『後悔』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
題.後悔
あの美術室に漂う空気は
今でも後悔を思わせる。
私は飢えた子供も廃れた大人も、人間すら綴りたくなかったんです。
社会というものが嫌いです。何か知らないものに縛られているようで苦しいんです。
私はただ美しい物語だけを綴り、感じていたいんです。
私は深い森と教会を愛しています。
私は美しいものなら死体だって愛することができます。
私を拒んでください。貴方は世界なんです。
あのこから、「あなたは、事無かれ主義過ぎるのよ」そう、面と向かって、突き付けられた。
そうして、矢継ぎ早に、消え入るような声で、囁く。「あなたがそんなだから、わたしは、平気な振りを、してしまうしか、なかったんでしょう?」
そうか。そう、か。だからか。
だから、わたしは、見限られて、しまうんだね。
後悔
後悔と聞いて1番に思い出すのは苦い、学生時代。
顔の造形に誰よりも自信がなく、常に下を向いていた。
弁当を食べるのも1人。
教室移動をするのも1人。
私は年齢とともに無駄に分厚くなってしまったプライドを捨てることが出来ずについには卒業までにすれ違いざまに挨拶をするような友人さえ作ることが出来なかった。
将来に希望もなければ趣味もない。
精神を病み実家から出ることすら出来ずあの家の子ニートらしいわよ、と見ず知らずの人間からも罵られる日々。
「あんた、高校行かせてもらっておいて親不孝な子供だねぇ」
「やることがないから進学はしない?贅沢な悩みだ。私の頃はね」
アドバイスという名目で行う自分より下のものへのマウント。
井戸端会議がオバサンたちの一日の楽しみなのだから何も言わないでやろう。
いつも通りそれらの言葉をするりと避け部屋に篭もる。
カタカタカタ タンッ
あのオバサンたちがぎゃふんと驚くようなことをしてやろう。
8月17日のカラッとした夏空を眺めながらそういきなり決意したのであった。
まずはアルバイトでもしてみよう。
18歳で平日も入れる、こんな優良物件を落とす企業がいるか?
そう意気込み家から比較的近く、時給も1250円と周りの募集バイトよりも良かったためラーメン屋に応募をした。
「18歳?今年高校卒業したの?若いねー笑」
「アルバイト経験はある?」
「今はフリーターなの?いや、まだフリーターでも無いのか笑」
恐らく40半ばであろう店主の男性の口から溢れる言葉。
一つ一つの言葉が私はこれまでもこれからもまともに生きることは出来ないのだ。と植え付けられえているようであった。
「今日はありがとうございましたー笑 合否の方はね、あーまた後でね、ほらお電話させて貰いますから」
後日ラーメン屋の店主から合格の旨を伝える電話を受けた。
アルバイト初日、アルバイトとは私が思い描いていたものとは違い思っていたよりもだいぶ、いやかなり酷であった。
まず客に笑顔で話しかけなければならない。
学生時代クラスメイトにすら話しかけられなかったのだからここでも上手くいくはずはなかった。
かと言ってそれ以外の業務に問題は無いのか?と言われるとそうでは無い。
大きい声は出ない。注文は間違える。
「アルバイト初日で大変なのはわかるけどこれは、ねぇ笑」
厨房から聞こえる話し声。
このお店のクチコミの低評価の原因はこれなんですね、と瞬時にコメントが脳裏を過ったが寸前のところで飲み込んだ。
プライドはやはり人よりも分厚く成長しているのでお前が教えないのが悪い、と心の中で悪態を着いた。
その時入った生ビール6つの注文。
「これも経験だと思って運んでこい」
断ることも出来ない私がするべきは客のいる目的の席まで零さないように細心の注意を払ってただの一滴も零さないこと。
