『待ってて』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
下駄箱で待ってて
一緒に帰ろ
と、彼氏に言われてみたい人生だった
(女子校育ちより)
みんなが終わるまで待っていたら、待たされる人たちが可哀想と言われた。それなら習熟度別で自分のペースでできるところを選べるようにしたら良い。
でも実際は色んな能力の人たちが同じところに集まって過ごす。飽きさせないように違う課題を用意しているが、結局それも結構な手間。まずは根本から変えていかないと働き方改革なんて口だけのものになる。
未来の私よ、
私が成長するのを待ってて!
あなたが未来の私なら、
私はそこまで行き着くことができると保証されている。
誇れる私になれる。
安心して向かうことができるから。
誰のためでもない、自分のために、
ただ自分に満足できるように。
自分を殺す口実を作らないように
あなたになりにいく。
【待ってて】
わたしは今も、あの子を待っている。
わたしは昔、友達と約束をした。
友達は同じ習い事をしていたけど、引っ越してしまうらしかった。
あの子は言った。
「3年後に帰ってくるから。またこの習い事するから、待っててね」
あの子は帰ってこなかった。
引っ越したまま帰れなくなってしまったのか、習い事をやめてしまったのか、それとも別の理由があるのか。それはわからない。
しばらくして、ある時、習い事をやめないかと言われた。
言い訳をして断った。わたしに才能がないことは知っていたし、他にもっと安く良いことを教えてもらえる場所があるのも知っていた。
でも、あの子を待ちたかった。
あれからしばらくしたけど、やっぱり帰ってこなかった。
あの頃は、引っ越した子ともうひとりとで仲良し3人組だった。
もうひとりの子は上のクラスに上がってしまって、わたしは取り残された。
その子とすれ違ったこともあったけど、その子のまわりには他の友達がたくさんいた。
よかった、と思った。
わたしなんかに囚われず、もっといい友達と出会えたんだ。
その事実に、なんだか安心したのだった。
きっと引っ越したあの子も、新しい友達ができたのだろう。
実際、わたしも新しい友達がたくさんできた。みんないい子。
でもわたしは心のどこかでずっと待っている。
「待っててね」
あの子は、確かに、確かにそう言ったのだから。
数十年後の君へ
数十年後でもずっと一緒に居れてるといいな
だから、僕のそばで待っててね
好きです。
知ってる。
ちぇっ。
こらこら。
待っててよ。次こそは。
ああ、次こそな。
今日もまた踏み出せなかった。
あと一歩踏み出せばそこにあるだろう幸せを
この臆病者は何度掴み損なったのだろう。
次こそ、次こそは。
すまない。その時まで
君も待っててくれ。
待ってて
Theme:待ってて
私は小鳥と一緒に暮らすことが夢だ。
心の病を患って、生活を維持することさえ難しい今は手の届かない夢ではあるけれど。
一度壊れてしまった心はそう簡単には元に戻らないそうだ。
薬を服用しているだけでは治らない。
自分の過去に向き合ったり、考え方をより柔軟にする訓練をしたり…完治することはなく落ち着いた状態を保つことが目標だという。
また、再び心が壊れてしまう可能性、つまり再発率が非常に高いそうだ。
私にとっては、それは死を宣告されたに近いものだった。
もう以前のように仕事をすることはできない。
もう今までの価値観で暮らしていくことはできない。
今まで積み上げてきたものはすべて崩れてしまった。
再発に怯えながら、今の自分を受け入れて新しい価値感を積み上げていくしかない。
これから、生涯をかけて。
絶望した私を救ってくれたのは、ホームセンターで出会ったキンカチョウだった。
小さな瞳でしばらくこちらを興味深そうに見ていたが、やがて飽きてしまったのか粟の穂を啄んだり、機嫌よさそうにめぇめぇと独特な囀りを披露している。
奔放なその姿に、思わず頬が綻んだ。
やっぱり、私は鳥と暮らしたい。
すぐには無理だろうけど、きっといつか一緒に暮らしたい。
そんな目標を、希望を呼び起こしてくれた。
待ってて、未来の私。
貴方が小鳥を迎えられる日が来るように、諦めないから。
時間はかかると思うけど、どうかその日を待ってて、信じていて。
【待ってて】
私は待っている者を助けることができなかった。
私が小学生の頃の話である。
私はその頃ゲームが好きであった。
友だちもみんなやっており、任天堂歴でいうとDSが出るくらいの時分であった。
私がはまっていたのは『ポケモン不思議のダンジョン』とかいうゲームだ。
自分がポケモンとなって、他のポケモンたちと戦いながら救助を求めるポケモンを助けたりするゲームである。
あるポケモンが、
