『木枯らし』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
木枯らし?
それには程遠い、
今日は見事な小春日和☀
娘の背を押して応援してくれているようだよ!
大丈夫!大丈夫だってば!
みんなミイの味方だよ♥自分を信じて…
暴れてこ〜い\(^o^)/
耳を赤くする風が、いっとう強く吹いた。
文句の如く咳払いをしたのは、40代後半程の、黒いジャケットを着た男性だった。
枯れ木しかない並木道の中央には、堂々と規制線が張られ、男性はその線の中に堂々と入る。
周りにいた警官が労いの言葉をかけ、事件の状況、現状を説明し始めた。
耳と鼻を赤くする風が、いっとう強く吹いた頃。
辺りはすっかり暗くなり、街灯が淡く光る。
規制線は解除され、警官達も撤収し、何も知らぬ人々が、その上を歩いていく。
そんな様子を、不服そうに男性は見つめていた。
「ニキ、お疲れですね〜。肩でも揉みましょうか?」
背後から聞こえたのは、若そうで、元気そうで、おとなしそうな、女性の声だった。
振り返るのもめんどくさそうに、ニキ、と呼ばれた男性は、その女性と話し始める。
「いらねぇよ、そんなもん。どうせなんか持ってきたんだろ、やなぎ。」
やなぎ、と呼ばれた女性は、男性の前に回り込み、正解と言わんばかりに笑う。
ベージュの髪が肩下まで伸び、カーキのコートが夜風に揺れる。
大人びた20代ほどの顔が、その笑顔を作っていた。
「そうですよ。木枯らしが身に染みるこんな夜に、考え事をしているニキの為に、悩み事を解決するお品をお持ちいたしました。」
「なんだ?」
「あれ?いつも『だからニキじゃねぇよ』なんてツッコんでくれる警部が、そのまま素通りなんて。
本当に疲れてるじゃ無いですか!」
「疲れてるわ、見てわかるだろ。で?だから、なにしにきたんだ?」
さっさとしろと押し通す様に、語気を強めた男性警部に、やなぎは、はいはいと話を続けた。
「今回の事件は、ぱっと見ただの事故です。
被害者は軽傷。犯人も見つかって自供し、その辻褄も、目撃証言も、特に不審な点は無い。
でも、貴方からしたら、とてもおかしい。反吐が出るほどに、赤を青と言っているかの様に。」
男性警部は黙り込む。
「そりゃそうですよ。貴方は普通の人間とは違って、"想い"の力を感知できてしまう。
だから気持ち悪いんです。真相を少しだけ感じてしまうから。」
やなぎは、コートのポケットから、何かを取り出した。
それは手のひらサイズのスコップで、ガチャポンの商品にありそうな、ミニチュアさだった。
「これは依頼の報酬でもらった物です。これを地面に突き刺すと、その土地で死んだ人の記憶を、再生することができます。」
「代償は?」
やなぎが優しそうに微笑む。
「それを忘れない人で良かったです。
代償は、"一度見始めた記憶を、最後まで見ること"です。逃げも隠れもできない。そんな代償です。」
男性警部は、鼻で笑い、そのスコップを手に取った。
「んなもん、最初からそのつもりだ。ありがとうな」
男性警部は、肩を回しながら、先ほどまで規制線が張られていた場所に向かって、歩き出す。
その後ろ姿を、やなぎは木に寄りかかりながら、じっと見守る。
「『墓暴き』。"死人に口無し"という死の概念を、堂々と壊してしまう、そんな代物。警部なら、有効活用してくれますもんね。」
お題『木枯らし』×『死の概念』
どれくらい時間が経過したやろか、煙草を吸いたくなって、ポケットに手を入れてライターを探しとると、めんどくさい事に語尾に星が付きそうな後輩が、やる気満タンでやって来た。
「おはようございまーす!お邪魔しまーす!先輩のとっても可愛い!生ごみ回収の後輩ちゃんですッと、うわぁ…先輩、床が血だらけじゃないッスか」
「おぅ…」
きちゃなぁ~いと、出入口らへんでごみ袋を持って、そわそわする後輩が後ろから、真っ赤になって横たわる芋虫状の奴を見て、顔をちょっぴり顔面蒼白させる。
「あらら、先輩その人、完全に〆ちゃったんッスか?」
「…へんわ」
「え、なんて?」
「〆てへんわ!ボケ!季節外れの木枯らしみたいに冗談寒いわ!」
「えー、でも心は小辛しっぽいですやん!…俺、例え上手ない?少しツラい先輩の事をこがらしって、ふふっ、あっ、でも血が…?」
「ブロークンハートに、風が沁みるわってか?アホ…よぅ見てみぃ、そいつの血やないわ」
実際に殴ってもない、怒りで手を握り締めた時にボールペンで怪我した傷口が開いただけ。予想より多く血が出たせいで、床が真っ赤な花畑やし、床のコイツはビビってまた気絶しただけ、頭痛いわ…
