『あの日の温もり』
初めて行った握手会。
大きくて温かかった貴方の両手。
あの温もりを忘れはしない。
大好きだった貴方達についていけなくなり、
推すのをやめて7年以上は経つでしょうか。
貴方達はとても大きくなりましたね。
ファンも増えてテレビに出る機会も増えた。
元気なら良いです。
昔、私は貴方達に幸せにしてもらったから、
今の貴方達が幸せでいてくれると嬉しい。
それは本心。
不倫とか活動休止とか色々あって、
正直推してなくて良かったって思ったよ。
今更何とも思わないしどうでも良いんだけど、
でもあの日のことは美化して覚えていても良いかな。
照明の光が強くて暑かったんだと言っていた。
だから手がめちゃくちゃ温かくなってたんだって。
じんわりとした熱に包まれて泣いた。
この人は実在するんだと知った。
貴方がどんなに最低な人だったとしても、
あの日の私にとってあの日の貴方は王子様だった。
『やさしくしないで』
あなたがとても優しい人であることは知っているわ。
その優しさに救われることもあるの。本当よ。
でもね、
その優しさに苦しめられることもあるんだって、
分かってほしい。
あなたが私に優しくする度、
私はとっても惨めになる。不安になる。怖くなる。
そうしていつかはあなたのことを嫌いになる。
私だってあなたのこと、嫌いになんかなりたくないわ。
だから優しくしないでほしい。
その優しさに報いることができないから。
見合うだけの何かを返せないから。
私はあなたに優しくはできないから。
何も返さなくて良いだなんて言わないでね。
只より高いものはないのよ。
『小さな勇気』
小さな勇気の結末が何も生まなかった時、
「やらなければ良かった!」と
悔いて恥じて首を括りたくもなるものだけど。
そのような妄想がどうにか私をこの世に留まらせる。
妄想の私が首を括ってくれるおかげで、
現実の私は首を括らずに済んでいる。
あーるあいぴー お墓を建てよう。
私の代わりに命を絶った、私のお墓を私の中に。
だからどうかそれ以上引きずらないで。
能天気に笑ってられるようにして欲しい。
いつだって首は吊れるから、
早く馬鹿笑いできると良いね。
『わぁ!』
指で狐を作ってね
狐の口を動かしながら
「わぁ!」って言って君に見せると、
君も指で作った狐の口を動かしながら
「わぁ!」って言ってくれるんだよね。
何も意味はないんだけどね
僕たちはよく指で狐を作っては、
裏声でわぁわぁ言いながら
狐の口を動かすんだ。
狐の口で狐の耳を噛んでみたり
狐の口を噛んでみたりする。
噛まれた方は決まって「わぁぁ!」と悲鳴を上げる。
狐の身体を震わせて逃げさせたりもする。
そういうことを小学生の頃から変わらずずっと
特に何の意味もなくやることが当たり前になっている。
電車の中で座っている時
店で料理が来るのを待っている時
映画館で映画が始まるのを待っている時
いつだって、どこでだって。
こんな幼稚なこと君とじゃなきゃできない。
そんな幼稚な狐同士の戯れを僕は存外気に入っている。
『あなたへの贈り物』
私があなたから欲しいものはたくさんあるのに、
あなたが私から欲しいものなんてきっと一つもない。
私はあなたの声が欲しい。
顔が欲しい。
指が欲しい。
唇が欲しい。
黒子が欲しい。
皺が欲しい。
耳が欲しい。
鼻が欲しい。
歯が欲しい。
皮膚が欲しい。
心が欲しい。
内臓が欲しい。
その目が欲しい。
その目に私を映して欲しい。
これでもまだ全然足りない。
もっともっとあなたから欲しいものがある。
でもあなたからは私に何も与えてはくれないし、
私からは何も受け取ってはくれないのでしょう?
いつも私が勝手に享受しているだけで、
あなたに与えているつもりは全くないのだから。
あなたへの贈り物を選ぶとしたら、
ゲーム機か寿司か、愛犬のグッズでしょうか。
どれも喜んではくれるのでしょうね。
贈り主が誰であろうと、同じように。