『月に願いを』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「…月が綺麗ですね」
満月の夜、溜息とそんな独り言を零す
いつかあなたに伝えられますようにと月に願いを込めて
『月に願いを』
願い事。
誰に言っても、
何を言っても、
届かない、この願い。
真っ暗な空にぽつんと浮かび、
ぼんやりと光る、この月夜。
あの少しの光が、
私に一人の時間を与えてくれる。
あの少しの光が、
私の心を浮かせてくれる。
願い事。
星に願いを。
流れ星よりもっと明るく
月に願いを。
太陽よりもっと美しく
この月夜に、
願わくば。
月はいつでも空に輝いて
そっと私を見守ってくれる
辛いときも悲しいときも変わらずに
見守ってくれる
月に願いをこめていつか叶いますように
#25『月に願いを』
星は流れて果ててしまうから、
いつもそこに居てくれる月に願う。
見上げた空
あなたも同じ空を見ているのかな。
月に願いを
月に願いをするなら
縁側に月見団子を
見ながら考える
ウサギって本当にいるの?
お餅ついてるの?
そんなことしか考えられない
私は平和だ
夜中、急に目が覚めた。
時刻は午前三時、月明かりが部屋に差し込んでいる。
横で眠る君を起こさないよう、そっと起き上がり、ベランダから月を見つめる。
静寂に包まれた部屋の中、君の寝息だけが聞こえる。
いつもはお姉さんぶっているのに、寝顔は子供みたいだ。
ふと、そんな状況を幸せだと感じる。
愛おしくてたまらない気持ちになる。
「あぁ、この時間がずっと続けば良いのに。」
月に向かってそう話しかける。
—————-月に願いを
テーマ:月に願いを
私は、昔から手に届かない人ばかりを好きになる。
友達関係であれ恋であれ、私のことをまるで好きになりようがない人にばかり惹かれてしまいます。
今はだいぶ落ち着いたけど、私は私に似た要素を感知すると過敏に反応して避けてしまう。
自分とは全く違う毛色の人間の横顔が美しく見えてしまうのです。
深く交友するわけでもなく相手の中身をきちんと知ろうともせず。あー恥ずかしい。
そうやって、はじめから進展性ゼロの交友関係に憧れを持つことが多かったからか、いつからか月を見ると誰かのことを思い出すようになりました。
そこにいるのに届かない人。
大きな存在で、でもずっと遠くにいるからぼやけてよく見えない人。
夜道で月を見上げる度に、その時その時の好きな人のことを考える。
あの人と友だちになりたいな。と思うとき、まあなれるわけないか。とも思う。関わって傷付けたくないし、傷付きたくない。
勝手に憧れたりして、それすらも人によっては知ってしまったら不愉快だろうな……と思ったりする。
月がきれいだな、と思うときはさみしくて、さみしいな、と思うときは少し気持ちいい。
なんだかんだそれで平気だからなんとかやっていけてるような、そんな気がします。
そこにある 保証のない 新月よ
自ら光れ 陽に頼らずに
【月に願いを】
「おい」
窓辺から身を引き、ギターをケースにしまい、休もうかとベッドに身を横たえてしばらくして、そんな声が聞こえた気がして、俺は身を起こした。
「――」
それは夢か、幻覚か。そう思った。癖の強い髪が月の光に透けているように見えていたから、あるいは、シルエットが光を帯びているように見えたから。もしくは、あまりに甘い気持ちでいたから、それが目の前の影を呼びさました――とすら感じていた。いささか文学的すぎるが、それにしても都合がよすぎるというものだ。たとえ彼女が一流の盗賊なのだとしても。
「何を呆けている?それとも私の姿など憶えるほどのものではなかったか?」
「あの。本当に、」
あなたなんですか?
