『怖がり』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
目の前を、誰かが足早に過ぎていく。
視線を向ければ、小柄な少女が泣きながら教室に入っていくのが見えた。
何かあったのだろうか。込み上げる疑問に対する答えが思い浮かび、嘆息する。確認した訳ではないが、まず間違いないだろう。
彼女のように泣きながら、あるいは怯えながら目の前を過ぎていくのは、これで三回目だ。彼女たちの精一杯の勇気が最悪な形で返ってきたことを可哀想に思いながら、重い足を引きずるように元凶の元へと歩き出した。
賑やかな廊下を抜けていく。ぱたぱたと通り過ぎる生徒たちは皆足取り軽く、足音を立てずに歩く自分とは正反対だ。きっと表情も違うのだろうと考えて、進む足がさらに重くなった気がした。
「ねぇ。いい加減にしてって言ったよね?」
美術室で一人、絵を描く彼の背に声をかける。
答えはない。けれど絵を描くことに集中している訳ではないことは明らかだった。
ただ二回目の時のやり取りをするのが億劫なだけだろう。その証拠に、絵を描く手は先ほどからほとんど動いていない。
眉を寄せ、彼に歩み寄る。手を伸ばせば触れられる距離まで近づいて、ようやく彼は振り返った。
「いい加減にしろと言われたって、向こうから来るのが悪い」
「やり方があるって言ってんの」
不機嫌そうに言い訳をする彼は、普段とは違いどこか幼い。目を合わせようとしない彼に溜息を吐いて、その背後のイーゼルに掛けられた絵に視線を向けた。
怪しく微笑むビスクドール。ただの絵だと理解していても、人形の纏う悪意に飲まれてしまいそうだ。
「あの子の怖がっているものは人形か……随分と精密に描かれているから、実際にある人形なのかな」
「知らない。興味もない」
「描いた本人が何を言ってんの」
こちらに背を向けキャンバスに向かう彼は、完全に拗ねてしまったようだ。絵に触れ、軽く爪を立てる。
その途端、絵がどろりと溶け出し、キャンバスに染み込むように消えていく。まるで最初から何も描かれていないとでもいうかのように。
「相変わらず、変な特技だねぇ」
「変って言うな。あと、特技とかじゃない」
いつ見ても不思議な光景だ。思わず呟けば、幾分か低い声に否定された。
キャンバスを見た人の、一番怖いものを描き出す。いつからか、彼はそういった絵を描くことが多くなった。
彼の周囲に人が集まるようになったからだろうか。不愛想で幼いけれど、彼を好きになる人は案外多い。
もっとも、彼と付き合えた人はまだ誰もいないが。勇気を出して告白しても、先ほど見かけた少女のように目の前で一番怖いものを描かれて逃げてしまう人ばかりだ。
「皆、怖がりだな。人形とかよく分からない化け物とか……何が怖いんだか」
心底不思議だと言わんばかりの声音。何度も人の恐怖を描いていても、彼には分からないものらしい。
何も言えずにただ見ていると、真っ白になったキャンバスを前に、彼は手を離して筆を取る。
絵の具の匂いが鼻を掠める。キャンバスの白が、黒に塗り潰されていく。
その迷いのなさに、息を呑んだ。絵の具の黒が容赦なく白を殺し、やがてキャンバスは黒に染め上げられてしまった。
「――まだ、黒だけか」
かたり、と筆を置く音がやけに大きく響く。
感情が抜け落ちたかのような、冷たい声音。思わず肩が震え、一歩足が後ろに下がる。
「形として描かないと意味がないのに」
ゆっくりと彼が振り返る。
まるで人形の目だ。キャンバスのような底知れない黒い目。射すくめられ、途端に動けなくなってしまう。
「なぁ」
腕を掴まれ、開いた距離を縮められる。
「もっと、形のある怖いものがあるだろ?それを俺に晒して。形さえあれば、すぐに見つけることができるんだ」
至近距離で見つめ合っているというのに、彼の目の中に自分の姿は見えない。今の自分の姿が見えるのは彼だけだ。
「じゃないと、いつまでも仲直りができない……いくらでも謝るから、だから迎えにいかせて」
見えない自分の姿の代わりに、脳裏を懐かしい記憶が過ぎていく。
幼い頃、一緒に彼の家の倉の中でよく遊んだ。本を読み、ままごとをし、お絵かきをし、たくさん話し合った。
