『微熱』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
微熱
恋が時々こんな感じの表現されるな。熱にうなされたような、みたいな感じで。恋するキャラはよく顔を赤くさせられるし恋とは熱なのだな。意味わからんか。
さて、昨日加湿器が届いたから早速使ってみた。結果からするとよくわからなかった。
というかどうも部屋の湿度が適湿っぽいんだよな。だから加湿器の自動モードがほとんど動かなかった。
そうなると部屋の湿度に関係なく動かして部屋の湿度を上げるわけだが適湿なのに湿度を上げる必要ってあるのか?
でも持ってる湿度計がインフルエンザの注意を出してるんだよな。部屋の温度も湿度も理想的。加湿器も自動だと動かない。どうするべきなのか。
こうなると加湿器の必要性を感じなくなってくる。風邪の予防とちょっとした暖房のために買ったけど失敗だったかな。
朝起きるとなんとなく気だるい気がした。すっきりしない目覚め。そういえば、昨日の夕方から喉に違和感があったような気がする。まあ、ベッドから起き上がろう。
いつも通り、やかんを火にかけお湯を沸かす。その間にカーテンを開けて、洗濯機を回し始める。目覚めのコーヒーを淹れたが、飲む気がしない。朝食の準備をしようとしたが、食欲がわかない。体温計を取り出し、熱を測ってみる。37.6℃。少し高めだが、病院に行くほどではない。
ソファに座って今日の予定を考える。特に予定はない。そうだ、ベッドに戻って寝よう。
昭子はベッドに戻ってこれまでの自分の生活を振り返った。これくらいの体調なら、いつも通り過ごしていた。家族のお弁当やご飯を作り、掃除をして洗濯をして。体調が悪いからといって休む事なんてなかった。外に働きに行かない分、家の事は全てやらなくてはならないという責任感があった。家族から何か言われるわけではないが自分で自分を縛りつけていた。ひとりになってこれまでどれほど自分に厳しかったかと言う事を思い知らせる。
窓から入る朝の光を感じながらうつらうつらとする。
ふと目を覚ます。小一時間ほど眠っていたようだ。まだぼーっとする。子どもの頃の思い出が蘇る。熱を出した時、すりおろしのりんごを食べさせてもらった。布団の中で母の家事をする音を聞いていた。たまに部屋を覗く母。兄弟たちが学校に行っている間、母は私だけの母になる。それが嬉しくて熱が下がっても何日か学校を休んだものだ。母の家事を休んでいる姿も思い出せない。母も体調が悪くなることがあったのだろうか。私が覚えていないだけだろうか。
またうとうとと眠りの世界を漂う。
お昼を過ぎた頃、すっきりとした目覚めがきた。
冷蔵庫にりんごが入っていたはずだ。昭子は自分のためにりんごをすりおろした。ひとりになったのだ。病気になっても自分で自分を看病しなくてはならない。しっかりとしなければと思いながらすりおろしたりんごをゆっくり食べた。
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お題:微熱
later.
お題「微熱」
頭がボーとする
家のベットの中
今にも閉じそうな重い瞼を必死に開ける
熱でもあるのでは?と思いつつ
体温を測ろうとは思わなかった。
授業を休む訳にはいかない。
皆勤賞ほしいし
周りから変に思われたくないし
はぁ
それにしてもダルい
どうしようかな
やっぱ休もうかな…うーん
でもおかしいな。
この時間になったら母さんが起こしに来てくれるのに…。
何かあったのか?
……
行かなきゃ、もしかしたら…
何かやばいことになってたりして!
熱のせいなのか変な思考が頭を巡る。
ドタバタと音を立て、階段を降りていく。
そして思いっきり扉を
バン!
