『春爛漫』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「春爛漫」
先週、母と桜を見に行った。
最後に母と花見をしたのは、私が小学4年生の頃、40年近く前の話だ。
年齢を重ね、体力の衰えが目立つようになった母と一緒にゆっくりと歩き、近郊の大学の敷地内に点在している桜を眺めながら母が話をしてくれた。
母が生前の祖母と同じ場所で桜を見たこと。
私と花見が出来て嬉しかったこと。
帰り道、母とあと何回花見ができるのだろうか考えた。
いつからか花を愛でるという感情を失っていた私には、今回の母との花見はとても印象深い出来事だった。
母が桜を見て亡き祖母を思い出したように、いつか私も桜を見ては母を思い出す日が来るのだろう。
春爛漫の桜を眺める人々には様々な感情が込められていると学んだ日だった。
春爛漫どころか、最近は初夏を疑う20℃以上の日もチラホラの昨今です。
最近最近の都内某所、某アパートの一室には、そんな4月の「暑さ」から避難してきた部屋の主が、
大きい段ボール箱から小さな段ボール箱に、故郷の昨日の朝刊に包まれたのを移してうつして、
隣の稲荷子狐を時々制しながら……
「隣の稲荷子狐を時々制しながら」?
「こぎつね、子狐。分かった。分かったから」
大きい段ボールによじ登って、中にダイブしたがっている稲荷子狐です。
近所の神社に住まう、稲荷狐の一家の末っ子です。
最近は「ここ」ではないどこか、別の世界の世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織に、
いっちょまえの稲荷狐となるべく、完全週休2日で修行に行ってるとのこと。
「ちゃんとお前の好きなものを、好きなように詰めてやるから、お行儀よく待ちなさい」
部屋の主が小箱に移していたのは、主の故郷から送られてきた、春の味覚。
フキノトウにタラの芽、山椒の新芽にゼンマイモドキ、行者にんにく等々、
まさにお題どおり、「春爛漫」!
雪国春を告げる、山菜です。
細いタケノコ、いわゆる姫竹も少し採れたそうで、
子狐はこれが、苦くないのでとっても大好き!
よこせ!よこせ!キツネたけのこ持ってく!
かしゃかしゃカチャカチャカチャ!
コンコン稲荷子狐は、お目々をキラキラさせて、段ボールに乱れ引っ掻きを食らわせておりました。
修行先に持ってゆきたいのです。
修行先で子狐によくしてくれる、管理局のお姉ちゃんに、美味しいタケノコを贈りたいのです。
あわよくば、一緒に食べたいのです。
はやくはやく、タケノコ、よこせ!
「コゴミの天ぷらも、美味いぞ」
にがいの、いらない!タケノコよこせ!
「天ぷらにすれば、少しは苦味も減る」
ほんと?
「一応、入れておこう。山菜のエグみも、ひとつの春の味だから」
えぐみ、にがい、やだ。やっぱいらない。
「あのなぁ……」
春爛漫のクール便は、営業所持ち込みにより最短で発送されたらしく、鮮度そのままで、良い香り。
コンコン子狐は狐なので、美味しいタケノコの匂いを知っています。
特に姫竹は東京をはじめ、関東ではほとんど見ませんので、ここの部屋の主から貰っておるのです。
去年も春の姫竹を、5月か6月に貰いました。
それはそれはコリコリして、良いタケノコでした。
コンコン子狐は頭がよくて、美味しいものを覚えておるので、今年もタケノコを貰うのでした。
きっと姫竹を管理局の、いつも子狐によくしてくれるお姉ちゃんにプレゼントすれば、
お姉ちゃんは大喜びで、子狐を抱きしめて、撫でてくれるに違いないのです。
「そういえば、子狐」
かしゃかしゃ、カチャカチャカチャ!