いつも笑っていた。喧嘩らしい喧嘩もなく、いつも一緒だった。
あの日、何が原因で喧嘩になったのか覚えていない。
ただとても悲しくて、痛くて、許せないと思った。
二度と遊ばない。口も聞きたくない。そう言って、彼に背を向けたことは覚えている。
その後は――真っ黒だ。
気づけば楽しげに遊ぶ自分たちの姿は消え、キャンバスと対峙していた。
底が見えないほどの深い黒を無言で見つめていると、不意に中心から波紋が広がった。
水面のように何度も波紋が揺らぎ、やがて中心に何かが浮かび上がる。
「っ……」
小さなそれは、子供の手。助けを求めるかのように伸ばされた手は、キャンバスを突き抜け大きく開かれる。
それまで立ち尽くしていた体は慌てたようにその手を掴もうと動き出すが、手は捕まえることができずにすり抜けた。悲しげに揺れる手が、再びキャンバスの中へ沈んでいく。やがて何も見えなくなると、キャンバスは大きく揺らいで、彼の目に変わった。
「どうした?」
不安と期待を色濃く宿した目を見つめながら、無言で首を振る。俯き、掴まれた腕を解こうとするが、逆に痛みを覚えるほど強く掴まれてしまった。
「行かないで」
声を震わせ、彼は懇願する。
「お願いだから、一人にしないで」
声だけでなく、掴まれた腕から彼が震えているのが伝わる。
昔から彼は怖がりだ。周りに人が集まるようになった今でも、置いていかれることを怖がっている。
あの時、彼はどんな顔をしていたのだろうか。ふと疑問に思う。一日の終わりにさよならをする時にすら泣いて嫌がっていた彼は、背を向けて去っていこうとする自分をどう思ったのか。
「必ず見つけるから。だからここにいて」
彼は何度も自分を見つけると繰り返す。
あの日を最後に、自分は行方不明になっているという。ならば今ここにいる自分は何なのだろうか。
彼には自分の姿はどのように見えているのだろうか。
「分かってる。ちゃんとここにいるよ」
けれど浮かぶ疑問を何一つ口にせず、代わりに彼の望む言葉を囁いた。
密かに自嘲する。
何も言えない自分はきっと、彼以上に怖がりなのだろう。
20260316 『怖がり』
「なんでおれとお前が手を繋がないといけない訳??」
前をさくさくと歩く彼は不満を口にした。
暗闇の森のなかふたり仲良く手を繋いで散歩中、なんてことはなく誰が言い出したか肝試しをしようということになって2人1組になった彼と僕。
暗闇が怖いと、お化けが怖いと言って手を繋いで貰ってると言うのが今の現状。
「ほんとお化けは無理なんだって!!」
「だったら参加なんかしなければいいだろう」
文句は言うけどしっかり手を繋いで歩いてくれる彼の優しさが僕は好きだ。
「そうなんだけど君が行くなら僕も行かなきゃって思って」
「何だそれ」
だって僕は君がほんとは怖がりなのを知っている。
そしてそれを隠したいことも。
彼は後ろを振り向かず一心不乱に前を目指してしっかりと僕の手を握って歩いていく。
「絶対に置いていかないでよ。手を離さないでね」
「分かってるってうるさいな」
本当は怖いのに僕のために頑張ってくれる君。
怖さを我慢するように力強く僕の手を握りしめているそれをしっかり握り返して微笑む。
僕はね、別にお化けなんて全然怖くないんだ。
(怖がり)
怖がり
シリーズ小説。過去作手直し中タグ控。お題「怖がり」=嫉妬
何日か病院にいると、感覚がゆるくなってくる。
不安は残っている。それでも入院した直後の焦りはなく、裏庭のベンチから見上げる空は、青く広がっていた。
「…そう呼んでくれた子も、いた気がします」
北星(きたせ)さんから聞けたことはそれだけだった。看護師として、他の患者の話は出来ないらしい。分かったのは知り合いだということだけだった。枯葉(かれは)のことを知れないもどかしさに、そういえば名前も知らないことに、この時はじめて気がついた。
「話、聞いてる?」
「…聞いてる」
持ったスマートフォンからの声に、返事をする。今日は気温も良く、このまま寝てしまいそうになる。
――ふと、風の音が聞こえた。あたりは静かだった。
