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ちっ、ちっ……

針の音で目覚める朝。雀もチュンチュンと同じようなリズムで鳴いている。
少し上がる瞼を何度か瞬きして僕は起きる。
時計を見れば短い針は七時を指していた。

あ、学校……。

「……やべ」


「やっと起きた」

ドタバタと騒がしい音を立てる僕を観て母が呟く。

「起こしてって言ったのに」

「お玉で叩いても起きないのにどうやって起こせっていうの?」

お玉?……味噌汁を注ぐあの調理器具で?叩いた⁉︎

「……暴力」

「何とでも言いなさい。学校に間に合うなら」

「やべ、間に合わない!」

七時二十分の電車を逃せば後は五十分の電車を待つしかない。それだと間に合わない!
バタバタと走って玄関を出る。冷たい風が頬を摩る。

ーーおはよう、遅刻魔。

またアイツからそう言われるんだろうな。
自然と笑みが浮かんでくる。今日も来ているだろうか。

2/6/2023, 10:54:36 PM