『私、夢が叶ったら死のうと思う。』
冷たい夜風に吹かれ、腰までの綺麗な黒髪を靡かせ君は言う。
『もう、疲れちゃったんだ。学校では虐められて、
家では邪魔者扱いされる。そんなのもう耐えられないの』
私は何も言えなかった。
もちろん、応援するよともいえず、死なないでともいえず。
心の底から自分のことが情けなく感じた。
「死なないでよ」を期待していたのだろうか、貴方は悲しそうな表情で
月を見上げる。
『ねぇ、私って君からどう見えてる?』
今にも消えてしまいそうな儚い表情を浮かべながら
貴方は私に問いかけた。
どう答えたらいいのかわからず 黙っていると、
『何か言ってよ、もしかして考えたことなかった?』
泣きそうな目で私をじっとみつめる。
「いや、綺麗だよ」
『何番目に?』
「…一番目」
そう答えると貴方は少し目を見開いた、
その後すぐ安心したような、どこか寂しげな顔つきで微笑む。
『私の夢、叶わせてくれてありがとう。』
「え?」
『ばいばい、私の世界で一番大好きな人___』
それだけ残し彼女は海に飛び込んだ。
「どういうこと?」
「私が貴方の夢を叶わせた?」
「まってわかんないよ行かないで」
急な発言に戸惑いを隠せなかった私の口からは言葉が溢れるばかり、
もちろん疑問を問うても返答はなく。
海底の何かに引きずり込まれるようにして沈んでいく君を
止めなきゃいけない。そう思うことはできた。
だけど今までの君を思い返すと止められなかった。
だって、、死ぬのを夢見てたんだもの。
それに、どんどん海の底に沈んでいく貴方はとてもとても綺麗で。
海面に残された貴方の腕時計を見つめ、
私は崩れ落ち涙を流した。
嗚呼、綺麗。
5/26/2024, 12:33:18 PM