電池が切れたのか。画面を見ると動画モードのまま、古木の二股に分かれた幹が映っていた。片方の幹に背中をあずけ、座るような形の枯葉の表情は下を向いていて分からなかった。
「…枯葉?」
珍しく静かな妖精に声をかける、返事は無い。
沈黙が続いた。
「…ずるいよ」
「ん?」
聞こえた小さな声に安堵し、言葉を聞き直す。
「…くろちゃんばっかり…別のところで楽しそうにして」
聞き慣れない声音に、違和感があった。
「どうし…」
「どうせ僕はここから動けないからっ」
張った声に、言葉が詰まる。理由がわからなかった。
「…ごめん」
探して、出てきた言葉がそれだった。
「――っ」
向けられた顔は今にも泣きそうで、そのまま幹の中にすっと消えてしまった。
見えなくてもそこにいる。声は届く。
それでも、かける言葉はみつからなかった。
(後書き)
文体は整ってるかとか、手直しのアドバイスとか例文出してくれたり。基礎勉中なのですごく助かってるんです^^;
ただ軽量化求めてくるので…
「メガネアゲルユビナンテドレデモイイダロ、ケズルゾ」
ソレハダメTT
ミンナチガッテ、ミンナイイッ
「怖がり」
消えゆく者
生きる者
怖がりな私は今を生き
いつも通りの今日が過ぎ
それでも私は現在を怖がり
明日へ進む
「ごめん、なに?」
名前を呼ばれて目を上げたら、君はわざとらしく呆れた顔をする。
「週末の待ち合わせ、変えてもいい?」
「あ、うん、いいよ。どこにする?」
教室の中はさわがしくて、君は少し身を乗り出した。シャンプーの香りだろうか。お花屋さんの店先を通り過ぎたときみたいな、清々しい緑の匂い。
「コラッ、席につきなさい。授業時間ですよ」
遅れてきた担任の声に、君が渋々席を立つ。
「あとでね」
教壇から、次の学校に行くまでは我が校生徒の自覚を持って、などとお決まりの文句が始まった。年明けからいい聞かされ、もはやげんなりする言葉だ。『私、言ったよね?』と『申し訳ないけど』が口癖の年配教師はクラス中から疎まれてる。でもそれも、明日で終わり。
通路を二つ挟んだ席で、耳に髪を掛ける君が見えた。真剣に話を聞くときの癖だ。本当に真面目で偉いなと思う。そして途方もなく可愛いと思う。
これからも、今までみたいに会ってくれる?
新しい友だちとの時間のほうが大切になったりしないよね?
口にするのはまだ怖い言葉を舌の上だけで転がして、私はただ君を見ていた。
『怖がり』
私は怖い。
幸せを感じたときに、不意に幸せを壊したくなる。
もしいま階段を降りている貴方の背中を押したらどんな表情をするのだろうか。
もしいまこの調理している包丁を貴方の胸に刺したら貴方はどう私に声をかけるのだろうか。
…私は『シアワセ』が怖い
〜怖がり〜
お題[怖がり]
いつからか言葉が強くなった。
いつからか動きが大きくなった。
いつからか格好が派手になった。
いつからか…
君がそうするわけを僕だけが知っている。
君自身すら知らないそのわけを。
こんにちは…私は怖がりなんだ。
わたしの心の中はずっと真っ暗で光一つなくてかぞくに
がっかりされちゃうんだ…昔からいろんな人から、びび
りって言われてて、悲しいな
「怖がり」
(縦読みしてみてね)
怖がり
虫が怖い。魚が怖い。雨が怖い。雷が怖い。
車が怖い。電柱が怖い。テレビが怖い。
先生が怖い。クラスメイトが怖い。
先輩が怖い。後輩が怖い。
いつも笑顔の人が怖い。
いつも怒っている人が怖い。
「怖い」に囲まれて生きる。
今日もまた新しい「怖い」に出会う。
新しいが私は怖い。
昔、僕は君の笑顔に救われた。
僕の冷え切った心を、
君の凛とした声が、花が咲くような笑顔が
僕の心をあたためて、溶かしていった。
でも、いつからか君は変わってしまった。
今では怖がりで臆病な君。
君の声に光はなくて、君の笑顔には曇りがさして。
なにかあったの?大丈夫?って聞きたいけれど、
いつか、君から頼ってくれるんじゃないかって。。
待ってたっていいことないのに。
僕はそんな言い訳をつけて、
君から目をそらしてた、君から逃げてたんだ。
逃げたくない。
僕が逃げたら、君を助けるのは誰なんだ…?
