そばにいてほしくて、ずっと自分を装っていたけど、君がいなくても案外生きていける事に気づいたよ。

受験勉強も終わりがあるから、頑張れるように、人生も終わりがあるから頑張れるような気がする。

今の生活に不満はない。だが時折、猛烈に自由になりたいと願うときがある。仕事や趣味や、男、今まで積み重ねてきたものを全て捨てたいと思う。
ここではない、別の街へ、遠くの街へ行きたい。私を取り巻くしがらみから逃れたい。何もかもを捨てて、新たな人生のスタートを切りたい。そう思うだけで、臆病者の私には行動することは難しい。

ちょうど来月で、私の全財産は一万円を切る。すぐにでもバイトを探さないといけないことは分かっている。しかし、来月末に応募したい新人賞がある。それに向けて原稿を書いているのだ。なんて、傍から聞けばただの現実逃避である。

グラスに入った酒を一気に飲み干す。血液中にアルコールが染み渡ると、穏やかだった脈が次第にテンポを上げた。脈のリズムに沿うように、体温が同時に上がっていく。冷えていた体は末端まで暖かくなり、脳ものぼせ上がっていた。
酒を飲むことをやめられない。日々の悲しさを慰めるために飲む酒には、未来はないと知っているのに。