「棟から出られなくなったから助けにきてほしい。お礼は弾む。」
という内容で救出を求めていた。
お礼に目が眩んだ私は、仲間たちと助けに行くこととにした。
「待ってて!」と意気揚々と向かう。
だが思ったよりもステージが難しく、なかなか助けることができない。
私のプライベートも忙しくなり、ゲームをする時間がなくなっていった。
中学になりゲームはほぼしなくなっていた。
あの頃私に助けを求めていたポケモンは、今でもあの棟で助けを待っているのだ。
私は無情にも助ける力を持ち得ていなかったのである。
15年ほどの時を経て、ゲーム機も壊れてしまっていた。
つまり私が救出に向かう術は断たれたのである。
彼らの人生が続いているのならば、同様に15年の月日が流れているのだ。
あのポケモンはまだあの棟にいるのだろうか?
15年も経てば自力で棟から出られたのではないだろうか?
他の捜査員が助けに行ったのではないか?
待て、私でも手こずったあの棟だぞ?行けるのか?
いや、それとももうすでに…。
私は助けを求めている者を助けることができなかったのだ。
できないことはできないと言うことが大切であることを学んだのである。
欲に目が眩んでも、私ができることに集中すべきなのだ。
さすがは天下のポケモンである。
ゲームができなくなっても深い示唆を与えてくれるのだ。
もしもあのポケモンがまだ助けを求めているのならば、それは大バカである。
私にもできないことがあるのだ。勝手に期待されても困る。
貴様も助けを待つのではなく頑張って降りるべきである。
敵のポケモンとは戦うのではなく、話し合いで解決するべきなのだ。
そのままだと社会に出て苦労するぞ。
待ってて
※ペットロス中の方がいましたら注意してください。
縁側で新聞を読んでいると、チャカチャカ足音を立ててチビが来る。フサフサと自慢気に尻尾を揺らし、当たり前のように俺の膝に乗ってきた。
「おい、チビ。邪魔だ」
「お父さんったらまた憎まれ口叩く」
花恵が続けて「離れたら離れたで、チビチビ言って探すくせに」と笑いながら言うもんだから、俺は何も言い返せず膝に居るチビを撫でる。チビは心地良いのか目を細めて黙ってそれを受け入れていた。
「また春が来たら桜が見れるぞ」
言葉が分からないはずだが、チビは目を開いてどこか嬉しそうな顔をして俺を見つめた。
チビはいつも俺の傍に居た。小さいからふとした拍子に踏んじまいそうで落ち着かなかった。ろんぐなんちゃらとかいう小洒落た犬種で、無駄に毛並みが良いし、あとは大きい目をしていた。
――また、この生意気な犬と桜を見に行くつもりだった。
あれは朝の散歩をしていた時だ。突然だった。本当に、わけがわからなかった。
パタリとチビが倒れたのだ。俺はチビを抱き上げて直ぐに病院に向かった。心臓がバクバクと動いているのに、やけに周りの音が遠くに聞こえる。
とにかく早く、早く、頼むから、大した事ないと言ってくれ。ただの立ち眩みだと言ってくれ。
犬用のバッグから見えるチビは、浅い呼吸を繰り返すばかりだった。
医師から、心臓の大きさや血が流れていく動きの状態が悪い……そんなようなことを聞かされた。小難しい話を分かるように説明しようとしてくれているのは理解できたが、俺は力なく尋ねた。
「チビは治りますか」
それに医師は言い淀む。俺は腕の中のチビを苦しくないよう抱きしめた。
「死なないでくれ」
情けない声で小さな命にすがりついた。
……それから数日後、チビは居なくなった。家の中に響いていた足音は聞こえないし、膝の上の温もりもない。縁側でぼんやりしていると花恵が隣に座ってきた。
「静かね」
「そうだな」
会話は短いが、その中には俺達にしか分からない重みがあった。
「虹の橋のたもとですって」
葬式を終えた後にもらったパンフレットを見ながら花恵は言う。
「そこでチビが待っててくれてるから、行くときは大好きなおやつを持っていってあげましょうね」
「……そうだな」
「だから、もう少し待っててもらいましょう」
震える声で俺を慰める花恵に、気の利いた言葉を返すことができないまま、俺は内側から溢れる感情や今までの思い出を涙にしていた。
「――もっと、色々してやりゃあ良かった」
小さいくせに存在が大きすぎたんだよ。お前は。
だから、また会った時は覚えてろ。膝に乗せて、嫌がるまで頭を撫でてやる。
――記憶の中のチビが嬉しそうな顔をして、尻尾を振った。
日々家
▼余談/登場人物
秋永 芳朗(あきなが よしろう)
秋永 花恵(あきなが はなえ)
秋永 チビ(あきなが チビ)
▼
自分の抱える思いを話に託しました。
「待ってて」
待っててね
未来の私…
今、病気と向き合ってるから
ちゃんと治療して
絶対に治すから
もっと楽しい人生送ろうね!!