「ほんで、お前はなんでココに来たん?」
「…えーっと、リーダーがここの作業場に来たら面白いもん見れるゆーたんで、超ワクワクして参上したッス!がっ!?」
床に綺麗にスライドする後輩と、後輩のポッケから出てきてくるくる回るライター、また広がる新しい紅い花
「ちょい、お前殴っていい?」
「殴った後に言わんといてくださいよ!」
「おっ、ライターやん借りるわ」
煙草に火つけて、肺を煙で満たしながら心を満たす。はぁー、沁みる…
木枯らし(1/18)
「木枯らし」
目も耳も 風の音ばかり 響きけり
昨日の桜 憐れに散らむ
【#10】
「木枯らし」
今年も木枯らしが冬を告げる
寒い日が来ますよと
冬の準備をしましょうと
冬には蝋梅が咲き始め
木々たちも冬支度
人は厚着をして
寒い日を過ごす
今年も春がやって来ると
ウグイスが告げる
長い冬の後に来る春
暖かい春に花々は一気に咲き始め
目を楽しませてくれる
自然を大事に
同じ生命だから
木枯らしのような
ねるねるねるね…
1つ風が吹くたびに
色が変わる。
その乾燥した空気が
寒い風が
ねるねるねるねと
あなたの心の色を
変えるのだ。
“木枯らしとねるねるねるね”
いつかの木枯らし
何度目かの北風で
葉を失った木
いつもは隠されている
骨組みだけの桜が
冬の中
あらわれる
左右バランスよい枝
毛細血管のように
くまなく伸びる枝先
上を向く
焦茶のふくらみ
下を向くものはいない
空を見る
4月の春をめざして
昨日のタイトル「美しさ」については、じつはここ数週間ぐらい気になってた言葉で、というのも「美学者」という方が社会現象について書いてる新書を読んでたら、いきなり「陰謀論は………美的な満足度が高い」とか、「美学者〇〇は、人々が陰謀論に惹かれるのは……「美的魅力」によるものだ…」みたいな表現が出てくる。日常的な「美」の使い方なら陰謀論は別に美しくないし、陰謀論の魅力についてはもちろん他の要素やより適切な形容もあるだろうし、だからこの美学者、「美」をより広義の精神作用の意味で使ってるんだろうけど、それはどゆこと?と思ってあちこち探すんだけど、それはどこにも書いてない。そのままで「美」とか「美的」とか「美学者」とかいう言葉が頻発してて、「あなたの美しさって何やねん??」ってなって読み進められなくなる。
新書が岩波、講談社、中公に富山房ぐらいしかなかった頃は、専門家が専門領域をコンパクトに解説していて、いろいろ教えてもらったし、でも難しかった。岩波新書なんて、全点奥書きに「道義の精神に則らない日本の行動を憂慮し、批判的精神と良心的行動の欠如を戒めつつ、現代人の現代的教養を刊行の目的とする」とか書かれてて、だから読んでても難しくて分からないのもあった。
何かの専門家が、専門外のこと、もしくはエッセイを新書にするような〇〇の壁現象の頃から、新書の出版タイトル数が増えて、するとたぶん編集者がPOPまがいの〇〇が9割とか、なぜひとは〇〇できなくなったのかみたいなキャッチーなタイトルを当ててくるので、読んでもどうして〇〇できなくなったのかが分からなかったりする。
なんかもう、タレント活動が本業の自称〇〇学者とかYouTuber系の〇〇評論家の営業の場にもなってる。
もちろんTOKYO MXの「なんて美だ!」(毎週火曜24:00-24:30)も、毎回 のように「それって美なの?」から始まるんだけど、こちらは出演してる現役東京芸大生がむしろスマートで、もしもこの人が新書を出したら、意外となかなかゴツい高階先生みたいなのを出してくるんじゃないかと思ってしまう。
凍える程の冷たい風が
僕ら二人を引き離していく
枝ばかりの街路樹が
いつもより寂しいね
木枯らしが吹いて舞う落ち葉
僕の涙も隠すようで
君に悟られないように
無理して笑顔で見送った
手を振ることも出来ずに
後悔だけが募って
同じ柄の手袋が二つ
行き場を無くしてる
会社から出て、空を見上げるとチラチラ細かい雪が風に乗って空を舞っていた。
「あ、雪だ……」
雪は好きだ。
雪が降ると世界が静寂に包まれる。
辺りの喧騒が、音が、全部雪に吸い込まれて消える。
まるで世界にひとりぼっちのような感覚がどこか心地良い。
疲労でぼんやりとしていた気分が少し上がる。
珍しいからといって、雪を見ただけでテンションが上がるとか、なんて単純なんだろうと苦笑する。
ヒュウッと風が吹き抜けて思わず顔をマフラーに埋めた。
雪は好きだ。
ただ、身体の芯まで凍えるようなこの冷たい風は頂けないな!と、足早に帰路を急ぐのだった。
#木枯らし
私って、もしかして30代で今がいちばんかわいいのでは?!