ベッドからすとんと降り、肩を掴むと、それが実体のあるもの、つまり本物のあのひとであることが分かる。
「どうして」
二歩ほど下がってあのひとの目を見あげる。裸足でいるためか、いつもよりわずかに高い位置にあるブラウンの目が静かにこちらを見据えている。
「呼んだのはお前だろう」
そう、一歩そのひとは踏み出す。俺はそれに合わせて下がろうとして、ベッドに突き当たって体勢を崩すと、目の前の影がしなやかな動きでそれを踏みとどまらせた。そのままいつもよりはソフトに抱かれる。
「危ういやつ」
その振動を感じて、俺はようやく相手の背中に腕を回した。ふたり分の力で引きあっているのに、今日はそれほど苦しくない。ほんの少し月明かりが眩しい。
「聴いていたんですか?あの歌を」
「意味は分からなかったがな。前よりはうまくなったんじゃないか?ああいう歌も」
――前聴いたときは甘ったるくてとても聴いちゃいられなかったぞ。
宿の人に怒られないようにずいぶん音を絞ったつもりだったんですが。そう言うと、私を何だと思っている、とあのひとは返してくれた。
普段とは違う種類の抱擁。あのひとも、俺も、相手の身体を求める気持ちはたぶんない。しばらくそのままでいると、あのひとは来い、と言って窓枠に足をかけ、すぐそばに張り出している屋根に飛び移った。
「ちょっと」
俺は及び腰になりながらもそれに続く、当然、あのひとのように静かに飛ぶことはできなかった。
「まあ、落ちなかっただけでもいいか」
そう言って屋根のてっぺん、棟と呼ばれる場所に腰を下ろし、手で隣に座るようにあのひとは促した。
「今日は飲んでないんですか?」
俺はそう言いながら少し間をとって座る。あのひとはそんなわけないだろう、そういってどこからともなくスキットルを出すと、蓋に酒を注いでこちらに渡し、自身は直接注ぎ口を舐めた。彼女のいつも飲んでいる蒸留酒の匂いが鼻をつく。
「カージェスとポーラを酔いつぶしてやった」
「またそんな――」
ちゃんと部屋まで送ってあげたんですか?と問うと、それは居合わせたやつに押しつけてやった、と応えてあのひとは声を出さずに笑う。そうして、俺はようやくあのひとの息から酒気を感じるようになる。
「ほら、お前も飲めよ」
さらにスキットルをひと舐め。それを見て俺はようやく蓋に口をつけた。
「ん、――ふぅ」
やはり蒸留酒をストレートで口にするのはきつい。こんなところに割るものなどない。そんな風に飲んでいると私に襲われるぞ?そう、あのひとは俺の空いた手に自身の手を重ねる。
「でも、そんな気分じゃないのでしょう?今日は」
分かってますよ。そう言って俺は蓋のふちを舐めた。
深い緑の空を貫く月の光と、遠くを流れる雲。遠くからはまだまだ酒場の喧騒が聞こえてくる。
「お前はまだA****に、私についてくるつもりなのか?」
「はい」
こちらを見ることなく問うあのひとに、俺は短く応える。
「あなたこそ、僕に飽きてしまいましたか?」
「――」
あのひとはこちらの問いには応えず、言葉を重ねた。
「ウッドランドのさる領主とその妻はな、それぞれ夢を追って強欲の魔女に取って食われたそうだ。お前もそうなりたいか?」
「それは、」
どういう意味ですか、と問おうとして留まる。そして考える。
「それは僕にも、そしてあなたにも分からないことなのではないですか?もしそうなら、僕はとっくに『食われて』いるんじゃ?」
