『スリル』
ハラハラする!ドキドキする!
心臓がドクドクと波打つ
スリルは生で生こそがスリルだ
予測不可能な人生を楽しもうじゃないか!
……何?
恐怖も緊張も嫌?
そんなものでは楽しめない?
自分はただ穏やかに生きていたいだけだ?
つまらないことを言うねぇ!
スリルのない人生なんぞ歩む価値もない
その臓器をお飾りのままにしておくつもりかい?
君のそれが波打つ時、
その血は全身を巡って君を君たらしめる
寿命が縮みそうなくらいの負荷を与えよう!
バクバクとする鼓動に耳を澄まそう!
それこそが今、君がここにいる証だ!
君がまだ、ここにいてくれている証だ
最高のスリルを楽しもう
予測不可能な人生を共に歩もう
そうしてどうか君の音を
少しでも長く僕の耳に。
あんなスリルはもう二度と味わいたくはないんだよ
『あなたとわたし』
川の彼方に行きたくて私、
渡し守の貴方にコインをあげたの。
でも通貨が違ったみたい。
だから今度はお歌を歌ったの。
でも言語が違ったみたい。
お金も力も素敵な贈り物も持っていない。
それでも私、この川の彼方に行きたいの。
訴えたって渡し守の貴方、私のことを見向きもしない。
すっからかんの船を渡し、彼方からまた帰ってくる。
貴方は一体、何処に何を運んでいるの?
200年彷徨うのだって私、別にやぶさかではないわ。
だって貴方永遠だし。貴女だって永遠だし。
ねぇ、渡し守の貴方。
いつか私をこの川の彼方へ連れて行って、
彼方の貴女へ私を渡してね。
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〈貴女と私〉
〈彼方と渡し〉
〈貴方永遠だし〉
『暗がりの中で』
膝を抱えてうずくまる貴方に灯りをあげましょう。
この蝋に火を灯せばきっと、
貴方を害するすべてのものから守ってくれる。
そんなおまじないみたいな灯りを貴方に。
軈て蝋は溶け、火は消え、灯りは失われるでしょう。
そうしたらまた灯りを届けにきます。
だから貴方は何も心配しないでいてね。
『愛言葉』
例えお前が生ゴミになったとしても愛してるよ。
嗅覚までは誤魔化せないから、
「くっせぇ」って言っちゃうかも知んないけど。
別にそれが悪いって意味じゃないから。
鼻つまみたくなるくらい臭くても、
目背けたくなるくらいグロくても、
それがお前であるなら俺は愛せるから。
吐瀉物だろうが痰だろうが愛するから。
お前が五十過ぎた頭皮の薄いオヤジになろうが、
体臭がきつくて脂でギトギトのオヤジになろうが、
それがお前ならそれで良いんだ。
どんな世界線でだって俺はお前が好きなんだ。
中指立てて人を虐めるような悪人でも、
快楽のために人の命を奪うような犯罪者でも、
弱者ばかりを狙う救いようのない人間だとしても、
それでもお前を愛してるよ。
否定はするし反対もするし、
時にはぶん殴ることもあるかも知んない。
でも絶対に嫌いにはならないよ。
絶対に一人にはさせないよ。
だからどうか、俺のことを嫌わないでいてね。
『カーテン』
カーテンが風を含んでふくらんだり、
風に引かれて窓の外へいくことを
『窓が呼吸している』と表現した君に
私は一生追いつけない。