木枯らし
今日は講義が早く終わった。
大学からの少し近い公園へ向かう。
木々がミシミシとなっていた。今日は風が強い。
ベンチに座っている人なんていない。座りたい放題だ。
スマホをいじりながら君を待つ。
「おまたせ〜」
「おつかれさま」
「わっ」
木枯らしが君をおいかける。
巻き上げられた枯れ葉を髪やら服やらにくっつけて不機嫌そうだ。
「もう、せっかく髪の毛崩れてなかったのに」
「あはは、自然のほうが強かったね」
そうぶつくさとこぼしながら髪を整える。
隣に座った君の頭に、綺麗な枯れ葉を一枚、置いてみる。
「なんだかタヌキみたい」
「⋯⋯⋯」
「あ、」
けれどすぐに、木枯らしが綺麗な枯れ葉を持っていってしまった。
「木枯らし」
木枯らしが吹く日は冬に挨拶をコートを出してお洒落を楽しむ
「木枯らし」
我が家の愛犬は、寒さに弱い。
滅多に極寒にはならない地域だが、たまーに顔に当たる風が、凶器な時がある。
風が当たると、目から涙が出る。
耳もジンジンして、痛くなる。
そんな日は、決まって、散歩に出ても、自分で超超超超最短コースを選択する愛犬。
必要最低限な、トイレを済ませたら即Uターンをする。
進もうなら、柴拒否し、1歩たりとも進まない。
雪は、好きなのに不思議だ。
木枯らしもそうだが
風という明確な形のないものに対して
細かな固有名称を当てはめ、
更には風という言葉を用いずに表現したりするなど
昔の人らは皆詩人だと、疑っちまうが
やはり、
日本語という素晴らしき文化と
それを培ってきた先人たちに敬服せざるを得ない
我々にはその詩人たちの血が流れているんだと
そうだな
日本人は押し並べて素晴らしき表現者たちなのかもしれないな
私もその一人でありたいものだ
青空を覆い尽くしている灰色の雲。
木の葉が飛んでいきそうなくらい、強い風が吹いている。
すごく……寒い。
じっとしていると、身体が冷えていく。
でも、これくらいどうってことはない。
だって今日は……。
「ごめーん!待った?」
長い髪を揺らしながら、彼女が小走りでやってきた。
「全然!さっき来たところだから」
彼女の顔を見ただけで、身体の冷えは風と共に飛んでいった。
手を繋ぐと、彼女の手の温もりを感じて、思わずギュッと握ってしまう。
彼女もお返しをするかのように、ギュッと握り返してくる。
俺達はお互いの温もりを感じながら、久しぶりのデートを満喫した。
木枯らしがふく日は1人でいたいと思う。
あなたのことを考えなくて済むから。
葉が飛ばされていくようにあなたとの思い出も消していくの。
全部全部無かったことにして春を待つの。
※この物語はフィクションです。登場する人物および団体は、実在のものとは一切関係ありません。
※暴力的な表現、流血表現を含みます。苦手な方はご注意ください。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
タイトル『木枯らしに疼く古傷』
冬の冷たい風が街を抉(えぐ)っている。
木の葉を吹き散らす風を、人は情緒的に木枯らしと呼ぶが、その実態はただの暴力だ。通り魔のように街を荒らし、剥き出しの肌を突き刺し、生きる者の体温を容赦なく削ぎ落としていく。
俺は、その暴力の吹き溜まりのような路地裏で、辛うじてコンクリートの冷たい壁との境を保っていた。
右脇腹の熱は、とうに失われ、じくじくとした鈍い痛みだけが俺の意識を繋ぎ止めるように響いている。
コートの上から傷口を圧迫していた左手は、すでに自分のものとは思えないほど冷え、しばらく指の隙間から溢れていた鮮血は生気を捨て、不快な粘り気とともに腐った泥のような茶黒い塊へと変貌していた。まるで運命に抗う行為そのものが、冬の風に嘲笑われているようにさえ思えた。
皮肉なものだ。まさか十年前につけられた古傷のすぐ脇に、奇しくもその血縁による傷を受けることになろうとは。
ほんの数十分前、ここで俺の腹にナイフを突き立てたのは、まだ歳の頃は十六、七の少年だった。
