髪弄り

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「ちっくたっく ちっくたっく」
じりじり響く目覚ましの音、
寝惚けながら、目を覚ます。

今日は久々の家族旅行、
笑顔の妻と待ち切れずに身体を揺さぶる息子たち、昨年買ったスポーツカーに乗って、
遊園地に向かった。

「ちっくたっく ちくたく」
道中、パーキングで息子とアイスを食べた。
こういう所の食べ物は妙に美味しい。

私の分は買わなかったが、
息子がパパ食べる?と可愛い笑顔で、分けてくれたので、夏の甘味を味わう事ができた。

優しい子に育ったものだ。
「ちくたく ちくたく」
うるさい

ジェットコースター、一人は乗れたけど、一人は背が小さくて乗れなかったので、お留守番になった。意外と勢いがあって、大の大人が叫んでしまった、対して、息子も妻も眩しい笑顔でご満悦のようだった。
こりゃ勝てない。

「チクタクチクタクチクタク」
二人は私の反応が楽しかったようだ。
確かに、普段は社長を務める人が絶叫してたら面白いかもしれない。
静かにしろ
「チクタクチクタクチクタクチクタク」

チリソースのかかったタコスを食べながら、家族と話した。

息子はパパみたいになりたいと、妻は将来のことと二人だけの旅行の話、
事業も安定、蓄えも十分、
順風満帆な人生だ。俺は心底幸せだ。

「チクタクチクタクチクタクチクタクチクタク」
うるさい、いつもお前は邪魔をする。喧しい、煩い、だから嫌いなんだ。
幸福なんだ、蓄えがあるんだ。
いいだろ別に?なあ頼むよ、なあ

「ご利用ありがとうございました。」

一人の男が繁華街を歩いている。
目は真っ暗で、皮膚は青白い、
ぶつぶつと何かを呟いて、覚束ない足取りで何処かへ去っていく。

男の背後のネオンサインが、煌々と文字を映し出した。

『叶えます、貴方の理想「代行サービス:下枕」』

『時計の針』

2/6/2023, 6:46:35 PM