誰かが助けにくるのか?僕以外の誰かが?
そんなの嫌だと思った。
そんな未来に存在したくなかった。だからね?
もう待つのはやめにするよ。
これまで散々逃げたんだ。
そして、ようやく大切なものに気づいたよ。
今度は僕の番。
その冷たくて苦しい檻の中から一緒に逃げよう。
もう離したりしない、君を離さない。
どんなときも僕が君のそばで守るよ。
君を世界一幸せにしてみせよう。
絶対に君を後悔させないから僕の手をとって。
君のためならどんな自分にだってなれるよ。
自分を信じてみようよ。きっと大丈夫。
また、あの時のように笑える日がくるから。
敬太郎は二十にして小説家であった。
一日中家に閉じ篭り筆をとっては頭を悩ます生活を送っていた。幸運にも彼には文の才があり、彼の書いた書物は怠惰な生活が出来るくらいには人気を博していた。
そんな彼は少しばかり変わった女に密かに惚れていた。彼女は隣に住む二十くらいの女で、明け方四時位に敬太郎が朝の空気を吸いに外に顔を覗かせると、彼女もまた一つ段違いの窓から顔を覗かすのだった。ただ其れだけの間柄であったが敬太郎は、何時も少し赤い頬に黒眉の同じ時間に窓を開ける彼女に興味を持っていたのだ。
ある早朝、敬太郎は十分ほど寝坊をしてしまった。もう彼女は其処に居ないだろうと予想していたが、少しばかりの期待を胸に急いで窓を開けた。この時の彼は恋する男と云うより万物に目を注ぐ梟の如き小説家であった。
運が良かったのか悪かったのか、彼の予想は全くの検討はずれであった。彼は明け方に見合わない大きな音を立て窓を開けて彼女が何時もいる方を見ると、すぐに彼の目は気配を捉えた。其れは正しくその女の美しい目であった。彼女も又彼を見ていたのだ。彼女は敬太郎を見ると少し赤い頬を一層赤らめて影を残して消えた。
敬太郎はこの時、物凄く傲慢で愚かな勘違いをした。
敬太郎は次の日にはもう彼女宛に恋文を書いた。その手紙を書くのにも頭を悩ませたが一日で書き終えた。
其れよりも彼女の家の郵便受けに其れを入れる事の方が時間が掛かった。
拝啓
朝の空気というのはとても美味しく、半日ぶりに身体を乗り出して此方を照らしてくれる太陽を私は毎朝ふたつ見るのです。また何時か半日とは云わず隠れているその時間も私はお供したいと思っています。
敬具
敬太郎は手紙を出して自分の部屋に戻ってきた時、もしかしたらあの文章は随分遠回しすぎたかと思った。
彼は文の才があった。それ故自分の気持ちを直接的に表現する事において少々怖がりだったのかもしれない。
敬太郎は巧みな言い回しで言いたい事と少しずつ違った言葉を選んで、選びぬいて彼女に贈った。
明け方に空を見上げる彼女に、自分の言葉がちゃんと伝わっている事を願って、書き途中の小説の主人公に「愛しています」と言わせた。
家に遊びに行った時、「この部屋さ、何かあると思うんだ」と、声をひそめて言ってくる。「時々、電気がふっと消えたり、ついたりするし、夜中にカタッて音がしたりする」。
「怖くない?」と聞いてくるので、「あんまりそういうの感じないから大丈夫かも」と言うと、「まあ、気にしないから、住んでるんだけどさ」と、少し大きく目を見開いて平気そうにしてみせる。
そんなことを話していたら、急にパチンと明かりが消えた。「ひゃぁー」と変な悲鳴が聞こえる。「ね、ほらー、そうだ」とまた目を見開いてこちらを見てくる。
きっと、蛍光灯が切れたのだろう。でも、しきりに「ほらね、ね?」と何度も言っている。まあ、そんなところが面白くていいんだけど。
「怖がり」
2026/03/17
今日のお題 怖がり
ある立派なお城に、一匹のお化け、ぶるぶるが住んでいました。
ぶるぶるは、お化けのくせに、人間が怖いという、他のお化け達よりも結構な怖がりでした。
