カチ、コチ、カチ、コチ。
柱時計の振り子は揺れて鳴っているのに時計の針は動かない。時間が経っているはずなのに可視化するものが動かなくて不思議な感覚を味わう。
もしかして、私たちと時計の振り子以外の時間が止まっているのかも。
部屋がとても静かなのもそう思う要因だった。
「私たち以外の時間が止まっちゃたね」
「このまま時間の中に閉じ込められて閉まったらどうしようか」
俺としては願ってもないことだけど君は
「そこまで考えてなかった…!時間がないからお腹は減らないとして、あなたの手料理が食べられないのは悲しいな。そろそろ咲きそうな花を教えようと思ったのに…。花びらが開く瞬間が見られない…」
しゅんとする君に「止まった魔法を解く方法があるよ」と
「それって私には難しいこと?」
「ずっと簡単で、単純なこと」
流れるようにキスされて不意打ちに固まる私。
「簡単だろ?」と彼が笑って
カチリ
1㎜も進まなかったはずの『時計の針』が動いていた。
2/6/2023, 11:39:15 PM