Kalanchoe uniflora

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後悔

後悔と聞いて1番に思い出すのは苦い、学生時代。
顔の造形に誰よりも自信がなく、常に下を向いていた。

弁当を食べるのも1人。
教室移動をするのも1人。

私は年齢とともに無駄に分厚くなってしまったプライドを捨てることが出来ずについには卒業までにすれ違いざまに挨拶をするような友人さえ作ることが出来なかった。

将来に希望もなければ趣味もない。

精神を病み実家から出ることすら出来ずあの家の子ニートらしいわよ、と見ず知らずの人間からも罵られる日々。

「あんた、高校行かせてもらっておいて親不孝な子供だねぇ」

「やることがないから進学はしない?贅沢な悩みだ。私の頃はね」

アドバイスという名目で行う自分より下のものへのマウント。
井戸端会議がオバサンたちの一日の楽しみなのだから何も言わないでやろう。


いつも通りそれらの言葉をするりと避け部屋に篭もる。

カタカタカタ タンッ

あのオバサンたちがぎゃふんと驚くようなことをしてやろう。
8月17日のカラッとした夏空を眺めながらそういきなり決意したのであった。

まずはアルバイトでもしてみよう。
18歳で平日も入れる、こんな優良物件を落とす企業がいるか?
そう意気込み家から比較的近く、時給も1250円と周りの募集バイトよりも良かったためラーメン屋に応募をした。

「18歳?今年高校卒業したの?若いねー笑」

「アルバイト経験はある?」

「今はフリーターなの?いや、まだフリーターでも無いのか笑」

恐らく40半ばであろう店主の男性の口から溢れる言葉。
一つ一つの言葉が私はこれまでもこれからもまともに生きることは出来ないのだ。と植え付けられえているようであった。

「今日はありがとうございましたー笑 合否の方はね、あーまた後でね、ほらお電話させて貰いますから」


後日ラーメン屋の店主から合格の旨を伝える電話を受けた。


アルバイト初日、アルバイトとは私が思い描いていたものとは違い思っていたよりもだいぶ、いやかなり酷であった。

まず客に笑顔で話しかけなければならない。
学生時代クラスメイトにすら話しかけられなかったのだからここでも上手くいくはずはなかった。

かと言ってそれ以外の業務に問題は無いのか?と言われるとそうでは無い。

大きい声は出ない。注文は間違える。

「アルバイト初日で大変なのはわかるけどこれは、ねぇ笑」

厨房から聞こえる話し声。

このお店のクチコミの低評価の原因はこれなんですね、と瞬時にコメントが脳裏を過ったが寸前のところで飲み込んだ。

プライドはやはり人よりも分厚く成長しているのでお前が教えないのが悪い、と心の中で悪態を着いた。

その時入った生ビール6つの注文。

「これも経験だと思って運んでこい」

断ることも出来ない私がするべきは客のいる目的の席まで零さないように細心の注意を払ってただの一滴も零さないこと。

この程度なら私にもできる。そう過信した私が愚かだったみたいだ。

客の席近くにやっと着いたと思った時店内を走り回る子供が私の右足に衝突した。

バランスを崩し私は店の床へ倒れ込み持っていたジョッキビールは客の机に見事着地したと思われたが再度見上げてみるとその席の客だけが服が透けていた。

倒れ込みながら私は反省の素振りを見せることも無く

やはり変わろうとすることは愚か者が行うことだった
と真剣に考えていた。

それでも脳の端では私は私を省みれないことについて反省すべきたと後悔をしていた。

5/15/2023, 3:28:37 PM