『時計の針』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
ただじっと見ている。
少しずつ動いていく、長い棒と短い棒と細い棒を。
あれはぐるぐる回る。
じっと見ているのは他に見て良さそうなものがないから。
この部屋には他に動くものがないから。
あれがぐるぐる動いて、今と違うところに行けば、多分このドアは開く。
そしてあの人も帰ってくる。
しばらく見ていたけど、細いのは動くけど、長いのと短いのはあんまり動かない。
少し大きい声で動くように言ってみたけど、声は出なくて、空気を噛んだ。
ここは、体を思い切りたてにすることもできない。
小さい頃は、そんなことはなかった気がする。
小さい頃は、あの人以外にも誰かがいた気がする。
もっと小さい頃は…。
やることがないので、手を舐めている。どんどん舐めていると少しは何かが動きそうな気がする。
まわりのものをつついたり、かんでみたりする。
長いのと短いのは少し動いたかなと眺めてみるけど
何が何だかわからなくなってしまった。
目を閉じてあけて、目を閉じて開けて。
何にもすることがない。
お腹も空いたし、喉も乾いた。
「あーもう、何これ…何でペットシーツボロボロにするのよ…」
「散歩もしなくていいし、大きくならないって言われて飼ったけど、どんどん大きくなるし…。はー失敗した」
時計の針って常に何を考えてるのか?
とりあえず、擬人化してみよう。
まず秒針は若い社畜。
長針は器用で、社畜より早く昇進するタイプ。
短針はパソコンでゲームしながら、とりあえず任された少しの業務をやって定時に帰る上司。
これなら考えやすいな。
秒針はやる気があるからずっと回っているし、実は(何で回り続けてるんだろう?)とか矛盾をある程度考えているのでは?
長針はやる気あるけど、時間とか回りの状況を見て自分の仕事を割り振るから(これは非効率だし、ちょっと削ろう)とか思ってるのでは?
短針は(なんで自分はここにいるんだ?)とかかな?
時計の針は面白いな!
最後に、時計を見ている私たちは向こうから見たらどう思われてるんだろう?
時計の針がチッ、チッと音を奏でる。
私はこの音が嫌いだ。昔からこの音を聞くと恐怖に駆られるから。
最近は慣れてきたのだけど、心の奥底ではまだ恐怖を感じている。
そんな時だった。ピコンとスマホの通知が鳴る
今暇なんだけど、一緒に絵描かない?
君からのLINEだった
OK!でもどっちの家?
俺ん家でいいよ〜
ありがとぉ~!
と返して急いで準備をする。ハンガーに掛けてあったパーカーを羽織って私は外に出る。
その時鳴っていた時計の針の音は、私を励ましている気がした。
そう思うと次第に、時計の針の音が好きになった。
ー時計の針ー
カチ、コチ、カチ、コチ。
柱時計の振り子は揺れて鳴っているのに時計の針は動かない。時間が経っているはずなのに可視化するものが動かなくて不思議な感覚を味わう。
もしかして、私たちと時計の振り子以外の時間が止まっているのかも。
部屋がとても静かなのもそう思う要因だった。
「私たち以外の時間が止まっちゃたね」
「このまま時間の中に閉じ込められて閉まったらどうしようか」
俺としては願ってもないことだけど君は
「そこまで考えてなかった…!時間がないからお腹は減らないとして、あなたの手料理が食べられないのは悲しいな。そろそろ咲きそうな花を教えようと思ったのに…。花びらが開く瞬間が見られない…」
しゅんとする君に「止まった魔法を解く方法があるよ」と
「それって私には難しいこと?」
「ずっと簡単で、単純なこと」
流れるようにキスされて不意打ちに固まる私。
「簡単だろ?」と彼が笑って
カチリ
1㎜も進まなかったはずの『時計の針』が動いていた。
私は時の番人。
無機質な文字盤に宿っている。
私は人間たちに言いたいことがある。
なぜお前たちは、私を見るのだ?
そして、なぜいつも神妙な顔をしているのだ?
