落ちていくの続き
微熱
38・5分
俺は、体温計の数値をみる。
完全に風邪だ。
「あ~あくそッ」
俺は、ベッドで悪態を吐く
兵士時代は、風邪なんて
ひく暇なんか無かったって言うのに...
コンコン とノックの音が聞こえた。
返事をする前にドアが開いた。
「やっほ~お見舞いに来たよ!!」
「何だお前か...」
ドアから 入って来たのは、
白衣を着た痩せぎすの青年だった。
「ちょっと ちょっと 昔馴染みに
結構な反応じゃない」
俺は へらへらと笑う其奴の顔を
睨み上げた。
「そう思うなら さっさと帰れ!」
「熱があるのに凄い怒鳴るね...」
其奴は、肩を竦めると
見舞いの品を机に置いた。
「とりあえず スポーツドリンクと
熱さましと ゼリー買って来たから
熱下がったら食べなよ!!」
「ああ...」俺はベッドの壁側に顔を向け
背中を見せて答えた。
「早く治ってあげないと ニフジちゃん
寂しがってるよ!!」
「・・・」
「全く仮にも元殺戮兵器に 風邪が移るとか心配するとか お門違いだと思うよ」
俺は 其奴が 放った言葉にピクリと
反応し 其奴の顔を睨み上げた。
「おお~ 怖い 怖い」
其奴は、この言葉を言うと 俺の
機嫌が悪くなる事を知っていて
あえてその言葉を返す。
殺戮兵器
2FG
それを もじって
ニフジと付けたあいつの名前
「ニフジちゃんの事となると過保護なんだから」
其奴は、やれやれと肩を竦める。
「そんなんじゃ無い あいつが 居ると
うるさいから 追い出しただけだ」
「まぁ そう言う事にしておこうか
じゃあ 僕は もう帰るね!」
そう言って バタンと ドアを
閉めて 其奴は、出て行った。
「くそ~あいつ 余計な事を言いやがって」
俺は 片腕で顔を隠し 話題に上った
少女の顔を思い出さない様に
必死に取り繕った。
油断すると あの陽だまりみたいな
笑顔がちらつくのを
頭を振って堪える。
「余計 熱が上がるだろうがぁ~」
余計な 置き土産を残した
見舞い客のせいで
熱が 微熱に下がるのは、
まだまだ当分先の様だ。
11/26/2023, 11:21:56 AM