既に段ボールを引っ掻く音が楽しい域に達した子狐に、部屋の主がポンと両手を叩きました。
「おまえ、ジャーキーが好きだったな」
実家に頼んで、送ってもらったんだ。
部屋の主が取り出したのは、犬用のお花見セット。
和牛とブランド鶏と、ブランド豚のジャーキーの、豪華な詰め合わせセットです。
「これも入れておくから、花見、楽しんでおいで」
じゃーきー!じゃーきー!
コンコン子狐は大興奮!
尻尾をぶんぶん高速回転して、室内を走り回り、
春爛漫のジャーキーへの歓喜を体いっぱいで表現して、ベロベロべろべろ。
部屋の主の胸に飛び込んで、ほっぺを舐めに舐め倒しましたとさ。
春爛漫
目を開けると、桜の花弁が舞い踊ってた。
うたた寝をしていた幣紙は、暫く自然の舞いを見ていたが、やがて体を起こした。
喧騒がかすかに幣紙の耳に入る。
幣紙は声のするほうに向かって、歩きだす。
部屋を出る時、桜の花弁が落ちた。
本日は花見日和。
暖かい風が散らす
須臾に咲く花
誰ぞ連れ去るような花筏が
何処から吹雪いたか
夢見草や名残惜しい
「春爛漫」
書く習慣:本日のお題「春爛漫」
「春爛漫」は、春の花が咲き乱れている様子を指す言葉らしい。私は根っからのインドア派、春爛漫エアプ勢である。
今年の桜だけは何度も花見リピートしたが、その他の花は近年めっきり見に行っていない。
というわけで、天気もよいので久しぶりに外に出てみた。
盛りを過ぎた桜が散り、白に近い淡いピンクだった景色はピンクブラウンのガクや葉桜の緑色に移りつつある。足元の植え込みに目をやれば、薄緑の葉の間からツツジが咲き始めている。ツツジの白とピンクの筋模様の配色が豚バラに見えてきて、さっそくお腹がすく。
フリーダムに雑草がはびこっている遊歩道脇の緑地には、濃いピンクの小さな花が点在している。草部分が蔓っぽいのはカラスノエンドウで、独特の形をしているのがホトケノザだ。どちらも幼稚園の頃に図鑑で見て、翌年小学校に上がってから実物を見つけて「おお〜!」と感動したので、20年以上経った今も覚えている。
今はGoogleレンズという文明の利器がある。目に止まった草花をなんでも調べられるので、散歩中の調べ物がたいへんはかどる。
黄色い小さな花の絨毯は、コメツブツメクサ。有川浩の『植物図鑑』で、ヒロインがほぼ一夜漬けで図鑑を読み込み、好きな人との野草デートで花の名前を挙げていく場面で出てきた花だ。名前だけは小説経由で知っていたが、実物の花姿と結びついていなかった。
6枚花弁の青紫の花がアジサイみたいに手まり咲きになっているのは、オオツルボ。緑の雑草に混じって青紫の花が咲いていても寒色同士で沈みそうなものだが、このオオツルボの花は不思議と目が吸い寄せられる色をしていた。私の好きな色だからだろうか。オオツルボと同じ色合いのヤグルマギクもそろそろ咲く季節になるので、今から楽しみだ。
どこにでも生えている薄オレンジの一輪咲きは、ナガミヒナゲシ。ヒナゲシといえば「コクリコ」や「虞美人草」などのかわいい・きれいなイメージがあるが、ナガミヒナゲシは素手で触るとかぶれる危険な植物である。以前勤めていた会社の敷地によく咲いていて、先輩から「見つけ次第その場で引っこ抜け」と指示されていた。先輩の言うことを鵜呑みにして触っていたら、労災が発生していたかもしれない。
花壇でぴしりと整列しているのは、紺に近い紫色のアイリスだった。葉っぱはチューリップに似ているが、いかにも春らしくポップなチューリップと違って、アイリスは春の浮かれ気分をすっと落ち着かせるような花姿をしている。村山由佳の『星々の舟』で、「深い藍紫の花は、集まって咲けば咲くほどしんと静まり返って見え」ると書いてあり、まさしくその通りだと思った。
