『月に願いを』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
“月に願いを”
朝目が覚めたら、遠距離中の彼女から月の画像が1枚だけ、なんの説明もなく送られてきていた。
満月でも三日月でもなんでもない月の写真だ。
何より何のメッセージもなく写真だけというのがひっかかる。通勤中に調べてみたり、休憩中に職場の人たちに聞いたりしてみたもののしっくりくるものはなかった。
月といえば、I Love You.を月が綺麗ですねって訳した文豪がいましたよね、なんて若い女性社員たちが話していたがその話は信憑性にかける逸話なのだと当の彼女から聞いているのでその線はなさそうだ。
藤原道長の歌になぞらえて、満ち足りていてすごく幸せですってことじゃないのか?と平安文学にハマっている先輩がニヤニヤしながら言ってきたが、あの歌には色々な解釈があってどうのこうのと熱く考察していた彼女の姿から思うにその説も薄いんじゃないかと思う。
いろんな人に聞いてまわった結果、正直なところあんまり意味はなかったんじゃないだろうか、なんて可能性も出てきた。
ただ綺麗だったから、ただ寝落ちてメッセージを送り忘れたから、そっちの方が彼女らしいんじゃないか。
休憩の終わり間際に綺麗な月だね、なんて結局当たり障りのない返事を送ったが、仕事中も頭の片隅にあの写真がチラついていた。早く仕事を終わらせて電話したい。
なんとか定時に終わらせて帰り道で電話をかけるとすぐにケラケラと彼女が笑う声がした。
『あの写真、なんだったの?』
『ふふっ。なんだったと思う?』
からかう様な彼女の声色にすら、可愛いななんて思ってしまうのは惚れた弱みってやつなんだろうか。
電話越しの彼女に見えるはずないけれど、俺は片手を上げて降参のポーズをとった。
『今日一日ずっと考えてたけどわかんない。降参降参』
『……ふぅん。一日中考えてたんだ』
『なに?疑ってる?本当に一日中考えてたよ。』
職場の人たちにも聞いて回ったんだから、と話せば彼女がどんどんご機嫌になっていくのがわかる。
なんだか良くわからないけど、一日中考えていたのは彼女的には大正解のようだ。
『ねぇ、結局なんだったの』
『……ないしょ!』
結局教えてもらえないまま通話は切れてしまって答えはわからずじまいだ。だけどまあ、彼女がご機嫌ならそれでいい。
明日も明後日もずっと、彼女がご機嫌に笑ってくれますようにと満月でもなんでもないただの月に祈って、俺はその月の写真を彼女に送っておいた。
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※I Love Youのくだり、並びに望月の歌の解釈はかなりエアプです、事実と異なる可能性があります
「月に願いを」
「月が綺麗ですね」
満月の深夜で僕は君に話しかけた
月明かりが海の青さをまた輝きをまして
黒と青が混ざり輝いていた
君は僕の言った月の言葉をまだ知らない
願いを込めて
勇気を持って
「青い月も、見れるかもしれませんね」
ボソッと君が言った
僕の反応を見るかのように
月明かりに照らされた君の笑顔は
今でも忘れられない
その後僕と君はどうなったのか……
答えの分からない方が色んな想像が出来る
君は僕に無限の想像力を教えてくれたのかもしれない
それか……
ただからかっただけだったのか……
君の気持ちは……
分からないからこそ
そのままの君でいて欲しい
月に願いを込めて今日も海を見る
月に願いを
夜、外に出て、空を見上げる。
今日は満月の夜。
いつも夜空に無数に瞬いている星々も、
満月の前では、何処か脇役みたい。
よく晴れた夜には、
孤独な日々を送るボクを、
その輝きで慰めてくれる、
大好きなきらきら星たちに、
『今夜だけは、ごめんね』と呟いて。
天高く、神々しくも寒々しい光を放つ、
青白い満月に、願いをかける。
お月様。
どうか、ボクを助けて。
ボクを空に引き上げて、
あなたの周りで、毎夜キラキラと輝く、
数多ある星の一つにして。
月に願いを。
叶うことのない願いだけど。
今のボクには、祈る事しか出来ないから。
でも。
明日の夜から、また。
満月は、少しづつ欠けていって。
そのうち、消えてなくなってしまう。
…叶わないボクの願いと、共に。
お月様...
