雷音が鳴り響く、ある夕方のことだった。
部活が終わった後に忘れ物があることに気がついた俺は教室へと足を運んだ。
雷と雨のせいか、まだ明るいはずの空は暗く、何だか夜みたいに見える。
「こんな暗い学校、初めてかもな。」
そんなことを思いながら教室に足を踏み入れた時、ドォォーーン!!…と、一際大きい雷が鳴った。
その音の大きさに一瞬で驚いた時、教室の中から声が聞こえてきた。
小さい声で…女の子にの声だ。
「誰かいるのか?」
そう聞くとカタンっ…と、何かの音が聞こえたのだ。
その音のほうに視線を向けると、教室の隅に誰かがしゃがみこんでるのが見えた。
あれは…俺の幼馴染だ。
「…まだ残ってたのか?」
そう聞くと彼女は俺の存在に気がついたようで、視線を上げた。
「あ……」
「ーーーっ。なんつー顔してんだよ…。」
今にも泣き出しそうな顔をしていた彼女は、量手を耳に当て、雷の音を聞かないようにしていた。
普段、『しっかり者』として通ってるからかギャップにドキッとしてしまう。
「な…なんでもないから……」
そう強がる彼女の体はカタカタと小刻みに震えていた。
幼馴染だからこそ知ってることだけど、彼女は『怖がり』なのだ。
単なる自然現象なことでもびびりまくる。
「無理すんなって。」
俺は彼女の隣に座り、肩に手をまわした。
何かが側にあるだけでも、少しは不安が和らぐだろうと思ったのだ。
「うぅ…ごめん……」
「いいって。雷が止んだら帰ろうな。」
そう言って頭を一撫でした。
震える小さな肩に、俺とは違う体つき。
その華奢な体で我慢なんかせずに頼って欲しいと思いながら…。
(まぁ、今はまだこの距離でもいいよ。……今はまだ……ね。)
3/17/2024, 9:48:04 AM