ふと気がつくと、春とは思えないほどぎらつく太陽に脳天を灼かれており、あっと思った時には頭痛がした。
慌てて立ち上がると、視界いっぱいにじわじわと極彩色のノイズが侵食しはじめる。どう見ても立ちくらみです本当にありがとうございました。
おさまるまで立ったままじっとしていると、耳の奥で「ざー」とも「じわじわ」ともつかない海鳴りのような音がして、視界のノイズがだんだん引いていった。
本格的に熱中症になる前に水分補給をせねばと自販機に直行。しかし悲しいかな、地方の自販機はまだまだ現金オンリーで、キャッシュレスな私はスマホと家の鍵しか持っていなかった。私の前には、決して手に入らない冷えた飲み物を格納した機械が白々しくそびえ、背後には滔々と流れる川の水が、ある。
一瞬思い浮かんだ名案……いや、迷案すぎる考えを頭から振り払い、キャッシュレスな自販機を探してまた歩き始める。
だが、電源もない川べりに幾つも自販機が設置してあるわけもない。音もなくゆったりと流れる川が、誘うようにキラキラと陽光を反射して輝いている。
私の前を行くふわふわ三毛の中型犬が、「ヘッヘッヘッヘッ」と舌を出して楽しげにしている。飼い主さんが立ち止まり、ペットボトルの先にシャベルみたいなのがついた給水ボトルを出して、犬に水を飲ませ始めた。
犬でさえ飲み水をもらえているのに、私ときたらふらりと手ぶらで家を出て脱水に陥りかけている。バカなのか? バカです。出かける前に水筒を詰める習慣が身についておりませんでした。
最寄りのコンビニまで1km。間に合うか?
恥を忍んで犬の飼い主さんに水を恵んでもらうか?
脳内でギリギリのせめぎ合いが始まった時、天の恵みが現れた。
川沿いの小さな公園の中に、水飲み場があった。
ほとんど小走りで公園に駆け込む。銀色のチェスの歩兵みたいな水栓が、この世で一番輝いて見えた。
蛇口を捻り、控えめな噴水よろしくちょろちょろと立ち上がった細い水柱に顔を寄せ、脇目も振らずにがぶ飲みする。
花より団子、いや水分補給である。
春爛漫
ひらりはらりと桜が舞い散る。
華々しく咲き誇り、地上へと降り立つ。
まるで天女のように。
なんて、考えながら歩くような私ではなかった。
ただ、桜が咲いてると思ったらそのままでしかない。
あなたと私は何が違っていたのだろう。
あなたは私に何を思っていたのだろう。
桜が舞い散る様子をどのような言葉で表したのだろう。
私の放った好きは伝わっていたのかな。
散る花弁のようにつかみどころのなかったあなた。
あれから三年も経ったよ。
また、今年も桜が咲く季節になった。
でも私に訪れる春はまだ先のようだね。
#春爛漫
皆様、お久しぶりです。初めての方は初めまして。ソン・ヨンです。
とうとう春が訪れましたね。
私は去年の5月31日から書き始めましたので、もうすぐ1年がたちます。
120人の方にもっと読みたいって言ってもらえ、励みになります。誠にありがとうございます。
今後は更新頻度が落ちてしまうと思いますが何卒、宜しくお願いいたします。
良ければ過去の作品も読んでみて下さいね。(今よりも下手だと思いますがあたたかい目で見て下さい。)
【春爛漫】
桜が『今』を彩って、
誰かの涙と誰かの笑顔と共に舞う。
"終わり"があるから美しく、
"続き"があるから楽しいんだ。
春の暖かい空気に身を委ねる『今』を噛み締めて。
「春爛漫」