そう言うと、あのひとは罠というものは十重二十重に仕込むものだ。自分で手を下したくないなら、仕掛けは大きくなる。逃げ道を少しずつ狭めてゆき、いつの間か逃げられないようになっている。それが罠だ。そう言いながら、俺の手の甲の骨の出ている部分を指先でなぞる。
「それに、あなたはそんなことはしない」
きっと、僕相手なら自分で始末するでしょう。俺は俺の手をなぞるあのひとの手に、空いた手を重ねる。
「そうかな」
「はい」
蓋を慎重に平らな部分に置いて体を少し離すように座りなおすと、俺は両手であのひとの手をとった。こちらを向いたあの人の顔は半分陰になっている。俺はその中に光るあのひとの目を見る。削ぎ落ちかけた耳がじんじんする。
「僕は弱い人間です。よほど頑張らないとあなたに対抗すらできません。でも、あなたのそばにいたい。これからも、今も、きっと当分それは変わらないでしょう」
俺は弱い。だから、でも、あなたのそばにいたいんです。
「あなたさえよければ」
こんな不安定な場所でなければいつものようにすがりついただろうか。
あのひとは俺の後ろからスキットルの蓋を取ると、中身をひと息に飲み干した。
「先々のことは何も約束しないぞ?」
「はい」
距離を保ったまま、あのひとも俺の目を見る。柔らかいが強い眼差し。
「――、―――― ――」
故郷の言葉にふしをつけ、流れと抑揚をもたせる。低く低く、このひと以外に聴かれないように。
「――――、―――― ――」
あのひとは意外そうな顔をしたが、黙ってそれを聴いてくれている。
「――、―――― ―― ――」
それは先ほど歌ったものとは部分的に同じだが、流れも並びも異なるものだ。俺自身覚える気もない、その場限りのもの。
「―― ――、――――」
「――」
「ありがとうございます」
歌い終わると、俺は握ったままでいたあのひとの手に唇を寄せた。
「戻りましょうか。少し冷えますし」
「そう、か?」
「ええ」
俺は腰をあげると慎重に棟を伝い、少し不格好に部屋に戻った。
あのひとは窓辺までついてくると、ではな、とだけ言って音もなくどこかへ消えていった。
またとないほどの月夜はすぐに終わる。陽が多くのものを照らし、暴き、晒す。人々が行き交い、話し、争い、別れる。そんな日がまた訪れる。だから僕らもあんなことをして、あんなことを口にした。それだけの夜だった。
お月さま
あしたは月曜日じゃなくて
日曜日にしませんか?
となりをみると、弟の、少し濡れたズボンがあって、もうすこし見上げると、弟が傘の柄を握っているのが見える。
さらにめをあげると、パツパツ雨が傘をうつ音と、白い街灯の光が、おっこちてくる雨のシルエットと、弟のシルエットを淡く浮かび上がらせている。
よくみると、弟はこっちを見てた。
フシギそうに見てる、弟とバッチシめが合って、
なんでか、おれの口角がぐっと上がってくのを感じる。
また、気持ち悪いって言われる前に、めをもういちど、自分のみのたけにあうとこまで戻した。
雨に濡れた夜道が、街灯のしゃぼん玉みたいなあかりにメラメラ光って、街灯のならぶ反対側には、住宅街が並んでいる。
窓と、玄関、別の家の、窓と玄関にも、せいぞろいで明かりがともってて、窓に伝う結露までは見えなくても、幸せそうな家庭はのぞけた。
「兄ちゃん……ヒトの家をジロジロみるのはよしなよ、なんかわるいヤツみたいだぞ!」
雨の音にはぜんぜん負けない、弟の声はいつでも朗らかだ!