お願いだから
もっと寝かせてください
まだ夜中の13時20分
明日は月曜日、
仕事で朝が早いんです
……まただ。今日も寝れない。薬を喉に流し込んでもいい匂いのアロマを焚いても癒しの音楽を流しても寝れない。眠気はあるのに、横になってるのに、眠れない。また一睡も出来ぬ寂しき夜を過ごすのか。満月が此方を自分勝手に照らし微笑んでいる。そんな柔らかい光を浴びせるなよ。俺が惨めに見えるだろ。なぁ、頼むよ。…どうせなら、其方側まで連れてってくれよ。
/ 月に願いを
月に願いを
今夜君に
「月が綺麗ですね」
って言ったら
「今なら手が届くかもしれませんよ」
って返してくれますように
「欠けてしまう月や流れ落ちてしまう星に願い事をするのって、不安にならない?」
ベランダで缶ビールを飲みながら、彼女は不意にそんなことを言った。
「そう?」
スルメをくちゃくちゃ噛みながら、私はのそのそベランダまで這いずっていく。外は虫がいるからあまり出たくない。網戸を挟んで部屋の内側から、タンクトップ一枚の彼女の背中を見つめる。
「そんなものに願い事をしたって、ちゃんと聞いてくれるか分かんないじゃん」
「あー、確かに」
それでも彼女は月から目を離さない。今日は満月。いつもより大きく見える月が彼女を照らしている。
「やっぱご利益ありそうな仏像とかがいいよ」
「そっちのが下世話な願い事は却下されそうじゃない?」
「そうかなぁ」
私達は週末、こうして互いの家で呑みながらダラダラとくだらない会話をする。そんな生活ももう七年。
親友というか、腐れ縁というか、心地よい関係は続いている。
「ってか、下世話な願い事ってなんだよ」
笑いながら彼女が網戸を軽く叩く。
私はようやくスルメを飲み込んであはは、と笑う。
「お金持ちになりたいとか、恋人が欲しいとか、美味しいもの食べたいとか、下世話な事願ってられるのは平和な証拠だよ」
「そりゃそうだ」
「アンタはなんか願い事あんの?」
大きな丸い月を背に、彼女が振り向く。
「んー·····」
網戸越しに月を見る。
焼き目のついたホットケーキみたいだ。
食べたら無くなってしまうホットケーキに、私は何を願うだろう?
「とりあえず腰が治りますように」
「ぶっ!!」
缶ビールを盛大に噴き出す彼女に、私はまた笑う。
欠けてしまう月にも、流れ落ちてしまう星にも、食べたら無くなってしまうホットケーキにも、本当に叶えたい願い事は言わない。――これは私が全霊をかけて、自分の力で叶えなきゃいけない願いなんだから。
〝ずっと彼女と一緒にいられますように〟
END
「月に願いを」
月に願いを 5/27 1:25
子供の頃は、特にそういうのが好きだった。
月に願ったり、自然に思い馳せたり、海や魚にもそう。神様とかね。
でもいつからか、自分以外への期待の気持ちが薄れていってからは、あまりしていない。月に願ってどうするんだろう、みたいな。今の私が何を願うんだ?