桜が散り若葉が芽を出す
チューリップも咲く
あちこちから小さな花
すみれだろうか
カラスノエンドウもひっそりと花が
爛漫から初夏へと移り変わる
明日はどんな日だろう
みんなでそれぞれ
マクドやゴンチャやミスドなど
春限定のいろいろを買って持ち寄って
お花見しながら食べる
うちら圧倒的花より団子だよね
分かる
でも桜きれいだね
春爛漫だよねぇ
『春爛漫』
どんこ舟のある田舎町
自然と一体化するように作られた
この小さな町の堀は
知る人からは「水の郷」と
呼ばれることもある
今日は宴の日
どんこ舟に乗り、
夫婦になったカップルさんが
この水路を普段と反対に進む
ふたりが永遠に続くようにと願いを込め
「登っていく」のだ
堀の左右には
綺麗な緑も混じった
まだ満開の桜が2人を迎える
空にはピンクと青空が
水路もピンクと青い水が
二人の永遠を願って
春爛漫の中に繰り出していく―――
〜シロツメ ナナシ〜
《桜の樹の下にはなんとやらってやつ。》
「ありゃ、本当だよ!そりゃ桜も美しいわけだ!」
『… 静かでつまらないなぁ。土の中は。 』
「それがわかりゃ。あとは見に行くだけだ!」
『もう何時間経つんだろうか。』
「あぁ、なんて素晴らし日なのだろう!」
『今日の外は綺麗だろうなぁ』
「なんてったって、今日が春爛漫なのだから!」
『…だって、僕が主役なのだから!』
【春爛漫】
152.『エイプリルフール』『大切なもの』『ひとつだけ』
「芽衣、4月1日に飲み会をしないか?」
3月下旬、俺は芽衣に飲み会の提案をした。
飲み会をこの日に設定したのは、もちろんこの日がエイプリルフールだから――ではない。
4月1日は俺と芽衣の誕生日。
晴れて二十歳になる記念に『一緒に飲もう』と誘ったのである。
「はあー、鉄平には誕生日を祝ってくれる友人はいないのかしら。
仕方ない、寂しがり屋の鉄平のために予定を開けることにしましょう」
俺の提案に、不承不承と頷く芽衣。
だがその言葉とは裏腹に、芽衣の顔は楽しそうだ。
いつも辛辣な言葉を返す芽衣だが、なんだかんだで俺の誘いを断ったことが無い。
「嬉しそうだな。
さては俺が好きだな?」
「あら、当然でしょう。
出来の悪い弟分ほど、可愛いものは無いわ」
「たった5分先に生まれただけで偉そうに」
俺は、いつもの芽衣の様子に安心しながらも、『弟分』と言う言葉にチクリと胸が痛んだ……
俺と芽衣は幼馴染だ。
生まれた時から一緒にいる。
同じ病院で同じ日に生まれ、幼稚園から大学も同じ、なんなら受けている講義も一緒。
人生の大半を芽衣と過ごし、家族といる時間よりも長く、一緒にいるのは当たり前。
それが俺たちの距離感だった。
とは言うものの、俺たちは恋人同士と言う訳ではない。
あくまでも友達として、家族として付き合っている。
これまでそうだったし、きっとこれからもそう。
そう思っていた……
けれど3か月前、芽衣が告白されている現場を目撃して、俺の心境は一変した。
芽衣は断っていたが、俺の心中は嵐の様に吹き荒れた。
そこでようやく気付いた。
俺が、芽衣のことを友人ではなく、異性として意識していることに……
(他の男に芽衣を取られたくない)
もし芽衣に恋人が出来れば、隣にはいられない。
それを想像するだけで、耐えがたい苦痛であった。
俺は二十歳の誕生日を目前にして、自分の恋心に気づいたのである。
俺の願いはひとつだけ。
芽衣と一緒にいる事だ。
それ以来、それとなくアプローチをかけ続けたのだが、全く効果なし。
一緒に過ごした時間の長さが仇となり、特別感を演出できないのだ。