『母さん!大丈夫!??』
そこには、普通にテレビを観ている母さんの姿があった。
そして
「今日は土曜日でしょ?何そんなに慌ててるの?」
タイトル:微熱
「ああこら、強火にするんじゃないよ。」
藤間が焦ったようにカセットコンロの火を弱めた。
フライパンに転がった2つの目玉は、すでにほんのりと白みを帯びてしまっている。
「料理できないくせにしゃしゃるな。」
「でも、そのほうが早く焼けるわ。」
「典型的な馬鹿野郎だね。」
咲華は唇をとがらせ、フライ返しで目玉の橙色部分をつついた。
ぷつ、と薄い膜が破れて、どろどろした内側が溢れてくる。
「ああ、もう。」
「ほら、固まってないじゃない。やっぱり強い火のほうがいいわ。」
「違うんだって……。」
藤間が顔に手を当てて大きく息を吐いた。
いつもにこにこと難しい言葉を羅列する彼が、今はどうしてか言葉を詰まらせてひどく狼狽している。
その様子がとても面白い。
「どうして強火で焼いてはだめなの?」
「焦げるだろ、底面が。弱火でじっくり、蓋をして。そうすれば全体に火が通って、綺麗な目玉焼きになる。」
「ふうん。そうなの。」
あまり興味のなさそうな声色が出た。
「はあ……料理なんかやらせなければよかった。」
「そう?楽しいわ、藤間が困っているところを見るの。」
「僕は何も楽しくない。」
おぼつかない足取りで近くの椅子に腰を下ろし、不機嫌そうな顔で咲華の気の抜けた表情を見る。
咲華もその隣に座った。
油のはねる軽快な音、窓から入り込む電車の轟音、その間に言葉はなく、彼女はそっと目を閉じる。
「ねえ。」
「なんだい。」
「手、握らせて。」
「やだよ。君は体温が高いから。」
「あなたの手はいつもつめたい。」
藤間の血管の浮いた指先まで腕を伸ばす。
一瞬だけびくりと拒絶するように動かしたが、そっと包み込めば優しく握り返してくれた。
咲華は知っている。
藤間の言葉と行動はいつも一致しない。
「……やっぱり冷たい。熱を持っていないみたい。」
「まあ、君からしたらそうだろうな。」
「わたしの手、あたたかい?」
「あついよ。」
細長い指、爪も伸ばしっきりでガタガタ。
いつでもどこでも真冬に連れて行ってくれる藤間の手が、咲華は好きだった。
この手は自分に振り上がらない。
いつも下から、まるで犬を愛でるような動きで咲華に触れてくる。
それがとても心地よいのだ。
「……そろそろかな。」
「なにが?」
「目玉焼き。もう火が通っただろ。」
「わたしがお皿に盛り付ける。」
微熱と言う小さな虫が
どこからかやってきて
私のなかで大暴れ
どんどん成長し
首の痛みと
咳を置き土産に
いつの間にか
夫のほうに飛んでいた
夫は基礎疾患のある
前期高齢者
どうかあまり
暴れないでね
37.5℃。
私は腋から取り出した体温計の表示を見て溜息を吐いた。
昼休憩、病院の売店でコッソリ買った体温計で熱を測ってみたら、案の定微熱。
頭重感と倦怠感はあるけれど、このくらいなら仕事へのアドレナリンで乗り切れる。多分だけど。
今日は午後から日課の検温に加え、検査出し、オペ出しと受け入れ。合間には看護計画や退院サマリーの入力も進めたい。
早退してチームの看護師に迷惑をかけるか、就業終了まであと4時間、粘るか。
残業せずに帰宅できる仕事量ではないけど、でも、流石に今日は定時で帰ろう。帰らさせてもらう。
腹の決まった私は立ち上がった。
「よし、働こう」
「37.5℃。微熱っすね」
「……っ!」
背後から急に声をかけられて、心臓が一瞬止まるかってほどに驚く。
此処は会議室や事務室が並ぶ職員専用フロア。職員でさえも滅多に通らない廊下の隅でコソコソしていたのに。
あたしが驚きのあまり落とした体温計を、顔馴染みのレントゲン技師さんが拾ってくれる。
「ありがとうございます」と告げて返してもらおうと手を差し出したけれど、渡してはもらえなかった。
「看護師さんって、微熱は熱じゃないと思ってますよね」
「そんなこと…」
「ありますよね。普通の人は、37.5℃でこれから4時間以上も仕事しようなんて思わないですよ」
誤魔化すように笑うしかない。
先日、そういったことの積み重ねで、私は彼氏と別れたばかりだ。
だって、日々解熱剤を使わなければならないような高熱患者を看護してるのに、今更たかだか微熱で心配してくれない、冷たいとか機嫌がすこぶる悪くなられてもねえ?
