冬山210

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8/28/2025, 10:56:38 AM

『夏草』

君の背よりも高い高い緑を掻き分けて掻き分けて君を探した。
それは一種の隠れん坊だった。
けれどもここで君を見つけることができなければ、
もう二度と会ふことはないだらうといふ気持ちに駆られた。

焦っていた。

かんかんと照る夏の太陽の所為か、
いつまでも君が見つからない所為か、
僕の身体は既に水浴びをした犬の様に濡れていた。
汗が目に入る。口に入る。地面に落ちる。

早く君を見つけてこの腕に抱きたい。
ベタベタになって君は怒るかもしれないけれど、
君の体温ならいつだって感じていたい。

そんな思ひを抱きながら夏草を彷徨った。

8/26/2025, 11:38:44 AM

『素足のままで』

素足のままで良いから駆けておいで。
踵の痛い靴なんか捨ててしまえ。
邪魔なもの一つない綺麗な道をあげるから、
君はただ力の限り地面を蹴って走り続ければ良い。

7/26/2025, 12:26:22 PM

『涙の跡』

腫れた瞼
充血した瞳
頬にできた線
ふやけたノート
鼻をかんだティッシュ

君の涙の跡を愛おしいと思った。
一つ残らず保管したいと思った。
涙の跡にラベルをつけて今日の日付を書いておこう。
いつかそれを見返したとき、涙の理由を尋ねるから。
君はそれまでにその感情を言葉にしておくんだよ。

7/15/2025, 5:06:43 AM

『夏』

上田夏美
夏川なつ
夏生
美夏
冷染麗夏
大場朝夏
晴夏
朝夏金
三好夏造
神江人夏
夏音


これまでに書いてきた、
夏の字を持つ創作キャラの名前。

7/12/2025, 10:27:56 PM

『風鈴の音』

耳に残るあの音は、畳の匂いと共にあった。
真っ直ぐに咲いた向日葵は眩しくて、
壊れかけの扇風機しかない部屋は暑かった。
蚊取り線香の匂い。
蝉の鳴き声。
お昼ご飯はきっとまた素麺だ。


風鈴がチリリと鳴った。
夏にしては冷たい風が吹いた。
もしや貴方が、なんて思いながら茄子に箸を刺した。

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