この程度なら私にもできる。そう過信した私が愚かだったみたいだ。
客の席近くにやっと着いたと思った時店内を走り回る子供が私の右足に衝突した。
バランスを崩し私は店の床へ倒れ込み持っていたジョッキビールは客の机に見事着地したと思われたが再度見上げてみるとその席の客だけが服が透けていた。
倒れ込みながら私は反省の素振りを見せることも無く
やはり変わろうとすることは愚か者が行うことだった
と真剣に考えていた。
それでも脳の端では私は私を省みれないことについて反省すべきたと後悔をしていた。
後悔
たくさん後悔するけれど
結局前に進むしかないほど残酷
こんな考え方はいけない、とか
前向きにならなきゃ、とか
世間の造ったポジティブで自分を追い詰めないで
あなたはとても強い人間だから
負の感情に支配されることは絶対にないから
つまづいて転んでも、必ず立ち上がれる
世の中に変わらないものはない
雲も風も空も、夢も時代も自分も、常に変わっていく
苦しみも悲しみも必ず終わる
後悔にも絶望にも必ず果てがあるから
今はゆっくりとその時が来るのを待つだけ
あなたとあなたの感情を否定せずに、信じて待つだけ
これは俺がまだ自由に過ごしてた時の話し
学校のマドンナに、罰ゲームで告白したとき
「ずっと前から…好きでした!」
「あらそう…ありがとう…だけど…」
「だけど?」
「私は罰ゲームのお題になりたくないの…」
「俺だってこんなことしたくないけど…」
「じゃあ、1ヶ月だけ付き合わない?」
「え?」
「だって付き合ったら罰ゲームじゃなくなるでしょ?」
「まじで?いいの?」
「うん、」
それから彼女と付き合った…
それと同時にいじめが増えた…
彼女にいじめを相談した
「俺…いじめられててさ…」
一瞬嬉しそうだった気がした
「あらそう…」
「辛いんだよね…それにもうそろ…」
1ヶ月経ってしまったら…俺はホントに独りだ…
「もうそろ…1ヶ月だけどさ…もし良かったら…」
「付き合ってくれるの?」
「うん、だって…いじめって辛いじゃん!」
嬉しかった!彼女は俺の味方だった
それから3年経って大学生になった俺らは…
結婚の話をするようになった…
幸せだった
ある日大学の食堂で耳にした情報を俺は疑った…
「俺さ、高校の時に…」
「その話すんの?」
「だって面白いんだよ!」
「じゃあ聞くよ」
俺のいじめの話しで、彼女が俺と一緒になる為に…
俺をいじめるようにしたらしい
それを信じるのは怖かった…
あの時罰ゲームを実行した後悔は大きかった
なぜなら…俺は彼女に…監禁されているから…
掻き分け 掻き分け茨道
払って 落とした土埃
闇に紛れた 直垂の
若竹色を懐かしむ
無数の欲に 裾引かれ
蔦の蜷局が 絡む首
紅く染まった 両掌と
奈落に響く 死者の呼び声
地獄の片道切符を 手に握る
その背を 看取る
我等の罪は 手を握らずに
送ること
後に残りし 後悔を
悲しむ勿れ
それも又 時を継ぐ為
お題【後悔】
タイトル【許しを乞うて】
多すぎて最早憶えていない
あんなことしなきゃよかった
こんなことしとけばよかった
私の人生は大体がそんなものだ
もしもう一回だけやり直せるならば
私は喜んでやり直すだろう
まあ当然無理な話だが
そもそも今まで生きてきたなかで
生きててよかったって
これをやっといてよかったなんてことは
数えられるくらいしかない
そう言えるほど私の人生には後悔が多い
もしも
後悔も成就も忘れてしまえば
忘れることができたならば
私は本当の意味で
人生をやり直せるのかもしれない
お題:後悔
タイトル:リセット
「後悔」
あのときああすればよかった。
あのときどうすればよかったのか。
あのときこうしていたらどうなる?
