朝起きるとなんとなく気だるい気がした。すっきりしない目覚め。そういえば、昨日の夕方から喉に違和感があったような気がする。まあ、ベッドから起き上がろう。
いつも通り、やかんを火にかけお湯を沸かす。その間にカーテンを開けて、洗濯機を回し始める。目覚めのコーヒーを淹れたが、飲む気がしない。朝食の準備をしようとしたが、食欲がわかない。体温計を取り出し、熱を測ってみる。37.6℃。少し高めだが、病院に行くほどではない。
ソファに座って今日の予定を考える。特に予定はない。そうだ、ベッドに戻って寝よう。
昭子はベッドに戻ってこれまでの自分の生活を振り返った。これくらいの体調なら、いつも通り過ごしていた。家族のお弁当やご飯を作り、掃除をして洗濯をして。体調が悪いからといって休む事なんてなかった。外に働きに行かない分、家の事は全てやらなくてはならないという責任感があった。家族から何か言われるわけではないが自分で自分を縛りつけていた。ひとりになってこれまでどれほど自分に厳しかったかと言う事を思い知らせる。
窓から入る朝の光を感じながらうつらうつらとする。
ふと目を覚ます。小一時間ほど眠っていたようだ。まだぼーっとする。子どもの頃の思い出が蘇る。熱を出した時、すりおろしのりんごを食べさせてもらった。布団の中で母の家事をする音を聞いていた。たまに部屋を覗く母。兄弟たちが学校に行っている間、母は私だけの母になる。それが嬉しくて熱が下がっても何日か学校を休んだものだ。母の家事を休んでいる姿も思い出せない。母も体調が悪くなることがあったのだろうか。私が覚えていないだけだろうか。
またうとうとと眠りの世界を漂う。
お昼を過ぎた頃、すっきりとした目覚めがきた。
冷蔵庫にりんごが入っていたはずだ。昭子は自分のためにりんごをすりおろした。ひとりになったのだ。病気になっても自分で自分を看病しなくてはならない。しっかりとしなければと思いながらすりおろしたりんごをゆっくり食べた。
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お題:微熱
11/27/2024, 1:12:27 AM