「待ってて」
そう叫んだあなたが米粒みたいな小ささになって、私の視界から消えて三十分くらい。
巣に戻る蟻の行列を数えるのも綿飴みたいな積雲を見送るのも飽きてきた頃、あなたは不意に戻ってきた。
息を切らしたあなたは、大粒の汗を拭いながら黒真珠の両目に私を映す。
「どこに行ってたの?」
「これを君に」
差し出された紙袋は持ち手がしっとりと濡れている。
「家に忘れてきたんだ」
中には手のひらに収まるほどの赤い木箱。
「お誕生日、おめでとう」
木箱の蓋を開けると、金属の部品が遠慮がちに涼やかな音を鳴らし始める。
星屑が鳴るようなその音はやがてひとつのメロディになり、私の心を震わせる。
「これまでの人生で一番幸せな誕生日だわ」
たった一度しか話さなかった誕生日を覚えていてくれたことも、私が好きだと話した曲を選んでくれたことも嬉しい。
何よりも、あなたと出会うきっかけになった曲をあなたが覚えていてくれたことが、私はとても嬉しかった。
『待ってて』
「待ってて」なんて言葉は特にこの時期にややこしい振る舞いをして、「待ってて」とか、それを受けて「待ってるから。帰ってきて。」などと言うやり取りが、そろそろ全国的に繰り返されているはず。
しかし、テレビに民放が2局しかなくてそれも同族経営なんていうような地域から出てきて、生まれた時からテレ東が24時間グルメ番組やってたり、サンテレビで小枝師匠を見てたりしてきたような同級生にしっかり同化しなきゃならないなら、それはもう戻れるわけもなく、それは立場を換えれば相手も同じなのでどうしようもないんだし、それ以前に情報が豊富な今は当事者たちも遠距離になった恋愛はまず続かないなんてのは知っていて、それでもやってる確信的なやり取りでもある。もちろん、相手に伝えちゃった手前どこまで頑張り続けるのか、最終的には相手が離れていって関係が続かない可能性がずっと高いのに、自分は何処まで頑張るのか、そこから始まる罪悪感も含めて十分に罪深い言葉ではある。
酷いことを言ってるのかもしれないけど、それでは自分の知り合いで遠距離が続いた人たちがどれだけいるのかとか、高校から遠距離で実を結んだ人を知っているのかとか、それだけでもちょっと考えればもう十分。
しかし、それでもお互いに待ち続けて、きちんとゴールインしたのなら、それは信頼できる良いお相手で申し分のない恋愛になるわけで、それがたとえお互いに市場価値がなく需要がなかっただけだったとしても、いずれにしても安定した関係は持続すると思う。
おめでとうございます。(声援の予祝に換えて)
待ってて
ドス。
君の顔から笑顔が消えた。腹部に開いた穴から赤い液体が流れている。青いスーツがどす黒く染まる。君は地面に倒れ伏したまま、ぎこちなく笑った。
「だい、じょうぶだから。」
そうだよね。私達は、みんなのヒーローなんだから。みんなを守らないといけないんだから。待ってて。
「おねーちゃん、がんばって!!」
小さな少年の声援が聞こえる。
必殺技だ!きっと大丈夫。これで負けたことなんてないんだから!