答えは、幾枝にも別れた平行世界にしかない。
この世界のあなたも、平行世界のあなたも、
そして私も、
より後悔の少ない選択ができたらいいよね。
お題「後悔」
何かしらの選択肢の先に
付いて回ってくる
大なり小なり
頭の中に生まれてくる
もちろん
後悔しないほうがいいに決まってる
けれど結構簡単に、日々日常に
製造される感情
「お昼にぎょうざ食べなきゃ良かった・・・」
急遽入ったデイトの約束
ほら、こんなところにも顔を出す
すぐに製造される
お手軽感情
生きている限り逃れられない
せめて死ぬときぐらいは現れないでほしいな
後悔が
身を裂く痛み
今日もまた
見つめる背中
もう遅いんだ
【後悔】
今日の竹凛は、すこぶる機嫌が良かった。
大学院の課題レポートが教授に褒められたり、彼女とのデートが上手くいったり、とにかくなんでも上手くいった一日だった。全ての予定を終え、駅の改札口に向かい、ちょっといいお酒でも買って帰ろうかと鼻歌交じりに歩いていると見慣れた顔が目に入った。
「これはこれは…」
そこにいたのは青雲だった。しかもすらっとしたイケメンな男の子と話している。竹凛はにやにやしながら青雲も隅に置けないな、と見ていた。
すると、青雲が改札口の電光掲示板を指さして彼に何か言った。男の子は弾かれたように青雲に何か訴えているようだったが、青雲はゆっくり首を横にふった。男の子はその青雲の様子を見て泣きそうな顔をしながら、ただ最後のプライドかなにかなのか、無理矢理に笑って手を振り、改札口を通っていった。
この一連の光景に思わず竹凛はひゅう、と口笛を鳴らした。そして青雲に声をかけるべく、足を踏み出した。そして何食わぬ顔でよっ、と手をあげ青雲に声をかけた。
「青雲じゃないか、おひさ」
「…竹凛兄さん」
青雲は少し肩を震わせ、声の方を見やった。その声の主が竹凛だと分かると、あからさまにほっとしたように息をついた。
「お久しぶりってほどじゃないですよ、一週間前も顔を合わせました」
「むしろ一週間も合わせてないぞ」
「ははは、たしかに」
他愛も無い会話だったが、これは…と竹凛は思う。前にあったときと比べて、なんとなく心ここにあらずト言う感じと、少し歯車が軋む感覚がして青雲を見据える。そして、
「何かあったのか」
と、聞いた。そう聞かれるのが分かっていたのか、青雲は目を閉じながらほほえみ、
「何もないですよ」
と、いつものとおりに答えた。じいっと竹凛が青雲を見つめると、青雲は困ったように視線を泳がせ、なんですか、そんなに見つめられると困るのですが、と居心地悪げに呟いた。
「いや、憂いを帯びている青雲は他人がほっとけなくなるような雰囲気を醸し出すなと思って」
そう言うと青雲ははあ、と少し首を傾けた。
「竹凛兄さんは昔から変わらずかっこいいですよ」
「青雲は昔と比べて嘘をつくのがうまくなった」
ふと、青雲の体に緊張が走ったのがわかった。自分でも気がついたの、青雲はいつもの笑顔をとっさに貼り付けた。
「嘘なんかついてませんよ」
「お彼岸の日」
一瞬、二人の間に流れていた時間が止まる。
「何かあったのか」
その言葉に、青雲は答えなかった。否定も肯定もしない。ただその言葉を受け入れただけのようだった。そして青雲は重いため息をついた。
「…僕は嘘がうまくなったんでしょう?」
「青雲たちが生まれたときから見てる俺には誤魔化せないぞ」
「だとしても、分かっているならちゃんと僕の嘘に乗せられてくださいよ」
「時と場合による」