なぜなら、たまにお城に人間が肝試しに来るのですが、ぶるぶるが人間の目の前に通りかかると、人間たちは大きくて怖い悲鳴をあげるのです。
それが嫌で嫌でたまらなかったのです。
ある日、ぶるぶるはいつものように、お城をぶらぶら歩き回っていました。
「お城探検って、面白いなぁ〜!広くて、面白い!」
しかし、突然背後から物音がしました。
ぶるぶるは恐る恐る後ろを振り向くと、1人の若い女の人がこっちを見て、固まっていました。
ぶるぶるも、人間が怖くて、固まりました。
沈黙の後、ぶるぶるは勇気を振り絞って、口を開きました。
「あの…僕、怖くないお化け…です…。」
そう言うと、若い女の人は答えました。
「私も、人間じゃなくて、お化けなの。」
「え!?」
怖がりの女の人は、人間ではなく、ぶるぶると同じお化けだったのでした。
「私も、貴方が人間だと勘違いしてたわ。私達、どちらも怖がりだわね!」
「そうですね!なぁんだ!どっちもお化けだったんだ!」
その後、二匹は、同じ性格に運命を感じ、立派なお化けの夫婦になりましたとさ。
めでたしめでたし。
怖がり
純度100%の暗闇
怖がりな私は動けない
恐る恐る進む
本当の手探りを知る
手に触れるもの一つ一つに
研ぎ澄まされる
冷たさ 硬さ
ザラザラツルツル
公園にあるもの
部屋にあるもの
感覚と概念の突合
温かさ 柔らかさ
しっとりふわり
人の手の信頼感
握れば導かれる
対話の原点
音もまた触覚だった
ものの位置と手触り
声は綿あめのように
安堵させる
暗闇を抜けると
目に映るものは
物ではなかった
悉く光だった
星の対話のような
音が聞こえた
"怖がり"
慎重なドアスコープの死角にも
陽はさすよって教えてあげる
ずっと隣で 安らかな瞳 星が溢れる 怖がり です
ずっと隣で
「見て。木の上にいる」
「ああ、あそこか。レッサーパンダかわいいな」
キミとの動物園デート。
かわいい動物たちに会えるのを、楽しみにしていた僕は、きっとキミ以上にはしゃいでいた。
キミとの写真を撮るより、動物たちをたくさん撮る。そんな僕に呆れることなく、ずっと隣で同じ景色を見ていてくれたキミ。そんなキミと、これからも同じ景色を見ていたい。と思うのだった。
安らかな瞳
特にする事がない休日。キミと向かい合ってソファに座り、コーヒーを飲みながら、それぞれ好きなことをしていた。
「ちょっと休憩するか」
読んでいた本を閉じ、コーヒーを飲もうと顔を上げると、こちらを見ているキミと目が合った。
「ん?どうかしたの?」
僕を見つめているキミは、安らかな瞳で微笑んでいる。
「一緒にいるのに別々のことをしてる。それなのに、淋しい感情は湧いてこない。そばにいるだけで幸せに思える。ステキな関係になれたんだなぁ。って思って」
キミの言葉に愛しさが溢れ、僕はテーブルの上に身を乗り出し、キミの頬にキスしたのだった。
星が溢れる
吐いた息が白く染まる寒い中、キミとナイタースキーを楽しんでいた。
「楽しいね」
「ね、言った通りでしょ」
「うん。来て良かったよ」
昼間もスキーを楽しんで、夜も滑りに行こう。とキミに誘われ、正直、寒いし行くのはイヤだな。と思っていた。けれど、僕が行かない。と言ってもキミは1人でも行きそうだし、1人で行かせるわけにはいかないから、僕はしぶしぶ着いてきたのだ。
「滑るのも楽しいけど、もう1つ楽しみがあるんだよ」
少し休憩しよう。と雪の上に座り、雪で遊んでいるとキミはそう言い出す。
「え?他にもあるの?」
「うん。上を見てみなよ」
キミが指差した先を見上げると
「うわぁ」
星が溢れるくらい、夜空を埋めつくしていた。
「キレイだよね」
「うん。まるで夢の世界にいるみたいだ」
しぶしぶ着いてきたナイタースキー。誘ってもらえて、着いてきて良かった。と思ったのだった。
怖がり