組織の連中が彼に吹き込んだ嘘は、若く軟弱な少年の脳を『復讐』という劇薬で焼き切るには十分だった。
『あんたが唆(そそのか)さなければ、親父は死なずに済んだんだ――』
過程はどうあれ、結果は似たようなものだ。そこに関しては弁解の余地はない。
彼が振りかざしたナイフの軌道は、稚拙で不安に満ちていた。恐らく刃先を人に向けたのさえ初めてだったのだろう。その目に滲む殺意は手の震えに呼応するように大きく揺れていた。
彼は、俺の脇腹から溢れ出る赤黒いものを見るやいなや、絶叫と共にナイフを放り出し、暗がりの向こうへ逃げていった。
新しくできた傷は、もはや古傷の場所を隠すように覆い被さり、まるで傷が互いに手を取り合うように、忘れようにも到底拭い去れない過去が疼き出す。
今から十年前、俺がまだ二十歳そこそこで組織の構成員だった頃。兄貴分だった『兼元(かねもと)』という男と協力して、組織が事務所に隠していた裏金を密かに持ち出した。
組織から逃れるため、人目につかない漁港の陰で兼元と待ち合わせた。身を切るような寒さの中、兼元は札束の詰まったドラムバッグを手に、俺から目線を逸らすように静かに言い放った。
『すまねぇ……。俺には、堅気の世界で育てなきゃいけないガキがいるんだ』
兼元が俺に体重を預けるように寄りかかった直後、脇腹に熱が集まっていくのを感じた。そのまま蹴り飛ばされるように冬の冷たい海へと放り出された。
俺は闇に沈みながら、自分の体温が海水の中に溶け出し、やがて冷徹な無に変わっていくのを感じていた。
一命を取り留めたのは奇跡だった。
俺は名前も戸籍も捨てて新たな人生を歩みだした。とはいえ、金もなければ行く当てもない。途方に暮れるなか、風の噂で兼元が交通事故に巻き込まれて命を落としたというニュースを目にした。
組織が当時小学生だった息子の身柄を引き取ったと知ったのもその時だった。あいつが俺を裏切ってまで守ろうとした存在が、泥水の中に引きずり込まれんとしている。俺にはどうしようもなく我慢ならなかった。彼に会わなくては、と気づけば足が動いていた。
それがまさかこんな結末になろうとは。
組織が描いたシナリオは、低俗だが極めて論理的だ。俺という『過去の遺物』を裏切り者の息子という『未来の駒』に片付けさせる。これ以上のコストパフォーマンスはあるまい。
ふと、乾いた足音が、路地の入口から聞こえてきた。先ほど俺を刺して逃げていった、兼元の息子。
「まだ、生きてたのかよ……」
闇に消え入るような声で呟いた彼の目は、生きる屍でも見るように恐怖に慄いていた。
なぜ戻ってきたのかは想像がつく。どうせ組織の奴らに念でも押されたのだろう。生死は確認したのか。証拠を残すな。すべてはお前がやったことだ、落とし前は自分でつけろと。
少年は地面に落ちたままになっていたナイフを震える手で拾い上げた。構え直した刃先は宙を泳いでいる。
俺にはもう動く力も残っていない。やるならやれ。どうせ俺には帰るところもない。
「俺をあいつのところに連れて行け」
乾いた唇を無理やりに動かし、掠れる声を何とか絞り出す。少年の腕に力が入る。アスファルトを踏みしめる足が僅かに音を立てる。
「確実にやるなら、次はもっと心臓の近くを狙え……」
俺は自らの胸に指を突き立てて、彼の行く先を示してやる。
「うあ゙ぁぁぁぁ――!!」
彼の怯えるような叫び声が路地に響いた。もはやそこに彼自身の意思など感じられなかった。どうしようもない感情の行き場をただただ放り投げるような、自分以外の何かにすべての責任をなすりつけるような衝動が彼を動かしているように見えた。
振り下ろされたナイフが、俺の胸まであと一寸のところでピタリと止まる。その瞬間、彼の手首はこれまで以上に大きく震え、やがて力が抜けたようにナイフを手放した。
地面に乾いた金属音が響き、少年はまるで催眠でも解かれたように、その場にへたりこんだ。
「親父……、俺にはできないよ」
