『微熱』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
マリアは温度を確かめるように、おそるおそるお湯に手を入れた。
「ウーン、ちょっと熱い。こういうとき日本語ではナンテ言うんだったかな…そう!微熱デス!」
思いがけない答えに真弓はクスりと笑い、マリアに続き温泉に入る。
「微熱って!ワードチョイスおもしろ。うん、ぬるくはないけど、熱すぎもしなくてちょうどいい。いい湯。」
真弓の答えに、マリアは不服な表情を見せた。
「エ。微熱ってちょっと熱いの意味デショ?違うの。」
「物には使わないよ。大抵は人相手に使うことが多いかな。風邪引いたけど微熱だった、みたいに使う。」
「フウン。じゃあ、ちょっと確かめさせて。」
そうしてマリアはおもむろに、真弓の頬を両手で挟んだ。
「ななななな何するのマリア!」
「ンー?真弓が微熱かどうか確かめてるの。温泉入ってるから、ほっぺも温かいね。これが微熱、ってヤツ?」
「いや知らないし…」
突然頬に手を添えられ綺麗な目で見つめられる衝撃に、真弓は顔が熱くなるのを感じた。
「アレー?さっきより熱くなった。これは微熱間違いなしダネ!」
「もうそれでいいから手を離してぇ…」
微熱どころではない熱を感じながら、真弓はマリアをからかったことを後悔するのだった。
300字小説
新鮮なお代
人気の無くなった夜の通りから女性が薬店に入ってくる。
「子供が熱を出しました。お薬を頂けないでしょうか?」
心配げに頼む女性のスカートの裾から茶色の尻尾が見え隠れする。彼等に果たして人の薬は効くのか。病状を聞くと熱はそこまで高くないらしい。
「微熱ならビタミンを取って、暖かくして寝るのが一番だよ」
リンゴとみかん、使い捨てカイロを袋に詰めて渡す。
「お代は良いから、これを持ってお帰り」
女性は何度も頭を下げて店を出ていった。
数日後、店を開けるとシャッターの前に、女性に渡した袋が置かれていた。
「……ワカサギか。子供さん、治ったようだね。ありがとう」
新鮮なお代に礼を言う。朝霧の中、小さな足音が去っていった。
お題「微熱」
"微熱"
ピピピピ…ピピピピ…
「ん、……」
久しぶりの休日の早朝、いつものように目覚ましの音と共に意識を浮上させ、上体を起こす。
「……」
──なんだろう、身体が少し熱い気がする。
気の所為だと一瞬払い除けようとしつつも医者の性には抗えず、サイドテーブルの引き出しから体温計を取り出し、スイッチを入れてシャツを捲って脇の下に挟む。
少し待って『ピピッ』という音が鳴り、挟んでいた体温計を取って液晶に表示された体温を見る。
37.5℃
微熱だ。
「はぁ……」
──せっかく久しぶりに丸一日休みだと言うのに……。
休みの日に済ませたい事を一気に済ませようと思って計画していた事が崩れて、大きな溜め息を吐く。
──まぁでも、微熱なら半日位で下がるか……。
「みゃあ」
俺の溜め息に起きてしまったのか、ケージの中の子猫が鳴き声を上げる。
「悪ぃ、起こしちまったか?」
「んみゅ」
ベッドから下りてケージの中を覗き込みながら子猫に謝罪の言葉をかける。だが子猫は何処吹く風、小さく鳴いて皿の中の水を飲んでいる。
「待ってろ。今、飯持ってくるから」
ケージの扉を開けて餌皿を取り、部屋を出て子猫用のご飯を皿によそってぬるま湯を入れてふやかし、スプーンで混ぜてペースト状にする。
皿を片手に部屋に戻ると、ケージの外に出ていた子猫が「みゃあん」と元気な一声を上げてケージの中に入る。
いつもは扉を閉めてから部屋を出ているが、休みの日なので今日は一日扉を閉めないでおこうと扉を開けたまま部屋を出たのだ。