でも、月は好き。夜の空も好き。自然の匂い、海、魚、動物も好き。花も好き。写真も撮る。
でも、強いて言うなら、明日も月を見たいなって思うくらい。
月、月も、太陽も。空も、晴れてないと見えないから。明日も晴れてたらいいなって。
雨はあんまり好きじゃないし、体調も悪くなるし、雷は苦手。怖い。雨の音が嫌いなわけじゃないんだけど。
どちらかというと、晴れが好きだから。
月が綺麗な夜っていいよね。照らされてて。
そんな月も、太陽に照らされた反射なんだっけ。
可愛いね。あんなに綺麗なのに儚いね。
月に願いを
「ねぇ、知ってるかい?あのお月様には願いを叶えてくれる女神様が住んでて、いつも見守ってくれてるんだよ。きっと願い叶うからさ。ほら、君もあの月に願いをしてみて!……。ねぇねぇ、それで何お願いしたの?聞かせてよ。」
月に願いを
こんなはずじゃなかった
生き生きとひたすらに仕事するもんだとおもってた
病魔が襲ってきた。病魔に取り憑かれたわたしを
人間たちは嫌がったのだ。顔がひきつっていくのだ。
なんとか平常心の振り。いや、頭が重くて動かない。
手も動かせない。
助けて。
助けてくれてのは親だった。ここが転機だった。
楽しいよ毎日。良かった。取り憑かれた私を心配してくれた。
これから何年ママといられるのかな。ずっといられたらいいな
怪我なく病気なく、元気に。
お月様、お願いします
『月に願いを』
お願いします
時を戻して下さい
もう一回バスケをさせて
一回だけでも全力でしたい
なんて叶いっこないけどね
#33
月に願いを
今日は綺麗な満月と言っていたな。
朝、家を出る瞬間に一瞥したテレビを思い出す。
空を見上げるとその空は雲に覆われていて、ただ、暗く。湿っぽい雲が厚く、俺に秘密を知られたくないような。意味深な空があった。
別に隠さなくても俺は他の奴らとは違う。固定されたお前の姿でお前を見たりはしない。だからお前も何でもない俺を受け入れてくれないか。
水は決して止まることなく、忙しく流れ、それは今まで刻んできた俺の時間とフェアであった。時は、だれにでも平等な速さで流れていった。
下を見ると、隠されていて、あるはずのなかった。人々から満月と呼ばれているお前が、川の水に反射して俺を見上げていた。
「次は互いに堂々と存在しような。」
橋の上に立っている君はそう呟いて、足の力を抜き川へと落ちていった。僕は空から君の隠せない瞬間を見てたよ。少し薄くなった雲達は君の最期を少しだけ見せて、また、君を覆い隠した。
きらきら
静まり返る夜に
真上に光る月
アルテミス、セレーネ、嫦娥そしてツクヨミ
月の神様は皆女性
影は女性の象徴
あぁ、月の神々よ
私の願いを叶えて
太陽と手を取り共に歩きたい
どうか女性に権利を
月に願いを
夜の涼しさが身に沁みる季節、そよ風のなか月明かりに照らされる。
君もこの月を眺めているのかな。そうだったらいいのにね。
君はどこにいるのかな。雲に隠れてはいないかい?
月が僕らを繋いでくれる。会えない君を、少しだけ。
また会う日、君は僕を喜んでくれるのかな。
君は君、僕は僕。再びお互いの道が交わることは、きっとないだろう。
それでも、僕は君を恋焦がれる。また会いたいと月に願う。
月が滲み、スパークリングワインが喉を鳴らした。
月に願い事をしてごらん。
願い事をしたらどうなるの?
願いが叶うかもしれないよ。
どうして願い事をするの?
叶ってほしいからするんだよ。
叶わなかったらどうするの?
それでも願い事をするんだ。
叶わないのに?