デートに誘おうにも、大抵の場所には一緒に行ったことがある。
これはいかんと考えた末、思いついたのが酒の席だ。
さすがの俺たちも、一緒に酒を飲んだことはない。
いつもと違う雰囲気に、何かを変えることができるはずだ。
(俺はこの機会を利用して、二人の仲を進展させる)
姉弟から恋人へ。
俺は誓いを胸に、運命の日を待つ……
◇
3月31日の深夜。誕生日を一緒に迎えるため、芽衣が俺の家へやってきた。
俺は恋心から、芽衣は未知なる経験にソワソワしながら、日が変わるのを待つ。
そして待つことしばし、スマホの時刻表示が4月1日になった瞬間、俺たちは缶ビールを掲げた。
「「乾杯!」」
グビリと、缶ビールを一気に飲み干す。
大人の象徴として、以前から憧れていた生ビール。
だが初めて飲むビールは、想像以上に苦かった。
こんなものを世の大人たちは好んで飲むのか……
大人の階段を上ることに、少しだけ期待していただけに、俺の落胆は大きかった。
(芽衣はどうなんだろう)
俺と同じように、がっかりしたのか。
それとも美味しいと感じたのだろうか。
それを尋ねるため、俺は顔を上げて――絶句した。
「おい、大丈夫か!?」
芽衣の顔は真っ赤だった。
とろんとした目つきで焦点が合っていない。
俺の呼びかけにも反応せず、明らかに様子がおかしい。
これはまずいのではなかろうか。
酒一杯で酔っぱらう人間がいるとは聞いたことがあるが、まさかそれが芽衣だったとは……
もはや告白どころの話ではなく、介抱が必要な状態だ。
俺は水を持ってこようと、慌てて立ち上がったときだった。
「好き」
背中越しに、芽衣のつぶやきが聞こえる。
驚いて振り向くと、芽衣は呆けたような顔で座ったまま。
言い方は悪いが、意味のある言葉を話せる状態とは思えない。
「……幻聴か?」
いくら好きな女の子と一緒にいるからって、まさか愛の言葉を言われたと勘違いしてしまうなんて……
酒が入ったことで、自分の願望と現実が一緒になったのだろうか……
芽衣も弱いが、俺もアルコールに弱いらしい。
お酒を控えよう。
そう思い、ドアノブに手をかけた瞬間――
芽衣に後ろから抱きつかれた。
「め、芽衣!?」
「好き」
動揺している俺の耳元に囁く芽衣。
まさか幻聴ではなかったとは……
俺が驚愕して動けないでいると、芽衣は背中に指で文字を書き始めた。
『スキ』
心臓が跳ね上がる。
芽衣がこんなに甘えてきたのもそうだが、『好き』と愛を囁いてくるも初めてだ。
普段とは違いすぎる芽衣の様子に、俺は恐怖する。
お酒、なんて恐ろしいんだ。
(これ以上芽衣の好きにさせては、俺の理性が持たない)
そう思った俺は振り返り、芽衣を視界に収める。
これで芽衣が何をしてきても、対処できる。
客観的に見て不審者のような格好で芽衣と対峙した。
そんな俺を、芽衣は潤んだ瞳で俺を見つめ――
「ん」
そして閉じた。
「えっと、芽衣?」
意味が分からず呆けていると、芽衣は不機嫌そうに、
「ん」
と言って唇を突き出した。
……これはあれですかね。
キス待ちってやつですか?
怒涛の展開についていけない俺。
こいうのって、お互いが好きであることを確認してからじゃないのかな。
俺が古いのかな……?
「芽衣、さすがにこういうのは……
うわっ」
煮え切らない俺に業を煮やしたのか、芽衣は動いた。
ドンと、壁に腕を突き出して俺の退路を断つ。
いわゆる壁ドンである。
「ん」
俺の答えは不要と言わんばかりに、徐々に迫って来る芽衣の顔。
え、もしかして俺の唇奪われちゃう!?