青雲は一回言葉をとめ、竹凛を見据える。そしてやっぱりいつもの顔で笑った。
「本当に、何もないんですよ」
答える気はないのだとわかった。竹凛はこれはまだだめだなと思い、自分を納得させた。まあ、もう大学生であり、大人に片足突っ込んでいるのだから外野がとやかくいうものでもないだろうと一人思案した。
「…ふーん、まあ、俺から一つ言わせてもらうなら恋人にあんな顔させるのはナンセンスだぞ」
「いやいや、ちゃんと線を引いてあげるのは優しさですよ。ていうか恋人じゃあないですし」
次に話すときにはいつもの青雲に戻っていた。話を聞くとなんでも、さっきの男の子は同じ学校の人で、少し買い物に付き合ってほしいと言われ、承諾したのはいいが、少しボディタッチが多かったり、含みのある言葉を言われたりしたらしく、きっちり役目を果たして、きっちり帰らせた、ということらしい。それを聞くと、さっきの男の子の、哀れさがより一層際立った。そして、まったくモテない自分の弟の顔が浮かんだ。
「なんで青雲や俺がモテるんだろうな~」
すると青雲は不思議そうに首を傾げた。
「嘘つきだからでしょう」
青雲は当たり前でしょう、と言わんばかりに含みを持った笑みを浮かべた。
「生花より造花の方が色鮮で美しいように、食品サンプルが本物以上に見せるように、正直な人より嘘で塗り固めた人の方が美しく見えるものですよ」
たしかに、と首を縦にふりながら、竹凛は言葉の端々を思い出し、顎に手を当てた。
「遠回しに俺のこともdisってない?」
「なんのことやら」
「意趣返しが露骨すぎる…」
調子の戻ってきた青雲に安心しつつも、釈然としない感情を抱きながら、やっぱり良かったと竹凛は口の端を上げた。
「まあ、悔いのないようにやれよ」
そろそろ行くわ、と手を上げると青雲も電車の時間を確認しつつ、
「ええ、善処します」
と返答した。そんな青雲の様子に竹凛は笑みを零す。
「まったく、青雲は可愛気のないかわいいやつ」
「そんなふうに私を言うのは竹凛兄さんだけですよ」
じゃあそろそろなんで、と軽く会釈をする青雲に返事をしつつ、竹凛は当初の目的であるお酒を買いに、青雲は改札口に向かう。ふと、青雲は思い立ったように足を止め、竹凛の背の方に振り返った。
「人生なんて、蓋を開けたら後悔ばかりですよ」
竹凛はその言葉に驚き、後ろを振り返った。青雲はもう改札口を通り、横目で、竹凛を捉えてにやりと笑い、そのまま階段を降りていった。
竹凛は回りに迷惑をかけないように口の中で笑いを抑える。
…やっぱり、お前はそういうやつだよ、青雲
後悔
中学生の頃、後輩だった君といつも楽しく過ごしていた。君があまりに可愛い過ぎて、ついいじわるしていたね。その度に一寸困ったような怒ったような顔で先輩って言ってたね。本当はいつもドギマギしながら、君に接していたのに。何度も気持ちを伝えようとしたけれど、とうとう何も言えずに…
私の人生に後悔などない。
反省はあれども、後悔はしてこなかった。
記憶に根を張り抜くことの出来ない毒草は、たくさんの花の中に紛れていく。
長く生きれば生きるほど、その毒草は紛れていく。
しかし、それは確実にそこにある。
たとえ嘘をつくのが上手でも、自分が気にしていないとしても、生きているだけですり減っていくものはある。
私は、周りの人のそれに気づける人になりたい。
後悔がない人生にしたいけれど、後悔がない人生なんてなくて。人は多かれ少なかれ悔やんでいることがあるものだと思う。誰だって細々としたちょっとした後悔の中に埋もれてとびきり苦く、心がべこべこに凹んでしまいそうな触れることを躊躇うくらいの後悔だって抱えている。