「覚悟しなさい!」
ためていた力を放つ。君の分も込められている気がした。
ドパッ!
決まった?
いや、違う。動かない。足、が。恐る恐る下を見ると右脚の断面があらわになっていた。
「うああああああ」
大丈夫。大丈夫。きっと勝てる。君だって助けて見せる。そのためにはアイツを倒さなきゃなんだ。だから、ちょっとだけ待ってて。待って、て
文を書くことは難しい。
いざ、書けと言われても書き初めがわからない。
「すいません。財布を忘れてしまって…すぐに取りに帰るので、少し待ってて貰っていいですか?」
「分かりました。できれば身分証か何かお預かりさせていただきたいのですが」
「すいません。今は免許証しか持ち合わせがなくて」
「では免許証をお預かりさせていただきます」
私がそう言うと、客は激怒した。
「免許証なしで、どうやって車を運転すればいいんだ?50キロ先の俺の家まで歩いて帰れとでも言いたいのか!?」
「い、いえ、そういうつもりでは、申し訳ございません」
客は茹で上がったタコのように顔を真っ赤にさせると、
指にはめていた24カラットのダイヤモンドの指輪を、どがんとレジの横に叩きつけ、財布を取りに帰っていった。
あれからふた月経つのだが、未だにあの客は帰ってこない。
私が交番に届けた方がいいのではと問うと、店長は「まあその内来るだろ」と呑気な返事を返すのだった。
ある日、私が退勤のタイムカードを押そうとすると、真剣な顔をした店長に話しかけられた。
「ちょっと交番に届けてくる。すぐ戻ってくるから、帰るの少し待ってて貰っていいか」
流石に少し心配になってきたのだろう。
店長は急いで指輪をポケットに詰め込むと、愛車に乗って交番に向かった。
あれから1年経つのだが、未だに店長は帰ってこない。
【待ってて】
⚠⚠BL警告、BL警告。⚠⚠
本文ハ異次元ひすとりーノそふとBLぱろでぃーデアルタメ、各々ヨロシク検討ノ上読マレルコトヲ望ム。尚、当局ハ警告ヲ事前ニ告知シタ故ニ、苦情ハ一切受ケ付ケヌモノトス。以上。⚠⚠
カミーユが出て行き二人きりなると、さっきまでにぎやかだった室内には途端に静けさが訪れ、掻き消されていたカナリアの愛らしくさえずる声が耳に戻り、ほっと和む心地にさせた。くつろいだ気分でダントンは低く吐息をつき、飲みかけのお茶へ手をのばす。
「さてと。それじゃあ……」
三分の一ほど残って、冷えてしまったお茶を飲み干しているとき、部屋の主が立ちあがり、ゆっくりとこちらへ近寄りながら話しかけてきた。
「服を脱いでくれ、ジョルジュ」
ぐふっ。
若干量が気管に入り、一瞬息が詰まった。たいしたむせかえりではなかったものの、軽く咳きこんで喉の不愉快さをはらおうとする。
「一息に飲んだからかい?」
ダントンの粗相にささやかな同情で気遣いつつ、ロベスピエールは、座ったままで物言えず喉を調えているダントンの背後へまわり、すっと両手を肩に滑らせた。
「 ───── !」
不意の彼の手の感触に、なぜなのか、心臓が小躍りした。脈絡のつかめない大胆な言葉に続く、さらに大胆な接触。訳がわからない、いきなりなんだよ!?と抗議したくとも、この想定外な展開の衝撃に心乱れてか、うまく口が動いてくれない。ロベスピエールは手を止めることなく、ダントンの肩から上着を落としていく。生々しい衣ずれ。こみ上がってくる何かに堪えられなくなり、勢いよく顔だけ振り向かせ、見開いた双眸で肩越しにロベスピエールを凝視する。尋常ではない雰囲気を察して、ロベスピエールもまたたきして不思議そうにダントンを見つめ返す。
「ジョルジュ、どうしたんだ、さっきから……ああ、悪いが立ってくれないか。このままだと袖が抜けなくて」
ほら早く、と急かすように腕を叩かれ、言われるがまま椅子から立ち上がる。やいなや、素早く腕から袖を引っ張り下ろされ、ダントンの上着はついにロベスピエールが奪い取ってしまった。
「お茶のお代わりを頼んでくるよ。ボタンがつけが終わるまで、なにも無しで待っててもらうのは申し訳無いから」
──── ……ボタンつけ?