鼻をすする泣き音を纏って闇に浮かぶのは、まだあどけない十六歳の輪郭だった。
俺は尽きかけている力の限りを振り絞り、這いつくばるように彼の元へと身を寄せた。体を動かすたび、思い出したように傷口へと激痛が走り、乾いた塊を上塗りするように赤々とした鮮血が滲む。
俺は少年の手を取り、自らの傷口に引き寄せた。彼の手は柔らかく温かかった。俺の体から流れ出る熱が少年の体温と混ざっていく。
少年が涙や鼻水でぐしゃぐしゃになった赤子のような顔をその手に向けた。
「この熱を覚えておけ……」
赤く染まっていく手に彼は何を見ているのかは分からない。だが、俺はどうしても伝えたかった。命を懸けてお前を守ろうとした人間がいたことを。そして、お前にはまだ輝かしい未来が待っていることを。
俺の肺機能は限界を迎えようとしていた。一息吐くごとに血の混じった鉄の味が込み上げてくる。
「逃げろ……」
それ以上の声は出なかった。
彼は俺の手を振りほどくように立ち上がり、俺を刺した時と同じような顔で、闇の向こうへと走り去っていった。
過去の裏切りだとか、恨みの連鎖だとか、そんなものはもうどうでもよかった。
神様、どうかあいつを守り抜いてやってくれ――。
木枯らしが路地を吹き抜けた。それは神の承諾か、それとも蔑むような笑い声か。
やがて俺の肉体から溢れ出した熱は完全に失われ、コンクリートの壁との境が曖昧になる。視界が、ゆっくりと黒く塗り潰されていく。
日が明ける頃、きっと俺は乾いて石化した黒いシミになっているに違いない。そこに俺がいた痕跡などはありはしない。コンクリートの路地の片隅で、ただの汚れとして、冬の街に溶けて消えるのだ。
ただ、あの少年の行く先には明るい道が続いていることを願うばかりだ。もはや痛みすら感じなくなった俺の体には、兼元が残した古い傷の疼きだけがずっと熱を持ち続けていた。
『木枯らしに疼く古傷』―完―
#木枯らし
木枯らしが鳴くと、枝の上で色をなくした木の葉がいっせいに渇いた音を立て始める。
靴底から這いあがる冷気に身を縮こまらせて歩いていた俺は、ふとその音に足を止め、街路樹を見上げた。
ずいぶんと葉っぱが落ちている。
今年ももう、終わりが近いのか。
時の流れの速さを思い出し、ゆっくりと目を閉じる。
10年前、大病を患った。
体調のおかしさに気付きながら、特に理由もないまま後回しにした結果だった。
すっかりと気落ちした俺は、病室の窓から毎日木を眺め、『あの葉っぱが全て落ちたら俺は……』なんて本気で思っていたが、治療を重ね、今がある。
別にやりたいことなどなかった。
ただ、なんとなく生きていた。
だが、全てを失いかけて、この世の尊さを知った。
あの経験がなければ、木枯らしの音に耳を傾ける俺はいなかっただろう。
今も、やりたいことなど見つかっていない。
ただ、生きる。
それがどんなに難しくて、どんなに尊いのかを知っただけだ。
だけど、そうだな……
少しだけ人に優しくなった気がする。
だって、ほら。
目を開けた先にいる老婦人が重そうな荷物を抱えながら、大変そうにしているのが見えるんだから。
以前は見えなかった。見ようともしてなかった。
「よぉ、おばあちゃん。何か手伝おうか?」
俺がそう声をかけると、老婦人は驚きながらも、嬉しそうな光が目に宿る。
ああ、今日もいい日だな。
木枯らし
もう卒業なんだな...
嬉しいような悲しいような
いろいろなことがあったな
バカ騒ぎして先生に怒られたり
体育祭で本気出したり
勉強なんて本気でする気はなかったのに
なぜか高得点だったり
まぁ、その一つ一つが積み重なって今の時間がある
まともに学校行くのなんてもう10日ほどだもんな
2月なんてもう行ってないのも同じだし
学校休みになるのは嬉しいのに
何で終わるとなるとこんなに悲しいしさみしいのだろうか
北風が吹いてくる
もう枯れ葉はほとんど落ちてる
木枯らしが落とした枯れ葉
その木は春になるとまた葉を広げる
そのころは僕も卒業するだろう