「微熱って本当は辛いと思うんですよ。普段とは違う身体の状態なんですから。看護師さんに言うのも烏滸がましいですけど」
ベンチへ座るように促されて、確かに座っている方が楽だから大人しく腰をかける。技師さんも隣に腰掛けた。
このレントゲン技師さんとこんなに話をしたのは初めてだった。
普段は患者さんのレントゲン室への送迎時に挨拶をするだけ。
だけど。
私を心配してくれているのはわかる。
ぶっきらぼうな伝え方でも、どういうわけかわかる。
「…ありがとうございます」
「帰ります?」
「はい」
素直に頷く。
明日に回せる仕事は看護計画と退院サマリーくらいしかなくて、チームの皆んなには迷惑をかけてしまうけれど。
技師さんは体温計を私が座るベンチに置いた。
直接渡してもらえなかったことにわけが分からず訝しがりながらも手を伸ばす。
「あ、ちょっと待って。写真撮りたいっす」
「写真?」
ますますワケが分からず混乱した私を放置したまま、技師さんはスマホで37.5℃と表示された体温計の写真を撮った。
「俺もコレで帰ろうと思って」
「はぁ?」
仕事のサボりの口実に使うの!?
私のムカついた顔を見て、技師さんは慌てて首を横に振った。
「違います、違います。青木さん、電車通勤でしょ?
俺、車だから近くまで送って行ければと思ったけど、でも、考えたらキモイですよね。いつも挨拶程度だったのに」
技師さんは焦って慌てて言い募る。
なんかこの人って多分素直で良い人だ。
技師さんの胸ポケットに取り付けられた名札に目を凝らす。
木村さん。
「ですね。でも、駅まで乗せて行ってもらえると助かっちゃうかも。木村さんの昼休憩を潰しちゃうのは申し訳ないですけど」
何だろう。
少しだけなら頼って良いと思ってしまったのだ。
その方が、木村さんに心配をかけなくて良いのかなあと思わされてしまったのだ。
普段なら、身内や友人以外こんなこと頼まないことなのに。
「そんな、全然良いです!青木さんと一緒にいれ…っと、何でもないです」
木村さんは慌てて私から目を逸らして僅かに横を向いた。
でも横顔のせいでマスクで覆いきれていない頬や耳元がよく見える。その頬や耳元が紅く染まっているような気がする。見間違いでなければ。
「木村さん?」
「あの、青木さん。早く職場に伝えた方が良いと思います、」
「…ですね」
「俺、車を地下駐車場の方に回しておきます。その方が一目に付かないだろうし」
「わかりました。あの、LINE繋げても大丈夫ですか?ちょっと時間かかるようなら連絡取りたいですし」
「あっ、そうですよね。すみません」
「いえ、私こそ昼休憩潰してしまいそうで、すみません。ほんとに大丈夫ですか?」
「俺の心配はいらないっすよ」
私は職場へ向かうため立ち上がる。
多分、立ちくらみを心配してくれたのだろう。木村さんは何かあったら私を支えるつもりで両手を軽く伸ばしてくれていた。
「行ってきますね」
「はい。待ってます」
たかだか微熱と思っていたけど、人に優しくされると嬉しい。
微熱をアピールする気にはなれないけれど、でも、こんな優しさは身に染みる。
車に乗ったら、窓を開けて換気してもらおう。
この微熱の原因が何なのかわかりかねてるけど、木村さんには絶対に移さないように。
私は木村さんのことを考えながら病棟へ向かった。
微熱
微熱
貴方に触れるたび、
私の心は微熱に浮かされる。
身体は火照り、思考は霞み、
現実さえ揺らいでしまいそう。
赦されない恋と知りながら、
理性を振り切るほどに、
私は貴方に溺れてしまう。
貴方の瞳は、私を通り越して、
別の誰かを映しているのは、
知っている。
それでも、今は、
私だけを見て欲しい。
私も、過去の影や後悔の鎖、
心に残り続ける未練の残滓さえ、
全て忘れたふりをして、今は、
貴方だけを見ているから。
幻の恋に心を奪われ、
微熱に身体を支配されて、
貴方を求める渇望が止まらない。
貴方の指が私に触れるたび、
心の静寂が炎へと変わる。
その指先は、私を溶かし、
思考さえ、壊していく。
胸を刺すこの痛みでさえ、
貴方への愛しさへと変わる。
例え、この微熱が、
赦されない夢だとしても、
例え、この微熱が、
全てが幻であったとしても、
この瞬間、この真実が、
貴方を救う光になればいい。
貴方に触れるたび、
私の心は微熱に浮かされる。
そしてまた、微熱の中で、
私は貴方を愛し続ける。
ピピピ、ピピピ。音が鳴って体温計を引き抜くと、デジタル表示は37.3℃ 。
「うーん微熱だ」
体に怠さはあるものの、平気で動けるレベル。さりとてこのご時世で、ましてやパン屋さん、食品を扱うお店だ。休むしかない…か。欠勤が収入に直結するのがパートタイムアルバイターの苦しいところだ。
店長に連絡を…。だいぶ早い時間だな。電話で起こすのも申し訳ない。欠勤時の連絡ってすごく気を遣うな。まずはメッセージ送って、いつもの朝礼の前ぐらいに電話してみるか。
メッセージを送って1分も経たないうちに返信が来た。
『ヤマノさん!』 『大丈夫?』『一人暮らしよね?』『食べ物あるの?』
うはっ。店長から怒涛のお母さんラッシュが繰り出される。起きてたんスか。あ、パン屋さんだもんな。
『微熱なんで、大丈夫です。ご心配おかけします』
『動けるなら病院行きなさいね』『この時期インフルも大変なんだから』
動物病院なんか行かないって。インフレは政府がなんとかしてくれ。店長こんなときにボケてこないで…ってあれ? そんなこと書いてくるわけ、あれ?