どうにかしないと思うが、まったく思考が纏まらない。
俺の大切なものを守るために行動を起こすべきとは思うが、体が金縛りにあったように動かない。
俺が葛藤している間にも、芽衣の顔は徐々に近づいて来る。
やがて芽衣の熱い吐息がかかるほど接近し――
―ゴン。
俺の耳元に、鈍い音が聞こえた。
「へ?」
恐る恐る視線を向けると、そこには壁に頭突きをかまし、いびきをたてて寝る芽衣の姿があった。
少しの間呆けた後、俺はようやく自身の身に平和が訪れたことを理解した。
「疲れた」
安心したからか、酒が回ったからか、俺は芽衣につられるように、眠りにつくのであった。
◇
目が覚めると、部屋に日の光が差し込み、雀が鳴いていた。
そして隣には眠っている芽衣。
朝チュンである。
……なにも間違いは起こらなかったけれど。
気怠さからぼんやり天井を眺めていると、芽衣がごそごそと動き始めた。
もうすぐ起きるらしい。
俺たちは睡眠リズムも同じなのだ。
起き抜けは気だるいのも一緒だ。
だが、今日の芽衣は跳ね上がるように芽衣は体を起こした。
驚いて、芽衣を注視する。
「あれ、嘘だからね!」
開口一番そんな事を言い出す。
一瞬何を言っているのか分からなかったが、昨日のことを言っていると合点がいった。
だが――
「そうはならんだろ」
俺は忘れていない。
芽衣が『好き』を連呼した事実を。
「あれ、どういう意味なんだ?」
本来は俺が言うべきだった言葉を、なぜ先回りして言ったのか?
これまでも冗談で言われることはあったが、まるで恋人に囁くように言われたことは無い。
これから芽衣との仲を進展させるためにも、はっきりとさせる必要があった。
今の状況を打破するヒントがあるかもしれないからだ。
取り調べをする刑事の様に俺が睨むと、芽衣は激しく目を泳がせた。
「エ、エイプリルフールだからいいの!
だから全部嘘!
あんたなんか全然、これっぽっちも好きじゃないんだから!」
「春爛漫」
春爛漫なこの季節
告白の季節
私は震える足に力を入れて
肺に空気を無理やり入れて
貴方を呼び出した
「どうしたの?」
あなたは笑った
ドキドキする胸を抑えて
震える声を出す
「私、ずっと前、、、」
あなたは優しく言葉を待ってくれた
「ずっと前に、、貴方の妹が殺、、自ら命を絶ったでしょう?」
「、、、うん。それがどうしたの?」
「私が、、貴方を笑顔にしたくて、、」
「ありがとう、僕も君が好きだった」
私が貴方を笑顔にしたくて
私の邪魔をしてきた彼の妹を殺してやった
春爛漫……
なぜか あいみょんが思い浮かんだ。
ああ、連ドラの……
らんまんの…テーマソングか……
……安易だわ、発想が。
連ドラのらんまんは観てなかったんだけど
その後に”愛の花”を覚えた。
「大切な人を失う未来なんて来ないで」
あの詞は刺さる。
誰にとっても、大切な人を失う未来があるからだ。
あんなすごい歌詞を書く人が居んだなぁ。
母が
ひとつふたつ 桜が散る中で死にたいと言っていた。
そうだね、寒いと葬式ツラいからとかバカ言って。
埋もれるほどの花で飾ってほしいと言う。
花は高いからちゃんとお金貯めといてよ なんて。
できるだけ 生きてください。
愛の花を あなたへ。
テーマ : 春爛漫
春や桜が連想させるものは、必ずしも明るいものばかりとは限らない。1日過ごすごとに良くも悪くも色んなことを経験して、咲く時もあれば散る時もある。何なら、苦労に見合わないと感じることのほうが圧倒的に多いと思う。
