私は時の番人。
無機質な文字盤に宿っている。
私は人間たちに言いたいことがある。
なぜお前たちは、私を見るのだ?
そして、なぜいつも神妙な顔をしているのだ?
ただの"時"だ。何時何分って、細かい呼び名だ。
なのになぜ、いつも追われているのだ?
なぜ誰かと早さを競っているのだ?
何の為に時計が生まれたか知っているか?
それは、お前たちから自由を奪うためだ。
自然の動植物たちを見ろ。彼らは太陽の向きで時を知り、月の満ち欠けで暦を知る。
私を見る暇があるのなら、もっと周りにいる者たちの顔を見ろ。
愛する者の喜怒哀楽を感じろ。
時は追いかけるものでも、追われるものでもなく、積み重ねるものだ。
振り返って後悔するな。その積み重ねた経験と顔に刻んだ皺は誇りの証だ。
お前たちの先人がそうだったように。
時の足枷など、そこに置いてゆけ。
なぜなら、お前たちは自由なのだから。
2/6/2023, 11:36:33 PM