冬山210

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『泣かないで』

君に泣かないで欲しかったのは、
「君には笑顔が似合うから」だとか、
「君が泣いてると僕も悲しくなるから」だとか、
そんな優しい理由じゃない。
そんな優しい理由じゃなかったんだ。

ただ僕は、泣いている君を慰めるのが面倒だった。
億劫だった。
君の気持ちなんて少しも理解できなかったし、
どうしたら泣き止むのかも分からなかった。
君の泣き声がどうにも耳障りで、
殺意のようなものすら感じていた。

だから、僕のために、君のために、
僕と君のために、
泣かないで欲しかったんだ。

12/1/2023, 7:22:31 AM