突然の、生活感のある言葉にキョトンとする。無言の問いかけにロベスピエールは上着をかざし、前見頃を指差して説明する。
「穴は四つあるのにボタンは一つしかない。理由は明白だろう?君には紳士にふさわしい装いで帰っていただきたいと願う私のお節介を、どうか受け入れてほしい」
そう言い残し、ロベスピエールはダントンの上着を手に持ったまま階下へと部屋を出て行った。一人残されたダントンは、やがてどっかりと椅子に座りなおす。
ボタンつけ……ね。はは……は
冷静になった頭でようやく状況を把握し、力なく片側の肘掛にもたれて苦笑する。なんのことはない、粗忽者の自分が、どこかでなにかの拍子にボタンをなくしてしまい、見苦しいありさまになっていた上着を、それに気付きもせず羽織っていたことが、無駄にあたふたさせられた原因だったのだ。自業自得と言ってもいい。
だが、説明もなく性急な行動におよんで、変な勘違いを起こさせたマクシムも悪い。
苦笑から本当におかしくなって、くすくす笑いながらロベスピエールをなじる。確信犯ならぬ、罪な無意識犯行だな、ありゃあ……いやそれより、服脱げって言われただけで、あれだけどぎまぎする俺が変なのか。まったく、どうなっているんだか……
「一人でも楽しそうだね。私はお邪魔だったかな」
二人分のお茶一式が揃った盆を持って、ロベスピエールが戻ってきた。両手がふさがっているため、ダントンの上着を肩に引っ提げている。
「なんだ?もうつけ終わったのか?」
テーブルへ盆を置き、サーブするロベスピエールの様子を見守りながらふと訊ねる。お茶のお代わりと一緒に、ボタンつけを階下にいるデュプレイ家の女性陣に頼んだものと思っていたので、上着が手元に戻るのはもう少し後だと考えていたのだ。なのにその上着はロベスピエールが引っ提げて戻り、傍らの椅子の背に掛けられてある。
「いや。今から私がその作業にかかる。そのためにお代わりを用意したんだよ」
「君が?」
驚きの声を上げるも、当人はすました面持ちでポットからカップへお茶を注ぎ淹れ、ダントンに差し出す。なかなかの手際だ。
「この時間、夕食の仕度で女性たちは忙しくて、手が空いているものが私しかいないんだ。適当に合うボタンは彼女たちに見繕ってもらって来たから」
自分の分も淹れてようやく給仕を終えるとテーブルから離れ、棚から裁縫箱なるものを手にして戻ったロベスピエールはやっと席についた。
「君の平等精神は偽りのないものだってことがよくわかった」
馴れた手つきで縫い付けていく姿に感心し、控えめな言葉で讃えて微笑んだ。俺なんて、自分でやろうなんて考えたこともなかったぜ、ボタンつけなんて。
「こんなことで少しでも私の株が上がったのなら、儲かったものだな」
針仕事の手もとに顔を向けたまま、ロベスピエールもくちびるだけで微笑んで軽口で返す。そして訪れるおだやかな沈黙。再びカナリアの歌声。階下からほのかに漂ってきた夕食のにおい。平和な雰囲気にひたり、ダントンはお代わりのお茶を静かに傾けて清廉の士の作業を眺める。ロベスピエールは作業に没頭し、ダントンの視線を全く気にすることなく淡々とこなしていく。ときどき思い出したように自分のお茶を飲みながら。やがて最後のボタンがもうすぐつけ終えられようとしている。ダントンは胸の内で、ああ、もっとボタンの多い上着を身につけて来るんだった……と密かに嘆いた。嘆いた直後で、なぜ俺はこんなことで嘆くんだ?と自分に問いかける。
「── 待たせたね。これでもう帰る道すがら、どこへ立ち寄ることになっても、君は紳士として迎えられるはずだ」
針仕事を終え、晴々とした顔でロベスピエールは立ち上がり、ボタンが揃った上着をダントンに披露して見せる。
「ああ……感謝する、マクシム。恩に切るよ」
立派によみがえった上着を見せられても、ダントンはなぜか悄気た体で残念そうにそれを受け取り、見るからに渋々な態度で席を立ち羽織った。
