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月に願いを


今日は綺麗な満月と言っていたな。
朝、家を出る瞬間に一瞥したテレビを思い出す。
空を見上げるとその空は雲に覆われていて、ただ、暗く。湿っぽい雲が厚く、俺に秘密を知られたくないような。意味深な空があった。

別に隠さなくても俺は他の奴らとは違う。固定されたお前の姿でお前を見たりはしない。だからお前も何でもない俺を受け入れてくれないか。

水は決して止まることなく、忙しく流れ、それは今まで刻んできた俺の時間とフェアであった。時は、だれにでも平等な速さで流れていった。

下を見ると、隠されていて、あるはずのなかった。人々から満月と呼ばれているお前が、川の水に反射して俺を見上げていた。


「次は互いに堂々と存在しような。」






橋の上に立っている君はそう呟いて、足の力を抜き川へと落ちていった。僕は空から君の隠せない瞬間を見てたよ。少し薄くなった雲達は君の最期を少しだけ見せて、また、君を覆い隠した。

5/26/2024, 4:18:10 PM