後の糧になるような後悔もあれば、ただ傷としてそこにあるような後悔もある。
人生という航海に後悔は不可欠で。ガラクタみたいで抱えていきたくはない荷物だけど、なにかに使えるかもしれなくて。どうしようもないときに隙間を塞ぐ材料として使えたり、非常食としてかじったり嵐のときに身を守る縄になるかもしれない。そう思うと後悔が詰まった箱を手放すこともできなくて。
でも無造作に後悔が詰まった箱に手を入れれば、鋭く尖った気持ちに傷をつけらることもあって。
それでもみんなそんな荷物を抱えてそれぞれの船で足掻いてる。
やり場のない後悔の詰まった箱を抱えて前へ進む。
優しいだけじゃ
ダメなんだ。
けど、後悔してもしなくても
いろんなこと引きずり過ぎて
背負い過ぎた果てに
妬み嫉みの塊にだけは
なりたくない。絶対に。
【お題:後悔】
「お題の連想ゲームは、結構心がけてるわ」
人生ぶっちゃけ後悔の連続だと思うがどうでしょう。某所在住物書きはコンビニでついつい購入してしまったグミのパッケージを開けながら、呟いた。
「『後悔』、だろう。後悔『する』のか『しない』のか、そもそも『何に対する』後悔か。
『後悔』が花言葉の花は複数あるが、その中のカンパニュラ、後悔の他に『抱負』や『誠実』なんて花言葉もあるぞ?――って具合に」
オマケの剣ピック目当てに、ありゃまたダブり、こりゃまた目当て以外。なかなか思う結果は訪れぬ。
「……ガチャは得てして『後悔』多しよな」
なんでこんなに金の退魔剣ピック出ないんだろう。
物書きはうなだれ、ちびちびとグミを食べる。
――――――
「後悔」。今日も今日とて、手強いやら難しいやらなお題ですね。こんなおはなしはどうでしょう。
最近最近の都内某所、某アパートの一室に、人間嫌いと寂しがり屋を併発した捻くれ者が住んでおり、
その部屋には週1〜2回、不思議な二足歩行の子狐が、不思議なお餅を売りに来るのでした。
現実感ガン無視とか、細かいことは気にしません。
大抵童話でキツネは喋るし、なんなら「ごんぎつね」や「手袋を買いに」なんて前例もあるのです。
気にしない、気にしない。「そういうおはなし」だと諦めましょう。――さて。
「これが、狐の執着か……」
今日の捻くれ者の部屋は、たいそう賑やかでした。
捻くれ者はため息ついて突っ立って、首筋をカリリ。視線の先では例の子狐が、狐の本能と食欲に従い、タケノコとワラビとお揚げさんをもっしゃもっしゃ。
タケノコとワラビは、捻くれ者の両親が、遠く離れた雪国の田舎から速達で送ってきた大容量。
捻くれ者ひとりでは到底食べきれぬ、田舎サイズに田舎クオンティティーです。
おまけにタケノコはずんぐり孟宗竹ではなく、すらりと長い根曲がり竹、その天然物。キロ単価3千5千オーバーがどっさりで、さぁハウマッチ。
そういえば狐がタケノコを食う映像を観たな。
いつも通り餅を買って、商品を受け取りお金を払った後、ふと閃いた、その後の行動が悪手だった。
『人間の食べ物だが、食ってみるか?』
子狐に田舎から届いたタケノコを見せると、子狐コンコン、途端に鋭いおめめとおはなでクンカクンカ香りを嗅ぎ、タケノコをぱくり!
味を覚えた子狐は、匂いを辿って大きい段ボールを見つけ出し、ひとり大宴会を始めてしまいました。
「子狐、あの、そのへんにしておけ」
「ダメ!さわらないで!ダメッ!!」
ギャン!ギャン!