「ほら」と皿をケージの中の定位置に置くと「みゃあ!」と鳴き、皿の前に陣取って中に顔を埋めて「うみゃうみゃ」と鳴きながらご飯を食べ始める。
ご飯にがっつく子猫をまじまじと見る。まだ数週間だというのに、最初の頃より大きくなっている。子猫の成長は早いと聞いたが、まさかここまで早いとは思っておらず、とても驚く。だが驚きと同時に、微笑ましくもある。
──たんと食べて、大きくなれよ。
いまだにご飯をはぐはぐと食べている子猫の背中を優しく撫でる。すると子猫がこちらを振り返り「んみぃ」と鳴きながら、背を撫でていた手に喉を鳴らしながら擦り寄ってきた。餌皿を見ると、沢山乗っていたはずのご飯が綺麗に無くなっている。
「お前本当に食いしん坊だな」
ふ、と微笑ましく思っていると、身体の怠さが襲ってきた。軽度の怠さで気にならない程度だが、身体の熱っぽさと相まって具合が悪くなる。ふらりと立ち上がってベッドの上に寝転がって毛布にくるまる。
「はぁ……」
先程より少し酷くなっている。微熱だからといって侮るなかれ、あまり動くと熱が上がってしまう。
──飯は、いいや…。用意している間に熱が上がってしまう…。
ぼーっと天井を見つめていると、何かがベッドの上に乗ってきた。
「みゃあ」
目だけを動かして横を見ると、子猫がベッドの上に乗って枕元に来ていた。不思議そうに俺の顔をまじまじと見ている。その様子を眺めていると、俺の顔のそばで体を丸めた。
「お前、まさか心配してんのか?」
なんて絵空事のような事を口にすると「んみぃ」と鳴いて少しすると、ゴロゴロと喉を鳴らし始めた。
「……」
──暖かくて、落ち着く。
すると、だんだん眠くなってきた。
──休日だし、こういうのもたまにはいいだろ。
眠気に抗う事なく、瞼を閉じて意識を手放し、眠りにつく事にする。
「ん……いつの間に…」
目覚まし時計の液晶に目をやる。おそらく二時間ほど寝ていたのだろう。
「?…あれ……」
上体を起こすと、思わず疑問の声を上げる。朝起きた時と眠る前にあった熱っぽさと怠さが無い。試しにもう一度体温計で熱を測ると、平熱にまで下がっていた。
下がるのに半日は要すると思っていたのに、こんなに早く下がってしまうとは。柄にもなく驚いて、開いた口が塞がらない。
ふと、枕元に寝ている子猫を見る。まだ気持ち良さそうに瞼を閉じていて、すやすや夢の中だった。
「……」
──ありがとう。
ふ、と口角を上げて心の中で、まだ夢の中の子猫に感謝の言葉をかける。
起こさないように、そーっとベッドから下りて、自分の朝食を済ませに部屋を出た。
【微熱】
『こほっこほっ』
僕の恋人は人より体が弱くいつも夏と秋の変わり目には風邪をひく。
しかも長引くし微熱が出る。
僕はその恋人をほぼ毎年看病する。
両親はしばらく何処かへ行っているらしい。
恐らく他界だ。
周り人が悲しませないようにと気を遣っているらしい。
『こほっごほっ』
今年は去年よりも悪化している。
『行かないで…』
僕が今日の夕飯の買い出しをしようと立ったらたら服の裾を掴みながら言ってきた。
『ほんっと可愛い…』
絶対風邪を引いてる人に思ったらいけないけど思ってしまった。
ふと恋人を見ると頬を赤らめていた。
どうやら口に出ていたようだ。
微熱
これは微熱なのだろうか
私はあまり熱を出さないから分からないけど
少し体がしんどかった
体調が悪くても君が隣に居てくれたから、
君の声で元気になれた
ありがとう
居てくれるだけで私は嬉しかったよ
私も君が体調悪い時、
隣で居れる存在になりたいなぁ
「微熱」
「おい!!しっかりしろ!」
またひとりやられた。
―くっそ。数が多すぎる。どうなってるんだここは。
閉鎖的な世界を巡る俺らが、見たこともないやつらと相対する。
―こんなの聞いてない...嫌だ...逃げたい...