あ、これ、熱上がってるな…。
病院に着いたときには悪寒がひどくなっていて、歩くのもやっとだった。39.3℃ 。インフルエンザだった。
病院の帰り道、商店街を通り過ぎると、後ろから呼び止められた。
「ヤマノさん、全然大丈夫じゃないじゃない」
わ、店長。ジャナイジャナイは陽気すぎるよ。なんか私、お笑い感度が高くなってるな。違うか。
「店長、ご心配おかけしてます」
お互いマスクはしている。
「あ、とぉ、インフルでした」
合ってるよな。インフレって言ってないよな。
「ほら、ちゃんと病院行って良かったでしょ。よくなるまでしっかり休みなさい。年末には戻ってきてもらうんだから」
そのお心遣い、痛み入ります。
「あ、それとこれ、お店終わったらあなたのお家に行って渡そうと思ったんだけど、いま会えてよかったわ」
店長の手にはレジ袋。中にはどっさりレトルトのお粥が入っていた。
「そこはパンじゃないんですね」
「弱ってるときは消化にいいお粥が一番。こんなときにパンなんか勧めたらパンを売る資格ないわよ」
さすが店長、リアリストですね。推せるわー。
微熱
ん
念じて念じて微熱を出す
休む
休みたい
これが通じるのは高校生まででしょう?
精神が成熟したら
社会に出ても高校時代よりマシに感じて
粘り強く生きていられるのでしょうか
-さよならは、なしにして- 余白
微熱が出たような温度のまま、あなたを忘れて行った。
「その人とはその後、どうなったの?」
何気ない会話の中で突然出たあの人の話に、動揺をしなかったのはなぜだろう。
私はきっとまだあの人を愛しているし忘れているわけもないのに、そう思いながらドロドロに溶けたホイップクリームを見つめていた。
目の前に座る現在の恋人は特段気にしているという様子もなく、私が過去一番好きだったと断言する昔の恋人についての話を続けた。
捨てる事を諦めてしまった
あの人に対する微熱のようななまあたたかい愛情は、今や私の一部となっていた。
「タイミングが、悪かったのかな。
ちゃんと好きだったんだけどね、私が誤解を与えちゃったのかな。」
浅はかな言葉たちが溢れていく。そんな自分に少しの落胆を覚えながら、動揺を隠すためにコップに手をかけた。
期間限定のいちごミルフィーユミルクティーは甘くてくどい。まるであの人に対する当時の自分の感情のようだと思った。
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「それカロリーやばいでしょ?」
いかにもイタズラ好きといった笑顔で、あの人ならそう言うだろう。
いちごソースの塊を流し込みながら、記憶の中のあの人の輪郭をなぞった。
世界で一番愛していたあの人は、四年前の十二月忽然と姿を消した。
理由は今だに、わかっていない。
警察から電話が来た時のあの衝撃と恐怖を、昨日のことのように思い出す。
力なく帰った帰りの道で、胃の中の全てを吐きそうになったことも、寒くもないのに手の震えが止まらなかったことも覚えている。
当然ながらその日はパニックに陥り、すんなり帰宅することできなかった。
一人でカラオケに行き、歌いながら少し泣いたりしてみた。
それでも次の日の朝には、せっかくの休みだというのに七時に起きて皮膚科へ向かった。
いらないところでいい子を発動するその癖は、治し難い私の嫌な癖だった。
やけ酒を飲んだあげく友達の家に押しかけ朝まで泣いたり、しばらく仕事を休んで引き篭もってみたり。そんな風に自分の感情に素直になれたらどんなに楽だろう。
「嫌いだなぁ」
一人カラオケの帰り道、信号待ちの交差点で一人呟いた。ポケットに手を入れていないと寒さで痛くて、ただそれだけのことで私は一人なんだと実感してしまう。
愛している人に立ち去られた時でさえある程度の客観性と冷静さを保つ自分を心底気持ち悪いと思った。