捻くれ者が近づくと、コンコン子狐、食べ物を取られまいと大声で威嚇して、噛みつこうとしてきます。
その全力の声量の、大きいこと、大きいこと。
防音の部屋で良かった。捻くれ者は思います。
無駄に本能を煽ったか。捻くれ者は後悔します。
自業自得、自分が撒いた種、致し方無し。子狐に悪いことをしてしまったと、捻くれ者は反省しました。
結局田舎クオンティティーのタケノコとワラビは、半分以上が子狐のおなかの中。
後日母狐が子狐を連れて、丁寧な丁寧なお詫びをしに来ましたが、子狐が食べてしまったタケノコとワラビとお揚げさんの弁償に母狐が渡した金額は、諭吉さん2枚と、野口さん4枚だったそうな。
多分めでたし、めでたし。
子どもが生まれて初めて自分の無知を恥じた。妻は博識な人で、なにをするのにも困らなかった。子どものなんで、どうしてにも全て答えられるような人で尊敬していた。だから、妻の後ろに隠れて自分の無知がバレないうちは気持ちが楽だった。
だが、子どもが小学生になり勉強を教えてほしいと乞われるようになった。小学生の問題なら解けるだろうと調子に乗って問題集を見せてもらった。だが、中学受験を視野に入れている子どもが解こうとしている問題はどれも難関で、恥ずかしながらなにも教えることはできなかった。
その夜、妻に呼び出された。
「子どもの前ではバカなことぐらい隠して。親が自分よりバカだなんて思われたら舐められるでしょ。それに私も恥ずかしいわ」
大きなため息をついてそう言われると、なにも言い返せなくて俯くことしかできなかった。だが、妻にそう指摘された頃にはもう手遅れで、子どもから勉強のことについて質問されることはなくなった。家の中では常に、子どもと妻が私がわからない話で盛り上がっている。子どもが成長すればきっとこんなことが増えるのだろうと思うと耐えられなかった。
その予感は見事に的中し、高校生になる頃には見下した態度を取られることが多くなった。無知でも仕事で困ることはなかったのに、家庭での居場所を失った。それが、惨めで、恥ずかしくて、耐えられなくて、離婚した。妻とは連絡を取り続けていたが、子どもから連絡が来ることはなかった。
学生時代、もっと勉学に励んでいればこうはならなかったのだろうか。今そんなことに気づいても手遅れだということはわかっている。
それでも、後悔せずにはいられなかった。
【後悔】(2023/05/15)
いつも私は独りだった。
孤独だった。
「愛情」なんてものを感じられなかった。
私は、私は、
「何故生きているのだろう。」
そう思った瞬間、なんでも良い気がしてきた。
分からない、分からないけど、全て周りに流された。
そうしたら、いつしか何も感じなくなって……
嫌だった勉強だって人間関係だって仕事だって……完璧になった。
でも、全てが、完璧になった私でも、「愛情」を知らない。
でも私は、生きないといけない……何故生きないといけない?
「嗚呼……愛情ってなんだろう。」
夜空に向かって問いをかける。
もちろん返答は、帰ってこなかった。
でもそれで良かったのだ。
私は、その、夜空に飛び込んだ。
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彼女は、あの日から変わった。
原因なんて分からなかった。
彼女に一言伝えたかった。
「好きです。」
と、でも彼女は、僕から離れて行ってしまう。
嗚呼、なんで、僕の目の前から消えてしまうの
僕の胸には、【後悔】が残った。
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大人になった今、仕事帰りに夜空を見上げる。
キレイな満月が空には浮かんでいた。
「今日は月が綺麗ですね……」
目から涙が零れる。
彼女の居る夜空に向かって話しかける。
伝わってないかもしれない。でもそれで良かったのだ。
「やっと伝えられたな。」
今日はあの日から10年経つ。もう僕も25歳だ。
彼女を前にしていえなかった【後悔】が残る。
「なあ、元気か、?」
聞いてるかも分からないが声をかけてみる。
もちろん返答は帰ってこなかった。
僕は、苦笑ながらも缶ビールを、開けた。
正直、お酒は苦手だ。
でも、今日はなぜだか飲みたい気分だった。
「乾杯。」
僕は月に向かって微笑んだ。