叶うかもしれない。
ふうん、なんか変なの。
そうだな、変だな。
自分で叶えたらいいのに。
そんだな、みんなそう願ってる。
月に願いを
移り気な
満ち欠けする
月にかけて
誓うのはやめて
そんな物語もあった
しかし月のいろいろな姿に
やはり魅了されるのだ
月明
朧月夜
たまにかくれんぼ
飽くことなく
空を見上げる
今宵の月は
兎が見えるだろうか
「今夜は月が綺麗だね。」
そう言って、隣に輝く月が、僕の隣でなくてもいいから、ずっと綺麗に輝き続けるよう願う。
「月に願いを」
願いは2つの種類があると思う。
生きているうちに叶えられる願いと、もう叶えられない願い。
月に願いを言う時は、どちらの願いを言えばいいのだろうか。
「月に願いを」
月のような友がいた。
向こうはどう思っていたか分からないし、時間が 記憶を美化しているかもしれない。
けれど、私にとっては月だった。
いつか正面で向き合って会えた時、 笑って「元気だった?」って言いたい。
そう思いながら、いつも月を見る。
「月に願いを」
月を済まない。
私は「星に願いを」タイプだった。
弓形の月に手を伸ばす。
今にも消えてしまいそうな、青白く儚げな月が、青々と広がる朝の空に、控えめに浮かんでいる。
むかしむかし。
身を挺して飢えから神様を守ったウサギたちは、その大きな耳を翼へと変えて、はためかせ、月へ飛んでいった。
むかしむかし。
海底を歩き、浜辺を歩き、波を害さず。
海の良き友人であったカニたちは、海の潮に導かれて、月へたどり着いた。
むかしむかし。
月の動きを重んじ、同調圧力に屈することも弾圧に屈することもなく、最期まで月の良き理解者であった魔女たちは、月への行き方を知っていた。
むかしむかし。
蔦と茂みの中を差し込む月の光で、真っ先に目覚めるワニたちは、星の川を泳いで、月へと昇った。
むかしむかし。
月の光を一身に浴びて眠るライオンは、夢の道を通って、月へ迷い込んだ。
むかしむかし。
蓮の葉の影から月光を眺めて、月の美しさに敬意と祈りを捧げていたヒキガエルは、月の後を追いかけて、月へ追いついた。
やがて月は地球から、ゆっくりと逃げていった。
自分の仲間たちを、腹の中に抱いたまま。
月が離れていくと、空の崩壊が始まった。
空はゆっくりゆっくり、太陽に引き込まれていった。
空は太陽に引っ張られながら、でも今も、青々と僕たちを見下ろしている。
ゆっくりと遠ざかっていく月は、青い空の端に弓形の背中がみえるだけだ。
月の背中は遠い。
僕は月に手を伸ばす。
昔から、月に触れてみたかった。月が大好きだった。
月はずっと、大切な僕の友人だった。
そんな僕は、地球に愛想を尽かして逃げ行く月の、その小さな後ろ姿にでさえ、縋らずにはいられない。
月に願いを。
僕は月に手を伸ばし、月に願いを込める。
どうか、戻って来てください。僕の大切な友人様。
あなたがいなくては僕がやっていけないから。
せめて僕の友人を帰してください。
あなたが帰らなければ僕は2つの友人を一気に失ってしまうから。
伸ばした手が、震えて降りる。
ザザンッ……音だけが寂しく響く。
僕は揺蕩う波の中を泳ぐ魚たちを、優しく揺すりながら空を見上げる。
僕は海。地球上で月と一番仲が良いものだと自惚れていた、月の友人。
空を見上げる。
かつての友人の背中が、遠くに見える。
微かに体が震えて、小さく波を立てた。
ザブンッ…
権力者の世界は、基本的に夜しかない。
月が光っている、綺麗に。
前に演奏者くんが「月に願い事をすると叶う可能性が高い」なんて言ってたっけ。
願い事か⋯⋯⋯⋯。
ボクが叶えたい、願い。
権力者であり続けたい⋯⋯⋯⋯わけじゃない。
この世界に来た迷い子を意思のない人形のようにし続けるのはいやだ。
演奏者くんがこの世界にずっといて欲しい⋯⋯⋯⋯なんて言ってはいけない。
彼の自由を奪うことをできるほど、ボクと彼は対等ではない。
演奏者くんと付き合いたい⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯なんて、何を考えてるんだボクは。
付き合いたいとかそういう話ができるほど対等じゃないと、何度思えば⋯⋯⋯⋯。
それでも、それでもたぶんこの恋心は消えないし、消すことを願うことすらしたくない。
だから、月に願い事をするならば。
「どうか、少しでも長く幸せな日々が続きますように」
そんな子供っぽい願いを口にして、ボクは月に背を向けた。
叶ったかどうか確認する術はない。代わりにどんな状況になっても『願い事をしなかったらもう少し短かったんだ』と思うことができる。
そんなふうに無理やり自分を誤魔化してボクは演奏者くんがいる『昼』の場所へと戻ることにした。