ただの"時"だ。何時何分って、細かい呼び名だ。
なのになぜ、いつも追われているのだ?
なぜ誰かと早さを競っているのだ?
何の為に時計が生まれたか知っているか?
それは、お前たちから自由を奪うためだ。
自然の動植物たちを見ろ。彼らは太陽の向きで時を知り、月の満ち欠けで暦を知る。
私を見る暇があるのなら、もっと周りにいる者たちの顔を見ろ。
愛する者の喜怒哀楽を感じろ。
時は追いかけるものでも、追われるものでもなく、積み重ねるものだ。
振り返って後悔するな。その積み重ねた経験と顔に刻んだ皺は誇りの証だ。
お前たちの先人がそうだったように。
時の足枷など、そこに置いてゆけ。
なぜなら、お前たちは自由なのだから。
時計の音って怖い
夜中眠れない時
不意に目が覚めた時とか
真昼でも怖い
そう思う人はいる筈。
だから、楽しい?話しをします。
昔、国語?道徳?教科書じゃなかったのか、小学校の図書室で借りて読んだ?そこは忘れた。けど、そこは別に問題ない。
物語の名前は、
『チックとタック』
小人のチックとタック
二人は時計の中に住んでいる。
今日もチック、タック
軽快に音を鳴らしている。
ある日、二人は時計の外に出て楽しんでいる。
人間が留守なのだ。
人間がいないことで羽目を外し、人間が食べている物にまで手を出し…
と、そこへ時計の主(人間)が!
慌てて時計の中に戻る二人。
「ん?」
人間は首を傾げる。
だって…
ヂッグダッグ
いつもの時計の音じゃないから。
そう、チックとタック、二人は人間が留守の間、ワサビ入りのお寿司を食べてしまったの!
だから、いつものチックタックではなく、
ヂッグダッグ
お仕舞い。
時計の音が怖く感じたら、この時計の中にもチックとタックが居るんだって思えばいいかも。
だけど、ヂッグダッグと音がしたら、故障かなと思う前にもしかしたら、チックとタックがワサビ入りお寿司、食べたかもと疑ってみて。
お題
時計の針
…だった筈が、時計の音に、なりました。
今まで僕の出逢った人たちは
みんなどうしているのだろうか
早朝の光の中に
ひとり、ひとりと
浮かんでは消える
儚いポートレート
ちっ、ちっ……
針の音で目覚める朝。雀もチュンチュンと同じようなリズムで鳴いている。
少し上がる瞼を何度か瞬きして僕は起きる。
時計を見れば短い針は七時を指していた。
あ、学校……。
「……やべ」
「やっと起きた」
ドタバタと騒がしい音を立てる僕を観て母が呟く。
「起こしてって言ったのに」
「お玉で叩いても起きないのにどうやって起こせっていうの?」
お玉?……味噌汁を注ぐあの調理器具で?叩いた⁉︎
「……暴力」
「何とでも言いなさい。学校に間に合うなら」
「やべ、間に合わない!」
七時二十分の電車を逃せば後は五十分の電車を待つしかない。それだと間に合わない!