「俺達がいかなきゃこの世界は終わるんだぞ!
俺達には戦う以外道はねぇぞ!」
どこからともなく声が聞こえた。
―確かにその通りだが、それが本当に正しいのか...?
―絶対に死ぬと分かっていながら戦うのか...?
―俺は何のために生きているんだ...?
―俺は死ぬために生まれてきたのか...?
混沌とした絶望に包まれる。
体がじわじわ熱くなる。
その時気づいた―
俺の為に、自らを犠牲にするやつらが何億もいることに。
自分を犠牲にして彼らの世界を守ったその証に。
―俺も...守らなきゃ...
男は一歩ずつ、足を踏み出し始めた。
―この世界を守るために―
「おい!!しっかりしろ!」
微熱╱11月26日 日曜日
あなたを見るとキュンとする。
話すとドキドキして、嬉しくなる。
でも、熱が出たみたいに暑くなる。
微熱なんてものじゃない。
友達に、真っ赤だよwって笑われるくらい暑くなる。
自分でもやばいと思ってる。
でも、あなたが魅力的すぎるのも悪いの。
これからもそのままでいてね。
あ、ただ。
私以外見ちゃだめだからね!
ちょっと熱っぽいな…..微熱かな?
額を離して聞いてくる
あなたのせいです
微熱。
躰は熱いのに、
肌寒いのはどうしてかしら。
意識はボンヤリしてるけど、
意外とハッキリしてるのはどうしてかしら。
安静にしてるのに、
苦しいのはどうしてかしら。
不思議 不思議 摩訶不思議。
不思議 不思議 あら不思議。
#微熱
「ほら、熱あるじゃない…。学校に連絡入れておくね」
幼い頃は熱が出ると学校を休んでいた。
今思えば、微熱と呼ばれるくらいだった。
それでも下がり切るまでは家で過ごしていた。
大人になった今、微熱が出ても仕事は休めない。
薬を飲んで、微熱がある事を隠して自分を騙していく。
今日も仕事の疲れが出たのか微熱が出た。
幸い、今日は休みだ。
「はぁ…、休みでよかった….」
「大丈夫?休みで良かったかもだけど…」
思わずため息と共に呟いた独り言に被せて
心配する声が聞こえた。
半年前から同棲を始めた彼氏だ。
「ごめんね、ありがとう」
「ごめんはいらないよ。頑張ったんだから」
「…っ、うん。ありがとう」
「お粥作ったんだけど…」
「えっ…!食べる食べる!」
料理なんて無理って普段言っている彼なのに。
思わず飛び起きてしまった。
「大丈夫??そんなに早く起きたら悪化するかもよ」
「あは、そうかも」
「ええ、ダメじゃん…!」
「嘘だって、大丈夫。ありがとう」
思わず彼をからかってしまったけれど、
あなたの優しさで熱も下がりそうよ。
それよりも、嬉しさで高熱になってしまうかもね?
熱の出る前触れからもうだるいことが多い。
38度なのに元気で、
その後どんどん症状が出てきたことがある。
高熱のときは、時間がたってきてからの方が
だるい。
いつもよりちょっと高い、36.9度くらいのときと、
高熱になったばかりのときだと
36.9度くらいのときの方がだるいかも。
熱はないけどだるいっていうことはよくある。
熱がないから大丈夫というわけではない。
でも、 当然、熱がないときは
必ず大丈夫じゃない わけでもない。
熱があってもなくても相手の体調をしっかり
見てから判断してあげてください。
「微熱」
最後の2行なんで書いたんだろう(?)
熱があってもなくても、だるいときとだるくないとき
があるからちょっと難しいですね。
相手の体調を見てから…(さっきも言ってた笑)
まあまあ、今週も頑張りましょう!