「今日はすっかり長居してしまったな、悪い。お茶をごちそうさん、もう帰るよ」
帽子をかぶり、ロベスピエールの側へ来て帰る挨拶をするが、まるで拗ねたこどものように微妙にそっぽを向いてのべる。
「気にせずまた来てくれたらいい。いつだって歓迎するよ」
客の素っ気なさを気にすることなく応じて、立ったままだったロベスピエールは開けたままの扉へと先導してダントンを送り出す。廊下で握手した手を離したとき、よくわからない痛みがダントンの胸をうずかせた。
帰宅してぼんやりと夕食が出されるまで居間の窓辺にたたずみ、夜の街並みを見るともなしに過ごす。寄り道する気分にはなれず、まっすぐに帰った。片手にはワイン、そしてもう一方の手は、脱ごうとして思いなおし、肩に羽織った上着のボタンをもてあそぶ。どれもしっかり縫い止められており、彼らしい生真面目さが感じられた。
あんな特技があるなんて。知らなかった彼の意外な一面を見せられ、思いが彼とのそのひとときに囚われる。もっと一緒に過ごしたかった。もっと彼に触れて欲しかった。もっとマクシムのことを知りたかった…
会うたびに気になっていく。この気持ちはなんなのか……簡単には判断できない、新しく生まれつつある複雑な感情。
革命の真っ只中。俺のなかでも、世界が変わっていくみたいだ。
ふう、とため息ひとつこぼしてワインをあおる。考えても仕方がない。人間なんて、流されていくまま受け入れていくしかないんだ。
笑みを浮かべて脳内の靄を振りはらうと、ちょうど良い頃合いでガブリエルの呼ぶ声が聞こえた。さて、気持ちを入れ替えて晩めしだ。
羽織っていた上着を脱いで壁の服掛けに吊るす。名残惜しげに一撫でし、引き寄せてボタンの部分へ口づけすると、ダントンは妻の待つ食卓の間へと出て行った。
待ってて(2月14日)
待っててください
そう言って終わった昨日の僕
なんで書いたんだろう
そう不思議に思いながらも
一人でも僕のことを待っててくれてる人が
いればいいなと 今の僕は思う
僕のことを待っててくれる人なんているのかな
そんなことも思いながら 僕は文を書く
たとえ僕のことを待っててくれる人がいなくても
みんなが待っていたいって
思ってくれる存在になるまで
僕は文を書き続ける
待っていたいって思ってくれても
僕は文を書き続ける
いつかみんなの大切な存在になりたい
そんな日が来るのを僕は待っている
ここで待ってて
いつか戻ってくるから
10歳差の彼との約束
未だに忘れられない
戻ってきてくれることを信じて
今もまだここに通っている
(※フィクション)
待ってて
後悔の多い人生だ。
過去の自分を恨み続けている。
過ぎたことはどうしようもない。
けど、過去の僕は今だに膝を抱えて座っている。
(心で想像した場合の話です)
暗闇で何かを待っているかのようだ。
救えない昔の自分。
今の僕は過去の僕が考えも想像もしてないような結果で出来ている。
こうでありたいという自分像を壊してしまった。
他人からの信用がなくなっていくように。
僕は昔の自分を裏切ってしまった。
積み上げてきたものが全て水の泡になった。
理想が高いのはよくないな。
現実を突きつけられると地の底へと落とされていく。
何度かその経験をした。
でも、過去を無かったことにすることは出来ないけど、こんな時もあったなって笑える日が来ると思う。
だから今は、ゆっくりと心を整理していく。
落ち着いた時にようやく自分の過去と向き合う。
待っててね、過去の自分。
いつか明るい場所へと手を引くから。
お題:待ってて
待ってて、私が大人になるのを。
待ってて、私があなたの隣に立てる様な人になるのを。
待ってて、私の心の準備。
待ってて、私があなたを支えるから。家でもどこでもいいよ。飛んでくわ。