それでも最後は、全てをひっくるめて明日を今日よりも鮮やかに、大切にしていきたいっていう気持ちを、春爛漫を見る度に思い出すことが出来ていると思える。君が隣にいる時は、より一層と。
僕なりの感謝と誓約を、改めて君に伝えたい。来年も、この温かさに溢れた景色を二人一緒に眺めたいから。
君の目を見つめると、春爛漫。
22時36分。
僕はホテルから外出して買い物に行こうとした。
すると、病院の駐車場の柵から茶トラ猫が顔を出している。
丸く大きい目が可愛らしいオス野良猫だ。
この猫が元々ホテルを縄張りにしている猫だ。
サバトラ猫※1とはエサを分け合う仲だ。
なぜか、たまにしか現れない。
僕はスマホで猫翻訳アプリを起動した。
「おお、久し振りだな元気にしてた?」
僕は話かけた。
「ええ、まあ」
茶トラ猫は返事した。
「お腹空いてる?チュ−ル食べる?」
「今はいらないです」
「ここで何をしてるの?」
「まあ、いいじゃないですか」
「君の目を見つめるとかまいたくなるんだよ。前からここにいる事多いね…。ああ!もしかして!トルコ猫ちゃん※2を待ってるの!!」
「……ち、違いますよ」
茶トラ猫は明らかに動揺している。
「冬が終わり春爛漫。猫ちゃんにとって恋の季節がやって来たもんね!羨ましいぜ!ところでトルコ猫ちゃんは、秘密の場所のエサだけ食べて僕の前に一切姿を見せないし、トルコ猫君※3は倉庫の屋根から降りられるよう救助したのに礼はないし、サバトラ猫は僕を見たら逃げるし、僕に対する感謝の心がない!この辺の野良猫はどうなってんだ!YouTubeで見る野良猫は物凄く人懐っこいじゃないか!」
「あれは、野良猫に毎日エサを上げて手懐けてるんです。いい場面を集めて編集してるんですよ」
「まあ、そうだと思うけど、あまりに警戒心が強過ぎる。もうちょっと信頼してくれてもいいんじゃない?僕は野良猫に対して友好的なんだから…」
「分かりました。無駄だと思いますが、一応、伝えておきます」
「じゃあ、頑張ってね!」
僕はその場を去った。
しばらくすると、トルコ猫ちゃんが現れた。
茶トラ猫はトルコ猫に近づいた。
「トルコ猫ちゃん、会いたかった!僕と付き合って下さい‼️」
茶トラ猫はアタックした。
「嫌よ!!」
トルコ猫は猛ダッシュで逃げた。
その後を茶トラ猫は追った。
だが、逃げられてしまった。
この恋の成就は難しい。
※1 サバトラ猫について知りたい方はサバトラ猫を読んで下さい。
※2 トルコ猫ちゃんについて知りたい方は木枯らし、ミッドナイトを読んで下さい。
※3 トルコ猫君について知りたい方は青い瞳の来客編を読んで下さい。
振りも型もいらない、出鱈目な舞を踊ろう。一人舞台、扇子と花弁が日に照らされて淡く輝く。ここでは楽の音も響かない。
浴びる程の光。息をするのも忘れてしまいそうな、美しい景色。
腕の動き、足の動き、その一挙手一投足で巻き起こる小さな風が、落ちた花弁を舞い上げる。
短き春の陽気に包まれて、私は一人花に成る。
「お題 春爛漫」#221
春爛漫
とっても綺麗で
心がスッキリして
色鮮やかで
穏やかで
でも、
それよりおにぎり食べたい
『春爛漫』 #19
俺は今日、彼女と桜を見に来ていた。
他にも、大勢の人がいて
人混みに埋もれそうなくらいだった。
俺は、彼女を握りしめて人混みの中を進んで行った。
今年も、見に来ることが出来たね。
また、、、来年も見に来よう、、、。
そういって俺は、彼女の写真立てを握りしめた。