だが、おれは悪者扱いされてるらしい。
「ワルモノが割るものさがしってか……!?」
「わるモノじゃなくて、ボクが言いたかったのはドロボウ!こうすればおまえのサムイギャグは無効だ!まったくもう!」
傘をグラグラゆらしながら、アニメっぽく、しぐさでイライラを伝えてくる。
「ざんねんだったな、ものさがしってとこでもかかってるぜ」
あんま深く考えずに言ったが、弟は意外にも一拍、めをまるくして、そのまんま黙って、前をむいて、腕をくんで、考え込んだ。
おれは、あんま深く考えずに言ったもんだから、考え込んでる弟がおもしろくて、また口角があがった。
「……もうッ!!」
叫んだと思ったら、おれの頭に冷たいモノがどさどさきて「えっ」上をみあげるが、そこに弟の顔も傘も見当たらず、先をみたら、次の次の街灯の下に、走る弟の後ろ姿がみえた。
「ジョーダンキツイぜ……」
おれのパーカーはあっというまにびしょぬれで、三段階くらい暗い色におちてる。
カゼひくまえに、弟の傘にありつくべく追いかけた。
珍しく、きょうは雨だってことで、スニーカーを履いてきたが、それが悪手だった。慣れてないからかバカみたいに走りにくい。
おまけに、背中にはぐちょぬれのフードがきもちわるくのしかかる……
「あ〜、うえ〜」
それでもなんとか、コンクリートの上をおれの影がカタツムリみたいにすべってく。
街灯の中にとびこんで、まだ走って、おれのうしろにまわった影が、おれへおいついて、おいぬく。
走るのがヘタだからか、どうしてもおれの上体は地面の方にかたむいて、前をむくにはわざわざ頭をおこさなきゃならない。
労力つかって、前むくと、弟があとふたつ街灯こしたとこに立って、おれを見てるのがわかった、すると、視界がニュっとのびて……そうのびた。
街灯のあかりが急に尾をひいて、住宅街がとつぜんおれの視界から消えてなくなって、つぎには立派な痛みが額と鼻と、とにかく顔面を襲った。
ガチョッて、ヒドイ音が鳴った気がする。
ずっころんだ。もう一生、スニーカーなんて履かない。
ずるずる重い服をひきずって、荒れて荒れて荒れまくった息と、うるさい雨の音のなかでとりあえずなんとか、起き上がって鼻を触って折れてないか確かめた。
マジで、おれがワルフザケすることはあっても、兄弟がこんなことするのはめずらしい。
くるしい息のなかで、おれはそれだけ考えるのがやっと。
痛みがマシになってきた頃、コンクリートに手をついて、ヒザにも力をいれて、たちあがろうとする。が、運動不足がたたって、コンクリートを四つん這いになって見つめたまま、立ち上がれない……
ぬれた靴、かろうじて上部はぬれていない靴がおれのめにはいってきたかと思うと、雨のうるさい音がマシになって、頭をうちつけて、靴下に水をためてくることもなくなった。
「……ドッキリだ!」
顔をあげると、どうしようもなく面白い、といいたげな赤い顔がみえた。
肩もぷるぷる震えている。
「ドッキリだから、謝んないぞ!」
おれの走って転んだ姿がよほど面白かったのか、めったにみない笑い顔を拝めた。
弟が手をさしだしてくれたから、おれはそれをつかんで、どうにか起き上がって……
弟の足にてのひらをぶつけ、自分もろとも弟をずっころばせる。
「うわっ!?」
「……ドッキリだ」
傘がちかくに転がって、ふたりでずぶぬれになりながらコンクリートにころがった。
弟は、プッと顔を赤くして、ぷるっぷる震えて、やがて爆発したみたいに笑いだす。
おれもそれにつられて、ふたりでお互いをゆらしながらめちゃくちゃに笑った。
「へへ、へへへ!おこるかと、おもったぜ……!」
「は、ハハ、ハハ……!おこってるよ……」
街灯と街灯の間だから、ちょっと暗いが、弟はぜんぜん幸せそうに笑ってる。
おれもたいがいだろう。
傘がなくなった空の上から、雨がもちろんふってきていて、雲の合間合間から、黄色い月がのぞいてて、だのに、雨はおれたちをうちつけて、おれはふう、とため息をついて、弟の腹からどけて、立ち上がる。
すると、弟も、まだ半笑いだが、傘をひろって立ち上がって、ふたりぐしょぬれだから、傘いらないよな、なんて思った。
弟もそう思ったのか、傘をたたんで、手に持つ。
「……ほんとに怒ってるからね!きょうのお風呂掃除は兄ちゃんの担当だッ!」
「おっけー」
びしょぬれの弟にむかって軽くいうと、弟はなにか思い出したらしく、急に焦ったみたいにしだして、フシギだな。雨に散々ぬれてるくせに、汗と雨はみわけがつく。
「やっぱオレさまがやるッ!
