Open App

「夜の音楽室で、時計の針が全部10を指したときにジャンプすると異世界に行けるんだって!」
「はぁ?」
「今日の夜、一緒にやってみようよ!」
「いやだよ、私やりたくない」
「そんなこと言わないでよ〜、異世界だよ?魔法が使える世界とか行ってみたいじゃん!」
「ばっかじゃないの、あるわけないよ」
「私も本気で行けるとは思ってないけど、肝試しがてらやってみよ?」


夜の音楽室に、二人の好奇心旺盛な少女が来ていた。懐中電灯を手に持ち、きゃあきゃあ騒いでいる。

二人は手を握ると、音楽室の真ん中に立ち、時計を懐中電灯で照らしていた。
時計の秒針が一秒ずつ動くのを彼女たちは見つめて、ちょうど10に全ての針が重なったとき、二人は勢いよくジャンプした。
地面に着地しようと、足が床に着きそうになった瞬間、二人が立っていた床は底の見えない闇が広がっていた。二人の足が、床に吸い込まれるように消えていき、一瞬のうちに二人の姿が闇に飲まれていった。
懐中電灯すらも飲み込まれて、部屋には静寂が広がり、時計が秒針を刻む音だけが響いていた。
二人が立っていた床から赤黒いしみが浮かび上がっていた。

2/6/2023, 7:10:12 PM