春爛漫どころか、最近は初夏を疑う20℃以上の日もチラホラの昨今です。
最近最近の都内某所、某アパートの一室には、そんな4月の「暑さ」から避難してきた部屋の主が、
大きい段ボール箱から小さな段ボール箱に、故郷の昨日の朝刊に包まれたのを移してうつして、
隣の稲荷子狐を時々制しながら……
「隣の稲荷子狐を時々制しながら」?
「こぎつね、子狐。分かった。分かったから」
大きい段ボールによじ登って、中にダイブしたがっている稲荷子狐です。
近所の神社に住まう、稲荷狐の一家の末っ子です。
最近は「ここ」ではないどこか、別の世界の世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織に、
いっちょまえの稲荷狐となるべく、完全週休2日で修行に行ってるとのこと。
「ちゃんとお前の好きなものを、好きなように詰めてやるから、お行儀よく待ちなさい」
部屋の主が小箱に移していたのは、主の故郷から送られてきた、春の味覚。
フキノトウにタラの芽、山椒の新芽にゼンマイモドキ、行者にんにく等々、
まさにお題どおり、「春爛漫」!
雪国春を告げる、山菜です。
細いタケノコ、いわゆる姫竹も少し採れたそうで、
子狐はこれが、苦くないのでとっても大好き!
よこせ!よこせ!キツネたけのこ持ってく!
かしゃかしゃカチャカチャカチャ!
コンコン稲荷子狐は、お目々をキラキラさせて、段ボールに乱れ引っ掻きを食らわせておりました。
修行先に持ってゆきたいのです。
修行先で子狐によくしてくれる、管理局のお姉ちゃんに、美味しいタケノコを贈りたいのです。
あわよくば、一緒に食べたいのです。
はやくはやく、タケノコ、よこせ!
「コゴミの天ぷらも、美味いぞ」
にがいの、いらない!タケノコよこせ!
「天ぷらにすれば、少しは苦味も減る」
ほんと?
「一応、入れておこう。山菜のエグみも、ひとつの春の味だから」
えぐみ、にがい、やだ。やっぱいらない。
「あのなぁ……」
春爛漫のクール便は、営業所持ち込みにより最短で発送されたらしく、鮮度そのままで、良い香り。
コンコン子狐は狐なので、美味しいタケノコの匂いを知っています。
特に姫竹は東京をはじめ、関東ではほとんど見ませんので、ここの部屋の主から貰っておるのです。
去年も春の姫竹を、5月か6月に貰いました。
それはそれはコリコリして、良いタケノコでした。
コンコン子狐は頭がよくて、美味しいものを覚えておるので、今年もタケノコを貰うのでした。
きっと姫竹を管理局の、いつも子狐によくしてくれるお姉ちゃんにプレゼントすれば、
お姉ちゃんは大喜びで、子狐を抱きしめて、撫でてくれるに違いないのです。
「そういえば、子狐」
かしゃかしゃ、カチャカチャカチャ!
既に段ボールを引っ掻く音が楽しい域に達した子狐に、部屋の主がポンと両手を叩きました。
「おまえ、ジャーキーが好きだったな」
実家に頼んで、送ってもらったんだ。
部屋の主が取り出したのは、犬用のお花見セット。
和牛とブランド鶏と、ブランド豚のジャーキーの、豪華な詰め合わせセットです。
「これも入れておくから、花見、楽しんでおいで」
じゃーきー!じゃーきー!
コンコン子狐は大興奮!
尻尾をぶんぶん高速回転して、室内を走り回り、
春爛漫のジャーキーへの歓喜を体いっぱいで表現して、ベロベロべろべろ。
部屋の主の胸に飛び込んで、ほっぺを舐めに舐め倒しましたとさ。
4/11/2026, 7:45:47 AM