バタバタと走って玄関を出る。冷たい風が頬を摩る。
ーーおはよう、遅刻魔。
またアイツからそう言われるんだろうな。
自然と笑みが浮かんでくる。今日も来ているだろうか。
カチカチと音を鳴らして動く時計の針は、目には見えない時間の流れが確かに進んでいることを教えてくれる。
時間は決して止まることはないし、戻ることもない。
あの後悔した時をやり直すことはできないし、後悔したまま止まることも許してはくれない。
進むしかない。ただ、それだけ。
それはなんて優しくて、なんて残酷なことなんだろう。
そんな世界の仕組みに思考を没頭させながら、僕は針が刻まれる音に静かに耳を澄ました。
【時計の針】
急いでいると速く進み
持て余していると遅く進む
いつも同じなのに
気持ちで変わる
『時計の針』
『時計の針』
2023/02/07
最近毎日通話してるのに疲れすぎてすぐ寝ちゃうの申し訳ない。
秒針が進む時になる音
ちっ、ちっ、と
その音は人の心を穏やかにする力がある
落ち着く音
時が進むのは寂しい気持ちになる
こともあるけど
嬉しい時もある
不思議な感覚
その感覚が面白い
チックタックチックタック
それは否応なしに進んでいく
止まって!と叫んでも止まってはくれない
早く進んでほしくとも同様だ
ある日止まっていることに気づく
だが何処か別のところで代わりに時を刻んでいる
見かけ倒しに他ならない
幸せな時間も、来てほしくない時間も
どこかの針が無慈悲に進めていく
それでも、時間が解決してくれることが
世の中にあるのもまた事実で
あらゆる皆の想いを背負って
今日も針は進んでいく
黙々と
チックタックチックタック
今日も針は進んでいく
一時一時刻み時の流れを紡いで過去から現代、未来もこのままずっと動き続け、毎日時は流れつづける時間を教えてくれる、時計の針。
私たちにとって、時間というものは残酷で、容赦なく時を進めていく。
今を生きている私たちにとっては分単位、いや、秒単位で『今』が『過去』に変わる。
残酷。その他になんと表現出来ようか。
「朝にならないで。」と願っても、月と太陽と、時計の針の動きには争う術なく、ただただ願うことしかできない。
なんと愚かなことか。
だからこそ、実に楽しめるし、苦しめる。
時計の針しか聞こえないここはどこ?
周りは暗くて分からないよ
あなたが私を助けてくれるって信じてるから
─────『時計の針』
『時計の針』
「……というわけで、如何して遅刻したのか理由を話してもらおうか」
人間が勝手に生み出した時間という概念に囚われた哀れな男が、アイデンティティの確立に忙しいマージナルマンたる私を睨めつけながら問うてきた。
時間に囚われてしまうのも仕方が無いことだと理解している、人間という矮小な存在である限りそれは逃れることの出来ない宿命だと言っても過言では無いだろう。
だが……時間とは本来存在しないものだ。
時計の針が何処を指していようと関係が無い、これは認識の問題だ。
短針と長針がズレた時に、それを針が離れたと捉えるのか、それとも針が近づいたと捉えるか。
そんなことは自らの認識によってどうとでも解釈することが出来るだろう?それと同じことなのだ。
時計の針が何処を指していようとも、それは現在であり過去であり未来でもある、それこそが時間に対しての正しい認識といえよう。
そう、私のこの認識が正しく真実である。
で、あるならば……いま目の前で目くじらを立てながら私を睨みつけているこの男は何様のつもりなのだろうか?
私は多少の理不尽なら許容することが出来る、それが相手の不徳によるものだとしても慈愛の心を持ってして抱擁することも辞さないだろう。
私は寛大である。
……だがどうだ?
どれだけ懇切丁寧に説明しようともそれを認めず、自らの過ちに気付かないばかりか、その叡智を授けてくれた賢人に対して不敬な態度で詰め寄る。
いくら私が善きサマリア人だとしても限度というものがあるだろう?