俺「行きたくない」
母「体温はかりな」
|37.0|
母「無理なら早退」
俺「休ませてくれ」
これくらいが微熱。
触れてはならないその肌に
そっと手を伸ばして…
躊躇いを隠し切れずに
僕の吐息だけが部屋に響いた
夜明けまでの長い時間を
ロウソクの炎が揺れる先に
貴女は僕を惑わせるだけで
微熱にも似た躰の気怠さだけが
僕をまた躊躇わせる
僕たちは厄介な情熱に巻き込まれて
心を見失ってしまったのかもしれない
ねぇ…
このままで構わないから
貴女の心に…そっと触れさせて
微熱少年…monotone boy
そんな頃も…
恋をした夜に…
今夜みたいな寒い夜
君に会いにいく…
海辺の町
国土をひたすら南下して
海が見えたら左に曲がる
指先や掌を信号待ちの度に
グローブ越しにエンジンで手を暖めて
海風は冷たく吹き付けるけど
君の笑顔が浮かぶ…
次の信号待ちまで寒さも飛ぶ!
沖に浮かぶ灯台が見てきた
後13キロ!
また浮かぶ…待ってる君が…
左のローソン 右に交番
ゲートが見えた…
笑顔が近い…
君に会える…
早く逢いたい…
勾配キツイ坂を上がり…
俺のホークスのスタジャンを…
着た君…♪
寒いのにゲートまで…
寒い中…ありがとうって…
お互いに…
5分だけの2人の時間
おとうさんお母さんがいいよって言ってくれた時間
受験生の足りない時間…
もちろん少年が無茶して飛ばしてきたことを
おとうさん お母さんは知らない…
心配かけるし…(笑)
長い時間をかけてきたことは
好きな人への想いで…
大切な事が伝わればねぇ…
monotone微熱少年です
おとうさんお母さんにバイトの店長からお奨めな
流行りの和菓子を貰ったから渡してもらったりとかも…
それで
「親も同じ人だからね…」
「俺らと同じだよ…」
「むかつく事もあるよ!」
「許してやろ…ねぇ!」
そうとか言って帰る…
大事にハグとかしてからね…♪(笑)
あの娘の笑顔を明日の力にしてね…
もちろん…
連れて帰りたい想いをおしころしてねぇ…
またひたすらに飛ばす…
朝から学校なんでね…(笑)
遠い大昔 無口な兄が好きな人に逢いに
毎週末深夜仕事終わりから福島から神戸まで
毎週…高速をかっ飛んでた…
俺にはそれが見本になってくれてた
痛みも苦しみも切なさも全部知ってた…
今を大事に真っ直ぐな気持ち大切に…
そう見えいて思えた兄の背中と
ボロボロの錆びた日産のサニーカルホルニアバン
兄も俺も大人になってだいぶたつけど…
今のmonotone微熱少年少女達に
俺の過去はどう見えるのか?昭和の置き土産だね(笑)
微熱
微熱とは
37°〜38°までの体温
個人の平熱にもよるみたいだけど
自分は基礎体温が低いので
熱が上がる事もあまりない
健康的ではない
恋をすると微熱状態が続くとかいうけど
どうなんでしょうか
恋からもう何年も遠ざかってしまって
恋をするという状態も分からない
自分みたいな人間は
きっと恋をしたら
今より健康的になれるのかもしれない
ただ、恋の仕方が分からない‥‥
#65 微熱
絹のような髪と
陶器のような肌と
まるでドールのような
端正な顔立ちなのに、
貴方の頬は染まっている
微熱
ほんの僅か共に過ごせる時間が
辛さ切なさを凌駕した
あなたに夢中だったあの頃
私は微熱に冒されていた
大好きな人が私のものじゃなくなった
もう会いたくないと突き放されたのは3日前
私が重すぎたのは百も承知だったけど
彼も同じ分量で愛してくれていると自惚れていた
今日の朝も38度
3日連続の微熱にうなされて吐きそうだ
やはり最後のディナーで皿に毒でも盛られたらしい
解毒薬のない毒
『微熱』
落ちていくの続き
微熱
38・5分
俺は、体温計の数値をみる。
完全に風邪だ。
「あ~あくそッ」
俺は、ベッドで悪態を吐く
兵士時代は、風邪なんて
ひく暇なんか無かったって言うのに...
