だけでいいから。
そう願いを込めた言葉は、大吾さんに届くことはない。
12/1/2023, 7:37:24 AM