……兄ちゃんに任せたら、風呂に苔がはえる!」
「なんだ?いいのか?ラッキーだな」
おおかた、おれが風呂掃除をサボったのに気づかず、ヌメヌメの浴槽につかったときのことでも、おもいだしたんだろう。
もういっかい空を見上げたら、月はもう雲に隠れてなかったが、街灯の白いあかりのおかげで、キラキラうかぶ雨粒が、まあなんか、星みたいだったし、雨の日の夜空も、いいな、なんて思う。
「なあ兄ちゃん!」
みあげると、弟がニコニコ笑ってこっちをみてる。
「こんど、星みれるといいね!」
おれの手をつかみながら言って、つかんだと思ったら、それをブンブンふりだした。
やっぱり怒ってなんかいないだろうな。むしろたのしそうだし。
「きょうだって、月ならみえるよ」
ガグガグ、ゆらされるまんまに体もゆらしながら、言ったら、弟はそこで立ち止まって、大きく見上げる。
おれがつついて……いつのまにか、月のほうを指さすと、弟はすなおに見上げて感嘆した。
「なんか、いつもより綺麗だねっ!」
「だな。卵みたいだ」
「あしたもみられるといいねえ!」
弟は、なにか、胸のわくわくがおさまらなくなったのか、雨のなか、ぐるぐる走り出して、おれはゆっくり歩いて、追うことにする。
カゼひくっていったけど、たぶん大丈夫だな。こういうとき自分の体を自慢したくなる。
おれは、雲にかくれそうな月をひとめみあげて、ちょっと笑った。
ほら、おれの弟がいってるんだから、あしたもときどきは顔みせてくれよ
テーマ「月に願いを」
ごめんね。
今、雨なんだ。
だからね、
月が見えないんだ。
それでもね。
君の幸せを願ってるんだ。
5コール。
もしもし?
ねぇ、今日満月なんだって
そこから見える?
くれぐれも綺麗だなんて言ってしまわないように、
なんて思ってたのに、
ぽんと言ってのける君。
『月に願いを』
2024/6/22の夜のおはなし
俺には、大好きな人が居る、
その女の子は、夜にしか出てこない、、
ふらっと現れては、
「遊ぼ~!」って言ってくる、
いつもと変わらない日、
でも、いつしか俺に愛が芽生えてきた、、
可愛いくて、
大好きな人いつもいつも月を見ては、
考えての繰り返し、
でも、その瞬間、瞬間が愛おしい。
俺の願いが月に届きますように
『月に願いを』
4才の頃の記憶だ…私はど田舎育ち…
ある時、隣のじいちゃんが亡くなった。
隣とはいえ、200メートル位は離れていただろう…深夜、私が目を覚ますと
一緒に寝ていたはずの母親が消えていた…
幼い私は不安でいっぱいになった…
母親を探したが家の中にはいない。
そしてピン!と来た…隣のじいちゃんだ!
昔は夜を徹して死者を見守る…
我が家の大人達も例外なく隣に行った。
母親を探しに私は外に出た…
その日は満月だった…雲ひとつ無い空は
ものすごく明るくて、大人が一人通る位の農道がハッキリ見えた…
「母ちゃんとこに行こう!」
夜の怖さより、母がいない不安が勝った。
4才の私の背丈近い草の間を走った!
やや下の方角に明々と灯りのついた家がある…その家を目指して無我夢中で走った!