コンコン とノックの音が聞こえた。
返事をする前にドアが開いた。
「やっほ~お見舞いに来たよ!!」
「何だお前か...」
ドアから 入って来たのは、
白衣を着た痩せぎすの青年だった。
「ちょっと ちょっと 昔馴染みに
結構な反応じゃない」
俺は へらへらと笑う其奴の顔を
睨み上げた。
「そう思うなら さっさと帰れ!」
「熱があるのに凄い怒鳴るね...」
其奴は、肩を竦めると
見舞いの品を机に置いた。
「とりあえず スポーツドリンクと
熱さましと ゼリー買って来たから
熱下がったら食べなよ!!」
「ああ...」俺はベッドの壁側に顔を向け
背中を見せて答えた。
「早く治ってあげないと ニフジちゃん
寂しがってるよ!!」
「・・・」
「全く仮にも元殺戮兵器に 風邪が移るとか心配するとか お門違いだと思うよ」
俺は 其奴が 放った言葉にピクリと
反応し 其奴の顔を睨み上げた。
「おお~ 怖い 怖い」
其奴は、この言葉を言うと 俺の
機嫌が悪くなる事を知っていて
あえてその言葉を返す。
殺戮兵器
2FG
それを もじって
ニフジと付けたあいつの名前
「ニフジちゃんの事となると過保護なんだから」
其奴は、やれやれと肩を竦める。
「そんなんじゃ無い あいつが 居ると
うるさいから 追い出しただけだ」
「まぁ そう言う事にしておこうか
じゃあ 僕は もう帰るね!」
そう言って バタンと ドアを
閉めて 其奴は、出て行った。
「くそ~あいつ 余計な事を言いやがって」
俺は 片腕で顔を隠し 話題に上った
少女の顔を思い出さない様に
必死に取り繕った。
油断すると あの陽だまりみたいな
笑顔がちらつくのを
頭を振って堪える。
「余計 熱が上がるだろうがぁ~」
余計な 置き土産を残した
見舞い客のせいで
熱が 微熱に下がるのは、
まだまだ当分先の様だ。
#微熱
「好きだけど、付き合わない」
人を好きになったら付き合うという恋の一般常識の中に、こんな選択肢があると知ってから、大分と心が楽になった。
恋が全く分からないわけではない。初恋だって、ちゃんとあった。幼稚園でいつもお弁当を食べる班の隣だった男の子。まだあどけない顔つきの子どもたちの中でも、一際目を引く美少年だった。
残念ながら彼とは学区が違って別々の小学校に上がることになったけれど、小学校になってからはまた別の子を好きになったし、6年間、一途に恋心を向けていた。
10代の青春時代に、しっかりと恋という感情に熱くなって、切なくなって、胸を高鳴らせていたにも関わらず、だ。
その先の欲望が全くといっていいほどない。
好きな人は、見ているだけで幸せ。話せたらすごく嬉しいし、優しくされたら自分に好意があるのではと自惚れるくらいチョロい。
笑顔で微笑まれた日なんかは、心臓がギュンと音を立てて――キュンではない、ギュン――全身が麻痺する。
自分のものにならなくても、別にいい。見てるだけで幸せだから。
そう思う裏には、あの人には自分よりもいい人がいるから、という思いがあるのかもしれないんだけど。
だから、「好きだけど付き合わない」選択は、自分を守るための盾。
「彼のこと、好きなんだよね」
意図せずに耳に入ってきた隣のグループの会話に、ドキッとして息をのんだ。
まさか、あいつを好きになるやつなんているのか。幼なじみのポジションに甘えていた自分の中に、ふつふつと熱が湧く。
誰かのものになる。
こんな時に、いやでも思い知らされる。
自分の中に絶えず宿っていた微熱に、自分のものにしたい欲望があるだなんて。