「そこのところどうお考えですか?先生」
「…………親御さん、呼ぼうか」
「やめてっ!?」
「夜の音楽室で、時計の針が全部10を指したときにジャンプすると異世界に行けるんだって!」
「はぁ?」
「今日の夜、一緒にやってみようよ!」
「いやだよ、私やりたくない」
「そんなこと言わないでよ〜、異世界だよ?魔法が使える世界とか行ってみたいじゃん!」
「ばっかじゃないの、あるわけないよ」
「私も本気で行けるとは思ってないけど、肝試しがてらやってみよ?」
夜の音楽室に、二人の好奇心旺盛な少女が来ていた。懐中電灯を手に持ち、きゃあきゃあ騒いでいる。
二人は手を握ると、音楽室の真ん中に立ち、時計を懐中電灯で照らしていた。
時計の秒針が一秒ずつ動くのを彼女たちは見つめて、ちょうど10に全ての針が重なったとき、二人は勢いよくジャンプした。
地面に着地しようと、足が床に着きそうになった瞬間、二人が立っていた床は底の見えない闇が広がっていた。二人の足が、床に吸い込まれるように消えていき、一瞬のうちに二人の姿が闇に飲まれていった。
懐中電灯すらも飲み込まれて、部屋には静寂が広がり、時計が秒針を刻む音だけが響いていた。
二人が立っていた床から赤黒いしみが浮かび上がっていた。
「ちっくたっく ちっくたっく」
じりじり響く目覚ましの音、
寝惚けながら、目を覚ます。
今日は久々の家族旅行、
笑顔の妻と待ち切れずに身体を揺さぶる息子たち、昨年買ったスポーツカーに乗って、
遊園地に向かった。
「ちっくたっく ちくたく」
道中、パーキングで息子とアイスを食べた。
こういう所の食べ物は妙に美味しい。
私の分は買わなかったが、
息子がパパ食べる?と可愛い笑顔で、分けてくれたので、夏の甘味を味わう事ができた。
優しい子に育ったものだ。
「ちくたく ちくたく」
うるさい
ジェットコースター、一人は乗れたけど、一人は背が小さくて乗れなかったので、お留守番になった。意外と勢いがあって、大の大人が叫んでしまった、対して、息子も妻も眩しい笑顔でご満悦のようだった。
こりゃ勝てない。
「チクタクチクタクチクタク」
二人は私の反応が楽しかったようだ。
確かに、普段は社長を務める人が絶叫してたら面白いかもしれない。
静かにしろ
「チクタクチクタクチクタクチクタク」
チリソースのかかったタコスを食べながら、家族と話した。
息子はパパみたいになりたいと、妻は将来のことと二人だけの旅行の話、
事業も安定、蓄えも十分、
順風満帆な人生だ。俺は心底幸せだ。
「チクタクチクタクチクタクチクタクチクタク」
うるさい、いつもお前は邪魔をする。喧しい、煩い、だから嫌いなんだ。
幸福なんだ、蓄えがあるんだ。
いいだろ別に?なあ頼むよ、なあ
「ご利用ありがとうございました。」
一人の男が繁華街を歩いている。
目は真っ暗で、皮膚は青白い、
ぶつぶつと何かを呟いて、覚束ない足取りで何処かへ去っていく。
男の背後のネオンサインが、煌々と文字を映し出した。
『叶えます、貴方の理想「代行サービス:下枕」』
『時計の針』
時計の針
先日たまたま事務所のアナログ表示の壁掛け時計の電池が切れたので古い電池と新たな電池を取り替えた。途端、これまでの時間を取り戻そうと分針が勢いよく回ったのをなぜか鮮明に覚えている。 最近は見ることが少なくなったからか。
5年以上前、資格試験用に買った安い腕時計はアナログ表示だったけど使ったのは確か一度きりで、いつの間にか電池が切れていたので、捨ててしまった。
今はスマートフォンでいつでもどこでも時間を知ることができるため、もう何年も、私は時計自体を持っていない。
秒針と分針がせわしなく動くコチコチという音が、しんとした部屋に響くことはないけど、スマートフォンの左上を見るとちゃんと時間はすすんでいるらしい。
針のない時計を見たとき、人々はさぞ驚いたのではないだろうか。私は子どもの頃に大きな公園へ行ったときに見た日時計に驚いたのを覚えている。
日時計と花時計が一緒になったもので、公園の入口の花壇へ、鉄の棒が立てられていてそこから放射線状に花が植えられているので陽がでていればおよその時間がわかるというものだった。
砂時計や花時計など時間を読む事にも美しさを求めて創造した先人たち。
それらは電池式の時計を作るよりエコだったり、気持ちが安らいだりするので私は好きだ。正確な時間を知ることができないし、いつどのような時も使えるという訳では無いのも知っているけどそれでも好きだ。
針のないデジタル表示のシンプルな時計を好む人や反対に
文字盤の凝った時計を好む人もいる。
自身の腹時計に妙に自信がある、という人を思い出した。
きっと、おへそから針が伸びているのだろう。