離れた隣の家に着いて「ガラッと」戸を開けた…「どうやって来た…?」
その時の大人達の驚いた顔を私は今も覚えている…
月灯りは私の足元をしっかり照らし安全に目的地に誘導したのだった…
「月に願いを」した訳ではないが
自分でも気がつかない間に「月は願いを」聞いてくれたのかもしれない…
十九の夏、密かに酒を月と呑み あの泣き言はきみだけ知ってて
題-月に願いを
【月に願いを】
「流れ星って、願い事叶えるって言うじゃん」
「消えるまでに三回言えば、叶うってあれね」
「あれさ、月だったらよくね?」
「なんて?」
「だからさ、月に願いをかけられたら、もっと大きい願い事出来そうじゃない?」
「月、流れ星なったら怖くね?」
「怖いけどさ」
笑って、そいつは外を見て、
「小さい星だったら、無理そうだからさ」
ベッドに横になったまま、点滴に繋がれた腕を少し触って、ちょっと微笑む。
自分は、一緒に暗くなってきた外を見ることしか出来ない。
月が、輝き始めていた。
『私、夢が叶ったら死のうと思う。』
冷たい夜風に吹かれ、腰までの綺麗な黒髪を靡かせ君は言う。
『もう、疲れちゃったんだ。学校では虐められて、
家では邪魔者扱いされる。そんなのもう耐えられないの』
私は何も言えなかった。
もちろん、応援するよともいえず、死なないでともいえず。
心の底から自分のことが情けなく感じた。
「死なないでよ」を期待していたのだろうか、貴方は悲しそうな表情で
月を見上げる。
『ねぇ、私って君からどう見えてる?』
今にも消えてしまいそうな儚い表情を浮かべながら
貴方は私に問いかけた。
どう答えたらいいのかわからず 黙っていると、
『何か言ってよ、もしかして考えたことなかった?』
泣きそうな目で私をじっとみつめる。
「いや、綺麗だよ」
『何番目に?』
「…一番目」
そう答えると貴方は少し目を見開いた、
その後すぐ安心したような、どこか寂しげな顔つきで微笑む。
『私の夢、叶わせてくれてありがとう。』
「え?」
『ばいばい、私の世界で一番大好きな人___』
それだけ残し彼女は海に飛び込んだ。
「どういうこと?」
「私が貴方の夢を叶わせた?」
「まってわかんないよ行かないで」
急な発言に戸惑いを隠せなかった私の口からは言葉が溢れるばかり、
もちろん疑問を問うても返答はなく。
海底の何かに引きずり込まれるようにして沈んでいく君を
止めなきゃいけない。そう思うことはできた。
だけど今までの君を思い返すと止められなかった。
だって、、死ぬのを夢見てたんだもの。
それに、どんどん海の底に沈んでいく貴方はとてもとても綺麗で。
海面に残された貴方の腕時計を見つめ、
私は崩れ落ち涙を流した。
嗚呼、綺麗。
"月に願いを"
「みゃあ」
見回りをしようと懐中電灯を片手に廊下に出てからまだ二歩程、急に処置室に入っていった。跡をついて行くと窓辺に飛び乗って空を見上げながら一声鳴いた。
「どうした?」
月明かりでほんのりと明るい室内を進み、窓の外を見上げる。
「おぉ……」
見上げた視線の先に、優しい光を放つ月が夜空に昇っていた。真ん丸では無いが、その形もまた美しい。
「みゃあ」
月に見惚れていると、ハナが甘えるように鳴きながら俺の腹に前足をかけてきた。
「抱っこか?」
んしょ、と抱き上げてやると、喉を鳴らしながら身体を弛緩させて腕の中に収まった。
そんなハナに小さく笑い、再び月を見上げる。
──これからも、平穏が続きますように。
祈るように心の中で呟く。
ハナを床に下ろし「行くぞ」と懐中電灯の灯りをつけて、改めて見回りを始めた。
10日目
「星に願いを」だなんて傲慢すぎじゃないか
君は宇宙に星がどれくらいあるか知ってるかい?
数億個とも数兆個とも言われているんだよ
星に願いをって言ったら全ての星に願ってるわけで
それに値するくらい大層重大な願いなはずで
それを願うだなんて傲慢すぎると思うんだ
あるいは無数にある星の一つ一つに願うとして
それは沢山の願いを叶えてもらおうとしてるわけで
そんな膨大な数の願いをするだなんて傲慢だと思うんだ
だからこそ僕は唯一つの月に唯一つの願いを
━━━━━━━━━━━━━━━君を幸せに