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「そっか。それは残念だったね」
目の前に座っている現在の恋人は、淡白かつ少しの残念さを帯びた丁度の良い声で私に返事をした、
あぁ、この人のこういうところがいつも私を救う。
暖色のライトがつくカフェの店内で私は途端に安心感を覚えた。
いつも幸福感と安らぎをくれる、この人はそういう人だった。
あの人がいなくなって憔悴していた頃、この人に出会った。気が紛れればいい、そう思って何気なく話したあの日の電話で、私達は妙に意気投合した。
話せば話すほど気分は明るくなり、
気づけばどんな重たい話でさえも、口からすんなりと溢れていった。あの人の前では勇気を振り絞らなきゃいえなかった本音や願望が、この人の前だと驚くほど自然に口から出ていった。
その人といる自分が好きかどうかが大事である、と誰かが言った。納得はするものの、同時に
その人といる時の自分が好きでなくても会いたくなることもまた恋である、と私は考えていた。
あの人との恋は、お互いを傷つける恋であった。
刺激的である種の熱烈さを帯びたその恋は、幸せと同じくらいの分量の痛みと切なさを帯びていた。
この人との恋はまるで温泉のようであった。
体の芯からポカポカと温まり、気づけば自然体で安らぐ私がいた。いつもそこにあるのは、安心感と楽しさで、そこには地味だが小さな幸福と安らぎがあった。
「君は本当によく笑うね」
甘ったるいミルクティーを飲み終わって笑う私を見てこの人が言った。
その顔にあの人を輪郭を重ねてみる。
あぁ、私は彼をちゃんと愛していた。
その確信と同時に、今ここにある幸せを実感する。
私はこの人と生きていくんだ、この人を愛し愛されながら。
よく笑う恋人の顔を見つめながら、胸の中が幸福で満たされていくのを感じた。
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「甘えるのは苦手でしょ?」
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ふと、あの人の声が聞こえた気がした。
大好きな、忘れることのないあの人の声。
あなたには甘えられなかったけれど、甘えたいと思う人に出会えたよ。
あなたのことを愛していたの。
今でもずっと胸にある、微熱のような温度の愛情を感じながら最後の一口を飲んだ。
やっぱり甘ったるくて、もう頼まないなとそう思う。
でもこの味をきっと私はずっと覚えているだろう。
十二月の風刺すような寒さで、急いでコートのポケットに手をしまう。
「今年はちゃんと春が来るかなー」
「え、どういう意味?いつもちゃんと来てるでしょ?」
楽しそうに笑うこの人を見ながら、つられて私も笑っていた。
冬がまた好きになれればいい、あの人がいなくなるまでは一番好きな季節だった。
十二月の風も悪くない、頬を掠めていく風に少しの愛着を感じた。
見上げれば空は雲ひとつない快晴で、
大好きだったあなたの横顔を思い出しながら、あなたが笑顔でいればいい。そう思った。
ー終ー
ワシの大切な相棒が風邪をひいたらしい。
次の日が休みだということで久々に閨の誘いでもと思ったが、こればかりは仕方あるまい。
頭に濡れ雑巾を掛けて立ち去ろうとすると、着物の袖を緩く引かれた。
「……」
熱で潤んだ瞳がこちらを黙って見上げてくる。
やめとくれ、今は目の毒でしかない。
「熱、移してもいいか?」
果たして我が相棒はどこまでも男前だった。
一体何処でそんな誘い文句を覚えてきたのだろうか。
お望み通り熱を分けてもらうとしよう。
微熱
うなされて目を覚ますと、リビングはまだ電気が点いていた。
テレビの音はなく、台所では洗い物の気配がした。時折、鼻歌もきこえた。
枕元を片手で探って携帯電話を手繰り寄せた。
『氷まくらちょうだい』