僕にしがみつき、ぷるぷると震えているキミ。
「大丈夫だよ。僕がいるからね」
そっと背中を撫でるけれど、その震えはおさまらない。
「すぐに終わるから頑張ろう」
僕の声にキミは顔を上げるけど、目をうるうるさせ、不安そうだ。
「怖がりだなぁ。一瞬で終わるから」
キミの順番が来て診察室に入る。僕が安心させるように優しく抱きしめると、獣医さんはキミに予防接種をした。
「はい、終わり。頑張ったね」
頭をぽんぽん撫でると、キミは恨めしそうに僕に唸るのだった。
怖がな君へ
これが貴方への最後の手紙でしょう
まだ泣き虫で怖がりだった君が懐かしい
きっと前を向いて進んでいるでしょ
振り返ってもいいんですよ
泣いてもいい
でもそのことについていつまでもくよくよするのはおやめなさい。
もう過ぎたことはどうにも出来ないのですから
そう言われても難しいですよね。
私はあなたの少し先を進んでいますから。
過去ばかり見ず、前を見て追いついてきてください。
ゆっくりでいいんですよ。
もし、追いついたら貴方が頑張ったこと、大変だったこと、難しかったこと、泣きたかったこと全部全部話してください。
怖がりなあなたからいろいろな話が聞けることを楽しみにしていますよ。
あなたの●●●●より
No.51
僕は怖がりな人間だった。
選択に責任を持つのが怖くて。何も選べない人間になった。
選択肢を出されても、誰かが先に選ぶまで、何もできない。
人生に責任を持ちたくなくて、常に誰か、責任を持ってくれる存在が欲しかった。
そんな時、彼と出会った。
常に誰かの主導権を握りたくて、誰かの人生が欲しくて仕方ない彼。
彼と僕は、奇跡的なまでに相性が良かった。
何も選べない僕の選択肢を、彼が選んでくれる。
自分で責任を負わなくていい人生というのは楽なもので、失敗しても何も気負わなくていい。誰にも責められない。
彼は僕を支配したいらしい。
僕がいい子にできたら、たくさん褒めてくれる。
歪んだ関係なのは分かっている。でも、あまりに心地よかった。
人生が怖い僕は、誰かの犬として生きる方が楽だった。
飼い主のくれる甘い甘い餌だけを食べて、温かい部屋でぬくぬく過ごしているだけでいい。
なんと甘美で、楽で、素晴らしいのだろう。
彼も楽しいみたいだ。
僕という、意志のある一人の人間の人生の選択権を握ることに、ただならぬ快楽を得ている、
彼も、怖いのだ。
自分で何も選べず、他人にとって薄味な人生を送るのが。
だから、他人の人生を支配して、覚えてもらおうとしている。
僕らは正反対なようで、よく似ているのだ。
2人とも怖がりで、歪で、どうしようもない。
世界を怖がる僕たちは、今日も互いの欠けたところを、歪に出っ張った部分で埋め合って生きている。
怖がりに厳しいこの世界で出会えた僕らは、きっと曲がりなりにも運命なのだろう。
テーマ:怖がり
「怖がり」
私はとても怖がりだ。
貴女の想い人が私であって欲しいと思いながらも
「違ったらどうしよう」
と思ってしまい、貴女に連絡できずにいる。
というよりも貴女が最後にもう話さないといった事が心に強く残ってしまっている。
それなのに私はとても貴女と話したい。
貴女は最後に傷つく覚悟を持って私に話してくれたというのに、
私は今、自身を傷つける勇気が出ない。
こんな私だから貴女に見捨てられたのだろう。
こんな私を貴女は許してくれるだろうか。
これから私は変わる事ができるのだろうか。
分からない。
分からないけど
そうであって欲しいな。
from.怖がりな犬より
春
その無意味な、いつかがやってくるのを待ってた。
河には飛び込んでみたし、金魚鉢には頭を突っ込んだ。
親友には死ねばいいと言った。4歳の頃の自分の写真は破いた。食べ物は飲み込まずに吐き出した。
早く咲いた桜を恨んだ。
時間だけがどんどん通り過ぎている。