それだけ送って、また眠りに落ちた。
ほだされた心地がして目が覚めると、電車に揺られていた。隣にはあの人が、静かに本を読んでいた。
乗客はまばらで、車内アナウンスも聞こえなかった。
「あの、」
声を出すと、その人は人さし指を唇に当てた。わたしはまた目を閉じた。
熱に浮かされて目を開くと、いつもの天井があった。
リビングの明かりは消えて、ベッドサイドのテーブルには水のボトルが置いてあった。そういえば寝る前、冷蔵庫から出したんだっけ。
全部、夢。そう、夢だ。
水を飲もうと身体を起こすと、柔らかいものを手で踏んだ。アイス枕だった。
カーテンの向こうではすずめが鳴いている。
わたしの風邪も、もう微熱。
#微熱
微熱な体温
今に消えゆくほころびを見つめる
「名はいらないね、いずれ消えゆく代物だ」
彼は、それを腕に包むとつまらなそうにそう呟いた
「おやすみ」
深い穴のそこにそれは落ちると、言いよ得ぬ恐怖に染まる
土深く闇の中に微熱のしていたそれは静かに消えた。
体調が悪い。
頭が働かない、自分のことで手一杯で何もかもが癪に障る。
やばい、めまいがしてきた。
意識が遠のく。
汗は滲む。
身体は重く、辛うじて動くがとても遅い。
やるべきことは、たくさんある。
なのに、出来ない。
悔しい、やっとだ。
やっと、5年ぶりに薬要らずで体調が安定してきたのに。
多くの努力が実を結んでいたのに。
気候が少し、体調が少し、崩れただけで何も出来ない。
薬を飲んだが、少し飲むタイミングが遅かった。
ただ、それだけ。
それだけのはずなのに、全然効かない。
分かりやすく、発熱してくれたら良いのに。
こんなに自分が理解できず、
こんなに自分が許せないとは考えられなかった。
予想してなかった。
私は、未だに理想に固執していたことに。
題名 微熱
いつも微熱がでているような感覚だ
学校に行ったり友達の家に行くのですら
体がだるい
寒気がする
それでも行かなければいけない
それがこの世界だから
この世界は
学校に行くのが当たり前で
仕事で働くのが当たり前で
でも働かない人もいる
ただ自分がそうなりたいかと
聞かれると
そうでは無い
自分は生きていて良かった
という実感が欲しい
いい事があればそれを実感するか?
友達に生きろと言われて実感するか?
こんなことを考えながら今日も学校に行く
微熱
最近、やたらと微熱が多いんです。
夜家に帰ってきて、ふぅーと一息ついた時に「あれ?なんか変だな?」と感じて、測ってみると大体36.8℃くらい。
多い時は、週に3回はそんな事があります。
変だなぁ、昔は熱なんて全然出した事なかったのに。
ちょっと前にコロナに罹ったし、それの名残りかな。
今は仕事が忙しいし、身体がしんどいのかな。
色々思いを巡らせてみて、いやまてよと思い至ったのは、
「気付いてなかっただけで、昔から意外と発熱してたんじゃないか」
という事。
つまり、今やっとそういう身体の機微に気付けるようになったのでは。
まぁ無理が利かなくなった、歳を食ったと言ってしまえばそれまでだけど。
もっと自分を労わり大事にする、そんなきっかけ探しが出来る様になったと思えば、存外悪いものではないのかもしれません。
#微熱
微熱っぽいかも
君といる時は
いつもよりちょっと体温上がる。
─────『微熱』
微熱
気だるさを持て余すこと
悪寒
浮かされた脳は人肌を求める
痛み
心細さを数え続けること
やがて眠ってしまうから大丈夫
どうせ大したことじゃないもの
継続しない感傷に浸かる
37℃台
この揺れを愛して
微熱
何となく
微熱ありそうだなと感じることはある
でもわざわざ測ったりしない
知ったところで何もしないから
何でもそうだ
なんとなく気づいていても
知ろうとはしない
知って苦しくなるくらいなら
知らなくていい
微熱のままでも生きていけるなら
それでもいいって思う